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セルロース材料グループでは、「作る」「知る」「使う」のサイクルで研究開発を進めています。


〒739−0046 広島県東広島市鏡山3-11-32
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
中国センター 機能化学研究部門

セルロース材料グループ

連携可能な技術のご紹介PRIVACY POLICY

当研究グループで構築・蓄積した連携可能な技術ご紹介します。

外部連携が可能な技術(クリックすると画像が拡大します)


1.少量サンプルでの樹脂・添加剤の混練特性評価
 セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF 少量サンプルでの樹脂・添加剤の混練特性評価
 解説:樹脂系の製品開発では、様々な設備が使われています。量産による製品の低コスト化はとても重要ですが、新しい素材や添加剤をテストしたい場合に、生産実機を停止し、利用するのは簡単ではないと思います。製品の生産数が減ったり、樹脂・添加剤が設備に合っておらず、トラブルが発生するかもしれません。また、材料交換は、系内に残った材料を十分に置き換える必要があり、少量しか入手できなかった試供品などでは、テストもできません。
 当研究グループでは、実機での生産に参考となるデータも取得可能な、小型の混練装置や押出機を備えています。混練試験は、10グラム程度からも実施可能です。混練ユニットのバリエーションもあり、様々な試験が実施可能です。
 参考:「研究紹介」
固相せん断法によるセルロースナノファイバーの樹脂複合化技術
リグノセルロースナノファイバー樹脂複合材料を用いた試作品
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2.少量樹脂サンプルでの強度試験片の作製
 セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF 少量樹脂サンプルでの強度試験片の作製
 解説:当研究グループでは、少量の樹脂や添加剤の混練試験ができる、小型装置を備えています。混練したサンプルについては、様々な評価を実施することになりますが、強度試験も重要なポイントです。樹脂系製品の多くは、射出成形ですが、生産実機では、金型交換も手間がかかり、また、材料交換では、装置規模によっては、数キロの原料を必要とします。
 当研究グループでは、小型の射出成形機を備えています。小型のため、JIS規格の試験片が作製できる金型は取り付けできませんが、この小型射出成形機は、大型・汎用の射出成形機と同じ機構「可塑化-型締-7射出−イジェクト」を持っており、連続生産もできます。さらに、材料の交換と複数の試験片の作製試験は、100グラム程度で実施可能です。試験片金型は、引張強度試験用のダンベル、曲げ試験・衝撃試験用の短冊があります。強度は、試験片の断面積で割った値であるため、小型の試験片であっても意味あるデータが取得できます。
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3.少量樹脂サンプルでの強度特性の評価
 セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF 少量樹脂サンプルでの強度特性の評価
 解説:少量サンプルを混練試験し、次いで小型射出成形機で作製した試験片は、強度評価をして始めてまとまります。強度試験装置として、引張強度試験、曲げ試験、衝撃試験ができる装置を複数台、揃えています。強度試験装置は、恒温・恒湿室に設置しており、作製した試験片を所定時間養生した後,その場で試験が実施可能です。強度試験装置は、JIS規格の試験片も、問題なく評価できます。ゴム系材料の引張強度試験では、結果の信頼性を向上させるため、変位計ユニットも備えています。
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4.少量サンプルでのゴム・添加剤の混練特性評価
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF 少量サンプルでのゴム・添加剤の混練特性評価
 解説:ゴム系材料では、複数の材料のブレンド体としたり、様々な添加剤を用いたりします。生産実機を用いて、ブレンドテストを実施したり、新しい添加剤の効果を確認したりすることは、様々な作業が発生してしまいます。また、実機を停止して、新しい材料・添加剤をテストする、トラブルが発生して、製品製造に影響が出る場合も考えられます。
 当研究グループでは、小型の混練機に、ゴム用としてバンバリー型のスクリューを準備しています。混練後は、金型を用いて熱プレス成形により、加硫してシート成形することができます。
 参考:「研究紹介」
完全にナノ化しないナノセルロース(部分ナノ化)の効果(ゴム補強)
ナノセルロースのサイズと天然ゴムの補強効果
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5.少量ゴムサンプルでの強度特性の評価
 セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF 少量ゴムサンプルでの強度特性の評価
 解説:少量のゴムサンプルでブレンドしたり、添加剤をテストしたりした場合、作製したゴム材料の特性を評価しないと、目的は達成できません。スクリーニング的テストでは、操作が簡単なことが重要となります。
 当研究グループでは、小型の熱プレスにより加硫・成形してシートを作製することができます。作製したシートは、ダンベル打ち抜き機を用いて、JIS規格の試験片が簡単に作製できます。作製した試験片の引張強度は、変位計を備えた強度試験機で、評価を実施することができます。
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6.原料によるナノセルロース製造特性の評価
 セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF 原料によるナノセルロース製造特性の評価
 解説:ナノセルロース(セルロースナノファイバー/CNF)は、原理的には全ての植物から製造することができます。しかし、原料の特性により、製造効率は異なります。多くのナノセルロースは、木材由来のパルプを原料として製造されている。これらの製造では、水と機械処理が必須です。機械処理としては、ディスクミル(グラインダー/電動型石臼)や高圧ホモジナイザーが一般的です。
 当研究グループでは、これでに、各種木材由来の木粉、各種パルプ、柑橘果皮や大豆の皮などの食品系残渣、稲わらやもみ殻、サトウキビ廃材のバガスなどの農業系残渣からナノセルロース製造テストを実施した経験があります。製造装置としては、木材チップも原料とできるように、粗粉砕カッターミル、微粉砕できる気流粉砕機を備えて前処理できるようにしています。さらに、これら原料のナノ化は、ディスクミルを4台(ディスク径:6インチ、15インチ)、200MPa以上で処理可能な高圧ホモジナイザーを3台(ナノ化の機構が異なる)、備えています。
 参考:「研究紹介」
セルロースナノファイバーの一般的製造方法(概要)
樹種によるリグノセルロースナノファイバー製造効率の違い

 参考:「技術のポイント一覧」
簡単な?ナノセルロースの作り方。
再現性よくナノセルロース作る。
ディスクミル装置を用いたナノセルロース製造の概要
ディスクミル装置による木粉からの直接的なナノセルロース製造
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7.ナノセルロースの各種特性評価(まとめ)
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF ナノセルロースの各種特性評価(まとめ)
 解説:入手したり、作製したりしたナノセルロース(セルロースナノファイバー/CNF)を使いこなすためには、まずは、その特性を知る必要があります。特性が分からないと、複合化等して作製した材料の特性が発揮されない場合の原因もつかめなくなります。ナノセルロースは、今までにない、超微細な有機物であり、極めて高い凝集力などから、特性解析は簡単ではありません。多くの機器分析では、乾燥サンプルを必要としており、乾燥サンプルの調製も課題になる場合があります。
 当研究グループでは、高度に凝集を抑制したサンプル乾燥法を構築しており、調製した乾燥サンプルを用いて、高分解能走査型電子顕微鏡(FE-SEM)による評価、原子間力顕微鏡顕微鏡による評価、比表面積評価、X線回折による結晶性評価、核磁気共鳴装置(NMR)による精密分子構造評価が実施可能です。また、ナノセルロースの形状・サイズの情報は得られませんが、品質管理にも利用できるレーザー回折法による粒度分布測定、他の分析方法では得られない情報が得られる沈降特性評価、レオメーターによる粘弾性評価を実施することもできます。さらに、ナノセルロースの純度等を調べるため、加水分解後の糖組成を高速液体クロマトも利用できます(セルロースは基本的にはグルコースのみから形成されていますが、木材を原料とした場合には、ヘミセルロース等が必ず一定量含まれています。木材パルプは、精製してもヘミセルロースをゼロにすることは相当に困難です)。
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8.ナノセルロースの形状評価
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF ナノセルロースの形状評価
 解説:ナノセルロース(セルロースナノファイバー/CNF)は、ミクロンサイズのパルプや木粉を原料として製造されています。機械処理のみで到達できるサイズは、幅15nm程度とされています。TEMPO酸化触媒などを用いると、最終のサイズである幅3nmのシングルセルロースナノファイバーまでナノ化することができます。しかし、ナノ解繊の途中では、様々な形状やサイズが存在しています。入手したり、作製したりしたナノセルロースを使いこなすためには、その形状はとても気になります。
 当研究グループでは、ナノセルロースの形状を顕微鏡的に直接観察する方法として、高分解能走査型電子顕微鏡(FE-SEM)や原子間力顕微鏡顕微を備えています。これら分析装置で、明確に形状評価するためには、その前処理(サンプル調製)が大切です。原子間力顕微鏡顕微鏡観察の場合、基盤にナノセルロース懸濁液をスピンコーターで塗布するなどで観察します。高分解能走査型電子顕微鏡(FE-SEM)観察で、明瞭な画像を得るためには、蒸着処理(スパッタ)により導電性コートをしますが、一般的な白金や金の蒸着は、蒸着物が粒子で付着するため、適していません。そのため、回り込みがよく、平滑なコート面が得られる、オスミウムコーターを用いています。また、ナノセルロースは、電子顕微鏡の電子線に弱いため、加速電圧は、1kV程度で観察します。当研究グループでは、低加速電圧でも鮮明な高倍率画像が得られる装置を備えています。
 参考:「技術のポイント一覧」
ナノセルロースのSEM(走査型電子顕微鏡)観察
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9.ナノセルロースの比表面積評価
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF ナノセルロースの比表面積評価
 解説:ナノセルロース(セルロースナノファイバー/CNF)の特性評価には、色々な方法がありますが、比表面積評価は、どの程度までナノ解繊されているのかの情報が得られます。電子顕微鏡観察などは、直接的に形状・形態の評価が可能ですが、全体の一部しか評価できず、平均値としての解繊度合いは分かりません。比表面積は数値として得られるため、ナノセルロース同士の比較も容易です。しかし、比表面積測定は、乾燥サンプルを必要とします。ナノセルロースは極めて凝集力が強いため、高度に凝集抑制して乾燥サンプルを調製しないと、比表面積測定結果は意味がなくなります。凝集したサンプルでは、比表面積は低くなります。乾燥方法が適切でない場合は、含水状態の本来の比表面積の10分の1以下の値しか得られません。
 当研究グループでは、t-ブタノール置換による凍結乾燥法や臨界点乾燥法(極めて微細なTEMPO触媒酸化法によるシングルセルロースナノファイバー向け)により、乾燥サンプルを調製し、比表面積計で測定しています。測定前には、専用測定容器にサンプルを充填して、専用の乾燥前処理装置で、再度,乾燥処理をします。比表面積計は2台揃えており、一度に6サンプル(3サンプル×2台)の測定も可能です。
 参考:「技術のポイント一覧」
比表面積測定によるナノセルロースの評価
ナノセルローススラリーを凍結させると凝集する。
ナノセルロースを凍結乾燥しても凝集している場合がある。
高純度ナノセルロースは水中でも凝集する場合がある。
アルコール置換によるナノセルローススラリーの凍結乾燥方法。
ナノセルロースの凝集を高度に抑制して乾燥するためには。
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10.物質(ナノセルロース等)の沈降特性評価
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF 物質(ナノセルロース等)の沈降特性評価
解説:含水したナノセルロース (セルロースナノファイバー/CNF)の多くは、クリーム状の高粘性スラリーとなっている場合が多いです。しかし、ナノセルロース濃度を0.1wt%程度以下にすると、セルロースの比重は1.5であるため、ナノ解繊度合いにより時間は異なりますが、沈降します。TEMPO触媒酸化法によるシングルセルロースナノファイバーなど、超微細なナノセルロースは、水分子との相互作用で、希釈しても沈降しない場合がほとんどです。沈降速度やパターンは、ナノセルロースの形状・形態に大きく影響されます。また、沈降のプロセスでは、大きな物質や重たい物質は、速く沈降するため、混合物の測定では、分級も同時に起こるため、分布の情報も得ることができます。ナノセルロースの場合、幅が大きいものは、速く沈降します。
 ナノセルロース以外にも、乳化物やスラリーなども、その特性により沈降や分離することがあります。製品によっては、保管中の分散安定などは重要で、様々な分散剤や界面活性剤が用いられることもありますが、沈降速度・パターンを数値として捉えると、サンプル同士の比較なども容易になります。
 当研究グループでは、サンプル管の上下方向の多点で光透過率等から濃度の経時変化を測定できる装置を備えています。この装置は、温度調整も可能(4℃〜80℃)で、一度に6サンプルの測定が可能です。
参考:「研究紹介」
沈降法によるナノセルロースの評価

参考:「技術のポイント一覧」
ナノ化率(完全にナノ化してないセルロース繊維の指標/一部がナノ化したセルロース繊維の指標)
沈降法によるナノセルロースの形状・形態評価
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11.ナノセルロースの樹脂複合化特性評価
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF ナノセルロースの樹脂複合化特性評価
 解説:ナノセルロース(セルロースナノファイバー/CNF)を用いた樹脂補強は、最も注目されているテーマです。一般的なナノセルロースは大量の水を含んでいます。このナノセルロースを樹脂と複合化する方法として、様々な技術が提案されています。含水状態のナノセルロースをポリプロピレン等の樹脂に溶融混練した場合、樹脂の溶融温度が200℃近いため、急激に水が蒸発して、ナノセルロースは凝集し、混練操作を続けても、再分散することは、ほぼ不可能です。
 当研究グループでは、含水状態のナノセルロースのポリプロピレン複合化技術として、「マスターバッチ法」や「固相せん断法」を開発しています。
○「マスターバッチ法」では、融点が100℃以下の特殊樹脂(物性改善用樹脂等)を用いて、水が急激に蒸発しない温度で、水と特殊樹脂を置換する混練処理をします。ナノセルロースは、遠心分離等で濃縮して利用します。こうして得られたマスターバッチ(ナノセルロース濃度:〜50wt%)は、最終成形体で必要とする目的濃度(5wt%程度)になるようにポリプロピレンを加えて溶融混練して、最終的な複合材料を作製します。複合材料は、射出成形等で成形できます。
○「固相せん断法」では、遠心分離等で濃縮した含水ナノセルロースを、粉末状のポリプロピレンに適切なせん断力を加えて混合(ナノセルロース濃度:〜10wt%)します。ただ、この場合は、樹脂が溶融しない温度で実行します。水とポリプロピレン粉末を置換するイメージです。混合では、せん断力の印加度合いが重要であるため、常に混練装置のトルクをモニタリングします。固相せん断処理が終了した後、水分が残っている場合は、オーブン等で乾燥処理します。その後、ポリプロピレンが溶融する温度で混練して、複合材料を作製します。複合材料は、射出成形できます。
 参考:「研究紹介」
固相せん断法によるセルロースナノファイバーの樹脂複合化技術
リグノセルロースナノファイバー樹脂複合材料を用いた試作品
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12.ナノセルロースの天然ゴム複合化特性評価
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF ナノセルロースの天然ゴム複合化特性評価
 解説:ナノセルロース(セルロースナノファイバー/CNF)を補強材として利用する分野としてゴムの補強は、樹脂よりも、効果的に結果が得られます。ゴムには、天然ゴムと合成ゴムがありますが、天然ゴムでは、水分散液(ラテックス)が流通しています。この天然ゴムラテックスに含水ナノセルロースを複合化するプロセスはポリプロピレン等の樹脂よりは、ハードルが下がります。しかし、ナノセルロースとエマルジョンを混合する場合に、プロペラ式撹拌機などで強いせん断力を加えると、ナノセルロースがからまってダマになったり、ゴム成分が凝集したりします。そのため、均一に混合するためには工夫が必要となる場合が、多々あります。
 当研究グループでは、含水ナノセルロースの天然ゴムラテックス複合化方法として、自転・公転型ミキサーを用いた方法を採用しています。この方法では、脱気も同時に行うことができます。当研究グループでの条件では、混合時間は15分以下です。自転・公転型ミキサーの多くは、回転数や時間をプログラム設定できるため、原料に応じて、段階的に回転数や時間を調整することができます。また、少量のサンプルでの評価も実施可能です(一度に、キロ単位の混合はできません)。
 自転・公転型ミキサーで混合したマスターバッチサンプルは、バット等に薄く広げて、オーブン乾燥します。乾燥が足りない場合は、減圧乾燥もします。乾燥マスターバッチは、小型のバンバリー型混練機を用いて、各種添加剤を加えて、混練します。最後に、熱プレスを用いて、加硫と成形を行います。成形シートは、ダンベル試験片を打ち抜き、強度試験等を実施します。
 ナノセルロースのゴム補強効果は、従来のカーボンブラック等のフィラーと比較して、少ない量で大きく補強することができます。
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13.樹脂・ゴム材料からの超薄切片の作製
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF 樹脂・ゴム材料からの超薄切片の作製
 解説:樹脂・ゴム系の材料では、様々なポリマーとアロイ化したり、添加剤やフィラーを複合化する場合が、多くあります。それらの成分の分散状態やアロイの海島構造を調べたりすることが重要となる場面は多くあります。そのような場合には、電子顕微鏡や原子間力顕微鏡顕で観察することが多く行われていますが、サンプルは極めて平滑でとても薄い状態にする必要があります。このような「超薄切片」の作製では、ウルトラミクロトームが用いられます。
 当研究グループでは、ゴム材料のように柔らかいサンプルにおいても、きれいな「超薄切片」が作製可能なように、液体窒素で冷却できる、クライオ付きウルトラミクロトームを備えています。「超薄切片」の作製では、ある程度の操作の習熟が必要です。
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14.含水サンプルを凝集・収縮抑制して乾燥処理
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF 含水サンプルを凝集・収縮抑制して乾燥処理
 解説:ナノセルロース(セルロースナノファイバー/CNF)や生物サンプルなどの含水サンプルを、電子顕微鏡等で観察しようとした場合、電子顕微鏡のサンプル室は真空状態であり、サンプルの事前乾燥を必要とします。しかし、含水状態のサンプルをオーブン乾燥等すると、凝集したり、変形したりします。そのため、含水状態の形状を維持したままの乾燥処理が重要となります。
 当研究グループでは、サンプル中の水分をt-ブタノール置換して凍結乾燥する方法や超臨界二酸化炭素を用いる臨界点乾燥法(サンプル中の水は事前にエタノールに置換する必要があります)でサンプルの乾燥処理をしています。
 これらの乾燥方法では、t-ブタノールやエタノール置換を完全にすることが重要です。置換が不均一で、水分過多の部分があると、その部分は凝集してしまいます。これらの方法を用いると、微生物なども変形させずに乾燥することができ、電子顕微鏡で特徴的な形態が観察できます。
 参考:「技術のポイント一覧」
ナノセルローススラリーを凍結させると凝集する。
ナノセルロースを凍結乾燥しても凝集している場合がある。
高純度ナノセルロースは水中でも凝集する場合がある。
アルコール置換によるナノセルローススラリーの凍結乾燥方法。
ナノセルロースの凝集を高度に抑制して乾燥するためには。
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15.複合材料のナノ領域の硬さ・粘弾性マッピング
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF 複合材料のナノ領域の硬さ・粘弾性マッピング
 解説:ナノセルロース(セルロースナノファイバー/CNF)等を樹脂やゴムに複合化し、その分散状態や界面状態を調べたい場合、ウルトラミクロトーム等で切片を作製して、顕微鏡的に評価する場合が、多くあります。装置としては、走査型電子顕微鏡ではなく、原子間力顕微鏡顕微鏡の方が適している場合が多くあります。走査型電子顕微鏡は、元素分析機能(EDX等)がない場合、ウルトラミクロトームで作製したような平滑な凸凹がない面は、ボイド等の観察以外では、特に有用な情報が得られない場合が多いです。
 当研究グループでは、ナノセルロースの分散状態等を評価する場合、原子間力顕微鏡顕微鏡ょーを用いています。原子間力顕微鏡顕微鏡は、形状の情報のみならず、測定モードを変えることで、硬い・柔らかい等を可視化させることができます。複合材料では、マトリックスとフィラーの硬さや粘弾性が異なる場合が多く、それらを評価軸として観察すると、フィラーの分散度合いや、フィラーとマトリックス界面の状態変化、物性の異なる部分(ドメイン)の分布なども評価することができます。ナノセルロース複合化ゴム系材料では、両者の相互作用が強い「パウンドラバー」の情報も得ることができます
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16.材料・素材の混合・架橋度合いの評価
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF 材料・素材の混合・架橋度合いの評価
 解説:フィラーを複合化した材料やゴムのように架橋した材料では、分散度合いや架橋度合いにより、材料の分子運動性が部分的あるいは全体的に変化します。分子運動性の評価では、核磁気共鳴法(NMR)を用いた緩和時間評価が良く行われています。この方法は、分子運動性が異なる部分が存在していれば、それぞれの部分を分けて評価することができます。この方法は、物質の分散や混合度合いの評価でも使われています。
 当研究グループでは、超伝導型マグネットのNMRと永久磁石型のNMRを備えています。超伝導型NMRは高分解能で様々な測定が可能ですが、サンプル形状への依存性や温度可変測定に注意が必要な場合も多々あります。そこで、架橋度合い等の測定では、永久磁石型NMRであるパルスNMRを用いる測定も行っています。パルスNMRは、基本的に緩和時間測定のみ(観測対象の核種は水素原子のみ)が可能で、スペクトルを取得することはできません。しかし、様々な状態のサンプルを試料管に入れて、装置にセットするだけで、測定が開始できます。温度可変の自由度も高く、超伝導型NMRでは困難な条件での測定も、比較的容易です。得られる結果は、サンプルの各成分・ドメインの運動性に起因する緩和時間の曲線が重なって1つの曲線として得られます。そのため、各成分・ドメインの運動性を数学的に分離して評価します。2成分までの分離は自動で行われ、各成分の緩和時間とその割合の情報が得られます。
 緩和時間は、短い場合は、運動性が低く、長い場合は、運動性は高いことを示します。ゴムの架橋評価などでは、架橋度が進んだドメインは、緩和時間が短くなり、運動性が低下していることが分かります。
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17.難溶性物質の溶液NMRによる精密分子構造解析
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF 難溶性物質の溶液NMRによる精密分子構造解析
 解説:木粉,セルロース(ナノセルロース)などの有機物は、本質的に溶解できる溶媒が極めて限定されています。また、合成ポリマーにも、溶解できないものが多くあります。これらの有機物の分子構造を精密に調べようとした場合、適切な溶媒がないため、高分解能のスペクトルを取得できる溶液核磁気共鳴装置(NMR)を用いることでができません。そのため、分解能が低下しますが、固体NMRを用いる場合が多いです。しかし、ピークは溶液NMRよりは、はるかにブロードとなり、精密解析が困難になる場合があります。
 当研究グループでは、溶媒に溶解できない有機物であっても、粉砕・微細化・非晶質化等の活性化前処理と適切に膨潤できる溶媒選択(溶解ではありません)、さらに比較的新しいNMR測定パルスのシーケンス(HSQC-AD等)を組み合わせることで、従来法では不可能であった、精密二次元NMRスペクトルを取得できる「改良型Gel-State NMR法」を開発しています。この方法を活用すると、溶媒に溶けないセルロース誘導体の置換位置まで帰属させた解析もできます。また、溶解度が低く、炭素原子(カーボン)スペクトルが取得できない場合でも、二次元スペクトルの水素原子(プロトン)との交差位置から炭素原子のケミカルシフトを調べることもできます。
参考:「研究紹介」
溶媒不溶のセルロース系サンプルの高分解能二次元NMR解析(HSQC法)  
ナノセルロースとキナクリドン(赤色顔料)のCH-π(パイ)相互作用
HSQC法による木材プラスチック複合材料における相容化剤の反応解析・エステル結合の実証
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18.水溶液中の物質の吸脱着をリアルタイム評価
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF 水溶液中の物質の吸脱着をリアルタイム評価
 解説:物質Aは物質Bに吸着するのか、しないのかなどが課題になることは多くあります。吸着が起こるメカニズムは多様ですが、吸着力がどの程度強いのかを定量的に調べることができれば、材料設計に役立ちます。また、吸着した物質が、そこで反応を起こし、分解なども起きるかもしれません。反応が終了すると、物質は脱離していくこともあるかもしれん。これら吸着やそこでの反応、脱着では、必ず重量の変化が起こっています。
 当研究グループでは、水晶振動子マイクロバランス(QCM)法を活用した、物質の相互作用を解析する技術を構築しています。この技術開発の切っ掛けは、バイオエタノールの効率的生産のため、セルラーゼ等の酵素によるセルロースの糖化(加水分解)メカニズムを詳細に解析する必要性が出たことからです。
 QCM法では、水晶振動子センサーの表面に、調べたい物質をコートする必要があります。当研究グループでは、木質組織をナノセルロースにして、酵素と接する表面積を増大させて、酵素糖化率を向上させる技術を開発しています。セルロースを特殊溶剤で溶解して、水晶振動子センサーの表面にコートすることはできますが、溶解プロセスで、セルロースの分子配列は変化してしまい、天然とは異なる構造になります(セロハンはセルロースを溶解後に再生したフィルムですが、紙などのシートとは結晶構造が異なっています)。そこで、ナノセルロースのサイズを調整し、水晶振動子センサーの表面に均一コートする技術を開発しました。そのセンサーをフローセルに設置し、酵素液を流すと、基質特異性に応じて、ナノセルロースに酵素が吸着し、さらに糖化が進行することによるセンサーの重量変化の過程をリアルタイムで解析することができました。
 QCM法解析では、水晶振動子センサーの表面に物質が均一コートできれば、様々な物質同士の相互作用を解析できるようになります。例えは、特定の物質による汚れ防止コートをした材料が、その効果をどの程度発揮しているかを、リアルタイムで解析できます。水晶振動子センサー表面に、スピンコーター等でポリマーを均一コートし、サイズ調整したナノセルロース分散液を流すと、ナノセルロースとポリマーの相互作用解析をすることも可能となります。、
参考:「研究紹介」
水晶振動子マイクロバランス(QCM)法によるナノセルロース表面特性解析技術
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19.サンプルを水に浸漬せずに密度測定
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF サンプルを水に浸漬せずに密度測定
 解説:様々な材料開発では、密度(比重)の評価が大切になる場合があります。一般的な密度の測定方法は、「アルキメデスの原理」に従って、水に浸漬した物質の排除した水の重量と、水に浸漬していない場合の重量から算出します。そのため、水に溶解してしまう物質(材料・素材)や水に触れさせたくない物質(材料・素材)では、密度測定が困難になります。
 当研究グループでは、水の代わりにヘリウムガスを用いる、密度計を備えています。この方法では、測定対象物の制限がほとんどなくなり、固体・粉体・液体・ペーストなどの密度も求めることができます。複合材料などでは、製造に用いた素材の密度と割合が分かっていれば、理論密度が算出できますが、その複合材料の密度を測定した場合、理論密度よりも軽い場合は、内部に複合化が上手くいかず、ボイド(空隙)が存在していることが推測できます。
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20.固体NMRを用いた材料の分子構造解析
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF 固体NMRを用いた材料の分子構造解析
 解説:核磁気共鳴(NMR)は、物質の構造を精密に調べることができる強力なツールです。NMRには、溶液NMRと固体NMRがありますが、溶解できない物質や膨潤できない物質(外部連携が可能な技術「難溶性物質の溶液NMRによる精密分子構造解析」参照)、溶媒等に触れさせることができない物質では、固体NMR測定が行われます。しかし、固体NMR装置は、溶液NMRと比較して普及率は高くありません。
 当研究グループでは、溶液と固体の切り替えですが、様々な固体NMRスペクトルが取得できるユニットを備えた、400MHzのNMR装置を設置しています。固体用の試料管は、Φ7mm、4mm、1.6mmがあり、パルスアンプも1kWの出力があります。測定できる核種も、有機物で一般的なプロトン(水素原子)、カーボン(炭素原子)以外に、無機物として、リン、アルミニウム、ケイ素など、様々な物質が測定できます。有機物と無機物の複合材料も、そのまま、それぞの核種で測定できます。NMRでは、分子構造以外に分子運動性も測定でき、複合化の状態やナノレベルでの混合状態の評価も可能です。
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21.樹脂等成形品からの解析用サンプルの切り出し
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF 樹脂等成形品からの解析用サンプルの切り出し
 解説:樹脂やゴム材料・製品は様々な方法で作製されています。成形時の温度や金型の条件により、表面の成分が改質・変質する場合があります。また、成分の異なる材料を積層して製造されるシートや、材料同士を接着剤で貼り合わせる材料もあります。あるいは、溶融した樹脂や凝固性樹脂に部品を埋め込んだ製品もあります。さらに、原料や製法を変えると、微細な異物が侵入したり、今までにない変化がでる場合もあります。表面状態や積層構造、異物などを走査型電子顕微鏡などで調べようとした場合、本来の構造を壊すことなく、目的の部分のみを小さい評価用サンプルとして、切り出す必要がありま。
 当研究グループでは、樹脂成形品や発泡体、積層体の断面や異物の切り出しによる高分解能走査型電子顕微鏡観察を行っています。比較的大きなサンプル、脆いサンプルなど、最初に適切なサイズに切り出す方法として、ダイヤモンドをコーティングした細いワイヤーで切断します。この装置は、ダイヤモンドワイヤーソウと呼ばれます。サンプルにもよりますが、5μm程度以下の平滑さでの切り出し、湿式と乾式の両方に対応、ワイヤー位置をマイクロスコープで確認しながら切断等ができる装置を準備しています。この装置は、樹脂以外にも、金属や鉱物、金属部品が封入された部品の切断なども行うことができます。ダイヤモンドワイヤーソウで切り出したサンプルは、さらに必要に応じて、滑走式ミクロトームやクライオウルトラミクロトームで切片を作成し、原子間力顕微鏡などでの高度な評価も実施します。
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22.様々なサンプルの分光分析(赤外・ラマン)
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF 様々なサンプルの分光分析(赤外・ラマン)
 解説:樹脂やゴム成形品などは、原料や製造条件、製造後の劣化等により表面成分の分子構造が変化する場合があります。その分子構造を評価する方法として、赤外分光法は、比較的装置が低価格でかつ感度も良い分析法です。薄いシート状のサンプルであれば、ホルダーにセットして、比較的簡単に測定できますが、立体物等では、粉末化しKBr(臭化カリウム)と均一に混合して、専用の器具で赤外分光分析用のペレットを作成する必要があり、手間がかかります。また、液体やペースト状のサンプルの測定では、媒体の影響を低減させるため、特殊な液体セルに封入するなどの操作必要です。これらサンプル調製は、適切に行わないと、意味あるデータが取得できなくなります。
 当研究グループでは、赤外分光分析装置(近赤外、中赤外)、赤外-ラマン分光分析装置(近赤外、中赤外、ラマン)を備えています。赤外分光分析では、ダイヤモンドATRユニットが付属しており、この方法では、測定部のダイヤモンドに対象サンプルを接触させるだけで、スペクトルが取得できます。サンプルは、固体、粉体、液体のいずれにも対応できます(屈折率等の問題から測定できないサンプルもあります)。また、ラマン分光法では、レーザー光線をサンプルに照射し、そこから発せられる微弱なラマン散乱光を用いることで、赤外分光分析と類似の評価ができます。ラマン分光法は、赤外分光法と比較して、水やガラスなどの影響が少ないため、含水サンプルやガラスサンプル管ごとの測定も可能です。ただし、赤外分光法に比べて、感度は低く、温度上昇や蛍光物質の影響は強く出ます。しかし、赤外分光法で調べることができない構造でもラマン分光法で調べられる構造もあります(その逆もあります)。そのため、両方のスペクトルを所得して比較・解析することで、より深い結果を得ることができます。
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23.ゴム材料の利用特性評価(強度以外)
セルロース材料グループ ナノセルロース セルロースナノファイバー CNF ゴム材料の利用特性評価(強度以外)
 解説:ゴム材料は、様々なゴム素材とのブレンドやフィラーの種類や添加量を制御して、多様な用途の製品が製造されています。それらゴム材料の物性として、引っ張り強度などは重要な項目です。しかし、製品としての利用性では、耐摩耗性やグリップ性なども重要な項目となります。
 当研究グループでは、JIS規格や国際標準法に準拠した条件でゴム材料の特性評価が行える装置を準備しています。DIN摩耗試験装置では、JIS K 6264-2(A法、B法)、ISO4649、DIN53516に準拠した測定ができます。また、DIN摩耗試験に用いる試験片を作成するための、専用金型や専用の切り抜き機も用意しています。また、摩擦特性評価装置では、専用の圧子を一定荷重でサンプルシートに当て、サンプルを平行移動させることで、静摩擦および動摩擦を評価できます。さらに、繰り返しによる、摩擦特性の変化も評価可能です。樹脂シートについては、JIS K7125に準拠した摩擦評価もアタッチメント交換で対応可能です(現在は付属していません)。ゴム材料の強度は、耐摩耗性や摩擦特性、硬度などとも相関があります。これら物性を評価して、総合的に材料の特性を明らかにすることが大切です。
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