当研究グループの研究開発の過程で得られた技術のポイントを紹介します。
ナノセルロースのSEM(走査型電子顕微鏡)観察。
- 内容
- ナノセルロースを利用するに当たっては,どのような形状・形態のナノセルロースなのか知る必要があります。一般的には,SEM(走査型電子顕微鏡)を用いた観察が行われていますが,この場合,数nmから数十nmの超微細なナノセルロースを高分解能で観察するためには,FE-SEM(電界放出型走査電子顕微鏡)が必要となります。電子ビームの加速電圧は,ナノセルロースのダメージを防ぐために,数kVと低加速で行う場合が多いです。我々の:研究グループでは1~1.5kVで行っています。低加速での高分解能観察は,機種によって得手不得手もあるとの話もよく聞きます。観察用のナノセルロース試料は,必要に応じてアルコール置換で乾燥しています。
また,SEM観察では,試料に導電性を持たせるためにスパッタリング(蒸着)を行いますが,従来からある白金や金の蒸着では,観察時に試料が部分的に帯電して,画像が乱れることもよくあります。特に,フワッと乾燥させた試料では顕著です。これは,白金等が試料の上部のみについて,内側や下方のナノセルロース表面に十分に蒸着されていないためと考えられます。白金等の蒸着時間を延長すると白金は粒状に試料表面に付くこともあるため,元々の試料の構造なのか白金の粒なのか区別が付かなくなります。そのため我々のところでは,フワッとしたナノセルロース試料でも,その内部まで回り込みの良い,オスミウム蒸着を定法としています。
◎当WebページのFE-SEM写真は,上記の方法で撮影しています。
- 装置例
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当研究グループで使用している装置 |
FE-SEM
(電界放出型走査電子顕微鏡) |
(株)日立ハイテクノロジー
S-4800 |
オスミウム蒸着装置 |
メイワフォーシス(株)
Neoc オスミウムコーター |
- 注意
- オスミウム蒸着に用いる四酸化オスミウム(OsO4)は毒性があります。そのため,我々の研究グループでは専用のドラフト内に蒸着装置を設置し,真空ポンプも専用のオイルとミストトラップ等を使って,安全には十分に配慮しています。
- サンプル観察例
- 精製木材パルプ由来ナノセルロース(10万倍)
- 装置・設備へのリンク
- 「形態・形状観察」
・電界放出形走査電子顕微鏡 / (株)日立ハイテク S-4800
・オスミウムコーター / メイワフォーシス(株) Neoc-Pro
追記事項
セルロース材料グループ