当研究グループで得られた知見や開発した技術の例をご紹介します。
HSQC法による木材プラスチック複合材料における相容化剤の反応解析
〜エステル結合の実証〜
- 内容
- 「技術のポイント」の「ナノセルロースとWPC(木材プラスチック複合材料)」でも説明していますが、木材(主に木粉)とプラスチック(主にポリプロピレン)を複合化した材料が、30年以上前から市場に出されています。壁材やウォーターフロントの遊歩道等の床材などでも,よく利用されていますが、見た目は木材のようなため、気が付かない場合も多いです。「技術のポイント」でも記載しているように、物性を向上させるためには、相容化剤(主にマレイン酸変性(グラフト化)ポリプロピレン/MAPP)が必須です。このマレイン酸変性ポリプロピレンのマレイン酸基が、セルロースの水酸基とエステル結合を形成することで、物性が向上するとされてきましたが、その結合の量は極わずかで、分光学的にその存在を実証した例はほとんどありません。
そこで、モデル系としてセルロース粉末とマレイン酸変性ポリプロピレンを複合化し、未反応のマレイン酸変性ポリプロピレンは溶媒で洗い流し、セルロースは酵素で分解するとこで、結合部分のみを濃縮して、我々が構築した溶液NMR・HSQC法を用いて解析しました。その結果,エステル結合が存在していることをスペクトルとして得ることができ、分光学的に実証することができました。 - 参考文献等
- Saori Niwa, Yasuko Saito, Mizuki Ito, Shinji Ogoe, Hirokazu Ito, Yuta Sunaga,
Kenji Aoki, Takashi Endo, Yoshikuni Teramoto, Polymer, 125, 161-171 (2017),
“Direct spectroscopic detection of binding formation by kneading of biomass
filler and acid-modified resin”."
- 説明図
追記事項
セルロース材料グループ