脳機能調節因子研究グループ(つくばセンター)
◇研究紹介◇
私達のグループは、高次機能を司る脳神経において、その機能発現に重要な役割を担っているタンパク質やシグナル分子、生理活性ペプチドを同定・解析します。さらに、それらのタンパク質を利用して、脳神経疾患の治療のための創薬に貢献することを目指しています。この目標達成に向けて、私達は以下のテーマに基づいて研究を進めています。
1.脳神経系におけるエピジェネティクス制御因子の機能解析とその創薬への応用
本研究は、DNAメチル化やクロマチン構造変換といったエピゲノム(エピジェネティクス)制御機構が、脳の発生や高次機能にどのような役割を果たしているのかを明らかにすることを目指しています。更に、そこから得られた知見を基に、疾患モデル動物の作製など脳神経疾患の治療に貢献する材料の開発を行います。
図1. エピジェネティクス制御因子の機能解析と神経疾患への応用
2.生理活性ペプチドの同定と指向的進化
毒産生生物の生理活性ペプチドは加速進化し多様な構造を有し、神経細胞の機能を調節する能力を持つ分子があります。これまで私達は、ヘビ、アリといった毒産生生物の毒液中の生理活性ペプチドを研究対象とし、これらのペプチドのイオンチャネルブロッカー、酵素阻害剤、抗菌物質としての機能を明らかにしてきました。最近、指向的分子進化の技術を使って、これらのペプチドに新たな機能を付与することにも成功しました。今後もこのような生理活性ペプチドを探索・解析し、医療応用を目指します
図2.生理活性ペプチドの同定と指向的進化
3. 神経分化制御因子の探索
本研究は、神経分化の仕組みを明らかにするために、ヒトに近縁で体のつくりが単純なホヤを用いて行います。外胚葉の運命が神経と表皮に決まる仕組み、神経が中枢神経系と末梢神経系に分化する仕組みの解明に取り組みます。神経分化制御因子を同定し、神経分化に関わる遺伝子ネットワークの解明を目指します
図3. 神経分化制御因子の探索
◇業績リスト◇
|2024年|2023年|2022年|2021年|2020年|2019年以前|
◇関連トピックス◇
- 2024/12/16 プレスリリース「腸内菌が脳に果たす新たな役割を発見」
◇技術シーズ紹介◇
◇メンバー◇
氏名 | 役職 | 研究テーマ | 研究内容 |
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波平 昌一 | 研究グループ長 |
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ゲノムDNAからの情報の読み取りを後天的に制御するエピジェネティクスは、脳神経の発達に重要な役割を担っています。私は、エピジェネティクス制御因子に焦点を当て、疾患モデル細胞やモデル動物を作製することで、神経疾患治療に資する次世代型研究材料の開発と、脳機能を改善する機能性物質の探索と評価を行います。 |
稲垣 英利 | 主任研究員 |
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毒産生生物の生理活性ペプチドは加速進化し多様な構造と機能を持つ分子です。これまで私は、ヘビ、アリといった毒産生生物の毒液中の生理活性ペプチドを研究対象とし、その機能を明らかにしてきました。最近、指向的分子進化の技術を使って、これらのペプチドに新たな機能を付与することにも取り組んでいます。 |
大塚 幸雄 | 主任研究員 |
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体の作りが単純な脊索動物ホヤを使って、神経分化誘導における遺伝子ネットワークの全貌解明を目指しています。また、ゲノム情報を利用した生理活性物質の探索にも取り組んでいます。 |
林 崇 | 主任研究員 |
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ヒトの脳機能は、数千億個の神経細胞で維持されています。神経細胞同士の結合部をシナプスといい、脳内総数が数百兆円に及ぶシナプスの機能異常が、心の変調ととしての神経疾患を誘発します。主要な興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体を中心に、脳の作動原理と分子病態に関する研究を進めています。 |
室冨 和俊 | 主任研究員 |
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腸内細菌叢は宿主の疾患発症に関わることが知られています。我々は疾患モデルや無菌マウスを用いて、様々な腸内細菌の宿主に及ぼす影響を評価し、疾患の発症や予防に関わる微生物の特定を目指しています。さらに、腸内細菌による脳機能への影響を評価し、神経疾患の予防に資する分子の開発に貢献したいと考えています。 |