第307回 10月6日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams) |
茨城県北部地域における地殻地震活動域直下の地震波反射面
A crustal reflector deep beneath the seismically active area beneath north Ibaraki area
講演者:椎名 高裕(地震テクトニクス研究グループ)
茨城県北部地域および福島県浜通り地域で活発な地殻内地震活動には流体が密接に関わると考えられている.流体の存在はしばしばS波反射波などとして地震波形記録に記録される.本発表では,特に茨城県北部地域で観測されるS波反射波に注目し,その励起源となる地殻内反射面の推定を通して,地殻深部に存在する流体の分布を調べた.また,地震活動に対する空間分布から,地殻流体の状態や地震活動に対する役割を検討する. |
第306回 9月29日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams) |
宮古島沿岸および沿岸海域の断層変位地形
Fault displacement topographies in the coastal area of Miyako island
講演者:白濱 吉起(活断層評価研究グループ)
宮古島では,北西-南東走向の明瞭な正断層性の断層崖が複数条認められる.これらは宮古島断層帯として主要活断層帯に選定されているが,その活動性はよくわかっていない.当グループでは,文部科学省委託事業の一環として,本断層帯の活動性解明を目的として宮古島断層帯の調査を昨年度から実施している.昨年度は周辺の浅海底高解像度地形データを入手し,沿岸部の海底地形調査を実施した.また,それを踏まえ,今年度は沿岸部の地形地質調査を行っている.結果,沿岸海域のサンゴ礁を変位させる多数の正断層や島内から沿岸海域に延びる正断層,沿岸部の隆起ベンチが認められた.本発表では,途中成果と今後の調査計画について報告する. |
第305回 9月22日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams) |
トルコ・東アナトリア断層系における大地震の空白域と2023年地震
Seismic gaps along the East Anatolian fault system and Mw 7.8 and 7.5 earthquakes in 2023
講演者:近藤 久雄(活断層評価研究グループ)
東アナトリア断層系を震源として,2023年2月にMw 7.8及びMw 7.5の2つの大地震が生じ,トルコ・シリア国境付近で死者5.7万人以上の甚大な被害が生じた.MTAとの国際共同研究の一環として,Mw 7.8震源断層のほぼ中央付近では2014年に予察的なトレンチ調査を実施していた.本報告では,まず東アナトリア断層系の概略と2014年時点での研究課題を紹介する.次に,2023年地震直後の緊急対応として,地震に伴う地表地震断層と変位量分布を紹介する.最後に,2023年地震発生前のデータからどのような長期評価が可能であったか,今後どのようなデータと評価手法の検証・改良が必要か等について議論する. |
第304回 9月8日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams) |
北海道東部において見られる17世紀以降の巨大津波の痕跡
Geological evidence of tsunami inundation in post-17th century along eastern coast of Hokkaido
講演者:澤井 祐紀(海溝型地震履歴研究グループ)
千島海溝南部に面した北海道東部では,十勝沖,根室沖の領域において100年間隔でM8クラスの巨大地震が繰り返してきたと考えられている.しかしながら,19世紀より前の地震の記録は少ないため,その履歴はよく分かっていない.演者らは,これまでに明らかになっていなかった17世紀以降の巨大津波の痕跡を調べてきた.今回はこれまでの研究経過を報告する. |
第303回 8月25日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams) |
布田川断層帯宇土半島北岸区間における高分解能反射法音波探査
Detailed and precise profiles of the offshore part of the Futagawa Fault Zone (Uto-hanto-hokugan section) revealed by UHR multi-channel seismic reflection survey.
講演者:大上 隆史(地震災害予測研究グループ)
布田川断層帯は全長64 km以上の活断層帯であり,布田川区間・宇土区間・宇土半島北岸区間によって構成されている.これらのうち,宇土半島北岸区間は海域(島原湾南部)に分布する全長27 km以上の海底活断層であるが,この断層は主として重力異常の急変帯の分布にもとづいて推定されたものであり,活断層評価に必要な資料がほとんど存在しない.産総研では,文科省委託「活断層評価の高度化・効率化のための調査手法の検証」の一環として,宇土半島北岸区間の正確な位置,連続性,過去の活動に関する資料を取得するための調査研究を実施している.2022年度には島原湾南部において高分解能反射法音波探査を実施し,宇土半島北岸区間の詳細な位置・形状を初めて明らかにした. |
第302回 7月28日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams) |
変形におけるナノキャビティによるキロメートルスケールの延性破壊
Kilometre-scale ductile fractures instigated by deformation-induced nanocavities
講演者:Yeo Thomas(地震テクトニクス研究グループ)
Abstract: Tectonic tremors occur below the base of the seismogenic zone (> 10 km) of continental crustal faults (e.g., San Andreas Fault). However, there is still no consensus about how this phenomenon relates to rock deformation and geological structures. To understand this, we examined the exhumed Ryoke mylonites along the Median Tectonic Line (MTL) of SW Japan. Our findings provide evidence for the development of phenomena known as ductile fractures in the mylonites. Furthermore, we have proven that zones with a high density of ductile fractures are continuous along the strike of the MTL for approximately 1 km and has a minimum thickness of 100 m. This study implies a high temperature fracturing mechanism in ductilely deformed rocks, which has the potential to generate tremor signals. |
第301回 7月21日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams) |
和歌山県那智勝浦町の津波堆積物調査報告(予察)
Preliminary report of the tsunami deposits survey in eastern Wakayama
講演者:松本 弾(海溝型地震履歴研究グループ)
南海トラフで発生する津波の履歴を解明するために,和歌山県東部で津波堆積物を目的とした掘削調査を実施した.調査では那智勝浦町の沿岸低地においてジオスライサーを用いて13地点で深度約2mまでの試料採取を行ったほか,その近傍の池ではハンドコアラーによる表層地質層序の確認を行った.その結果,この地域に厚い海成砂や,泥炭と互層をなす薄い砂層が面的に広がっていることが確認できた.各種分析は未着手であり,これらの砂層が津波堆積物である可能性はまだ不明であるが,現地調査で観察できたことについて予察的に報告する. |
第300回 7月14日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams) |
歪・傾斜・GNSSを統合した短期的SSE滑り時空間分布推定手法の開発
Developing the inversion method of spatio-temporal slip distributions of short-term deep SSEs in the Nankai Trough
講演者:矢部 優(地震地下水研究グループ)
南海トラフでは深部スロースリップが繰り返し発生しており,地震地下水RGではそのモニタリングを実施している.
これまでのモニタリングでは,矩形1枚断層を用いたモデル化を行なってきたが,より適切な評価のためには滑りの時空間分布を推定する必要がある.
本発表では,歪・傾斜・GNSSの3種類のデータを統合して解析する手法の開発状況について発表する. |
第299回 7月7日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams) |
花粉化石の放射性炭素年代測定手法の開発と本栖湖における適用
Establishment of Highly Accurate Age Model Using Radiocarbon Dating of Fossil Pollen Automatically Extracted from Lake Motosu Sediments
講演者:太田 耕輔(地震災害予測研究グループ)
放射性炭素(14C)年代測定は過去5万年間の年代測定に有用なツールである.しかし,バルク堆積物は見かけ上古い14C年代を示すことが多い.信頼性の高い試料として葉や花粉の化石が挙げられるが,葉は分解されやすい.花粉化石は堆積物中に連続的に残存するが,花粉化石を用いて14C年代測定を行う場合,花粉数十万個が必要とされる.
そこで,本研究ではフローサイトメトリーを本栖湖の堆積物に適用することで花粉化石の14C年代測定手法を開発した.葉の年代値とは誤差の範囲で一致し,高精度な年代モデルを構築した.本研究の手法を他の地域でも適用することで,堆積中に記録されるイベントの年代制約の高精度化が期待される. |
第298回 6月30日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams) |
時空間ハフ変換による震源マイグレーションの抽出: 能登半島北東部の群発地震への適用
Extraction of hypocenter migrations by a space-time Hough transform: Application to earthquake swarm beneath the NE Noto Peninsula, Japan
講演者:寒河江 皓大(地震テクトニクス研究グループ)
震源マイグレーションは, 群発地震やスロー地震に伴って観測されている. いずれの場合も震源マイグレーションの前線部が拡散的に時空間発展することが観測され, 間隙流体圧の拡散や応力の拡散で説明される. そのため, 震源マイグレーションを詳細に調べることは地震活動の駆動要因を理解する手がかりになる. 本研究では, スロー地震の震源マイグレーションを客観的に抽出するために開発した手法を能登半島で継続している群発地震活動に適用し, その時空間的特徴を調べたので報告する. 特に,2020年末から群発地震活動が活発化した領域で, 特徴的な構造に沿って高速に上昇する震源マイグレーションが抽出されたのでその駆動要因を議論する. |
第297回 6月23日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams) |
岩手県侍浜の海成段丘における表面照射年代測定に基づく離水年代
Surface exposure dating on marine terraces at Samuraihama along the Sanriku coast in Iwate prefecture
講演者:レゲット 佳(活断層評価研究グループ)
東北地方太平洋岸における地殻変動は,沈み込みによるひずみの蓄積と超巨大地震を伴うようなひずみ開放イベントの繰り返しにより引き起こされていると考えられている.三陸沿岸には海成段丘が広く分布することが知られているが,これらは測地学的な過去100年間の観測結果とは異なり,長期的な隆起を示唆する地形である.三陸沿岸では海岸線に沿って南下するにつれ,堆積層の層厚の減少が認められ,三陸における高精度な地殻変動履歴復元の障害の一つとなっていた.そのため本研究では,堆積物に依存しない表面照射年代測定法を低バックグラウンドのキャリアーを用いたブランク試料と長時間のAMS測定によって,Be同位体分析を試みた.測定の結果,試料の10Be/9Be (×10-12)が低位面と高位面で有意に異なり,高位面で高い蓄積量が確認され,三陸沿岸での表面照射年代測定の可能性を見出すことができた. |
第296回 6月16日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams) |
能登半島北東部において長期継続する群発地震
Long-living earthquake swarm at the NE of Noto Peninsula, central Japan
講演者:雨澤 勇太(地震テクトニクス研究グループ)
A severe earthquake swarm struck the tip of the Noto peninsula, Japan. Eight M >= 5.0 earthquakes occurred (largest M6.5), and the sequence has continued more than 5 years. We investigated the spatiotemporal characteristics of the swarm using relocated hypocenters to elucidate the factors causing this long-duration. The swarm consists of four seismic clusters—northern, northeastern, western, and southern—the latter of which began first. Diffusive hypocenter migrations were observed in the western, northern, and northeastern clusters with moderate to low diffusivities, suggesting a low-permeability environment. Rapid diffusive migration associated with intermittent seismicity deep within the southern cluster suggests the presence of a highly pressurized fluid supply. We conclude that the nature of this fluid supply combined with intermittent seismicity from the southern cluster and a low-permeability environment are the key factors in this long-living swarm. |
第295回 6月9日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams) |
13世紀頃および17世紀に千島海溝南部で発生した超巨大地震による波源の違い
Difference of tsunami sources by great earthquakes that occurred in the southern Kuril trench around the 13th and 17th centuries
講演者:伊尾木 圭衣(海溝型地震履歴研究グループ)
千島海溝南部ではM8-9クラスの巨大地震が繰り返し発生していることが,歴史記録や地質記録から明らかになっている.北海道東部太平洋沿岸地域では,先史時代に堆積した津波堆積物が報告されており,最新の巨大津波は17世紀,その一つ前のものは13世紀頃に発生したと考えられている.本研究では13世紀頃および17世紀に発生した地震の規模評価のため,津波堆積物の分布と計算浸水範囲を比較し,繰り返し発生する巨大地震の発生メカニズムの多様性について考察した. |
第294回 5月12日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams) |
南海トラフ沈み込み帯の不均質構造とスロー地震活動
Impedance contrast in the Nankai subduction zone
講演者:佐脇 泰典(地震テクトニクス研究グループ)
南海トラフ沈み込み帯では,海溝型巨大地震想定震源域の深部・浅部延長に,ゆっくりした断層すべり現象である「スロー地震」が発生している.深部スロー地震は深さ30–40 kmに集中するが,プレート走向方向の活動変化は大きい.また,浅部スロー地震活動の空間変化は特に顕著である.これらのスロー地震発生域では,顕著な地震波低速度を示すことが多く,スロー地震の発生にも流体の関与が指摘されている(e.g., Audet et al., 2009).スロー地震活動の空間変化の要因や流体の寄与を議論するために,紀伊半島(深部)ならびに日向灘(浅部)の地震観測波形を用いてレシーバ関数解析を行い,スラブ周辺の速度不連続構造を調べた.
紀伊半島では,深部スロー地震活動に対応するような,スラブ不均質構造の深さ変化や走向変化が見られた.また,上盤構造も大きく変化していた.日向灘では,付加体中で発見されたS波低速度層(Akuhara et al., 2023)が,浅部スロー地震発生域直上で広く分布していることが分かった. |