第209回 中止になりました 2月28日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
2011年東北沖津波堆積物の層厚・粒度データの検討
Investigation of thickness and grain-size data of the 2011 Tohoku-oki tsunami deposits
講演者:松本 弾(海溝型地震履歴研究グループ)
現世の津波堆積物は,モダンアナログとして古津波堆積物の識別に有効であるだけではなく,堆積物と津波の規模や遡上流との定量的関係を検証する上でも重要な実例である.2011年東北沖地震により形成された仙台平野周辺の津波堆積物を対象に,採取試料から層厚や粒度などの堆積学的データを収集した.インド洋津波や洪水による堆積物データと合わせて,これらのデータと既存研究で報告された浸水深などのデータとの関連性を検討している内容について紹介する. |
第208回 2月21日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
津波堆積物を考慮した過去1300年間の南海トラフ巨大地震の繰り返しパターンの復元
Tsunami deposits refine great earthquake rupture extent and recurrence over the past 1300 years along the Nankai Trough, Japan.
講演者:藤原 治(副研究部門長)
南海トラフ巨大地震がいつ,どこで起きたか,どの程度の規模であったかは,主に古文書の解読によって復元されてきた.南海地震は最古の文字記録が684年白鳳地震であり,その次は887年仁和地震が起きたことが分かっているが,東海地震は1096年永長地震以降しか確実な記録しか存在しない.静岡県西部の太田川低地で発見された津波堆積物は,7世紀末と9世紀末にも東海地震が発生したことを明らかにした.これを踏まえて,過去1300年間の東海地震と南海地震の発生時期を再整理し,両者の時間的な関係を検討する. |
第207回 2月14日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
2018年大阪府北部の地震にともなう宝塚観測点の地下水位変化
講演者:松本則夫(地震地下水研究グループ)
2018年6月18日の大阪府北部の地震(M6.1)の後に宝塚観測点で約4.2mの地下水位の上昇を記録した.地下水位の変化は地震にともなう歪ステップやその後の歪データの変化では説明できない.過去20年余で観測した宝塚観測点における地震による地下水位の変化と大阪府北部の地震による変化を比較する.
また,国内外のさまざまな井戸における地下水位変化をもたらした地震のマグニチュードと距離との関係と,宝塚におけるそれらの関係を比較する. |
第206回 2月7日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
新世代14C分析専用加速器質量分析計を用いた高精度放射性炭素年代決定法とその応用
宮入陽介(活断層評価研究グループ)
加速器質量分析法は1977年のNelsonらによるタンデム加速器を用いた14Cの測定の成功以降,10Be,14C,26Al,36Cl,129I,236Uなど中長半減期の放射性同位体の定量分析に広く用いられてきた.中でも放射性炭素(14C)分析は,AMS法の主要なアプリケーションとして発展を遂げている.
AMS法の開発初期は原子核物理学の実験のため建設された汎用のタンデム加速器を用いて研究がはじめられたが,分析需要の高い14C分析に特化したAMS装置が1981年に米国Gneral Ionex社によって開発されて以降,14C専用AMS装置は改良が重ねられ,小型化,高効率化,高精度化が進められてきた. 東京大学大気海洋研究所に2013年に導入された米国National Electrostatics Corp (NEC)社製シングルステージ加速器質量分析計は,NEC社としてはAMS機の第四世代に当たる14C専用AMS装置で,従来機に比べ小型で運用が容易なAMS装置である.講演者はその国内で最初の導入となる同装置の導入計画の策定から携わってきた.
2000年代に入り,国内でもAMSを所有する民間の分析会社が複数誕生し,14C分析は容易に依頼分析が可能な手法となっている.2010年代に新型加速器質量分析計を所有し運用するメリットをどこにあるのか? それは,AMS導入以降たびたび聞かれた問であった.その答としては,従来にない応用分野への展開が可能になることである.
新型加速器質量分析計を使った応用として行ってきたことは,非常に高い装置安定性を利用した高精度化(標準試料の分析精度0.1%以下:標準試料が100万カウントを定常的に得られる分析),微量試料(30μg以下)への対応,多点数測定を使った新たな応用分野(活断層トレンチ調査での面的な時代間の把握や津波堆積物の高精度年代測定,さらには海洋生態学応用)への展開である.今回の発表ではその中から,いくつかの研究例を紹介する. |
第205回 1月31日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
アルバイト長石の粒成長実験:地殻レオロジーの諸問題解明を目指して
Grain growth experiment of albitic feldspar: to understand the crustal rheology
講演者: 重松紀生(地震テクトニクス研究グループ)
長石は主要地殻構成物質であり,中でもアルバイト長石(曹長石)は比較的温度が低く水がある環境でも安定に存在する.このため,内陸断層や海溝沈込帯を含む様々な地殻現象に影響を与えている可能性がある.一方でそのレオロジーには未解明な点が多い.この第一歩として曹長石の粒成長実験を開始した.本発表ではその予備的結果について報告する. |
第204回 1月24日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
1872年浜田地震で石見畳ヶ浦は隆起したか?
Was Iwami-Tatamigaura uplifted during the 1872 Hamada Earthquake?
講演者:宍倉正展(海溝型地震履歴研究グループ)
島根県浜田市にある石見畳ヶ浦は,1872年浜田地震時に隆起して干上がった波食棚として国の天然記念物にも指定されている景勝地である.しかし地震前に描かれた江戸時代の絵図には,すでに離水した波食棚が明瞭に描かれており,地震時の隆起を否定する意見もある.本研究では,石見畳ヶ浦周辺の海食洞内を調査したところ,標高0.8-1.8 mに離水した生物遺骸群集が分布していることを確認した.これが1872年浜田地震の隆起痕跡だとすると,絵図の証拠との矛盾を生じる.本発表ではこの矛盾をどのように説明すべきか,浜田地震よりも古い隆起の可能性も含めて,現在検討している内容をお話しする. |
第203回 1月17日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
1854年安政南海地震の大きめの余震の震源域と規模の推定(その2)
Estimation of source location and magnitude of a large aftershock following the 1854 Ansei-Nankai earthquake (Part 2)
講演者:堀川晴央(地震災害予測研究グループ)
1854年安政南海地震の余震のうち,旧暦安政元年の大晦日(十二月三十日)に発生したものは,古文書の記載から,大きめの余震であったことが想定されるが,震央やマグニチュードは判然としない.本講演は,この地震の震源域およびマグニチュードを推定した結果の続報である.前回と異なるのは,1)震度データ点の追加,2)プレート境界面に沿った震源断層の設定,3)非線形の逆問題としての定式化,という3点である.データ解析から,震源域は室戸半島から四国東部の地下,地震の規模は7.5程度が尤もらしいと推定された. |
第202回 1月10日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
和歌山県串本町橋杭岩の漂礫から推定される南海トラフ地震
Earthquakes along the Nankai trough inferred from boulders around Hashiguii-iwa dikes, Kushimoto town, Wakayama prefecture
講演者:行谷佑一(海溝型地震履歴研究グループ)
よく知られたように南海トラフで発生する巨大地震は過去繰り返し発生してきた.これはおもに歴史記録からの解釈により積み重ねられた考え方である.歴史記録から推定される最大の地震としては1707年宝永地震が挙げられるが,これよりも大きな地震が過去に発生したか否かについてはよくわかっていないのが現状である.本セミナーでは和歌山県串本町橋杭岩に分布する漂礫に着目し,漂礫が過去の津波により運ばれ現在の位置に存在する,と考え,礫に働く津波の流体力計算を行うことで過去に発生した南海トラフの地震像を議論する.
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第201回 12月20日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
深層学習を用いたP波初動極性の自動読み取りによる発震機構解の推定
Focal mechanism estimation from P-wave first-motion polarities automatically picked by deep learning
講演者:内出崇彦(地震テクトニクス研究グループ)
大地震の破壊過程を数値計算によって再現・予測する場合,起震断層の形状やその摩擦様式に加えて,応力場の情報が必要になる.地殻応力場の推定のためには,大量に発生する微小地震の発震機構解が有用である.そのためには,地震波のP波初動が上または下に向くという極性を調べる必要があるが,従来これを手動で行ってきた.本研究ではこれを,ニューラルネットワークモデルを用いて,既存のカタログから学習することで自動化した.学習したモデルを日本の内陸の20 km以浅の微小地震に適用した結果,数多くの微小地震の発震機構を推定することができた.
Reproduction and prediction of earthquake rupture process by numerical simulations need the seismogenic stress field in addition to the fault geometry and frictional properties. For the estimation of the crustal stress field, focal mechanisms of massive microearthquakes are helpful. Focal mechanism estimation requires P-wave first-motion polarity picking, which has been done manually. This study automates the polarity picking by a neural network model, which was trained using existing catalog. I applied the trained model to Japanese inland microearthquakes shallower than 20 km and succeeded in estimating focal mechanisms of numeral microearthquakes. |
第200回 12月13日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
Paleoseismic evidence of a major earthquake event (s) along the hinterland faults: Pinjore Garden Fault (PGF) and Jhajra Fault (JF) in northwest Himalaya, India
講演者:Shreya Arora(活断層評価研究グループ)
Despite the identification of numerous active faults in hinterland of the Himalaya, most of the paleoseismological studies are confined to the frontal fault -Himalayan Frontal Thrust (HFT). Only few attempts have been made to understand the pattern of past earthquakes that occurred along the hinterland faults. In this study, we present the results of paleoseismic excavation along the two hinterland faults: the Pinjore Garden Fault (PGF) and Jhajra Fault (JF), which are located 8-10 km north of the southward advancing Himalayan deformation front i.e., HFT. The trench investigations suggest at least two earthquakes along PGF and JF, with the Most Recent Event (MRE) subsequent to AD 1283-1443 and preceded AD 1600 on PGF, and between AD 1233 and AD 1422 on JF. The event chronology along the frontal thrust in northwest Himalaya has been reconstructed by several trenching surveys in the last decades, which limits the latest event between AD 1282 and AD 1632. The timing of the latest event deduced from the previous trenches along he frontal thrust indicates striking coherence with those along the hinterland faults (PGF and JF). We propose that the hinterland faults might have been reactivated by an independent earthquake event between AD 1283 and AD 1600, just like the 1905 Kangra, 2005 Kashmir, 2015 Nepal earthquakes, which failed to rupture the front but produced surface deformation along the hinterland faults. The loading of the un-ruptured not defined portion of MHT with the residual stress along with constant convergence between the plates during the medieval period must have facilitated another earthquake, rupturing the frontal thrust within 100-300 years of time frame. |
第199回 12月6日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
産総研活断層データベースの活用と今後の展望
Review of Active Fault Database and a planning of its next generation type
講演者:吾妻 崇(活断層評価研究グループ)
本発表では,産総研の活断層データベースに収録されているデータに基づく日本の活断層調査の現状整理と,社会的利用を見据えた知的基盤としての今後の展望について紹介する.産総研の活断層データベースは2005年に公開され,活断層の分布やこれまでに実施された活断層調査の調査地点を地図上に表示するとともに,それぞれの活断層の特性や各調査地点に成果を閲覧できるシステムである.これまでに2万点を超える調査データが蓄積されており,それらを活用した活断層活動性評価の検討が必要である.現在検討が行われている第3期知的基盤計画への対応を睨みつつ,断層変位・強震動評価・確率論的評価などの多面的な地震減災計画に活用されることを想定した今後の活断層データベースの設計計画について考えていく. |
第198回 11月29日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
2018年北海道胆振東部地震震源域近傍における微動アレイ観測および余震観測に基づく地盤増幅特性と強震動の関係
Site amplification obtained by aftershock and microtremor array observations around the source area of the 2018 Hokkaido Eastern Iburi earthquake, Japan
講演者:吉見 雅行(地震災害予測研究グループ)
2018年北海道胆振東部地震の震源近傍域では,堆積盆地内でパルス状の波形が,それ以外で短周期の卓越する波形が観測された.特にむかわ町や厚真町では周期1~2秒程度の卓越周期を持つ強い波となっており,震源のディレクティビティとともに堆積層による地震動増幅の影響が強いと考えられる.そこで,震源近傍域で地震直後および今年10月に実施した微動アレイ探査の結果を紹介するとともに,既往速度構造モデル(産総研,J-SHISなど),余震観測に基づく増幅特性等との比較を行い,本震の地震動に対する地盤増幅の寄与について考えたい. |
第197回 11月22日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
土佐清水松尾観測点と串本津荷観測点における地震後のゆっくりとした歪変化と地下水位変化
Slow strain changes and groundwater level changes after the earthquakes at TSS and KST observation sites
講演者:北川 有一(地震地下水研究グループ)
南海トラフでの巨大地震の予測研究のために,愛知県・紀伊半島・四国の観測点で地殻変動・地下水の観測を行い,特にプレート境界での短期的SSEのモニタリングに重点をおいて取り組んでいる.日向灘の地震(2019年5月10日,M6.3)後に土佐清水松尾観測点においてゆっくりとした歪変化が観測された.この変化から固着域でのSSEの可能性が指摘されたため,過去事例を(地下水位変化も合わせて)調査した結果,観測点周辺で生じた変化の可能性が高いことが分かった.また,串本津荷観測点についても地震後の歪・地下水位変化を調査したので報告する. |
第196回 11月15日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
東北日本における海溝型古地震研究の現状と課題
A review of subduction zone paleoseismology in northeast Japan; progress and remaining problems
講演者:澤井祐紀(海溝型地震履歴研究グループ)
本発表では,これまで東北日本の沿岸域で行われてきた海溝型古地震に関する研究を紹介するとともに,残された課題について整理する. |
第195回 11月8日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
糸魚川-静岡構造線断層帯における連動型古地震の復元
Reconstruction of past multi-segment earthquakes on the ISTL active fault system
講演者:近藤久雄(活断層評価研究グループ)
文科省委託事業の一環として,糸静断層帯を対象に地震時変位量に基づく連動型古地震の復元と連動確率の試算を試みてきた.本発表では,主に逆断層からなる北部区間と横ずれ断層からなる中北部区間における結果の概要を紹介し,今後の調査予定や展望について議論する. |
第194回 11月1日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
岩石アナログ実験に見るゆっくりすべりと暴走すべり
Slow slip and Runaway Slip in Halite-Muscovite Rock Analogue
講演者:高橋 美紀(地震テクトニクス研究グループ)
岩塩-白雲母混合物は,常温下であっても,剪断速度条件に依存してダイラタンシーによる脆性変形と圧力溶解クリープによる塑性変形の両方の挙動を示すことができる便利なアナログ物質である.このアナログ物質を用いて剪断応力一定条件での変形実験を実施し,変形速度の変化を観察した.低剪断応力制御下では,剪断速度は定常状態へと安定的に収束するが,応力の増加にしたがって滑りに加速と減速が起きていることが観察された. このアナログ物質の最大強度以上の応力を加えると,最終的に暴走滑りを示した. 加速と減速がみられる応力・速度条件はこのアナログ物質の脆性‐塑性遷移点に近い塑性変形領域にあり,脆性変形と塑性変形のメカニズムの競合がゆっくりすべりを引き起こしている可能性がある. |
第193回 10月25日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
有限要素法による断層変位計算 -糸魚川-静岡構造線断層帯を対象として-
Finite element modeling for northern and mid-northern segments of the Itoigawa-Shizuoka Tectonic Line
講演者:竿本 英貴(地震災害予測研究グループ)
糸魚川-静岡構造線断層帯に対する断層モデルの高度化および断層変位分布の把握を目的として,
有限要素解析に基づく検討を実施している.今回のセミナーでは,
(1)最新の地形地質調査結果を反映させた断層モデル(北部・中北部まで),
(2)断層面を含む領域に対して推定された最大圧縮応力の方位,
(3) 断層面上および地表での変位分布,の各項目について発表するとともに,今後の課題について議論したい. |
第192回 10月11日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
地震発生層以浅のための摩擦構成則:特性化震源モデルへの適用
Friction law for shallower region than the seismogenic layer: Application to characteristic source model
講演者:加瀬 祐子(地震災害予測研究グループ)
従来の地震動予測では,地震発生層以浅(表層)のすべりは,地震動に対する寄与は小さいとして,モデル化の対象とされてこなかった.しかし最近では,2016年熊本地震の本震で観測された,断層近傍の長周期地震動や永久変位を説明するためには,従来の強震動生成域に加えて,地表近傍にライズタイムの長い長周期地震動生成域を設定する必要があることが指摘されている.この長周期地震動生成域を動力学的震源モデルに導入するためには,摩擦構成則を設定する必要があるが,地震発生層を対象に設定されるすべり弱化則をそのまま適用すると,長いライズタイムと大きなすべりを再現することが難しい.本研究では,すべり弱化・すべり速度硬化の摩擦構成則をアスペリティと背景領域から成る特性化震源モデルに適用することを試みた. |
第191回 10月4日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
測地測量データの解析と現地踏査によって明らかになった2016年熊本地震断層の全体像
Full picture of the surface faultings associated with the 2016 Kumamoto earthquake revealed by geodetic survey data and field investigations
講演者:粟田 泰夫(活断層評価研究グループ)
2016年熊本地震では,広範囲にわたって様々な規模の地震断層が出現した.合成開口レーダーやGPSに代表される測地測量データの解析結果に基づいて現地踏査を実施することにより,変位量数cmから数mにわたる地震断層の複雑な分布について,その全容が解明できた.さらに,地震断層の出現によって,当該地域の活断層の分布状況と活動の特性もあぶり出されてきた.今回の調査事例は,将来における地震断層調査の先例になるとともに,過去に出現した地震断層について再評価の方向性を示すものである. |
第190回 9月27日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
既存未使用井戸を用いた安価かつ高感度な歪観測のための技術開発
Low cost and high accuracy strain observation using existing unused wells
講演者:板場 智史(地震地下水研究グループ)
アブストラクト:南海トラフ沿いで発生する短期的SSEのモニタリングには,ボアホール傾斜計(Hi-net高感度加速度計)やGNSSの他,ボアホール歪計が用いられている.ボアホール歪計は高感度であるため,中~小規模の短期的SSEの検出に大きな役割を果たしている.一方でボアホール歪観測点整備には高コスト・長工期の問題があり,観測点密度が低い.この問題を抜本的に解決すべく技術開発を進めている既存未使用井戸を用いた安価かつ高感度な歪観測について,現状および今後の計画を紹介する. |
第189回 9月13日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
EnKFを用いた地下の粘弾性変形・粘性率推定の試み-数値実験
EnKF estimation of viscoelastic deformation and viscosity - Numerical experiments
講演者:大谷 真紀子(地震テクトニクス研究グループ)
最近地震分野で,データ同化を用いてモデルと観測の両方から地下のパラメタや変動量を推定する試みが行われ始めている.私は地震後の粘弾性緩和による地殻変動に着目し,逐次データ同化手法の一つであるアンサンブルカルマンフィルター法(EnKF)を用いて,地下の歪み・粘性率を推定する手法の開発を行っている.本発表では,単純なモデルを仮定して作成した模擬データを使った数値実験の結果について紹介する. |
第188回 9月6日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
1930年北伊豆地震に伴う地震断層の再検討
Reexamination of the surface ruptures associated with the 1930 Kita-Izu earthquake, central Japan
講演者:丸山 正(活断層評価研究グループ)
2016年熊本地震では,ゆれによる被害のみならず,地震断層沿いではずれによる顕著な被害が生じた.将来発生する内陸大地震に伴う地震断層沿いのずれによる被害を予測したり,断層破壊過程を解明したりするうえで,過去の地震で生じた地震断層の分布や形態についての詳しい調査記録は貴重な情報を提供する.国内では1891年濃尾地震から1945年三河地震までの間に生じた内陸大地震で出現した地震断層について,松田時彦氏・岡田篤正氏を中心として既存資料の編纂・カタログ化が行われている.そのうち,1960年代に5万分の1地形図を基図として編纂が行われた1930年北伊豆地震の地震断層については,松田(1972)により報告されている.それから約半世紀を迎えようとする現在では,航空レーザ計測による細密地形情報が充実し,微細な断層変位地形を参照することで記載された地震断層の位置やずれの累積性を検討することができるようになった.また,文献検索機能が充実し,松田(1972)には収録されていない詳細な地震断層調査の報告が多数見出された.こうしたことから,1930年北伊豆地震の地震断層を再検討することにより,ずれの特徴についてより正確に把握できる可能性がある.セミナーでは現在進めている再検討作業について紹介する. |
第187回 7月26日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
Nanocrystalline Principal Slip Zones and Their Role in Controlling Crustal Fault Rheology
講演者: Verberne Berend(地震テクトニクス研究グループ)
Principal slip zones (PSZs) are narrow (<10 cm) bands of localized shear deformation that occur in the cores of upper-crustal fault zones where they accommodate the bulk of fault displacement. Natural and experimentally-formed PSZs consistently show the presence of nanocrystallites in the <100 nm size range. Despite the presumed importance of such nanocrystalline (NC) fault rock in controlling fault mechanical behavior, their prevalence and potential role in controlling natural earthquake cycles remains insufficiently investigated. In this contribution, we summarize the physical properties of NC materials that may have a profound effect on fault rheology, and we review the structural characteristics of NC PSZs observed in natural faults and in experiments. Numerous literature reports show that such zones form in a wide range of faulted rock types, under a wide range of conditions pertaining to seismic and a-seismic upper-crustal fault slip, and frequently show an internal crystallographic preferred orientation (CPO) and partial amorphization, as well as forming glossy or "mirror-like" slip surfaces. Given the widespread occurrence of NC PSZs in upper-crustal faults they are likely of general significance. |
第186回 7月19日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
季節調整モデルによる潮位記録解析の試み
A trial of the seasonal adjustment for the tidal data of Japan
講演者:落 唯史(地震地下水研究グループ)
日本の潮位記録は数十年間にわたる連続的な記録が残されているため,地殻の上下変動の解明に重要なツールである.海洋変動との分離は難題であるが,地殻の直線変化を前提とした加藤・津村(1979)の手法が有効であり,長年適用されてきた.本発表では移動平均を用いた季節調整モデルを適用し,直線変化よりも柔軟な変動を許した場合の結果を示す.既存研究のレビューやGNSSデータとの比較を交えながら,現段階の到達点まで紹介する. |
第185回 7月12日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
チベット高原北東縁共和盆地における宇宙線生成核種を用いた埋没年代測定
Burial dating by cosmogenic radionuclides in the Gonghe basin, northeastern Tibet
講演者:白濱吉起(活断層評価研究グループ)
宇宙線生成放射性核種は様々な地形形成作用の定量に用いられる.その応用例のひとつが,複数種類の核種を用いた埋没年代の推定である.チベット高原北東縁に位置する共和盆地では,黄河の下刻が進行した結果,盆地を埋積する厚さ500m以上の堆積物が谷壁に露出する.堆積物の年代と堆積過程を明らかにするため,谷壁から試料を採取し埋没年代測定を行った.本発表では,埋没年代測定手法の原理とそれらの測定結果を中心に紹介する. |
第184回 7月5日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
脆性-塑性遷移領域周辺で形成された中央構造線の断層帯内部構造
Fault zone architecture across the brittle-plastic transition along the Median Tectonic Line, SW Japan
講演者:香取拓馬(地震テクトニクス研究グループ)
断層深部における変形の不均質や時間変化は,地震発生を含む断層挙動を理解する上で重要である.そこで本研究では削剥断層である中央構造線を対象に野外調査を行い,岩石が経験した変形条件とその空間分布を解析した.その結果,中央構造線は断層深部において左横ずれ運動と右横ずれ運動を経験していることが明らかとなった.この左横ずれ構造の中には,低温高差応力下(300-400℃/200MPa)で形成されたマイロナイトと,300℃で形成されたカタクレーサイトが集中している変形帯が連続し,脆性-塑性遷移領域周辺における断層中軸部であったと考えられる. 本発表では,これまでに構築した三次元断層帯内部構造モデルをもとに,断層深部における変形不均質とその時間変化の検討方針について議論する. |
第183回 6月28日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
北海道霧多布湿原における13・17世紀頃の海岸線の推定
Estimation of shorelines around the 13th and 17th centuries at Kiritappu marsh, eastern Hokkaido
講演者:伊尾木圭衣(海溝型地震履歴研究グループ)
千島海溝南部ではM8-9クラスの巨大地震が繰り返し発生している.13・17世紀に発生した地震の規模の再評価のため,北海道霧多布湿原において津波堆積物調査を行い,13・17世紀頃の海岸線の位置を推定した.その結果,13世紀頃の海岸線は現在より400 m程度,17世紀頃の海岸線は現在より300 m程度内陸に位置していたと推定された.今後は,13・17世紀地震の断層モデル構築のため,霧多布湿原において津波の浸水計算を行い,当時の海岸線の位置によって浸水範囲がどのように変化するかを検討する. |
第182回 6月21日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
十勝平野断層帯(光地園断層)の海域延長部における海底活断層調査
Offshore active-fault survey on the Tokachi-Heiya Fault Zone, Hokkaido, Japan
講演者:大上隆史(地震災害予測研究グループ)
文部科学省委託調査事業「内陸及び沿岸海域の活断層調査」の一環として,十勝平野断層帯の海域延長部において海底活断層調査を実施した.この断層帯の南部(光地園断層)は海岸線に達しており,断層帯の南端はさらに南方の海域に位置している可能性が高い.よって,光地園断層の海域延長が想定される海域を対象として音波探査および底質採取調査を実施した.本発表では,本研究によって把握された活断層および活背斜の分布・形状と,それらの活動性について報告する. |
第181回 6月14日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
浅部スロー地震のScaled Energy推定
Scaled Energy Estimation for Shallow Slow Earthquakes
講演者:矢部 優(地震地下水研究グループ)
Deep and shallow slow earthquakes occur at the edge of the seismogenic zone in the Nankai subduction zone. Deep slow earthquakes occur under high‐temperature and high‐pressure conditions, whereas shallow slow earthquakes occur at lower temperatures and pressures. Although these two types of slow earthquake show qualitatively similar behaviors, such as slow deformation and depleted high‐frequency seismic signals, their similarities have not yet been evaluated in quantitative ways. In this work, we analyze shallow tectonic tremors accompanied by very low frequency earthquakes off Kii Peninsula, Japan. |
第180回 6月7日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
表面波を用いた3次元S波速度構造の推定
Estimation of the 3D S-wave velocity structure by using surface-wave
講演者: 二宮 啓(地震災害予測研究グループ)
地下構造を明らかにすることは,地震被害の予測や地震動シミュレーション,地質の成り立ちを解釈するために非常に重要である.近年の地震観測網の整備に伴い,地震波干渉法で抽出した表面波を用いて地下構造を推定する手法が注目されている.本研究では,全国に設置されている地震計(Hi-net)に記録された地震波形データを用いて,表面波トモグラフィ解析によって中部日本の3次元S波速度構造を推定した.本発表では,得られた速度構造をいくつかの局所的な構造(火山や構造線など)に着目して議論する. |
第179回 5月17日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
高温・高圧実験による斜長石のレオロジーへの水の影響の評価
Evaluation of the effect of water on rheology of plagioclase by high temperature and high pressure experiments
講演者:木戸正紀(地震テクトニクス研究グループ)
地殻中に存在する水は岩石の物理的・化学的性質に大きな影響を与える.下部地殻における水の移動過程や,水と岩石の変形との関係について知ることは地震活動の理解や断層帯の進化の過程を明らかにするうえで重要である.しかし,地殻の岩石に対して下部地殻の深さに相当する高圧下での実験によってこれらが検討された例は少ない.本研究では,下部地殻に相当する温度・圧力条件を発生可能なGriggs型固体圧試験機を用いて斜長石多結晶体の変形実験を行った.本発表では,これまでの実験結果から斜長石の強度に与える水のフュガシティの効果や,水の拡散と変形の関係について議論する. |
第178回 5月10日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326) |
バックプロジェクション法に内在する深さ依存バイアスと地震破壊特性との関係
Inherent depth-dependent bias in Backprojection and its implication to the earthquake-rupture property
講演者:奥脇 亮(地震テクトニクス研究グループ)
Waveform backprojection (BP) is a technique of earthquake-source imaging, which has widely been used for tracking earthquake-source evolution that cannot be obtained by kinematic source inversion alone. The BP enjoys considerable popularity in an earthquake-source-imaging community in the past 15 years, owing to its robustness of processing and applicability to high-frequency waveforms. However, the physical meaning of the BP image has remained elusive, which makes it difficult to discuss a detailed rupture property when it is compared to the inverted slip distribution. In this seminar, we review the mathematical representation of the BP techniques to clarify a physical implication of the BP image, which turns out to involve an inherent, depth-dependent bias that may violate the widely accepted idea of the depth-dependent rupture property of the subduction zone megathrust earthquake. We then propose variants of BP technique to properly relate the BP signal intensity to slip motion that is responsible for the high-frequency radiation during the rupture process. |