部門長挨拶

2023年度当初のご挨拶

2023(令和5)年4月

研究部門長 藤原 治

研究部門長新年度の開始にあたり,新部門長としてご挨拶申し上げます.
産総研は第5期中長期計画において「社会課題解決と産業競争力強化」をミッションに掲げ,そのためにイノベーション創出機能の強化を進めています.その中にあって活断層・火山研究部門は,強靱な国土の構築と防災に資することを目的に,地震・津波・火山活動に関する地質情報の整備,ならびに長期的な地質変動の評価・予測手法の研究開発を進めていきます.これらの研究開発は,基礎科学の深化・推進とともに,社会ニーズを見据えた明確な課題設定とスケジュール感が必須と考えています.

そのために,大規模自然災害等から国民を保護し,国民生活および経済に及ぼす影響を最小化するとの「国土強靱化基本計画」(平成30年12月)の基本理念を尊重しつつ,活断層,海溝型巨大地震,火山に関する調査研究を行います.また,これらの知見も生かしつつ,原子力施設の立地や放射性廃棄物の中深度処分・最終処分に関わる安全規制等の支援研究を進めます.これらの研究業務は,国の「知的基盤整備計画」や「国土強靭化年次計画」等に示されたマイルストーンを意識して進めるとともに,エンドユーザーである国や自治体等のニーズ(ハザードマップの作成や防災・避難計画に必要な過去の地質災害の履歴や範囲,原子力利用に関わる安全規制に必要な,数十万年単位の地質現象を予測・評価する技術,など)を見極めつつ実施していきます.

地質災害に関する具体的な情報整備としては,活断層の活動性,海溝型巨大地震とそれに伴う津波浸水履歴,火山の噴火履歴を含む火山地質図などに加え,2021年度から開始した大規模火砕流分布図の公開などを進めます.特に,昨年度から地質調査総合センターで開始した「防災・減災のための高精度デジタル地質情報の整備事業」の主要課題として,九州北部の活断層や瀬戸内海西部の海底活断層の調査,活断層データベースの空間分解能の向上,位置精度のより高い火口位置情報の整備なども進める予定です.また,地震・火山噴火の発生・発災時には,関係機関とも連携して緊急調査などを行い,災害の軽減や復旧活動の迅速化にも貢献する所存です.

社会課題の解決には,地質の専門的な研究だけでなく,産総研の持つ様々な知識や技術の融合が必須です.特に,地質情報とデジタル技術を掛け合わせることで,これまでに無かった防災情報を素早く得られるようになってきました.こうした技術の開発を目指した人材の確保・育成,産総研内の複数の研究領域との融合研究も進めていきます.また,これらのミッションの達成には,国内だけでなく海外との協力も含めた最先端の研究開発が必要と考えています.
社会システムやビジネスの世界だけでなく研究の世界でも,これまでの常識やルールが全く通用しなくなる「ゲームチェンジ」が進んでいます.当部門もこれを乗り越えて,さらに発展してけるよう努力していく所存です.引き続き皆様のご指導とご協力をお願いします.