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活断層・地震研究セミナー

研究者間の意見交換,議論を目的とした公開セミナーです.
一般の方でも聴講可能ですが,内容は専門家向けです.産総研では立ち入りに手続きが必要ですので,外部の方で聴講を希望される場合,予め問い合わせページからご連絡ください(報道,行政機関の方は,所属もお知らせ下さい).折り返し,当日の入館手続きをご連絡させていただきます.

2023年度 2022年度 2021年度 2020年度 2019年度 2018年度 2017年度 2016年度 2015年度
 2014年度

第177回 3月22日(金) 14:00-15:00 別棟大会議室(7-3C-211)※ 場所が普段の会場から変更になります 

地震活動の不活発な地域の地震ハザード評価とそして地震発生予測のための私的な研究目標

Earthquake hazard assessment in a stable intraplate region, and a personal research direction for earthquake forecasts

講演者:桑原 保人(研究部門長)

地震ハザード評価について,地震活動の不活発な地域ではどのように行われているのかについてレビューする.また,地震の発生予測に対して私的には今後どう取り組んでいくか整理したい.

第176回 3月15日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

三浦半島南部の隆起海食洞から発見された地層は津波堆積物か?

講演者:藤原 治(地震災害予測研究グループ)

相模湾に面した三浦半島の海岸で,隆起海食洞から津波堆積物の可能性がある堆積層を複数発見した.これは海食洞遺跡の発掘調査の過程で見つかったものである.洞穴は標高7-8m付近にあり,内部には古墳時代の遺構を覆って,泥質の堆積層が1.5m以上堆積している.この地層は,構成物の違いや侵食面で少なくとも4層(4回のイベント)に区分できる.この地層は洞窟の外にしか分布しないローム土の破片などを主構成物とすること,海生珪藻の化石を含むこと,堆積構造の示す流向などから,海から流れ込んだものである.4回の堆積イベントは9世紀から17世紀の間に起きており,関東地震との関係についての検討状況を紹介する.また,洞穴の壁面には旧海水準を示す明瞭なノッチが少なくとも2段認められる.離水生物の化石の年代測定結果から,洞穴の離水年代についても紹介する.

第175回 3月8日(金) 14:00-16:00 (特別セミナー) 国際セミナー室(7-8-326)

Seminar 1: 14:00-15:00

Fluid escape from dehydrating serpentinites in subduction zones: Implications for fluid flow and intermediate-depth seismicity

Dr. Oliver Plümper (Utrecht University)

At subduction zones seawater-altered oceanic lithosphere is returned to the Earth's mantle, where increasing temperatures and pressures result in the progressive destabilization of hydrous minerals and thereby the release of aqueous fluids. This cycling of volatiles is one of the most distinctive features of subduction zones and has fundamental consequences for Earth's geodynamics and geochemical cycles. Fluids released from the subducting slab trigger sub-arc mantle melting and induce petrophysical changes that are a potential source of intermediate-depth seismicity. However, the mechanisms of fluid escape from static and deforming dehydrating serpentinites are currently under debate and the impact of dehydration and fluid escape on rheological properties remains poorly constrained. Using a combined approach of field observations, microstructural analysis down to the nanoscale, and numerical modelling we investigated meta-serpentinites from the Erro-Tobbio unit, Ligurian Alps (Italy). This unit was subducted to peak metamorphic conditions of 2.0–2.5 GPa and 550–600 ºC, resulting in the breakdown of antigorite+brucite to form olivine+H2O. The multi-scale analysis shows that initiation of fluid flow is controlled by intrinsic chemical heterogeneities, localizing dehydration at specific microsites. Porosity generation is directly linked to the dehydration reactions and resultant fluid pressure variations force the reactive fluid release to organize into vein networks across a wide range of spatial scales. This channelization results in large-scale fluid escape with sufficient fluxes to drain subducting plates. Microstructural observations of meta-serpentinites that have undergone dehydration during deformation display evidence for complex relationships between crystal growth, grain-boundary sliding, and compaction. None of the investigated meta-serpentinites preserve evidence of dehydration embrittlement or shear instability indicative of intermediate-depth seismicity.


講演者紹介:Oliver's research interest span the fields of fluid-rock/mineral interaction, nano(geo)science, mineral physics and rock deformation. He approaches his research questions through an interdisciplinary approach of field work, experiments, micro- and nanoanalytics and theory. He is also involved in the Utrecht University Electron Microscopy Square, that hosts a variety of state-of-the-art electron microscopes.

 

Seminar 2: 15:00-16:00

1946年南海地震の断層モデルと直前のスロースリップ [The fault model of the 1946 Nankai earthquake and the slow slip of just before the earthquake]

梅田 康弘(地震地下水研究グループ 客員研究員)

東南海地震は紀伊半島より東,南海地震はそれより西が破壊域だと,一般には理解されているが,昭和南海地震では紀伊半島の東海岸が隆起したことが知られており,断層運動は東にまで及んでいたと考えられる.海水位の変化から推定された隆起を説明する新たな断層モデルを提案する.本震前の井戸水の低下量とその分布から土地の隆起量と隆起域が求められているが,本震の断層面の少し深い所のプレート境界面上で,0.3 m 程度の複数のゆっくり滑りがあれば,井戸水の低下量と分布が説明できることがわかった.

講演者紹介:2007年に京都大学定年退官後,12年間にわたって招聘研究員・客員研究員として,東南海・南海地震予測のための地下水等観測施設整備や,地下水・地殻変動観測井の保守作業などにご協力くださいました.また京都大学時代から引き続き,過去の南海地震に関する証言調査や,それに付随して地下水・潮位観測などの研究を精力的に行ってくださいました.客員研究員をお願いできるのが今年3月末までとなってしまいましたので,これまでの研究結果をご紹介いただきたくセミナー発表をお願いいたしました.

第174回 3月1日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

「地震=せん断破壊」からの脱却-新しい解析手法を用いた微小地震解析-

Break away from "earthquakes=shear failure": Microearthquake analysis using a new approach

講演者:今西 和俊(地震テクトニクス研究グループ)

テクトニックに発生する地震がせん断破壊(力系はダブルカップル)で説明できることが理論的に認められてから半世紀が過ぎた.その後,観測データの分析からもこの理論は支持され,ダブルカップルの仮定の下,様々な議論が進められることが多い.しかしながら,観測データも充実してきた現代において,「地震=せん断破壊」という常識を再考してみる価値がある.本発表では,解析方法に工夫を凝らすことで,微小な非せん断破壊であっても充分な信頼度で検出できるようになったことを報告する.この方法は日常的に多数発生する微小地震を対象にしているため,適用範囲が広い.当日は,流体関与の地震,前震活動に適用した事例を紹介し,新しい発生機構について議論する.

第173回 2月22日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

FEMによる断層変位のスリップパーティショニング発生条件の探索

Detecting active fault configuration for strong slip partitioning by using finite element analysis

講演者: 竿本 英貴(地震災害予測研究グループ)

断層変位のスリップパーティショニングは事例数が少なく,未解明な部分が多い.本研究はスリップパーティショニングの現象把握を目的としており,スリップパーティショニングが発生しやすい条件を有限要素解析に基づいて探索するものである.ここでは断層面配置および広域応力場をそれぞれ変化させて,784ケースにおよぶ解析を実施した.当日はこれらに対する結果に加え,ベイズ最適化を援用した効率的な断層面形状パラメータ探索についても紹介する.

第172回 2月15日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

産総研の短期的SSEカタログと微動カタログとの比較

Comparison between the short-term slow-slip event catalog of AIST and the tremor catalog

講演者:松本 則夫(地震地下水研究グループ)

地震地下水研究グループでは2011年から産総研・防災科研・気象庁データを用いて短期的ゆっくりすべり(SSE)の解析を行ない,地震予知連絡会報にて報告している.SSE発生領域を16分割し,分割された領域ごとの短期的SSEのモーメントの積算値と微動活動や今まで報告されている長期的SSEを比較する.

第171回 2月8日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

ステレオ等高線地形解析図による高解像度DEMの可視化手法とその応用

Visualization of high-resolution DEMs and geospatial data using stereo contour and relief maps

講演者:粟田泰夫(活断層評価研究グループ)

大量に供給される数値地形モデルから鮮明な地形情報を効率的に判読するための可視化手法として「ステレオ等高線地形解析図」を開発してきた.本セミナーでは,画像の作成手法についてフリーの地形解析ソフトウェアを使用した演習形式の発表を行うほか,作成した画像から判読できる変動地形の事例について紹介する.また,高解像・高ダイナミックレンジの可視化が可能となる本手法の特徴を応用した,様々な地理空間データの鮮明化の可能性について言及する.

第170回 2月1日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

熊本県日奈久断層帯の古地震調査:八代市トレンチ調査結果速報

Paleoseismic investigations of the Hinagu fault zone, Kumamoto, Japan: Preliminary result of trenching survey at Yatsushiro city

講演者:宮下由香里活断層評価研究グループ) 

日奈久断層帯は,2016年熊本地震の発生を受け,地震活動が活発化するエリアに属することが指摘されている.しかし,日奈久断層帯の古地震履歴は不明な点が多い.産総研は,熊本地震以降,3年間にわたって日奈久断層帯の古地震調査を実施してきた.その結果,日奈久断層帯はこれまでに考えられてきたよりも,高頻度で地震を起こしてきたことが明らかとなりつつある.最終年度にあたる今年度は,八代市でトレンチ調査を行った.速報的な結果と過去2年間の調査結果,今後の課題を紹介する.

第169回 1月25日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

産総研新居浜黒島観測井の透水性亀裂の向きと応力場の関係

Orientations of permeable fractures in borehole and their relation to in-situ stress at AIST observation borehole in Niihama, southwestern Japan

講演者:木口 努(地震地下水研究グループ)

愛媛県新居浜市の産総研観測点では,3つの孔井(最大掘削深度570m)の掘削時に,孔井内の透水性亀裂を検出しその向きを求めることが可能なハイドロフォンVSPと物理検層のデータを取得し,応力場を求めるための水圧破砕法も実施されている.これらのデータから得られた透水性亀裂の向きと応力場の関係や先行研究の高い透水性を示す亀裂モデルなどを紹介する.新居浜観測井では透水性亀裂の向きは全方位的に大きくばらついて分布し,応力場との相関も見られなかった.

第168回 1月18日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

茨城県北部・福島県浜通り地域における地震活動と応力変化

Seismicity and stress change in Northern Ibaraki prefecture and Fukushima Hamadori areas

講演者: 内出 崇彦(地震テクトニクス研究グループ)

茨城県北部・福島県浜通り地域は,2011年東北地方太平洋沖地震以後,正断層及び横ずれ断層型の地震の活動が急激に活発になった.その後,両地域とも地震活動は徐々に減衰しているが,福島県浜通り地域の方がその減衰は速い.茨城県北部は2016年12月28日にMw 5.9の地震が発生するなど,いまだに数多くの地震が発生している.本講演では,測地学的データによる地表歪の推定,ETASモデルを用いた地震活動の定量化を通して,隣接する両地域の応力変化を明らかにし,その成因について考察する.

第167回 1月11日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

中世に日本海溝南部沿岸を襲った津波

Tsunamis from the south part of Japan trench in medieval times

講演者:行谷 佑一(海溝型地震履歴研究グループ)

日本海溝南部は津波を伴う地震の発生履歴がよくわかっていない.本セミナーでは中世に焦点をあて,九十九里浜で発見された津波堆積物から推定される地震像と,それに関連する可能性のある史料や伝承等を紹介する.

第166回 12月21日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

1872年浜田地震の震源断層の検討

Investigation of seismic fault (s) of the 1872 Hamada, southwestern Japan, earthquake

講演者:堀川 晴央(地震災害予測研究グループ)

1872年に発生した浜田地震は,島根県西部において海岸域の隆起・沈降があったとされ,また,津波の発生も報告されていることから,島根県西部の海域ないし沿岸域に震源が位置すると考えられている.本講演では,既往の音波探査で見出された活断層を震源とした場合の震度を計算し被害分布から推定された震度分布と比較することで,浜田地震の震源断層を検討した結果を報告する.この他,震源域と思われる地域の微小地震活動をもとに震源断層を議論したい.

第165回 12月7日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

クラックを含む岩石の弾性的性質(2)

Effective elastic properties of cracked rocks (2)

講演者:増田 幸治(副研究部門長)

地殻を構成する岩石は,さまざまな大きさ,形,方向をもつクラックを含んでいる.一般的な地殻応力状態として想定される,ある方向から圧縮応力が加わっている状態でのクラック分布に,水平等方性(Transverse Isotropy: TI)を仮定したモデルで,速度変化の2乗がクラック密度の線形関係で近似できることを使って,その係数も決められることを示した.モデルを岩石実験室での測定に適用し,岩石内部のクラックの形状を推定した.このモニタリング手法は学問的のみならず産業への応用が期待できる.

第164回 11月30日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

中国地域の活断層と地震活動

Active faults and earthquakes in Chugoku district, Western Japan

講演者:近藤 久雄(活断層評価研究グループ)

2016年に地震本部から公表された「中国地域の活断層の長期評価(第一版)」を中心に,中国地方の活断層と地震活動について概説をおこなう.

第163回 11月16日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

花崗岩試料中に生成された亀裂の連結性とバルク物性の関係

A relationship between fracture connectivity of granite rock samples and these physical property

講演者: 高橋 美紀(地震テクトニクス研究グループ)

岩石中の亀裂は,固体地球における水循環,熱資源としての利用,地殻の変形などを議論する上で重要となってくる.しかしながら,亀裂の連結性次第で亀裂を持つ岩石のバルク物性は大きく変化する.バルク物性のみで亀裂の状態を議論することは難しい.そこで,急減圧・急冷実験によって亀裂を生成した花崗岩試料を用いて,亀裂の連結性の評価をしたうえで評価とバルク物性との比較をすることに挑戦したので報告する.なお,本研究は地圏資源環境研究部門の北村真奈美さんとの共同研究です.

第162回 11月9日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

静的歪変化を用いた地震規模即時推定

Rapid estimation of moment magnitude of large earthquake from static strain changes

講演者:板場 智史(地震地下水研究グループ)

地震発生後数分以内に発表される震源速報は近地の地震記録を用いており,一般的にM8クラス以上の地震では飽和してしまうため,マグニチュードを過小評価してしまう.実際,2011年東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)において本震直後に気象庁から発表されたマグニチュードは7.9であった.産総研のボアホール歪観測網のうち,石井式歪計で観測された静的歪変化から同地震のMwを推定したところ,本震後7分後までのデータ(P波が最初に観測網に到達後約5分後)でMw8.7と推定できた.同様に,本震29分後に発生した同時心の最大余震や,最近発生した内陸地震においても,地震後短時間で概ね適切なMwを推定できることが分かった.最近の他の研究事例(カリフォルニア,Gladwin歪計)とあわせて紹介する.

第161回 11月2日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

植物化石群集から明らかになった静岡県浮島ヶ原の沈水イベント

Submergence events inferred from plant macrofossils and diatom assemblages in Ukishima-ga-hara, Shizuoka Prefecture.

講演者:澤井 祐紀(海溝型地震履歴研究グループ)

富士川河口断層帯の東部に位置する浮島ヶ原低地において,珪藻化石群集および大型植物化石の変遷を調べた.その結果,過去3000年間における沈水イベントを検出することができた.セミナーでは,その詳細なデータと年代値について紹介する.

第160回 10月12日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

1771年八重山津波は地滑り起源か?

Was the 1771 Yaeyama tsunami caused by landslide?

講演者:岡村行信(首席研究員)

1771年八重山津波が付加体の巨大地滑りによって発生したという論文を9月に公表した.津波の数値計算では地滑りだけで,1771年の津波をおおよそ再現することは可能である.しかし,実際にはプレート境界のすべりの影響も考慮する必要がありそうである.巨大地滑りによって付加体内に正断層が発達することによって,巨大津波が八重山諸島沖だけで発生するようになったという仮説を提案する.

第159回 10月5日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

断層内部構造と流体移動:ニュージーランドアルパイン断層の例

Fluid flow governed by fault zone architecture, the Alpine Fault, New Zealand

講演者:重松紀生(地震テクトニクス研究グループ)

断層のダメージゾーン内部には,様々な地殻プロセスが記録されている.しかしダメージゾーンの構造は複雑な断層の履歴を反映し,個々の地殻プロセスを読み解くことは容易ではない.ニュージーランド南島西海岸のアルパイン断層におけるDFDP-2 掘削は断層周囲の亀裂発達と水の動きの関係を読み解くユニークな機会となった.本発表では,BHTV検層と光ファイバー測温の結果の比較が意味する,断層内部構造と水の動きに関する話題を提供する.

第158回 9月28日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

所内向け

2018年9月6日北海道胆振東部地震の地震動と震源域での余震観測

Strong motion of the 2018 Hokkaido Iburi Tobu Earthquake, Mw 6.6, and aftershock/microtremor observation in the epicentral area.

講演者:吉見雅行(地震災害予測研究グループ)

北海道胆振東部地震は深さ37kmで発生したMw6.6の内陸地震である.

この地震により,震源域北東部の厚真町にて降下軽石層の地すべりが多発したほか, 札幌市内の埋土・盛土地盤の変状により建物被害・道路陥没が生じた.一方,震源域直上~西部の鵡川町,厚真町,早来町では, 計測震度6強~7の揺れが観測された.特に,鵡川町,厚真町鹿沼ではパルス状の地震動が観測され, 応答スペクトルは兵庫県南部地震の震度7地域近傍の 鷹取観測点での観測記録に匹敵するものであった.

地震後10日過ぎた9月17日から21日にかけて,源域にて余震観測・微動観測を行った.

本講演では,震源域の様子,余震観測・微動観測結果を速報する.

第157回 9月21日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

北勢観測点の地下水位変化を用いた伊勢湾周辺での短期的SSEの推定

Estimation of the short-term SSEs around Ise Bay using groundwater level change at the Hokusei observation well

講演者:北川有一(地震地下水研究グループ)

南海トラフのプレート境界で発生する短期的SSEの推定精度の向上のため,三重県北部に位置する北勢観測点において,観測井戸を密閉して感度の良い地下水観測点に作り変えた.伊勢湾周辺で深部低周波微動が発生した際に,北勢観測点の地下水位変化を捉えた.歪・傾斜・地下水(北勢観測点の地下水位変化を含む)データを用いて,伊勢湾周辺での短期的SSEの断層モデルを推定したので,その結果を紹介する.

第156回 9月14日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

奄美群島喜界島における現生・離水サンゴマイクロアトールからみた最近約500年の地殻上下変動

講演者:宍倉正展(海溝型地震履歴研究グループ)

喜界島では古くから完新世サンゴ礁段丘に関する研究が進んでおり,間欠的な地震性隆起の履歴が解明されている.しかし最近のGNSS観測や段丘形成に関するシミュレーションから,定常隆起による段丘形成の可能性も指摘されている.そこで過去から現在までの連続的な地殻上下変動を復元するため,昨年度より現生および離水サンゴマイクロアトールに着目して現地調査を行っており,定常的な地殻上下変動と地震性の隆起との関係解明を試みている.本セミナーではその途中経過を報告する. 

第155回 8月31日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

基準点改測データに基づく2008年岩手・宮城内陸地震に伴う地殻変動の特徴

Characteristics of crustal deformation associated with the 2008 Iwate-Miyagi Nairiku earthquake based on resurvey data of reference points

講演者:丸山 正(活断層評価研究グループ)

2008年岩手・宮城内陸地震に伴う地震断層は,事前に活断層が認定されていない場所に出現した.また,地震断層の分布は連続的でなく,そのずれ量も中央部に比べて南北両端部で有意に大きいことが確認された.複雑な挙動を示す地震断層の特性を解明するためには,断層沿いだけでなく震源域の地殻変動を把握する必要がある.そこで,国土地理院,産総研等により実施された三角点の改測結果に,岩手県公共嘱託登記土地家屋調査士協会により提供された登記基準点の改測結果等を加えて,震源域およびその周辺を含む領域の水平変動図と上下変動図を作成した.ここでは,これらの図で示される地殻変動の特徴について,地震断層との関係を中心に紹介する.

第154回 8月10日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

ハワイ島の噴火と地震活動

Eruptions and earthquakes in Hawaii Island

講演者:石川 有三 (地震地下水研究グループ)

5月3日にハワイ島東部の複数箇所で溶岩噴出が始まり,続いてMw 6.9の逆断層地震が島の南東沿岸部で起きた.5月17日にはキラウエア火口でM5.3程度の地震を伴う爆発的噴火が発生しているが,現在もまだ約20時間から53時間の間隔で噴火に伴う地震を繰り返している.この活動によりキラウエア・クレーター内は,沈下を繰り返している.この地震活動の特徴を明らかにする.

第153回 8月3日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

紀伊半島東部,中央構造線沿いの3次元断層帯内部構造

3D fault zone architecture along the Median Tectonic Line, eastern Kii Peninsula, SW Japan

講演者:香取 拓馬(地震テクトニクス研究グループ)

脆性-延性遷移領域周辺における岩石の変形は,地震発生を含む断層挙動を理解する上で重要な鍵となる.そこで本研究では,削剥断層である紀伊半島東部の中央構造線(MTL)を対象に,地質調査および各種分析を行うことで,MTLが経験してきた変形機構・運動像・変形温度・応力条件の変遷を追跡した.また,これらの結果をUAVで取得した3次元地形モデルに組み込むことで,詳細な3次元断層帯内部構造を構築した.本発表では,これまでの検討から明らかとなった,脆性ー延性遷移領域周辺における歪み集中域(Brittle-plastic fault core)の存在とその空間分布を中心に議論を行う.

第152回 7月27日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

地形・地質学的データに基づく応力分布を用いた動力学的震源モデル

Dynamic source modeling under stress distribution derived from geological and geomorphological data

講演者:加瀬 祐子(地震災害予測研究グループ)

地形学・地質学的データに基づいた断層面形状と応力場で行う数値シミュレーションにより,現実的なアスペリティの位置と破壊過程を持つ震源モデルを構築する手法を提案する.ここでは,ある断層で繰り返し発生する地震の破壊過程は限られるが,固有地震のみが起こるわけではない,と考える.その上で,地形・地質学的データに基づく上町断層帯の断層面三次元形状および断層走向に沿った平均上下変位速度分布を用いて,動力学的震源モデルを作成し,上町断層帯で発生する地震の強震動予測をおこなった.

第151回 7月20日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

標津断層帯の変動地形学的特徴とその周辺における地震・火山活動

Tectonic landform, seismicity and volcanic activity on and around the Shibetsu fault zone, eastern Hokkaido

講演者:吾妻 崇 (活断層評価研究グループ)

北海道東部の知床半島の付け根に位置する標津断層帯は,北東-南西走向で北西側隆起のセンスを持つ複数の逆断層(活断層研究会編,1991)で構成され,陸上での長さは52 km以上であり,北東海域に延長する可能性が指摘されている(地震調査委員会,2005).断層帯の南西方では,1938年屈斜路地震(M 6.3),1959年弟子屈地震(M 5.9)が発生しており,地表地震断層や地割れの出現が報告されている(津屋,1939など).また,断層帯の北西側には活火山が多く存在しており,地震活動と火山活動の関係を考える上でも興味深い地域である.本発表では標津断層帯の変動地形学的な特徴を紹介するとともに,周辺で発生している地震活動・火山活動の情報を交えて,この地域のネオテクトニクス的な意義についてレビューする.

第150回 7月13日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

バネブロックモデルで発生する地震と周期的SSEの同期

Synchronization of earthquakes to repeating SSEs in a spring-slider model

講演者:大谷 真紀子(地震テクトニクス研究グループ)

沈み込み帯プレート境界では,巨大地震発生域の深部延長部でSSEが繰り返し発生し,巨大地震の発生に及ぼす影響に注目が集まっている.本研究では,地震の模擬として速度状態依存摩擦則に従う一自由度バネブロックモデルを考え,周期的SSEの影響を含めた載荷を与えた.その結果,地震の発生パターンがSSEに同期する現象が広い範囲で起こることが見いだされたので,これについて報告する.

第149回 7月6日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

南阿蘇村濁川左岸沿いに出現した正断層群とその活動履歴

Paleoseismic history of normal faults appeared along the south side of Nigogawa-river in the Minami-aso village

講演者:白濱 吉起(活断層評価研究グループ)

2016年熊本地震に伴い,阿蘇カルデラ内東部に及ぶ地表地震断層が布田川断層帯沿いに出現した.昨年度,我々はこれらの地表地震断層の活動履歴を明らかにすることを目的にトレンチ調査を実施した.その結果,地表地震断層につながる複数の断層によって阿蘇火山を給源とする堆積物が変位している様子が明瞭に認められた.発表では,壁面の詳細な観察結果をもとに本トレンチが示す活動履歴について議論する.

第148回 6月29日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

石狩低地東縁断層帯南部の海域延長部における海底活断層調査

Offshore active-fault survey on the eastern marginal fault zone of Ishikari lowland, Hokkaido, Japan

講演者:大上 隆史(地震災害予測研究グループ)

文部科学省委託調査事業「内陸及び沿岸海域の活断層調査」の一環として,石狩低地東縁断層帯南部の海域延長部において海底活断層調査を実施した.この断層帯は南北走向を持つ東側隆起の逆断層を主体とし,日高衝突帯の前縁に発達した褶曲・衝上断層帯を構成している.本断層帯南部の最も変形フロント側に発達する断層関連褶曲を対象として海域における音波探査を実施し,更新世以降に形成された堆積層の変形構造を空間的に把握した.また,陸棚上において音波探査と柱状採泥を実施し,本断層帯南部の活動履歴を検討した.本発表ではこれらの結果を報告する.

第147回 6月22日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

津波堆積物の分布から求めた12世紀北海道南西沖地震の断層モデル

Fault model of the 12th century Hokkaido Nansei-oki earthquake estimated from tsunami deposits distribution

講演者:伊尾木 圭衣(海溝型地震履歴研究グループ)

津波堆積物調査より,北海道奥尻島南部や北海道南西部の檜山沿岸には,繰り返し津波が襲来していることがわかった.この地域では1993年北海道南西沖地震による津波を超えるような高い場所,より内陸側に津波堆積物が残されている.本研究では12世紀頃の地震について,津波堆積物の分布と計算された津波浸水域を比較し,断層モデルを構築した.推定された断層モデルは Mw 7.9 と計算され,1993年北海道南西沖地震と1983年日本海中部地震の間をつなぐ場所に位置する.

第146回 6月15日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

四国地方の固着のゆらぎと微動活動の関係

Relation between the coupling and tremor rates in the transition zone around the Shikoku region

講演者:落 唯史(地震地下水研究グループ)

四国地方の地下ではプレート間の固着により応力蓄積が進行している.固着域の下端では強い固着を維持できないため,固着速度は時間変化する.この時間変化のうち特に規模の大きいものがスロースリップイベント(SSE)で,SSEと深部低周波微動との時空間的同期はよく知られている.しかしイベントの期間に限定しなくとも微動活動との関係を議論することはできる.この立場から「固着のゆらぎと微動活動の関係」を定量的に評価した.

第145回 6月1日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

Fault rock rheology at the depth limits of the seismogenic zone

講演者:Verberne Berend(地震テクトニクス研究グループ)

The material-physical processes responsible for fault stability transitions pertaining to the depth limits of the seismogenic zone remain enigmatic. Using experiments and microstructural analysis of simulated calcite faults, and an existing micromechanical model, I argue that changes in the intergranular compaction rate are key to transitions in fault stability. At shallow crustal levels, the stable-to-unstable transition may involve nanocrystalline particles, which show unusual rheological properties. Towards the base of the seismogenic zone, slip stability is controlled by the onset of dilatation. Under these conditions an instability may develop when intergranular creep is not fast enough to avoid cavitation and shear zone failure.

第144回 5月18日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

南海トラフ付加体における原位置透水係数の推定とそのスケール依存性について

In situ permeability and scale-dependence of an active accretionary prism determined from cross-borehole experiments

講演者:木下 千裕(地震地下水研究グループ)

岩石中の透水係数は間隙流体の移流や拡散に大きく寄与し,地震発生メカニズムを解明するうえで重要なパラメータである.しかしながら沈み込み帯近傍で原位置透水試験が行われる例は少ない.本研究では南海トラフ地震発生帯掘削計画の一環として熊野灘沖合に設置された長期孔内観測システム(LTBMS)の水圧計が周辺の掘削作業時に伴って大きく変化していることを受け,クロスホール透水試験に見立て,原位置透水係数の推定を行った.本発表では以上の結果に加え,先行研究(室内実験や数値シミュレーション)との比較により見えてきた透水係数のスケール依存性について紹介する.

第143回 5月11日(金) 14:00-15:00 国際セミナー室(7-8-326)

高知県における津波堆積物調査

Paleotsunami studies in Kochi Prefecture.

講演者:谷川 晃一朗(海溝型地震履歴研究グループ)

南海トラフの過去の巨大地震の履歴や破壊領域は,歴史記録だけでなく地震・津波の地質学的痕跡の情報にも基づいて推定されている.しかし,南海トラフ西部では依然として地震・津波の地質学的研究が少なく,履歴解明の根幹となる年代データも質・量ともに不十分である.そのような背景から,筆者らは高知県の東洋町,南国市,高知市,四万十町,黒潮町の沿岸低地で津波堆積物調査を実施している.本発表では,それらの概要を紹介する.