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11活断層・地震研究セミナー

研究者間の意見交換,議論を目的とした公開セミナーです.
一般の方でも聴講可能ですが,内容は専門家向けです.当面の間はTeamsを用いたオンラインで開催いたします.外部の方で聴講を希望される場合,予め問い合わせページからご連絡ください.

2024年度 2023年度 2022年度 2021年度 2020年度 2019年度 2018年度 2017年度 2016年度

2015年度 2014年度

第323回 3月29日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

高知県南国市における完新世後期の海岸砂丘発達と津波浸水への影響

Holocene coastal barrier dune development and its influence on coastal inundation along Kochi coast, facing Nankai Trough

講演者:谷川 晃一朗(海溝型地震履歴研究グループ)

沿岸低地では多くの津波堆積物調査が実施されてきた.しかし,沿岸低地は完新世を通して地形環境が大きく変化しており,津波履歴をより詳細に復元するためには,津波発生当時の地形環境を考慮する必要がある.そこで,過去約6千年間の浸水履歴の報告がある高知県南国市を対象に,当地域の海岸砂丘の地形発達調査を行った.砂丘の発達過程と砂丘背後の沿岸低地の浸水履歴の比較からは,砂丘の上方への成長により,低地にイベント堆積物が残されるほどの浸水が起こりにくくなった可能性が示唆される.

第322回 3月15日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

断層アナログ物質を用いた暴走すべり実験

Runaway slip in fault rock analogue under shear stress constrained condition

講演者:高橋 美紀(地震テクトニクス研究グループ)

大地震は脆性-塑性遷移領域で発生すると考えられている.そこで塑性変形による変形組織が十分発達した断層に地震による高速すべりがどのように発生するのかを検証するため,岩石のアナログ物質である塩-白雲母混合物を用いた剪断実験を行った.剪断応力が断層岩の最大強度よりも低い場合,剪断応力を段階的に増加させると,すべりは加速の後,定常となる速度に到達した.剪断応力が最大強度を超えると,動的弱化を伴う暴走すべりが発生した.このとき,断層の強度はかかる剪断応力より低くなっているにもかかわらず,数時間にわたって断層アナログ物質はその剪断応力を維持する傾向が得られた.このことは非地震時の流動メカニズムの影響が顕著な場合,暴走すべり(地震)が発生するまでの猶予はより長くなり,また,暴走すべりはすべりの加速が断層の強度を一時的にすら補えなくなる速度に達した時に発生するという可能性を示している.

第321回 3月8日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

東北地方沿岸域におけるサイスモテクトニクス

Seismotectonics along the coastal areas of the Tohoku region

講演者:今西 和俊(副研究部門長)

2011年東北地方太平洋沖地震の発生以降,東北地方の沿岸域や上盤プレート内の地震活動が高まり,正断層地震が多く発生するようになった.特に,2011年4月11日に福島県いわき市で発生したM7.0の地震や2016年11月22日に発生したM7.4の福島県沖の地震など,日本列島では珍しいM7を超える正断層型の大地震が起きることも明らかとなった.これらの地震の発生域は,元々正断層場であったことが指摘されており,沈み込み帯における地震発生評価には,プレート境界付近の地震だけでなく,このような沿岸域や上盤プレート内で生じる正断層地震活動のリスクがあることも考慮していく必要がある.本発表では,東北地方沿岸域の地震発生場に着目し,圧縮テクトニクス場において正断層場が生成されるメカニズムについて考察する.

第320回 3月1日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

フェーズフィールド法による亀裂進展解析-物質境界面が亀裂進展経路に与える影響について-

Phase field simulation of crack propagation: influence of material interface on crack path

講演者:竿本 英貴(地震災害予測研究グループ)

フェーズフィールド法は,金属材料などの材料組織の時空間変化を模擬する手法として広く用いられている.近年,この手法は固体力学分野にも拡張され,固体内の亀裂進展や複雑な亀裂パターン生成に応用されている.これらの特性から,フェーズフィールド法は断層進展解析においても有効なツールであることが期待できる.本セミナーでは,(1)ベンチマーク問題を通じたコード検証,(2)臨界エネルギー解放率の違いが亀裂進展経路に与える影響,(3)異方弾性係数が亀裂進展経路に与える影響,(4)物質境界面の存在が亀裂進展経路に与える影響について得られた結果を報告する.なお,物質境界面は境界を挟む2物質の臨界エネルギー解放率の違いにより特徴づけている.

第319回 2月16日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams) 外部非公開

孔内ひずみ計データの原位置キャリブレーションのいくつかの進展

Some progress of in-situ calibration of the borehole strainmeter data

講演者:松本 則夫(地震地下水研究グループ)

ひずみ計データの原位置におけるキャリブレーションは潮汐によるキャリブレーション係数の推定と推定したキャリブレーション係数を遠地地震の表面波のひずみ波形による検証に分かれる.表面波のひずみ波形の理論値の計算プログラムが孔内ひずみ計以外で検証されるべきという指摘を受け,原理的にはキャリブレーションが必要のない気象庁松代地震観測所の100m伸縮計を用いて潮汐歪に対する応答と表面波のひずみ波形の応答を比較した.その結果,両者の応答がほぼ一致することが分かった.また,いままで遠地地震の表面波のひずみ波形で検証を行ってこなかった2観測点と,小型ひずみ計を設置した三豊仁尾観測点の原位置キャリブレーション結果について報告する.

第318回 2月9日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

身延断層の後期更新世以降における活動性の再検討

Reexamination of the activity of the Minobu fault, central Japan, since the late Pleistocene

講演者:丸山 正(活断層評価研究グループ)

身延断層は,富士川谷の新第三系を大きく変位させる南北走向で西傾斜の逆断層として知られているが,第四紀後期の活動の詳細については長らく明らかにされていなかった.水本ほか(2016)は,地質学的に確認されている身延断層沿いで新期の地形面の変形や河谷の屈曲を認め,身延断層が左横ずれを主とする活断層であることを報告した.ただし,地形面を構成する地層の区分や形成年代についての詳しい検討は行われていない.今回身延断層の活動性を解明するための調査の一環として,断層変位を受けたとされている地形面の構成層について詳しい調査を行った.また,活断層沿いを踏査し,地層と断層との関係を確認した.セミナーでは,これらの結果に基づいて検討した身延断層の後期更新世以降における活動性について報告する.

本調査は,令和5年度科学技術基礎調査等委託事業「活断層調査の高度化・効率化のための手法の調査手法の検証」の一環として実施したものです.

第317回 2月2日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

地震発生層最深部での破壊のはじまり

Triggering of fractures at the base of the seismogenic zone

講演者:重松 紀生(地震テクトニクス研究グループ)

活断層に沿って発生する大地震の破壊は,多くの場合地震発生層の最深部で発生する.このような条件を経験した断層の地質調査により,塑性変形 (流動) が関与し破壊が開始することを見出した.見出された破壊の開始に対する塑性変形の影響,この現象の断層全体への影響,地震発生に対する意味について紹介する.

第316回 1月19日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

震源分布と発震機構解から断層面群を推定する手法の開発

A novel method for inferring fault network from hypocenters and focal mechanism solutions

講演者:堀川 晴央(地震テクトニクス研究グループ)

長さのスケールが10kmオーダーの断層面群を,震源分布と発震機構解をデータとして推定する手法の開発を現在進めている.本講演では,発震機構解のバラツキをKagan角で記述できることを利用した手法を1992年Landers地震の余震データに適用し,得られた結果を,Landers地震のCommunity Fault Modelや先行研究の結果と比較して,本手法の特徴を議論する.

第315回 1月12日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

水系の横ずれを指標とした活断層の平均変位速度の推定

Estimation of slip-rate of strike-slip faults based on stream offset data

講演者:吾妻 崇(活断層評価研究グループ)

平均変位速度は活断層の活動性を知る上で重要な指標であり,断層による変位量とその指標の形成年代によって算出される.しかし,山間部に分布する横ずれ断層については,年代の指標となる段丘面等の地形が乏しいため,平均変位速度が算出されていないものが多数存在している.本研究では,文部科学省から受託した研究課題「活断層評価の高度化・効率化のための調査」(令和元年度~令和3年度)及び「活断層評価の高度化・効率化のための調査手法の検証」(令和4年度~令和6年度)で実施している横ずれ断層による水系の屈曲量と断層よりも上流の長さとの関係から活断層の平均変位速度を推定する手法の検討状況を報告する.

第314回 12月22日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

土佐清水松尾観測点の地殻歪変化を引き起こす歪地震動の閾値の検討(その2)

Investigation of threshold of strain seismogram triggering crustal strain changes at TSS observation site (Part2)

講演者:北川 有一(地震地下水研究グループ)

前回のセミナーでは,土佐清水松尾観測点にて繰り返し観測される地震後の地殻歪変化を引き起こす要因として,歪地震動の大きさを検討し,面積歪成分のpeak-to-peakの振幅が2x10^-7を超えた場合に発生していることを報告した.その後,地震後の地下水位変化の特徴と比較したところ,地震後の地殻歪変化と地下水位変化では発生しやすさに違いがあることが分かってきた.また,遠地大地震を調査に追加したところ,変化の発生の有無は,歪地震動の面積歪の振幅では単純には決まらず,振動の周波数にも依存することを示唆する結果であった.

第313回 12月8日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

1987-1989年の東海長期的SSEの位置・規模の推定

Long-term SSE in the Tokai region between 1987-1989: fault location and size

講演者:落 唯史(地震地下水研究グループ)

公開されている水準測量と精密辺長測量のデータから,標題の長期的スロースリップイベント(SSE)の位置・規模を推定した結果を報告する.東海地域では2000-2005年の長期的SSE以前に,1983年頃と1987-89年頃にかけても長期的SSEが発生している.このうち,1987-1989年のイベントについて,データが密にある水準測量のデータからモデルを作成し,精密辺長測量のデータとの整合性を考察した.作成したモデルは両データをある程度整合的に説明するものであり,2000-2005年のイベントよりも東側に広がるものの解放するモーメント量としては小さいことが分かった.この結果は東海地域の長期的SSEに様々なバリエーションが存在する(同じ場所で繰り返していない)証拠の一つとなるといえる.

第312回 12月1日(金) 15:00-16:00 オンライン(Teams) ※15時開催ですのでご注意ください.

2023年トルコ・カフラマンマラシュ地震の緊急調査

Field survey on surface rupture and site amplification in the source area of the 2023 Kahramanmaras, Turkey, earthquake

講演者:吉見 雅行(地震災害予測研究グループ)

2023年2月6日にトルコ南東部で発生したカフラマンマラシュ地震の現地調査を報告する.
まず,現地における地表地震断層とそれに伴う被害事例を紹介する.観察地点では左横ずれ1~5m程度の断層変位により,建物の変形,回転,道路のズレ,送電鉄塔の座屈などの被害が生じていた.次に,カフラマンマラシュ地震の震源域近傍の5地域(アドゥヤマン,パザルジク,カフラマンマラシュ,イスケンデルン,アンタキヤ)にて展開した臨時余震観測の概要と,余震観測記録を用いた地盤増幅特性評価を紹介する.2023年3月15日から20 日までに合計21地点に強震計を設置した.各地域においては,基準点となりそうな岩盤観測点1点と,都市内の数点の観測点の構成とした.観測点周辺の被害調査も合わせて実施し,地盤増幅が被害に及ぼした効果について考察した.

第311回 11月17日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

地震シナリオ構築におけるエネルギー収支に基づくスクリーニング手法の開発:中央構造線断層帯を例に

Screening method based on energy balance to generate earthquake scenarios on the Median Tectonic Line

講演者:浦田 優美(地震テクトニクス研究グループ)

断層の連動性評価や地震シナリオの作成には,動力学的破壊伝播シミュレーションが有効である.しかし,応力場や摩擦パラメータの不確定性が大きく,検討すべきパラメータの組み合わせが膨大になる.本研究では,動的破壊シミュレーションを行う前に大地震になり得るパラメータの組み合わせを絞り込むためのスクリーニング手法として,Noda et al. (2021, JGR)によるエネルギー収支法を使うことを提案する.中央構造線断層帯(MTL)の讃岐山脈南縁東部区間,同西部区間,石鎚山脈北縁区間,同西部区間を対象に,どの程度パラメータを制約できるか検討した結果を報告する.

第310回 10月27日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

動力学的震源モデルから推定される中央構造線断層帯(四国陸域)の最新イベント像

The latest event on the Median Tectonic Line active fault zone, inland Shikoku, inferred from dynamic rupture simulations

講演者:加瀬 祐子(地震災害予測研究グループ)

中央構造線断層帯(MTL)は,日本で最も活動的な断層帯のひとつである.この長大な断層帯は10の区間に区分されて評価されているが,複数区間が連動する可能性についても,検討すべき課題として挙げられている(地震調査研究推進本部,2017).そのため,この断層帯のうち,四国陸域の4区間(讃岐山脈南縁東部区間,同西部区間,石鎚山脈北縁区間,同西部区間)を対象として,連動可能性とその条件を検討するため,地質学的および地球物理学的データに基づいて動力学的震源モデルを構築し,動的破壊シミュレーションをおこなう.今回は,活動履歴を考慮した応力場モデルを構築する手法を検討し,最新イベントで起こり得た連動のパターンを整理することを試みる.

第309回 10月20日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

南海トラフ沿いSSE発生の特徴

Characteristics of SSE occurrence along the Nankai Trough

講演者:板場 智史(地震地下水研究グループ)

地震地下水RGでは歪・傾斜・地下水統合解析によって南海トラフ沿いで発生する短期的SSEのモニタリングを継続しており,10年以上のカタログが蓄積されている.これらの中には地震発生や大幅な気圧低下などとタイミングを同じくしてSSEが発生しているように見える例がいくつかあり,2010年には遠地地震表面波によるSSEが誘発される現象も確認されている.ここではSSEカタログを用いて,その発生と気圧などとの関係について議論する.

第308回 10月13日(金) 15:00-16:00 オンライン(Teams) ※15時開催ですのでご注意ください.

相模湾沿岸を襲った津波の整理

Compilation of Tsunamis affected along Sagami Bay

講演者:行谷 佑一(海溝型地震履歴研究グループ)

相模湾沿岸では1923年大正関東地.震や1703年元禄関東地震に代表されるように相模トラフのプレート間地震がたびたび発生したと考えられている.しかし,1703年地震よりも前の地震についてはいつ発生したかは明確にはなっていない.本発表では相模湾沿岸を襲った津波についてのこれまでの研究成果を整理することで,過去に発生した相模トラフの地震の履歴を検討する.

第307回 10月6日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

茨城県北部地域における地殻地震活動域直下の地震波反射面

A crustal reflector deep beneath the seismically active area beneath north Ibaraki area

講演者:椎名 高裕(地震テクトニクス研究グループ)

茨城県北部地域および福島県浜通り地域で活発な地殻内地震活動には流体が密接に関わると考えられている.流体の存在はしばしばS波反射波などとして地震波形記録に記録される.本発表では,特に茨城県北部地域で観測されるS波反射波に注目し,その励起源となる地殻内反射面の推定を通して,地殻深部に存在する流体の分布を調べた.また,地震活動に対する空間分布から,地殻流体の状態や地震活動に対する役割を検討する.

第306回 9月29日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

宮古島沿岸および沿岸海域の断層変位地形

Fault displacement topographies in the coastal area of Miyako island

講演者:白濱 吉起(活断層評価研究グループ)

宮古島では,北西-南東走向の明瞭な正断層性の断層崖が複数条認められる.これらは宮古島断層帯として主要活断層帯に選定されているが,その活動性はよくわかっていない.当グループでは,文部科学省委託事業の一環として,本断層帯の活動性解明を目的として宮古島断層帯の調査を昨年度から実施している.昨年度は周辺の浅海底高解像度地形データを入手し,沿岸部の海底地形調査を実施した.また,それを踏まえ,今年度は沿岸部の地形地質調査を行っている.結果,沿岸海域のサンゴ礁を変位させる多数の正断層や島内から沿岸海域に延びる正断層,沿岸部の隆起ベンチが認められた.本発表では,途中成果と今後の調査計画について報告する.

第305回 9月22日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

トルコ・東アナトリア断層系における大地震の空白域と2023年地震

Seismic gaps along the East Anatolian fault system and Mw 7.8 and 7.5 earthquakes in 2023

講演者:近藤 久雄(活断層評価研究グループ)

東アナトリア断層系を震源として,2023年2月にMw 7.8及びMw 7.5の2つの大地震が生じ,トルコ・シリア国境付近で死者5.7万人以上の甚大な被害が生じた.MTAとの国際共同研究の一環として,Mw 7.8震源断層のほぼ中央付近では2014年に予察的なトレンチ調査を実施していた.本報告では,まず東アナトリア断層系の概略と2014年時点での研究課題を紹介する.次に,2023年地震直後の緊急対応として,地震に伴う地表地震断層と変位量分布を紹介する.最後に,2023年地震発生前のデータからどのような長期評価が可能であったか,今後どのようなデータと評価手法の検証・改良が必要か等について議論する.

第304回 9月8日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

北海道東部において見られる17世紀以降の巨大津波の痕跡

Geological evidence of tsunami inundation in post-17th century along eastern coast of Hokkaido

講演者:澤井 祐紀(海溝型地震履歴研究グループ)

千島海溝南部に面した北海道東部では,十勝沖,根室沖の領域において100年間隔でM8クラスの巨大地震が繰り返してきたと考えられている.しかしながら,19世紀より前の地震の記録は少ないため,その履歴はよく分かっていない.演者らは,これまでに明らかになっていなかった17世紀以降の巨大津波の痕跡を調べてきた.今回はこれまでの研究経過を報告する.

第303回 8月25日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

布田川断層帯宇土半島北岸区間における高分解能反射法音波探査

Detailed and precise profiles of the offshore part of the Futagawa Fault Zone (Uto-hanto-hokugan section) revealed by UHR multi-channel seismic reflection survey.

講演者:大上 隆史(地震災害予測研究グループ)

布田川断層帯は全長64 km以上の活断層帯であり,布田川区間・宇土区間・宇土半島北岸区間によって構成されている.これらのうち,宇土半島北岸区間は海域(島原湾南部)に分布する全長27 km以上の海底活断層であるが,この断層は主として重力異常の急変帯の分布にもとづいて推定されたものであり,活断層評価に必要な資料がほとんど存在しない.産総研では,文科省委託「活断層評価の高度化・効率化のための調査手法の検証」の一環として,宇土半島北岸区間の正確な位置,連続性,過去の活動に関する資料を取得するための調査研究を実施している.2022年度には島原湾南部において高分解能反射法音波探査を実施し,宇土半島北岸区間の詳細な位置・形状を初めて明らかにした.

第302回 7月28日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

変形におけるナノキャビティによるキロメートルスケールの延性破壊

Kilometre-scale ductile fractures instigated by deformation-induced nanocavities

講演者:Yeo Thomas(地震テクトニクス研究グループ)

Abstract: Tectonic tremors occur below the base of the seismogenic zone (> 10 km) of continental crustal faults (e.g., San Andreas Fault). However, there is still no consensus about how this phenomenon relates to rock deformation and geological structures. To understand this, we examined the exhumed Ryoke mylonites along the Median Tectonic Line (MTL) of SW Japan. Our findings provide evidence for the development of phenomena known as ductile fractures in the mylonites. Furthermore, we have proven that zones with a high density of ductile fractures are continuous along the strike of the MTL for approximately 1 km and has a minimum thickness of 100 m. This study implies a high temperature fracturing mechanism in ductilely deformed rocks, which has the potential to generate tremor signals.

第301回 7月21日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

和歌山県那智勝浦町の津波堆積物調査報告(予察)

Preliminary report of the tsunami deposits survey in eastern Wakayama

講演者:松本 弾(海溝型地震履歴研究グループ)

南海トラフで発生する津波の履歴を解明するために,和歌山県東部で津波堆積物を目的とした掘削調査を実施した.調査では那智勝浦町の沿岸低地においてジオスライサーを用いて13地点で深度約2mまでの試料採取を行ったほか,その近傍の池ではハンドコアラーによる表層地質層序の確認を行った.その結果,この地域に厚い海成砂や,泥炭と互層をなす薄い砂層が面的に広がっていることが確認できた.各種分析は未着手であり,これらの砂層が津波堆積物である可能性はまだ不明であるが,現地調査で観察できたことについて予察的に報告する.

第300回 7月14日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

歪・傾斜・GNSSを統合した短期的SSE滑り時空間分布推定手法の開発

Developing the inversion method of spatio-temporal slip distributions of short-term deep SSEs in the Nankai Trough

講演者:矢部 優(地震地下水研究グループ)

南海トラフでは深部スロースリップが繰り返し発生しており,地震地下水RGではそのモニタリングを実施している.

これまでのモニタリングでは,矩形1枚断層を用いたモデル化を行なってきたが,より適切な評価のためには滑りの時空間分布を推定する必要がある.

本発表では,歪・傾斜・GNSSの3種類のデータを統合して解析する手法の開発状況について発表する.

第299回 7月7日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

花粉化石の放射性炭素年代測定手法の開発と本栖湖における適用
Establishment of Highly Accurate Age Model Using Radiocarbon Dating of Fossil Pollen Automatically Extracted from Lake Motosu Sediments

講演者:太田 耕輔(地震災害予測研究グループ)

放射性炭素(14C)年代測定は過去5万年間の年代測定に有用なツールである.しかし,バルク堆積物は見かけ上古い14C年代を示すことが多い.信頼性の高い試料として葉や花粉の化石が挙げられるが,葉は分解されやすい.花粉化石は堆積物中に連続的に残存するが,花粉化石を用いて14C年代測定を行う場合,花粉数十万個が必要とされる.

そこで,本研究ではフローサイトメトリーを本栖湖の堆積物に適用することで花粉化石の14C年代測定手法を開発した.葉の年代値とは誤差の範囲で一致し,高精度な年代モデルを構築した.本研究の手法を他の地域でも適用することで,堆積中に記録されるイベントの年代制約の高精度化が期待される.

第298回 6月30日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

時空間ハフ変換による震源マイグレーションの抽出: 能登半島北東部の群発地震への適用

Extraction of hypocenter migrations by a space-time Hough transform: Application to earthquake swarm beneath the NE Noto Peninsula, Japan

講演者:寒河江 皓大(地震テクトニクス研究グループ)

震源マイグレーションは, 群発地震やスロー地震に伴って観測されている. いずれの場合も震源マイグレーションの前線部が拡散的に時空間発展することが観測され, 間隙流体圧の拡散や応力の拡散で説明される. そのため, 震源マイグレーションを詳細に調べることは地震活動の駆動要因を理解する手がかりになる. 本研究では, スロー地震の震源マイグレーションを客観的に抽出するために開発した手法を能登半島で継続している群発地震活動に適用し, その時空間的特徴を調べたので報告する. 特に,2020年末から群発地震活動が活発化した領域で, 特徴的な構造に沿って高速に上昇する震源マイグレーションが抽出されたのでその駆動要因を議論する.

第297回 6月23日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

岩手県侍浜の海成段丘における表面照射年代測定に基づく離水年代

Surface exposure dating on marine terraces at Samuraihama along the Sanriku coast in Iwate prefecture

講演者:レゲット 佳(活断層評価研究グループ)

東北地方太平洋岸における地殻変動は,沈み込みによるひずみの蓄積と超巨大地震を伴うようなひずみ開放イベントの繰り返しにより引き起こされていると考えられている.三陸沿岸には海成段丘が広く分布することが知られているが,これらは測地学的な過去100年間の観測結果とは異なり,長期的な隆起を示唆する地形である.三陸沿岸では海岸線に沿って南下するにつれ,堆積層の層厚の減少が認められ,三陸における高精度な地殻変動履歴復元の障害の一つとなっていた.そのため本研究では,堆積物に依存しない表面照射年代測定法を低バックグラウンドのキャリアーを用いたブランク試料と長時間のAMS測定によって,Be同位体分析を試みた.測定の結果,試料の10Be/9Be (×10-12)が低位面と高位面で有意に異なり,高位面で高い蓄積量が確認され,三陸沿岸での表面照射年代測定の可能性を見出すことができた.

第296回 6月16日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

能登半島北東部において長期継続する群発地震

Long-living earthquake swarm at the NE of Noto Peninsula, central Japan

講演者:雨澤 勇太(地震テクトニクス研究グループ)

A severe earthquake swarm struck the tip of the Noto peninsula, Japan. Eight M >= 5.0 earthquakes occurred (largest M6.5), and the sequence has continued more than 5 years. We investigated the spatiotemporal characteristics of the swarm using relocated hypocenters to elucidate the factors causing this long-duration. The swarm consists of four seismic clusters—northern, northeastern, western, and southern—the latter of which began first. Diffusive hypocenter migrations were observed in the western, northern, and northeastern clusters with moderate to low diffusivities, suggesting a low-permeability environment. Rapid diffusive migration associated with intermittent seismicity deep within the southern cluster suggests the presence of a highly pressurized fluid supply. We conclude that the nature of this fluid supply combined with intermittent seismicity from the southern cluster and a low-permeability environment are the key factors in this long-living swarm.

第295回 6月9日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

13世紀頃および17世紀に千島海溝南部で発生した超巨大地震による波源の違い

Difference of tsunami sources by great earthquakes that occurred in the southern Kuril trench around the 13th and 17th centuries

講演者:伊尾木 圭衣(海溝型地震履歴研究グループ)

千島海溝南部ではM8-9クラスの巨大地震が繰り返し発生していることが,歴史記録や地質記録から明らかになっている.北海道東部太平洋沿岸地域では,先史時代に堆積した津波堆積物が報告されており,最新の巨大津波は17世紀,その一つ前のものは13世紀頃に発生したと考えられている.本研究では13世紀頃および17世紀に発生した地震の規模評価のため,津波堆積物の分布と計算浸水範囲を比較し,繰り返し発生する巨大地震の発生メカニズムの多様性について考察した.

第294回 5月12日(金) 14:00-15:00 オンライン(Teams)

南海トラフ沈み込み帯の不均質構造とスロー地震活動

Impedance contrast in the Nankai subduction zone

講演者:佐脇 泰典(地震テクトニクス研究グループ)

南海トラフ沈み込み帯では,海溝型巨大地震想定震源域の深部・浅部延長に,ゆっくりした断層すべり現象である「スロー地震」が発生している.深部スロー地震は深さ30–40 kmに集中するが,プレート走向方向の活動変化は大きい.また,浅部スロー地震活動の空間変化は特に顕著である.これらのスロー地震発生域では,顕著な地震波低速度を示すことが多く,スロー地震の発生にも流体の関与が指摘されている(e.g., Audet et al., 2009).スロー地震活動の空間変化の要因や流体の寄与を議論するために,紀伊半島(深部)ならびに日向灘(浅部)の地震観測波形を用いてレシーバ関数解析を行い,スラブ周辺の速度不連続構造を調べた.

紀伊半島では,深部スロー地震活動に対応するような,スラブ不均質構造の深さ変化や走向変化が見られた.また,上盤構造も大きく変化していた.日向灘では,付加体中で発見されたS波低速度層(Akuhara et al., 2023)が,浅部スロー地震発生域直上で広く分布していることが分かった.