TECH Meets BUSINESS
産業技術総合研究所が創出・支援するベンチャービジネス

サイトセンシング株式会社 顔認識、行動計測、3Dモデル、優れた計測技術駆使し、新事業展開~最先端のICTで人の顔・行動、車両の走行を測り、3Dデジタルモデルも作る~

サイトセンシング株式会社は、顔認識/属性計測ソフトウェアの「Face Grapher」、自律航法測位システムの「PDR plus」、3Dモデル作成サービスの「3D Modeling Service」という「計測」を基本とした3つの技術を用いた商品・サービスを開発し提供しています。平林隆社長の積極的な営業展開と広報活動により、徐々に世間に名の知られるところとなり、「3D Modeling Service」は東京都革新的サービス奨励賞を受賞するなど、注目を集めているベンチャー企業です。

平林 隆/Takashi Hirabayashi

平林 隆/Takashi Hirabayashi

サイトセンシング株式会社 代表取締役社長。1983年に早稲田大学理工学部建設工学専攻修士課程修了。1992年に米国ノースウエスタン大学ケロッグ校にてMBA取得。その後、ADLジャパン、A.T.カーニー、マッケンナGrにて経営コンサルタントとして活躍。2008年9月に産総研ベンチャー開発部へ。2012年6月サイトセンシング株式会社設立、代表取締役社長に就任。

「計測」の先端的かつ優れた技術を集めて成り立った企業

「計測」の先端的かつ優れた技術を集めて成り立った企業

― サイトセンシング株式会社設立までの経緯を教えてください。

平林隆さん(以下、平林):

私はもともと産総研のベンチャー開発部(現 ベンチャー開発センター)に所属し、そこで多くの技術に出会ったのですが、過去の経営コンサルタントとしての知見を活かした事業化も見据えていました。そんなとき、最初に担当したのが現在当社の商品にもなっている「Face Grapher」でした。

そして2012年6月にサイトセンシング株式会社を起業し、産総研技術移転ベンチャーの称号もいただき、翌年には東京都千代田区に事務所を移転しました。

この最初の立ち上げの後に、実はもうひとつの技術を利用して他に一社起業していましたが、「計測」という基本技術の集約を狙い、現在当社の技術的な中心的役割を担っている興梠取締役が興していた「行動ラボ株式会社」も併せ、合併という形で一緒になったのが現在のサイトセンシングです。結果的に3つの技術を持った、ベンチャーでは稀な形になっているのです。

「計測」を基本とした「Face Grapher」「PDR plus」「3D Modeling Service」の技術

「計測」を基本とした「Face Grapher」「PDR plus」「3D Modeling Service」の技術

― 「Face Grapher」とはどういうサービスですか?

平林:

「Face Grapher」は顔認識および属性計測ソフトウェアです。デジタル・サイネージやタブレットに搭載させることにより、来店客の属性調査や広告コンテンツの効果測定を可能にします。

日本では顔認識技術が長年にわたり使用されていますが、そのほとんどは顔認証と言われるもので、写されている人が前もって登録されている本人かどうか、いわゆる真贋問題の解決が主流でした。しかし「Face Grapher」は顔認識の技術で、不特定多数の人の年齢や性別、そしてスマイルレベル(笑顔の度合い)を測定するものです。

クラウド上で測定結果の認証やDRM、コンテンツ蓄積、スケジュール保持、計測結果の集約が行われ、グラフを作成するなどの「見える化」を行い、パソコンなどで表示できます。

例えば、デジタル・サイネージをのぞき込んでいる人の年齢や性別が分かり、面白いと思っているのかそうではないのか、などが測定できるのです。

― 「PDR plus」はどのような技術を元にした商品ですか?

平林:

GPSによる位置測定技術は進化していますが、実は屋内や地下、トンネルの中では衛星からの電波が届かないので、正確に位置を測定することは困難です。

当社の「PDR plus」は自律航法を採用し、加速度センサ類を用いることで、電波が届かない場所でも正確に基準点からの位置を計測できます。計測データは個別動線表示、複数動線表示、滞留時間ヒートマップといった直感的に分かりやすい可視化を施したうえで表示されます。

利用方法としては、屋内と屋外が混在する工場のプラントで作業員の動きや滞留時間を計測することで労働状況の把握を行ったり、フォークリフトなど車両の稼働率や走行距離・走行ルートを分析し効率性を測ったりすることが挙げられます。

使用する機材は至ってシンプルで、基準点にはビーコンを設置し、測定したい対象にはスマートフォンよりも小さくて軽いセンサを装着または設置するだけです。商業施設で消費者行動計測によるマーケティング、あるいは工場における従業員行動計測による業務改善に利用していただけます。

― 「3D Modeling Service」の概要と利点について教えてください。

平林:

対象物のカメラ撮影画像を組み合わせることで、3Dデジタルモデルを作成するサービスです。独自の画像貼り合わせ技術を駆使したもので、「東京都革新的サービス奨励賞」を受賞させていただきました。

通常のサービスでは、複数枚の通常画像や全天球カメラで撮ったデータから3Dモデルを作成します。そのため納期が短く、低価格で3Dモデルを作成することができ、データも軽いためにインターネットやスマートフォン上での閲覧が簡単にできるという特徴があります。
こうした特徴から当社で最も活発な事業が、この3D Modeling Serviceとなっています。
建設系を中心に複数の大手企業にお使い頂いています。

対象となる建物は、高層ビルやマンション、文化施設や飲食店などさまざまですが、元の画像の加工もできるため、工事中に撮った画像から工事機材を消すことや、屋根を取り払って施設の内観を見せるなど、オーダーに応じた3Dモデルが作成可能です。

また現存しなくても、古い1枚の写真から、あるいは遠近法で描かれた絵画を3Dモデルにすることもできますので、歴史や文化的な価値を生み出すのではないかと考えています。

技術革新と営業力強化を進め、海外展開も視野に入れる

「技術革新と営業力強化を進め、海外展開も視野に入れる」

― 3つの技術を展開するうえでの課題と、解決のための方策をお聞かせください。

平林:

計測の技術は優れていますが、まだ展開力が足りないと実感しています。ひとつの技術に注目が集まって多忙になれば、他の技術を展開させるためのマンパワーも足りませんし、正直なところ資金的にも事業を拡大させるには十分とは言えない状態です。個々の技術についても、もっとお客様の要望に応じた開発や改良が必要です。

そのためには営業力を強化し、安定的な供給を可能とする体制づくりが必要です。当然ベンチャーとしてのリスク管理も要求されますが、助走期間を経て一気に成長へと転換するための心づもりは常に持っています。

メッセージ

― 今後の事業展開と、将来の展望を教えてください。

平林:

日本国内はもちろん、海外への展開も機会あれば進めていきたいと考えています。これまでも「Face Grapher」はシンガポールからの引き合いや、タイへの納入実績があり、2017年10月にアラブ首長国連邦(UAE)で開催された展示会「GITEX Technology Week 2017」に出展した結果、「PDR plus」に非常に高い興味を示してくれる先もありました。

過去に経営コンサルタントをしていた時に感じたことですが、ベンチャー企業が伸びる時は、本当に短期間で急成長を遂げるものです。現在当社の技術は、幸いにも注目され始めていますので、成長の機を逃さずに、優れた技術を広めていきたいと思います。

※本記事内容は平成30年2月23日現在のものです。

サイトセンシング株式会社
〒101-0047
東京都千代田区内神田1-15-6 和光ビル3階A

Site Sensing Inc.
A 3F Wako Building, 1-15-6 Uchikanda, Chiyoda-ku, Tokyo 101-0047

http://site-sensing.com/

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