TECH Meets BUSINESS
産業技術総合研究所が創出・支援するベンチャービジネス

株式会社トリマティス 光を操り未来を拓く!未知の水中世界を測る技術 ~高速光デバイス技術+高速制御回路技術~

千葉県市川市に本社を置く株式会社トリマティスは、創業以来培ってきた高度な技術を、ベンチャーならではの視点を持って展開させています。2018年初頭、同社の技術を集約したLIDAR製品「LiDARキット」が発表されました。島田雄史社長の想いと顧客から届いた声、技術者の努力が結実した製品です。

島田 雄史

島田 雄史/Takeshi Shimada

株式会社トリマティス 代表取締役CEO。証券会社勤務を経て1995年9月に株式会社応用光電研究室に入社し技術営業に従事する。2001年7月には株式会社オプトクエスト設立に参加し、翌年8月に富士通東日本ディジタル・テクノロジ株式会社に入社。2004年1月に有限会社トリマティス(現株式会社トリマティス)を設立、代表取締役CEOに就任。

白鳥 陽介

白鳥 陽介/Yosuke Shiratori

株式会社トリマティス 取締役 営業統括。1997年4月オタリ株式会社入社。2006年1月に米国に渡りPeace University, Lubin School of Business入学、2008年1月同校修士課程修了、MBA, Management。同年4月イノベーション・エンジン株式会社に入社し、2012年9月にインベストメント・パートナーに就任。株式会社トリマティスを含む企業6社の社外取締役を歴任し、2015年8月株式会社トリマティス入社。2017年8月取締役に就任。

「時代の変化に適応し、技術展開をシフト」

「時代の変化に適応し、技術展開をシフト」

― 株式会社トリマティスが持つ技術のバックグラウンドを教えてください。

島田雄史さん(以下、島田):

会社を立ち上げたのは、高速の可変光減衰機(VOA=Variable Optical Attenuator)を作ろうと考えたからです。私は20年以上前に応用光電という会社で光について基礎から学んだのですが、今でこそ青色は可視光として認識できますが、当時はまったく見えない近赤外光だったので、何がどうなっているか分からない世界でした。しかし、ハイテク機器を製造するのに手作業で調整していくという不思議な光の仕事に魅力を覚えたのです。

光ファイバーで使われる光の世界は非常に面白くて、処理はデジタルで行われますが、最終的にはアナログ成分が残ります。自動車運転に使われるような技術自体はデジタル技術を駆使したハイテクなのですが、光を放った時点でアナログの世界に一変し、ゼロイチでは処理できなくなるのです。

一筋縄ではいかない光の技術に面白さを感じ、当時高速VOAが実現できる方式のアイデアを持っていた技術者と共に会社を設立しました。この技術を中心にして、現在では高速光デバイス技術と高速制御回路技術を組み合わせ、ナノ秒オーダーのサブ技術へと展開させています。

― 創業14年を超える実績があります。事業は順調に進みましたか?

島田:

時代の荒波にさらされて、よくここまで続いているな、というのが実感です。会社を興した2004年あたりは、日本に光ファイバー網が急速に整備されていく時代で、当然ながら光を使った通信技術は需要があると考えましたし、10年経てばインフラの置き換えが起こるだろうと予測していました。

しかし実際に10年が過ぎてみたら通信の世界は無線にシフトし、光ファイバーのインフラへの需要はピタッと止まってしまったのです。同時に光通信関係の研究開発も止まり、会社の経営的にかなり苦しい時期を過ごすことになってしまいました。

そこで私たちは、会社の構造改革を進めると同時に、違う業界に狙いをシフトさせることに決めたのです。それまでの光の技術と経験で作ったLIDAR(Light Detection and Ranging)を、水中に展開するというものでした。

LIDAR(Light Detection and Ranging)

水中探査向けにTOF(Time of Flight)方式のLiDARシステムのデモ機

「自社が持つ技術を進化させLIDARに適応」

「自社が持つ技術を進化させLIDARに適応」

― LIDARの仕組みについて教えてください。

白鳥陽介さん(以下、白鳥):

LIDARとはレーザー光を対象物に照射して対象物までの距離を測定する装置です。LIDARによる距離測定の方法はいくつかありますが、私たちが取り扱っているのはTOF(Time of Flight)方式というもので、出射光と反射光のパルスが時間的にずれることを利用し、往復伝送時間の情報により、距離を計算します。

暗闇でも距離を測定することが可能で、数ミリ単位の距離分解能力があり、対象物の形状把握までできるというのが特徴です。応用例には自動車の自動運転や、水中探査、ドローンによる地形探査への利用が見込まれています。

最も分かりやすいのは自動運転での応用でしょう。自動車からレーダー光を出して、道路上の障害物を検知する技術です。「点」だけで測定するのではなくて「面」を作って測るので、どういうものがそこにあるのかも分かるようになるのです。

― LIDARの開発を始めたきっかけは何だったのですか?

島田:

光ファイバー網向け機器の開発を行っている段階で、増幅器の技術が蓄えられてきました。これにもともと持っていたVOA等の短パルスの技術を兼ね合わせて、大電流・短パルスのLD(Laser Diode)ドライバを開発しました。この製品を最初は金属加工に使おうとしたのですが、うまく業界に入り込めず、LDドライバの機能と特徴をより活かせる場所を探していた時にLIDARに出会ったのです。

「未知の世界、水中を計測する新製品」

「未知の世界、水中を計測する新製品」

― 新製品「LiDARキット(Trimatiz LiDAR Kit)」はどういうものですか?

白鳥:

ベースとなるコントロールユニットに、投光デバイス、受光デバイスをそれぞれの回路ボードに乗せた投受光ユニットを搭載したもので、TOF方式のLIDARを構成します。柔軟なカスタマイズと拡張が可能な「LiDARキット」として製品化し、自動運転や建造物計測など各種アプリケーションに対応できるものです。高精度ボードを用いることにより、ミリメートルクラスの距離精度を実現しています。

島田:

LDドライバで困っているお客様の相談を受けているうちに、当時は光の送り手だけに焦点を絞っていたところ、実は受ける側の信号処理も重要だと気づき、最大の特長である投受光ユニットを搭載した製品を開発するに至ったのです。

― この技術はどの分野に展開される予定ですか?

島田:

このLIDAR技術を携えて、ベンチャーが進むべき道はどこかと模索しました。その結果、それは水中ではないかと気づいたのです。これまで音波でしか測定ができなかった領域を、光で可能にすることが私たちの役割ではないかと考えました。

そして千葉工業大学、東海大学、国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)の協力を得て、水上の空間と水中を同時に3Dスキャンする「DUAL LIDAR SYSTEM」を開発しており、特許も申請しています。

地上や空中に比べると水中はまだまだ未知の世界で、夢が広がっています。水中探索は限度がある音波や人手によるものがほとんどで、ダイバーたちの負担もかなり大きなものです。水中LIDAR技術がさらに発展すれば、JAMSTECが提唱する水中光無線ネットワークや水中IoTコミュニティの実現も期待されるところです。

メッセージ

― 最後に、本記事読者へメッセージをお願いします。

白鳥:

私たちは産総研を始めとした研究機関や大学とも研究開発を致しますが、目線は常に一般の事業会社やユーザーに向けた事業を行っています。その結果、通信がダメになっても技術力をLIDARに転嫁することができたのではないでしょうか。

島田:

日本ではハイテクのベンチャーは成功しにくいと言われています。でも今の大企業だって最初はベンチャーだったはずなのです。私たちもしっかりと事業の結果を残して、やればできるというところを見せていきたいと思っています。

千葉県市川市にあるオフィスビルの一角で今まさに最新機器の開発が行なわれている。

※本記事内容は平成30年2月9日現在のものです。

株式会社トリマティス
〒272-0023
千葉県市川市南八幡4-2-5 いちかわ情報プラザ 407

Trimatiz Co., Ltd.,
407 Ichikawa Business Plaza, 4-2-5 Minamiyawata,
Ichikawa City, Chiba Prefecture, Japan 272-0023


https://www.trimatiz.com

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