連携可能な技術の紹介 【ゴム】

少量サンプルでのゴム・添加剤の混練特性評価
解説:ゴム系材料では、複数の材料のブレンド体としたり、様々な添加剤を用いたりします。生産実機を用いて、ブレンドテストを実施したり、新しい添加剤の効果を確認したりすることは、様々な作業が発生してしまいます。また、実機を停止して、新しい材料・添加剤をテストする、トラブルが発生して、製品製造に影響が出る場合も考えられます。
 当研究グループでは、小型の混練機に、ゴム用としてバンバリー型のスクリューを準備しています。混練後は、金型を用いて熱プレス成形により、加硫してシート成形することができます。
参考:「研究紹介」
・完全にナノ化しないナノセルロース(部分ナノ化)の効果(ゴム補強)
・ナノセルロースのサイズと天然ゴムの補強効果
少量ゴムサンプルでの強度特性の評価
解説:少量のゴムサンプルでブレンドしたり、添加剤をテストしたりした場合、作製したゴム材料の特性を評価しないと、目的は達成できません。スクリーニング的テストでは、操作が簡単なことが重要となります。
 当研究グループでは、小型の熱プレスにより加硫・成形してシートを作製することができます。作製したシートは、ダンベル打ち抜き機を用いて、JIS規格の試験片が簡単に作製できます。作製した試験片の引張強度は、変位計を備えた強度試験機で、評価を実施することができます。
ナノセルロースの天然ゴム複合化特性評価
解説:ナノセルロース(セルロースナノファイバー/CNF)を補強材として利用する分野としてゴムの補強は、樹脂よりも、効果的に結果が得られます。ゴムには、天然ゴムと合成ゴムがありますが、天然ゴムでは、水分散液(ラテックス)が流通しています。この天然ゴムラテックスに含水ナノセルロースを複合化するプロセスはポリプロピレン等の樹脂よりは、ハードルが下がります。しかし、ナノセルロースとエマルジョンを混合する場合に、プロペラ式撹拌機などで強いせん断力を加えると、ナノセルロースがからまってダマになったり、ゴム成分が凝集したりします。そのため、均一に混合するためには工夫が必要となる場合が、多々あります。
 当研究グループでは、含水ナノセルロースの天然ゴムラテックス複合化方法として、自転・公転型ミキサーを用いた方法を採用しています。この方法では、脱気も同時に行うことができます。当研究グループでの条件では、混合時間は15分以下です。自転・公転型ミキサーの多くは、回転数や時間をプログラム設定できるため、原料に応じて、段階的に回転数や時間を調整することができます。また、少量のサンプルでの評価も実施可能です(一度に、キロ単位の混合はできません)。
 自転・公転型ミキサーで混合したマスターバッチサンプルは、バット等に薄く広げて、オーブン乾燥します。乾燥が足りない場合は、減圧乾燥もします。乾燥マスターバッチは、小型のバンバリー型混練機を用いて、各種添加剤を加えて、混練します。最後に、熱プレスを用いて、加硫と成形を行います。成形シートは、ダンベル試験片を打ち抜き、強度試験等を実施します。
 ナノセルロースのゴム補強効果は、従来のカーボンブラック等のフィラーと比較して、少ない量で大きく補強することができます。
材料・素材の混合・架橋度合いの評価
解説:フィラーを複合化した材料やゴムのように架橋した材料では、分散度合いや架橋度合いにより、材料の分子運動性が部分的あるいは全体的に変化します。分子運動性の評価では、核磁気共鳴法(NMR)を用いた緩和時間評価が良く行われています。この方法は、分子運動性が異なる部分が存在していれば、それぞれの部分を分けて評価することができます。この方法は、物質の分散や混合度合いの評価でも使われています。
 当研究グループでは、超伝導型マグネットのNMRと永久磁石型のNMRを備えています。超伝導型NMRは高分解能で様々な測定が可能ですが、サンプル形状への依存性や温度可変測定に注意が必要な場合も多々あります。そこで、架橋度合い等の測定では、永久磁石型NMRであるパルスNMRを用いる測定も行っています。パルスNMRは、基本的に緩和時間測定のみ(観測対象の核種は水素原子のみ)が可能で、スペクトルを取得することはできません。しかし、様々な状態のサンプルを試料管に入れて、装置にセットするだけで、測定が開始できます。温度可変の自由度も高く、超伝導型NMRでは困難な条件での測定も、比較的容易です。得られる結果は、サンプルの各成分・ドメインの運動性に起因する緩和時間の曲線が重なって1つの曲線として得られます。そのため、各成分・ドメインの運動性を数学的に分離して評価します。2成分までの分離は自動で行われ、各成分の緩和時間とその割合の情報が得られます。
 緩和時間は、短い場合は、運動性が低く、長い場合は、運動性は高いことを示します。ゴムの架橋評価などでは、架橋度が進んだドメインは、緩和時間が短くなり、運動性が低下していることが分かります。
ゴム材料の利用特性評価(強度以外)
解説:ゴム材料は、様々なゴム素材とのブレンドやフィラーの種類や添加量を制御して、多様な用途の製品が製造されています。それらゴム材料の物性として、引っ張り強度などは重要な項目です。しかし、製品としての利用性では、耐摩耗性やグリップ性なども重要な項目となります。
 当研究グループでは、JIS規格や国際標準法に準拠した条件でゴム材料の特性評価が行える装置を準備しています。DIN摩耗試験装置では、JIS K 6264-2(A法、B法)、ISO4649、DIN53516に準拠した測定ができます。また、DIN摩耗試験に用いる試験片を作成するための、専用金型や専用の切り抜き機も用意しています。また、摩擦特性評価装置では、専用の圧子を一定荷重でサンプルシートに当て、サンプルを平行移動させることで、静摩擦および動摩擦を評価できます。さらに、繰り返しによる、摩擦特性の変化も評価可能です。樹脂シートについては、JIS K7125に準拠した摩擦評価もアタッチメント交換で対応可能です(現在は付属していません)。ゴム材料の強度は、耐摩耗性や摩擦特性、硬度などとも相関があります。これら物性を評価して、総合的に材料の特性を明らかにすることが大切です。