連携可能な技術の紹介 【樹脂】

少量サンプルでの樹脂・添加剤の混練特性評価
解説:樹脂系の製品開発では、様々な設備が使われています。量産による製品の低コスト化はとても重要ですが、新しい素材や添加剤をテストしたい場合に、生産実機を停止し、利用するのは簡単ではないと思います。製品の生産数が減ったり、樹脂・添加剤が設備に合っておらず、トラブルが発生するかもしれません。また、材料交換は、系内に残った材料を十分に置き換える必要があり、少量しか入手できなかった試供品などでは、テストもできません。
 当研究グループでは、実機での生産に参考となるデータも取得可能な、小型の混練装置や押出機を備えています。混練試験は、10グラム程度からも実施可能です。混練ユニットのバリエーションもあり、様々な試験が実施可能です。
参考:「研究紹介」
・固相せん断法によるセルロースナノファイバーの樹脂複合化技術
・リグノセルロースナノファイバー樹脂複合材料を用いた試作品
少量樹脂サンプルでの強度試験片の作製
解説:当研究グループでは、少量の樹脂や添加剤の混練試験ができる、小型装置を備えています。混練したサンプルについては、様々な評価を実施することになりますが、強度試験も重要なポイントです。樹脂系製品の多くは、射出成形ですが、生産実機では、金型交換も手間がかかり、また、材料交換では、装置規模によっては、数キロの原料を必要とします。
 当研究グループでは、小型の射出成形機を備えています。小型のため、JIS規格の試験片が作製できる金型は取り付けできませんが、この小型射出成形機は、大型・汎用の射出成形機と同じ機構「可塑化-型締-7射出-イジェクト」を持っており、連続生産もできます。さらに、材料の交換と複数の試験片の作製試験は、100グラム程度で実施可能です。試験片金型は、引張強度試験用のダンベル、曲げ試験・衝撃試験用の短冊があります。強度は、試験片の断面積で割った値であるため、小型の試験片であっても意味あるデータが取得できます。
少量樹脂サンプルでの強度特性の評価
解説:少量サンプルを混練試験し、次いで小型射出成形機で作製した試験片は、強度評価をして始めてまとまります。強度試験装置として、引張強度試験、曲げ試験、衝撃試験ができる装置を複数台、揃えています。強度試験装置は、恒温・恒湿室に設置しており、作製した試験片を所定時間養生した後,その場で試験が実施可能です。強度試験装置は、JIS規格の試験片も、問題なく評価できます。ゴム系材料の引張強度試験では、結果の信頼性を向上させるため、変位計ユニットも備えています。
ナノセルロースの樹脂複合化特性評価
解説:ナノセルロース(セルロースナノファイバー/CNF)を用いた樹脂補強は、最も注目されているテーマです。一般的なナノセルロースは大量の水を含んでいます。このナノセルロースを樹脂と複合化する方法として、様々な技術が提案されています。含水状態のナノセルロースをポリプロピレン等の樹脂に溶融混練した場合、樹脂の溶融温度が200℃近いため、急激に水が蒸発して、ナノセルロースは凝集し、混練操作を続けても、再分散することは、ほぼ不可能です。
 当研究グループでは、含水状態のナノセルロースのポリプロピレン複合化技術として、「マスターバッチ法」や「固相せん断法」を開発しています。
○「マスターバッチ法」では、融点が100℃以下の特殊樹脂(物性改善用樹脂等)を用いて、水が急激に蒸発しない温度で、水と特殊樹脂を置換する混練処理をします。ナノセルロースは、遠心分離等で濃縮して利用します。こうして得られたマスターバッチ(ナノセルロース濃度:~50wt%)は、最終成形体で必要とする目的濃度(5wt%程度)になるようにポリプロピレンを加えて溶融混練して、最終的な複合材料を作製します。複合材料は、射出成形等で成形できます。
○「固相せん断法」では、遠心分離等で濃縮した含水ナノセルロースを、粉末状のポリプロピレンに適切なせん断力を加えて混合(ナノセルロース濃度:~10wt%)します。ただ、この場合は、樹脂が溶融しない温度で実行します。水とポリプロピレン粉末を置換するイメージです。混合では、せん断力の印加度合いが重要であるため、常に混練装置のトルクをモニタリングします。固相せん断処理が終了した後、水分が残っている場合は、オーブン等で乾燥処理します。その後、ポリプロピレンが溶融する温度で混練して、複合材料を作製します。複合材料は、射出成形できます。
参考:「研究紹介」
・固相せん断法によるセルロースナノファイバーの樹脂複合化技術
・リグノセルロースナノファイバー樹脂複合材料を用いた試作品
樹脂等成形品からの解析用サンプルの切り出し
解説:樹脂やゴム材料・製品は様々な方法で作製されています。成形時の温度や金型の条件により、表面の成分が改質・変質する場合があります。また、成分の異なる材料を積層して製造されるシートや、材料同士を接着剤で貼り合わせる材料もあります。あるいは、溶融した樹脂や凝固性樹脂に部品を埋め込んだ製品もあります。さらに、原料や製法を変えると、微細な異物が侵入したり、今までにない変化がでる場合もあります。表面状態や積層構造、異物などを走査型電子顕微鏡などで調べようとした場合、本来の構造を壊すことなく、目的の部分のみを小さい評価用サンプルとして、切り出す必要がありま。
 当研究グループでは、樹脂成形品や発泡体、積層体の断面や異物の切り出しによる高分解能走査型電子顕微鏡観察を行っています。比較的大きなサンプル、脆いサンプルなど、最初に適切なサイズに切り出す方法として、ダイヤモンドをコーティングした細いワイヤーで切断します。この装置は、ダイヤモンドワイヤーソウと呼ばれます。サンプルにもよりますが、5μm程度以下の平滑さでの切り出し、湿式と乾式の両方に対応、ワイヤー位置をマイクロスコープで確認しながら切断等ができる装置を準備しています。この装置は、樹脂以外にも、金属や鉱物、金属部品が封入された部品の切断なども行うことができます。ダイヤモンドワイヤーソウで切り出したサンプルは、さらに必要に応じて、滑走式ミクロトームやクライオウルトラミクロトームで切片を作成し、原子間力顕微鏡などでの高度な評価も実施します。