連携可能な技術の紹介 【ナノセルロース】

原料によるナノセルロース製造特性の評価
解説:ナノセルロース(セルロースナノファイバー/CNF)は、原理的には全ての植物から製造することができます。しかし、原料の特性により、製造効率は異なります。多くのナノセルロースは、木材由来のパルプを原料として製造されている。これらの製造では、水と機械処理が必須です。機械処理としては、ディスクミル(グラインダー/電動型石臼)や高圧ホモジナイザーが一般的です。
 当研究グループでは、これでに、各種木材由来の木粉、各種パルプ、柑橘果皮や大豆の皮などの食品系残渣、稲わらやもみ殻、サトウキビ廃材のバガスなどの農業系残渣からナノセルロース製造テストを実施した経験があります。製造装置としては、木材チップも原料とできるように、粗粉砕カッターミル、微粉砕できる気流粉砕機を備えて前処理できるようにしています。さらに、これら原料のナノ化は、ディスクミルを4台(ディスク径:6インチ、15インチ)、200MPa以上で処理可能な高圧ホモジナイザーを3台(ナノ化の機構が異なる)、備えています。
参考:「研究紹介」
・セルロースナノファイバーの一般的製造方法(概要)
・樹種によるリグノセルロースナノファイバー製造効率の違い123
参考:「技術のポイント一覧」
・簡単な?ナノセルロースの作り方。
・再現性よくナノセルロース作る。
・ディスクミル装置を用いたナノセルロース製造の概要
・ディスクミル装置による木粉からの直接的なナノセルロース製造
ナノセルロースの各種特性評価(まとめ)
解説:入手したり、作製したりしたナノセルロース(セルロースナノファイバー/CNF)を使いこなすためには、まずは、その特性を知る必要があります。特性が分からないと、複合化等して作製した材料の特性が発揮されない場合の原因もつかめなくなります。ナノセルロースは、今までにない、超微細な有機物であり、極めて高い凝集力などから、特性解析は簡単ではありません。多くの機器分析では、乾燥サンプルを必要としており、乾燥サンプルの調製も課題になる場合があります。
 当研究グループでは、高度に凝集を抑制したサンプル乾燥法を構築しており、調製した乾燥サンプルを用いて、高分解能走査型電子顕微鏡(FE-SEM)による評価、原子間力顕微鏡顕微鏡による評価、比表面積評価、X線回折による結晶性評価、核磁気共鳴装置(NMR)による精密分子構造評価が実施可能です。また、ナノセルロースの形状・サイズの情報は得られませんが、品質管理にも利用できるレーザー回折法による粒度分布測定、他の分析方法では得られない情報が得られる沈降特性評価、レオメーターによる粘弾性評価を実施することもできます。さらに、ナノセルロースの純度等を調べるため、加水分解後の糖組成を高速液体クロマトも利用できます(セルロースは基本的にはグルコースのみから形成されていますが、木材を原料とした場合には、ヘミセルロース等が必ず一定量含まれています。木材パルプは、精製してもヘミセルロースをゼロにすることは相当に困難です)。
ナノセルロースの形状評価
解説:ナノセルロース(セルロースナノファイバー/CNF)は、ミクロンサイズのパルプや木粉を原料として製造されています。機械処理のみで到達できるサイズは、幅15nm程度とされています。TEMPO酸化触媒などを用いると、最終のサイズである幅3nmのシングルセルロースナノファイバーまでナノ化することができます。しかし、ナノ解繊の途中では、様々な形状やサイズが存在しています。入手したり、作製したりしたナノセルロースを使いこなすためには、その形状はとても気になります。
 当研究グループでは、ナノセルロースの形状を顕微鏡的に直接観察する方法として、高分解能走査型電子顕微鏡(FE-SEM)や原子間力顕微鏡顕微を備えています。これら分析装置で、明確に形状評価するためには、その前処理(サンプル調製)が大切です。原子間力顕微鏡顕微鏡観察の場合、基盤にナノセルロース懸濁液をスピンコーターで塗布するなどで観察します。高分解能走査型電子顕微鏡(FE-SEM)観察で、明瞭な画像を得るためには、蒸着処理(スパッタ)により導電性コートをしますが、一般的な白金や金の蒸着は、蒸着物が粒子で付着するため、適していません。そのため、回り込みがよく、平滑なコート面が得られる、オスミウムコーターを用いています。また、ナノセルロースは、電子顕微鏡の電子線に弱いため、加速電圧は、1kV程度で観察します。当研究グループでは、低加速電圧でも鮮明な高倍率画像が得られる装置を備えています。
参考:「技術のポイント一覧」
・ナノセルロースのSEM(走査型電子顕微鏡)観察
ナノセルロースの比表面積評価
解説:ナノセルロース(セルロースナノファイバー/CNF)の特性評価には、色々な方法がありますが、比表面積評価は、どの程度までナノ解繊されているのかの情報が得られます。電子顕微鏡観察などは、直接的に形状・形態の評価が可能ですが、全体の一部しか評価できず、平均値としての解繊度合いは分かりません。比表面積は数値として得られるため、ナノセルロース同士の比較も容易です。しかし、比表面積測定は、乾燥サンプルを必要とします。ナノセルロースは極めて凝集力が強いため、高度に凝集抑制して乾燥サンプルを調製しないと、比表面積測定結果は意味がなくなります。凝集したサンプルでは、比表面積は低くなります。乾燥方法が適切でない場合は、含水状態の本来の比表面積の10分の1以下の値しか得られません。
 当研究グループでは、t-ブタノール置換による凍結乾燥法や臨界点乾燥法(極めて微細なTEMPO触媒酸化法によるシングルセルロースナノファイバー向け)により、乾燥サンプルを調製し、比表面積計で測定しています。測定前には、専用測定容器にサンプルを充填して、専用の乾燥前処理装置で、再度,乾燥処理をします。比表面積計は2台揃えており、一度に6サンプル(3サンプル×2台)の測定も可能です。
参考:「技術のポイント一覧」
・比表面積測定によるナノセルロースの評価
・ナノセルローススラリーを凍結させると凝集する。
・ナノセルロースを凍結乾燥しても凝集している場合がある。
・高純度ナノセルロースは水中でも凝集する場合がある。
・アルコール置換によるナノセルローススラリーの凍結乾燥方法。
・ナノセルロースの凝集を高度に抑制して乾燥するためには。
物質(ナノセルロース等)の沈降特性評価
解説:含水したナノセルロース (セルロースナノファイバー/CNF)の多くは、クリーム状の高粘性スラリーとなっている場合が多いです。しかし、ナノセルロース濃度を0.1wt%程度以下にすると、セルロースの比重は1.5であるため、ナノ解繊度合いにより時間は異なりますが、沈降します。TEMPO触媒酸化法によるシングルセルロースナノファイバーなど、超微細なナノセルロースは、水分子との相互作用で、希釈しても沈降しない場合がほとんどです。沈降速度やパターンは、ナノセルロースの形状・形態に大きく影響されます。また、沈降のプロセスでは、大きな物質や重たい物質は、速く沈降するため、混合物の測定では、分級も同時に起こるため、分布の情報も得ることができます。ナノセルロースの場合、幅が大きいものは、速く沈降します。
 ナノセルロース以外にも、乳化物やスラリーなども、その特性により沈降や分離することがあります。製品によっては、保管中の分散安定などは重要で、様々な分散剤や界面活性剤が用いられることもありますが、沈降速度・パターンを数値として捉えると、サンプル同士の比較なども容易になります。
 当研究グループでは、サンプル管の上下方向の多点で光透過率等から濃度の経時変化を測定できる装置を備えています。この装置は、温度調整も可能(4℃~80℃)で、一度に6サンプルの測定が可能です。
参考:「研究紹介」
・沈降法によるナノセルロースの評価
参考:「技術のポイント一覧」
・ナノ化率(完全にナノ化してないセルロース繊維の指標/一部がナノ化したセルロース繊維の指標)
・沈降法によるナノセルロースの形状・形態評価