2024年度 ポスター賞受賞の皆様
2024年度LS-BT合同研究発表会のポスター賞受賞者は、以下の3名の皆様です。 大変おめでとうございます。
受賞にあたり、研究を始めるきっかけやご苦労等をインタビューさせて頂きました。
P085 1粒子ゲノム情報を用いたパンゲノムグラフ構築による環境ファージの種内多様性解析
Constructing pangenome-graphs from single-virus genomic data to investigate diversity in environmental phages
産総研-早大システムビッグデータ解析オープンイノベーションラボラトリ(CBBD-OIL)
我妻 竜太 リサーチアシスタント
きっかけとしては、細菌のシングルセルゲノム情報からファージ配列を検出し、ファージと細菌の相互作用を調べる解析をトライアル的に行ったことからでした。 その過程で、環境中のファージの多様性や形成されている相互作用に興味を抱き、本格的に環境中ファージの研究に取り組み始めました。 研究を進めるうちに、生物ではないとされるファージの「物質」とも「生物」とも言える不思議な挙動や進化の過程に興味を持ち、本格的に研究を始めました。 解析をすればするほど面白い情報を提供してくれる環境ファージという対象に熱中し、知的好奇心をモチベーションに研究を遂行しています。
はじめに、データ解析手法の確立から始めました。 同一種間の多様性という詳細な解析を行うためには、個々のゲノム情報に少しの誤りが大きな問題を引き起こします。 しかし従来は、新規の環境ウイルスゲノム情報中の汚染を判定する手法がなく、詳細な解析が困難でした。 そこで、私はまず環境ウイルスゲノム情報中の汚染を判定する機械学習手法の開発から始めました。 このように解析基盤を構築した上で、様々な仮説や応用解析に踏み込んで研究を進めています。
私はファージが生態系の支配者ではないかと妄想しています。 ファージをコントロールすれば、様々な環境中の現象をコントロールできるのではないかという夢を抱き、研究の展開を考えています。 将来的には、大規模データベースを構築し、そこから発見した有用遺伝子や有用なファージのゲノム情報を活用したものづくりに取り組みたいと考えています。 既にファージの産業応用はある程度進んでいますが、培養条件外でのファージについてはほとんどが未知であるため、一般的な応用が限られていました。 そのため、今回の研究のように今まで知られていなかった環境ファージの多様性形成パターンを明らかにすることは、ファージの安定的な産業応用のためにも重要であると考えています。
私のようなデータ解析を専業とする研究者は、データの取得を可能にする技術を作り上げた方々、データを取得してくださるウェット研究を行っている方々がいなければ、研究をすることすらできません。 また、現在までの全研究生活でお世話になっている指導教官を中心に、指導者に恵まれなければ、研究を好きになることも、続けることもできていませんでした。 このような周りの方々への感謝の気持ちは研究を遂行する上で最も重要だと考えており、日々のコミュニケーションを大切にしています。 研究遂行において大切にしているのは泥臭く仮説を思考し続けることです。すぐに手を動かすのではなく、妄想のような仮説も含めてあり得ることを列挙し、実現可能性とインパクトのバランスを考慮して一つずつ潰していくことを徹底しています。 また、「研究の軸を持つべき」という言葉を大切にしています。研究者としてどのように生きたいのか、何を明らかにしたいのかを日々自問することを大切にしています。
私は、産総研・早大CBBD-OILのRAとして研究に取り組ませていただいております。 産総研OILが提供してくださる研究に集中できる環境や計算資源のおかげで、このような光栄な賞を受賞させていただける研究成果につながったと思います。 本当に感謝しております。
(2024年6月現在)