LS-BT合同研究発表会

2024年度 ポスター賞

2024年度 ポスター賞受賞の皆様


2024年度LS-BT合同研究発表会のポスター賞受賞者は、以下の3名の皆様です。 大変おめでとうございます。 受賞にあたり、研究を始めるきっかけやご苦労等をインタビューさせて頂きました。

P121 線虫C.elegansを用いた体内糖化の研究と食品の抗糖化性評価への応用

Study of in-vivo glycation using C.elegans and its application to evaluation of anti-glycation of foods

写真




地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所
化学技術部 環境安全・バイオグループ
瀬戸山 央 主任研究員

その研究を始めたきっかけと遂行のモチベーション

線虫C.elegansは優れたモデル生物として古くから研究に用いられています。 私が初めて線虫と出会ったのは約15年前に現在の所属に就職したときです。 その時に線虫を用いて食品の抗老化作用を評価するというテーマで研究をスタートしました。 その後、線虫の寿命を指標として食品の抗老化作用評価を行う中で、老化には“酸化”と“糖化”が関与していることを学びました。 “酸化”に関してはすでに様々な研究がされていたため、まだ知られていない部分の多い“糖化”に興味を持ち、線虫を用いて糖化の研究が出来ないかと考えてこの研究に取り組むことにしました。
過度な糖化は身体によくないことや疾患の発症要因となることは知られていますが、糖化をどの程度抑えればよいのか、糖化を抑えることで老化の進行も抑制できるのかなどは分からないことだらけです。 線虫をモデルとして体内の糖化と老化の関係を少しでも明らかにしていくというモチベーションをもって研究を行っています。

その研究をどのように進めたか

ヒトにおいては体内の糖化は加齢によって進むことが分かっていました。そこで線虫も同様なのかを確かめることにしました。 その結果、線虫もヒト同様に加齢に伴って糖化が進んでいくことがわかったため、線虫を用いた糖化の研究で得られたことは恐らくヒトにも適応可能であると判断して研究を進めていきました。 次に既知の糖化を抑制する成分を線虫に投与し、線虫体内の糖化が抑制可能か検証を行いました。 結果として狙い通り線虫の体内糖化を抑制することができ、目標としていた線虫を用いた糖化を抑える食品、成分の評価系の構築に大きく前進することが出来ました。

これからどのように展開していくか

我々の身体は食べたものから出来ています。食べたものによって身体の老化が過度に進んだり、あるいは老化を遅らせて健康でいることができたりすることはとても興味深いことです。 特に食品には糖化反応が関わるものが多くあります、味噌、醤油、パンなどどれも身近なものです。 これまでの研究では、線虫を用いた糖化を抑える食品、成分の評価系の構築に力を入れてきましたが、これからの展開として、糖化した食品の摂取が体内にどのような影響を及ぼすのかを線虫を用いて明らかにしていきたいと思っています。

一番大切にしていることや、研究をしていてうれしかったことやつらかったこと

研究をしていく上で楽しんでやることを一番大切にしています。 現状の仕事は、企業様からの依頼試験や受託研究が仕事全体の7~8割を占め、その残り時間で研究をしている状態です。 そのため研究を行う時間を作るのは大変ですが、その反面、自分の好きな研究を行えているときは非常に楽しい時間になります。 研究をしていてうれしかったことは、この研究テーマで外部資金(科研費)に採択されたことです。
そのおかげで資金面での不安もなく研究を行うことができ、その研究成果を基にして博士号を取得することもできました。 一方つらかったことは、所属に同じ分野の人がおらず研究の相談などが出来なかったこと、グループの人間関係が悪化し精神的に不調になってしまったことです。 研究には資金面だけでなく、周りの人(環境)も大事であることを実感させられました。

その他

研究には気分転換、メリハリが大事だと思っています。 私は平日の勤務時間中は常に研究テーマのことを考えていますが、逆に勤務時間後や休日は研究のことは一切考えませんし、パソコンも開きません。 子供たちと遊びつつ、頭の中は空っぽです。 これは極端すぎる例かもしれませんが、このぐらいメリハリがあってもいいのではないかと思っています。

(2024年6月現在)