LS-BT 2025

ポスター発表一覧

お知らせ

ポスター発表は下記のカテゴリー毎に分類しております。 ポスター発表者は、各自ポスター発表にあたっての諸注意をご確認の上、下記Floor map(会期少し前に情報をアップします)のご自分のポスター番号の位置に所定の時間内にポスターを掲示してください。

  • 【貼付時間】6/18(水) 8:00~12:00の時間にボードに貼付して下さい。(当日受付は9:00から)
       前日6/17(火)16:00頃から早めの貼付も可能です。遠距離のため、指定貼付時間までにポスターを貼付できない方は、前日までに事務局宛にポスターをご郵送下さい。
  • 【掲示時間】2日間、6/18(水) 12:00~6/19(木) 12:00の間は必ず掲示して下さい。
  • 【撤去時間】6/19(木)14:00頃に事務局で回収・処分致します。ポスターをお持ち帰りいただく方は撤去時間前にご自身でお取り外しください。

ポスター発表のコアタイムは、下記になっています。

  • 15:30 - 16:30

    発表コアタイム1 (ポスター番号奇数 P001、003、005・・)

  • 16:30 - 17:30

    発表コアタイム2 (ポスター番号偶数 P002、004、006・・)

  • 17:45 - 19:30

    交流会・ポスター賞授賞式

(注)発表者のご所属欄中、国立研究開発法人、独立行政法人、地方独立行政法人、学校法人等の名称は一部省略、 産業技術総合研究所は産総研と省略して記載させて頂いております。ご了承ください。

2025/06/02 公開

全102件

1:ヘルスケア/Healthcare (P001~P012)

腸内環境, プロバイオティクス, ストレス耐性

P001
高ストレス耐性プロバイオティクスの機能評価

Functional evaluation of a highly stress-tolerant probiotic lactic acid bacterium

発表者

○草田 裕之(1)、玉木 秀幸(1)

所属

(1)産総研 バイオものづくり研究センター

概要

乳酸菌がプロバイオティクスとして機能するためには、ヒト腸内で安定的に生存・定着・増殖することが求められる。しかし、乳酸菌は一般的に様々なストレスに対して感受性が高く、特に投薬による抗菌薬の影響を強く受けることが知られている。我々は近年、ストレス耐性の高い新規な乳酸菌を発見し、本菌が抗生物質のみならず、毒性の高い胆汁酸にも高い耐性を示すことを明らかにした。本発表では、高ストレス耐性乳酸菌の特性と耐性に係る分子メカニズムを解明した結果について紹介する。また、本菌を抗菌薬と併用する抗菌薬耐性乳酸菌製剤(整腸剤)として利活用する展開について議論したい。

腱細胞、オルガノイド、三次元培養、筋芽細胞、筋分化

P002
腱細胞 3 次元培養モデル + 伸展負荷技術と応用

Tensile loaded tissue-engineered 3D tendon construct model

発表者

○土屋 吉史(1, 2)、藤本 雅大(1, 2)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門、(2)産総研 セルフケア社会実装センター

概要

腱細胞の 3 次元培養技術は、腱細胞を生体に近い環境 (腱細胞が Collagen type1 線維に挟まれた状態) で 3 次元的に培養することで人工的に腱様組織 (オルガノイド) を作ることのできる技術である。この技術に、運動を模倣するような伸展刺激を行うことのできる技術も併合させ、本研究のような伸展刺激誘発性の腱由来因子を検出することが可能なプラットフォームを構築した。本モデルを活用することで、生体では観察し難い腱-筋の繋がりを解明していきたい。

Haptics, Biofeedback, MEMS

P003
極薄ハプティックMEMSを用いたバイオフィードバックデバイス開発

Development of ultra-thin haptic MEMS device for tactile biofeedback

発表者

○竹下 俊弘(1, 2)、Daniel Zymelka(2)、古澤 亜樹(2)、竹井 裕介(1, 2)

所属

(1)産総研 セルフケア実装研究センター、(2)産総研 ハイブリッド機能集積研究部門

概要

バイオフィードバックとは、本人が知覚できる形態に生体情報を変換しフィードバックすることでその生体情報に基づいてセルフコントロールを効率的に行うアプローチのことである。我々は触覚刺激を用いたバイオフィードバックについて研究を行っており、特に超軽量・柔軟・低背という特徴を有した振動素子である極薄ハプティックMEMSデバイスの開発を進めている。本発表では開発した極薄ハプティックMEMSデバイスの基礎評価とバイオフィードバック応用展開について報告する。

セルフケア 健康モニタリング、行動変容

P004
セルフケア実装研究センターが目指す健康寿命延伸の実現に向けた技術

A new technology to realize a “lifelong active society” by Integrated Research Center for Self-Care Technology

発表者

○丸山 修(1)

所属

(1)産総研 セルフケア実装研究センター

概要

超高齢社会、過疎化、医療関係者不足などから、高齢者等、地域住民が医療を十分に受けられないことが懸念されている。セルフケア実装研究センターでは、自宅等での医療的なデータ、日常生活上のデータ、そして生活環境のデータを統合して、AIを活用しながら適切な健康度評価モデルを構築する技術の確立を目指す。この技術を活用することで、健康寿命が延伸する社会が実現する。本発表では、その健康寿命延伸が実現するための技術について紹介する。

脈波伝播速度、動脈スティフネス、姿勢

P005
心臓-上腕間の脈波伝播速度に対する測定姿勢の影響

Effect of the measurement posture on heart-to-brachium pulse wave velocity

発表者

○坂本 琳太郎(1, 2)、福家 真理那(1, 2)、星 大輔(1, 2)、菅原 順(1, 3)

所属

(1)産総研 人間情報インタラクション研究部門、(2)日本学術振興会、(3)産総研 セルフケア実装研究センター

概要

心臓-上腕間の脈波伝播速度(hbPWV)は、近位大動脈スティフネスの指標であり、早期の心血管疾患リスクマーカーとして注目されている。もし座位測定が可能であれば、日常的な簡易測定から早期の疾患予防に貢献しうる。以上より、座位姿勢がhbPWVに与える影響を明らかにすることを目的とし、19名の健常成人を対象に、座位・背臥位にてhbPWVと心臓-足関節間PWV(haPWV、比較指標)を測定した。その結果、hbPWVは姿勢による差は認められなかったが(P = 0.08)、haPWVは座位にて高値を示した(P < 0.01)。hbPWVは測定姿勢に影響されにくく、座位のhbPWV測定は、近位大動脈スティフネスを簡便に評価する手段となり得る。

非侵襲マーカー、未病マーカー、糖タンパク質

P006
心疾患リスクを高める慢性的ストレス状態を早期発見するための唾液糖鎖バイオマーカーの探索

Discovery of saliva glyco-biomarkers for early detection of chronic stress conditions that increase the risk of cardiac diseases

発表者

○佐藤 智之(1)、大石 勝隆(1)、豊田 淳(2)、岡谷 千晶(1)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門、(2)茨城大学 農学部 食生命科学科 飼料資源科学研究室

概要

本研究では、慢性的なストレス状態を反映する唾液中の非侵襲バイオマーカーの開発を目指して、うつ病モデルである社会的敗北モデルマウスを用い、うつ様症状と相関した糖鎖変化を示す糖タンパク質を探索した。唾液のレクチンアレイ解析を行った結果、ストレス負荷群の中で、うつ様症状および心筋ストレスの増加に伴い減少する糖鎖構造を見出した。また当該糖鎖構造を有する糖タンパク質候補を見出し、うつ様症状(慢性的なストレス状態)の唾液バイオマーカーとしての有用性が示唆された。今後、マウスで得られた知見を基にヒト検体を用いて慢性的ストレス状態と相関する有力マーカー候補を探索する。

予防医学、健康寿命、グリンパティック・システム

P007
脳老廃物クリアランス機構に対する加齢と運動の影響:認知症予防に向けた取り組み

Impact of Aging and Exercise on Brain Waste Clearance: Toward Dementia Prevention Strategies

発表者

○樽味 孝(1)、浅原 亮太(1)、福家 真理那(2)、星 大輔(2)、菅原 順(1)

所属

(1)産総研 セルフケア実装研究センター、(2)日本学術振興会 特別研究員

概要

アルツハイマー病(AD)の原因とされるアミロイドβ(Aβ)は、症状が現れる約20年前から脳内に蓄積し、神経変性や認知機能障害を引き起こすことが知られている。 近年承認されたAβ除去薬は、AD患者の認知機能低下をある程度軽減するものの、疾患の根本的な治療には至っていない。 そこで本研究では、脳脊髄液(CSF)の循環を介した脳老廃物クリアランス機構の活性化に着目し、認知症の根本的な予防法の確立に向けた研究を推進している。 本発表ではその一環として、一過性の有酸素運動が若年者および中高齢者のCSF循環に及ぼす影響を示すとともに、今後の研究展開について紹介する。

転倒予防、骨格検出技術、動作のばらつき

P008
座位での足踏みリズムのばらつきを用いた高齢者の転倒リスク評価方法の開発
―日常生活中に行う安全な動作に着目してー

Development of a Method for Evaluating Fall Risk in the Elderly Using Variability in Seated Stepping Rhythm - Focusing on Safe Movements in Daily Life

発表者

○小林 吉之(1)、須藤 大輔(1)、和田 直樹(2)、板津 泰史(3)

所属

(1)産総研 セルフケア実装研究センター、(2)産総研、(3)SOMPOケア株式会社

概要

本研究は日常生活中に既に行われている安全な動作から、高齢者の転倒リスクを評価する方法を開発することを目的とした。 介護現場で実際に行われている座位での体操に着目し、①実験室において地域在住高齢者23名を対象とした実験と、②高齢者施設において体操教室に参加している入居者67名を対象とした実験を行った。 両実験共に、体操時の足踏みリズムのばらつきは転倒経験者が非転倒経験者より有意に大きかった(p<0.05)。 以上より、座位での体操時における両膝の上下動を分析することで、特別な動作を記録しなくても、安全かつ複数人同時に、撮影時の画角の制限もなく、経時的に、転倒リスクの評価ができる可能性が示された。

老化、フレイル、健康寿命

P009
新規老化促進モデルマウスにおけるフレイル因子の探索

Identification of frailty factors in a novel aging-accelerated mouse model

発表者

○Minjung Lee(1)、Fan Yang(2)、Daniel Globisch(2)、Akimoto Takayuki(3)

所属

(1) Cellular and Molecular Biotechnology Research Institute, AIST, (2)Department of Chemistry-BMC, Uppsala University, (3)Faculty of Sport Sciences, Waseda University

概要

Aging is a complex biological process that increases vulnerability and eventually leads to death. Studying the underlying mechanism of aging can provide us strategies for how to prevent age-related diseases, as well as how to treat progeroid syndromes. Our group has coincidently found that deletion of specific microRNAs (miR-Xs) accelerated aging process in mice. To investigate the underlying mechanism, we have been identifying novel and unknown metabolic factors that are responsible to accelerate aging. In this presentation, we would like to introduce precise phenotypes of the miR-Xs mice and recent progress in the metabolomic profiling.

acute aerobic exercise, magnetic resonance imaging, neurocognitive efficiency

P010
一過性有酸素運動が若年者および中高齢者における認知タスク実施時の神経処理効率に与える影響

Acute Effects of Aerobic Exercise on Neurocognitive Efficiency in Healthy Young and Older Adults

発表者

○浅原 亮太(1, 2)、福家 真理那(3)、星 大輔(3)、菅原 順(1, 3)樽味 孝(1, 3)

所属

(1)産総研 セルフケア実装研究センター、(2)産総研 健康医工学研究部門、(3)産総研 人間情報インタラクション研究部門

概要

【目的】運動が認知機能に与える効果や脳内メカニズムは明らかでない。本研究は、一過性有酸素運動が、認知タスク実施時の課題成績と脳活動、神経処理効率に与える効果を調べ、加齢差を検討した。
【方法】若年者15名、中高齢者19名を対象とした。実験条件として、中強度の歩行運動の前後に認知タスクを行う運動条件、座位安静の前後に認知課題を行う安静条件を設定した。fMRIで認知課題時のBOLD信号(脳活動の指標)を測定し、課題成績との関係から神経処理効率を算出した。
【結果】 若年者、中高齢者ともに、運動前後で課題成績は改善、脳活動は減少、神経処理効率は改善した。しかし、運動条件の改善効果は、安静条件と比べて、差はなかった。また、改善効果に年齢による差はなかった。
【結論】 年齢を問わず、課題の反復実施により、神経処理効率は改善するが、改善効果は、一過性有酸素運動によって増強されない。

Augmented reality、virtual reality、assistance system

P011
VR技術を活用した検品支援手法の予備的評価 ― 医薬品卸売営業所の仮想環境における試行 ―

Preliminary Evaluation of an Inspection Assistance Method Using VR Technology ? A Trial in a Virtual Environment Simulating a Pharmaceutical Wholesaler Office

発表者

○小澤 重樹(1)、三浦 卓也(1)、一刈 良介(2)、三好 拓己(2)、風見 北斗(3)、本山 貴志(3)、蔵田 武志(2)

所属

(1)東邦ホールディングス-産総研ユニバーサルメディカルアクセス社会実装技術連携研究ラボ、(2)産総研 人間社会拡張研究部門、(3)東邦ホールディングス株式会社

概要

本事例の対象である医薬品卸の営業所から顧客施設への配送工程では、携帯端末と紙伝票によるアシストシステムが利用されている。 このような工程における業務改善のために、ARによるアシストシステムの導入が検討され始めている。 しかし、日本の産業界ではまだARの認知度が低いため、プロトタイピング、既存システムとの比較、関係者との成果共有からなるサイクルをできるだけ効率的に行えるよう、VR環境を構築した。 このVR環境での事前評価結果から、VRシミュレーションの再現性と有効性、AR支援手法の優位性が確認された。 さらに、ISMAR2024のデモセッションをはじめとする様々なセッションでのフィードバックから、従来の概念や物理環境とデジタル支援手法の両立の重要性が示唆された。

生成AI 自動化

P012
応対要約におけるChatGPTプロンプトエンジニアリング手法の確立

Exploring ChatGPT Prompt Engineering Methods in Customer Interaction Summarization

発表者

○上野 信太朗(1)、野上 晶弘(1)、坂本 哲二(1)、堺澤 航(1)、本間 久雄(1)、中田 幹穂(1)、古田 能裕(1)、武田 俊一(1)、葭中 潔(1)

所属

(1)東邦ホールディングス-産総研ユニバーサルメディカルアクセス社会実装技術連携研究ラボ

概要

医薬品卸売業のコールセンターは、顧客である医療機関からの医薬品の在庫確認や納期の問い合わせに対応し、情報提供を通じて最終的に患者へ医薬品の確実な供給を支援している。 近年、医薬品の流通不安定問題により問い合わせが増加し、特に後処理業務である応対記録作成に負荷が掛かっている。 具体的な課題として手入力による作業時間の増大と、オペレーター間での作成時間と内容の差がある。本研究では既存の音声認識テキストデータを活用し、OpenAI社のChatGPTにより応対記録を作成する。 そして最適なプロンプトエンジニアリング手法を確立し、業務効率の向上と記録品質の均一化を目指す。

2:医療機器/医療支援技術
(Medical devices / Medical supporting technology) (P013~P022)

多糖誘導体、体内挙動、高分子ゲル

P013
リン酸化プルランの体内動態の検討

Investigation of the pharmacokinetics of phosphopullulan

発表者

○吉原 久美子(1)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門

概要

唇顎口蓋裂患者の顎裂部骨移植は、腸骨からの自家骨採取が一般的であるが、健全な腰への外科的侵襲は大きい。 採取量の軽減ができれば、腰からの自家骨の採取なく口腔内からの自家骨採取のみで手術可能となり、患者の負担を減らすことができるだけなく、入院期間を短縮でき医療費の削減にもつながる。 そこで、歯質接着理論からリン酸基を付与した多糖誘導体リン酸化プルランを開発し、顎裂部骨移植の自家骨の増量材として用いる検討を行っている。 本発表では、顎裂部骨移植のヒトへの利用に向けて、実施した安全性試験について報告する。

オンライン診療システム

P014
遠隔医療に必要とされる技術の開発

The development of technologies required for telemedicine

発表者

○久保田 泰広(1)、西山 修司(1)、丸山 修(2)

所属

(1)東邦ホールディングス-産総研ユニバーサルメディカルアクセス社会実装技術連携研究ラボ、(2)産総研 セルフケア実装研究センター

概要

「Doctor to Patient with Nurse (D to P with N)」は、医師の働き方改革や患者の受診機会増大に効果を与えると期待され、厚生労働省が推奨する遠隔医療モデルの一つである。訪問診療とオンライン診療の中間に位置付けられると捉えることもできる。 D to P with Nの活用により、医療サービスの質が向上し、医師の負担軽減にもつながることが期待されている。 このモデルは、特に看護師が常駐している、高齢者施設や僻地医療において有効とされている。

非侵襲光計測、オキシメトリー、ECMO

P015
酸素飽和度99%以上の高酸素分圧下における高精度光オキシメトリー法の開発

Development of a high-precision photo-oximetry under high oxygen partial pressure with oxygen saturation of 99% or higher

発表者

○齋藤 優衣(1)、根津 綾杜(1)、渡邉 宜夫(1)、迫田 大輔(2)

所属

(1)芝浦工業大学大学院 理工学研究科、(2)産総研 健康医工学研究部門

概要

通常のパルスオキシメータ―では酸素飽和度の計測分解能は1%であり、酸素分圧150 mmHg以上では100%の飽和表示となる。 すなわち空気より高酸素濃度の気体で呼吸した場合の血中酸素分圧または酸素飽和度は定量評価できていない。 本研究では模擬ECMO回路において酸素分圧150 mmHg以上を可視近赤外分光法と機械学習を用いて推定することができた結果を報告する。 将来的にはECMO中の使用だけでなく、パルスオキシメーターに開発アルゴリズムを実装してヘルスケアへの展開を考えている。

顕微内視鏡、線毛活動、粘液表面反射波動

P016
顕微内視鏡によるヒト鼻腔粘膜の無侵襲 in vivo 線毛活動観察

Noninvasive in vivo Observation of Sinonasal Ciliary Activity by Endomicroscopy

発表者

○山下 樹里(1)、横山 和則(2)、熊谷 徹(3)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門、(2)つくばフラワー耳鼻咽喉科、(3)産総研 インテリジェントシステム研究部門

概要

通常の鼻用硬性内視鏡にズームアタッチメント(新興光器製作所製)を取り付け、顕微鏡並みの拡大率を持たせた「顕微内視鏡」を用いて、ヒト鼻腔粘膜表面の線毛活動を観察した。 線毛そのものは見えないが、線毛打により生じる粘液表面の波動(反射波動と呼ぶ)が観察できる。 内視鏡下副鼻腔炎手術適応のある10症例について、術中・術後1~6ヶ月での反射波動画像をビデオ記録し、反射波動の強さを評価した。 反射波動の他に、線毛活動による異物の移動そのものが観察でき(2例)、肥厚粘膜(3例)やポリープ様粘膜(3例)の表面に反射波動が認められたケースもあった。線毛機能不全症候群の診断等での利用が期待される。

健康増進、運動、力学的刺激

P017
運動模倣力学的刺激による健康増進効果の分子機序解明と、それに基づく運動効果模倣機器の開発

Elucidation of the molecular mechanisms underlying health-promoting effects induced by exercise-mimicking mechanical stimulation, and the development of devices based on this understanding to mimic exercise effects

発表者

○崎谷 直義(1, 2)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門、(2)産総研 セルフケア実装研究センター

概要

運動による健康増進効果は多岐にわたり、「Exercise is Medicine」と謳われているが、その分子機序には未解明な点が多い。運動により、身体局所に変形や内圧変化が生じ細胞に力学的刺激が加わることに着目し研究を進めてきた発表者は、これまでに運動に身体に生じる力学的刺激(運動模倣刺激)が、高血圧(Nat Biomed Eng 2023)や廃用性筋萎縮(Clin Sci 2018)の改善効果を有することを示してきた。最近では、生活習慣病を中心に、運動模倣力学的刺激による運動効果の再現の検証を開始している。

超音波治療、超音波診断、医薬品医療機器総合機構(PMDA)

P018
超音波技術を用いたヘルスケアプラットフォームの開発

Development of healthcare platforms using ultrasound technology

発表者

○高木 亮(1)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門

概要

私は医療機器、ヘルスケアデバイスの上市に向けて、超音波技術を使用した医療機器及びヘルスケアプラットフォームの研究開発を行っています。 具体的には、強力な超音波エネルギーを使ってがん等を治療する超音波治療機器、AIを駆使して高度な診断を可能にする超音波診断技術、医療機器評価のためのシミュレーション技術及び生体ファントムの開発を行っています。 また、私自身の医薬品医療機器総合機構(PMDA)での実務経験に基づく、医療機器薬事承認申請のための戦略立案・相談等も行っています。

細胞融合、PEG脂質、膜透過性ペプチド

P019
細胞融合を促進するペプチド結合高分子材料の開発

Development of Peptide-Conjugated Polymers to Promote Cell Fusion

発表者

○佐藤 佑哉(1)、寺村 裕治(1)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

細胞融合は、同種または異種細胞同士を融合させて新しい機能性細胞を産生する現象であり、モノクローナル抗体の産生など、バイオテクノロジーに応用されている。 既存の膜融合法として、ポリエチレングリコール(PEG)法、電気融合法、ウイルス法が知られているが、いずれも細胞への毒性が高く、融合効率が低いという課題を抱えている。 膜融合が起こる過程において、重要な要素は膜同士の接着と脂質交換である。 この二つの要素をバイオマテリアルによって誘導する膜融合材料として、PEGの両末端に膜透過性ペプチドとリン脂質をそれぞれ結合させた両親媒性高分子を設計・開発した。 リポソームや細胞を用いて、膜融合現象を詳細に検討した。

Oral Microbial, Tongue coating, NGS

P020
口腔細菌叢構成に影響を及ぼす生活習慣因子についての検討

A Study on Lifestyle Factors Affecting Oral Microbial Community Structure

発表者

○松本 真理子(1)、鈴木 駿也(2)、堀江 祐範(1)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門、(2)産総研 バイオものづくり研究センター

概要

舌苔における口腔細菌叢構成に影響を及ぼす生活習慣因子(食習慣および口腔清掃習慣)について検討を行うため、20~60歳の男女40名を対象とし、起床時舌苔を採取し、16S rRNA遺伝子を対象としたアンプリコンシーケンス解析、BDHQ質問票を用いた食習慣・栄養摂取調査、舌清掃10日間介入、口腔診査を実施する臨床研究を行った。 それぞれの結果を統合し、相互の関連性について解析を行い、菌叢構成に影響を及ぼす生活習慣因子についての検討を行った。 将来的に、生活習慣の変容により菌叢を健康型へとシフトさせる、「菌叢からアプローチするヘルスケアの提案」へと繋げることを目指す。

超音波画像診断、医用ロボット

P021
ロボットを用いた超音波検査の自動化に関する研究

Toward Automated Robotic Ultrasonography

発表者

○津村 遼介(1, 2)、奥崎 功大(3)、小泉 憲裕(3)、松本 直樹(4)、葭仲 潔(1, 2)

所属

(1)産総研 セルフケア実装研究センター、(2)産総研 健康医工学研究部門、(3)電気通信大学 情報理工学研究科、(4)日本大学 医学部 消化器肝臓内科学分野

概要

超音波検査は非侵襲・無被曝で多岐に渡る診断の適用が可能だが、検査者の手技のばらつきによる取得画像の再現性や読影の客観性がCT等と比較して劣ることが課題となる。 また不自然な姿勢で長時間の検査が必要なため、高頻度で筋骨格系障害を起こすことが問題視されている。 これらの課題に対し、本発表では腹部を対象に、スクリーニングの自動化を目指した超音波検査支援ロボットについて報告する。

生体材料、人工骨、インプラント

P022
ユニット化と集積による生体材料利用の提案

Proposal for Biomaterial Applications through Unitization and Integration

発表者

○寺岡 啓(1)

所属

(1)産総研 人間情報インタラクション研究部門

概要

生体材料を機能的なユニットにして運用するアイデアを提案している。 本報告では具体的に硬組織補綴に関して、リン酸カルシウム系生体材料を骨形成構造を確実に付与した成形体(人工骨ユニット)とし、それらの集積により所定形状の多孔質人工骨を製造する方法、及び該人工骨ユニット集積体が提供する気孔構造や骨形成能と予知性に関する実例を紹介する。また、人工骨ユニット単体での利用、例えば細胞操作や注入療法の可能性について解説する。 さらに、人工骨ユニット集積によるAdditive manufacturingの可能性を動画で示す。

3:次世代医療/診断技術
(Next-generation medical/diagnostic technology) (P023~P034)

機能的超音波イメージング、新生児、安静時脳ネットワーク

P023
機能的超音波イメージングによる新生仔動物の安静時脳ネットワークの可視化

The resting-state network in neonatal mice detected by functional ultrasound imaging

発表者

○後藤 太一(1, 2)、釣木澤 朋和(3)、笠原 和美(3)、葭仲 潔(1)、新田 尚隆(1)、疋島 啓吾(1)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門、(2)日本学術振興会 特別研究員、(3)産総研 人間情報インタラクション研究部門

概要

周産期における脳機能モニタリングは、発達評価と予後予測に有用である。 本研究では、脳内の微細な血管までも可視化することが可能な機能的超音波イメージング(fUS)を用いて、正常な新生仔マウスの安静時脳機能ネットワークの計測システムを前臨床的に新たに確立した。 結果、身体の感覚機能や運動機能、認知機能などに関わる複数の脳内ネットワークを検出することに成功した。 本成果は、新生児に対するfUS計測の出生後早期における脳機能評価に対する有用性を指摘することができ、今後は脳性麻痺や自閉症などの出生後早期に脳機能の評価と介入を必要とする疾病疾患への脳機能モニタリング基盤技術へ発展を試みる。

歯科材料、生体用ガラス、抗菌性

P024
歯科材料向け抗菌性リン酸塩ガラスの開発

Preparation of antibacterial phosphate glasses for dental applications

発表者

○李 誠鎬(1)、吉原 久美子(2)、板坂 浩樹(1)、赤澤 陽子(3)

所属

(1)産総研 マルチマテリアル研究部門、(2)産総研 健康医工学研究部門、(3)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門

概要

歯科材料向け抗菌性リン酸塩ガラスの開発を目指し、亜鉛、マグネシウムを導入した液相法によるガラス作製プロセスを確立した。 作製したガラスはXRDの結果よりアモルファスとリン酸亜鉛系の結晶の複合体であった。グラム陰性菌の大腸菌、グラム陽性菌の黄色ブドウ球菌を用いて、ハロー法により抗菌特性の評価を行った。 作製したガラスは阻止円 (抗菌性あり) が見られ、その幅は亜鉛含有量の多い組成において広くなっていた。 本研究より開発した新規リン酸塩ガラスは、抗菌性歯科用材料としての応用が期待できる。

細胞捕捉、高分子

P025
生きたまま浮遊細胞を固定化する基板修飾高分子材料

Substrate-modified polymer material for immobilizing suspended cells while maintaining viability

発表者

○吉原 栄理佳(1)、須丸 公雄(1)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

細胞のプロセシングは、生物学的研究や医療分野に広く応用されており、特に細胞治療において重要な役割を果たしている。 細胞培養加工物を患者に投与するためには、汎用性の高い技術が求められる。細胞捕捉性を有する材料としてBiocompatible Anchor for cell Membrane(BAM)が知られており、片末端に官能基を有するBAMは、化学処理した基板表面に修飾することで、基板上に浮遊細胞を捕捉することが可能である。 より簡便な手法によってこのような細胞捕捉材料を基板表面へ固定化できれば、浮遊状態の細胞を捕捉・操作する技術として、細胞プロセシングへのさらなる応用が期待される。 本研究では、ポリビニルアルコール(PVA)に細胞膜への挿入性を有する長鎖アルキル基を導入し、これを基材表面に修飾することで、汎用性の高い細胞捕捉性表面の調製を試みた。

自己免疫疾患、診断、血中自己抗体

P026
自己免疫性肺疾患および血管炎の原因自己抗体の同定:診断・治療応用を見据えた新規マーカー

Identification of Causative Autoantibodies in Autoimmune Lung Diseases and Vasculitis: Novel Biomarkers with Diagnostic and Therapeutic Potential

発表者

○福田 枝里子(1)、松田 和樹(2)、五島 直樹(1)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門、(2)東京大学 医学部

概要

これまで原因不明であった自己免疫性の間質性肺疾患および皮膚動脈炎に対し、我々はそれぞれの原因自己抗体を世界で初めて同定した。 本成果は、産業技術総合研究所が保有する世界最大規模のヒトcDNAライブラリーと、独自開発したプロテインアレイ技術により達成されたものである。 これらの自己抗体は血清中から検出可能であり、疾患の診断マーカーとしての応用が期待される。 現在、本技術の移転先を探索中であり、両疾患に関してはすでに特許出願済みである。 さらに、病因抗体の同定により疾患機構の理解が進み、対症療法に代わる根本的治療法の開発にもつながることが期待される。

血栓症、新規診断マーカー

P027
血栓症の早期診断マーカーとしての細胞外小胞のアッセイ系構築

Development of an Assay System for the Early Diagnosis of Thrombosis Based on Extracellular Vesicles

発表者

○近藤 聖奈(1)、重藤 元(1)、熊野 穣(1)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門

概要

心疾患、脳血管疾患の血栓症関連の病態は死因における割合が高く、特に心筋梗塞や脳卒中は、一度発症すると重篤な後遺症が残ることがあるため、発症前の早期診断・治療が強く求められている。 既存の血栓マーカーは発症後の診断マーカーであり、発症前の早期診断を可能にするマーカーが必要とされている。そこで、血栓症の早期診断マーカーとして細胞外小胞に着目し、凝固活性検出法を構築する。この新たな抗血栓薬の薬効評価法を用いて患者の血液に含まれる細胞外小胞を評価することにより、各患者に適した薬剤の提供を目指す。

血液、診断薬、抗凝固薬

P028
血栓予防に用いる抗凝固薬の効果確認方法の構築

Establishing methods to assess the effectiveness of anticoagulant drugs used for thrombosis prevention

発表者

○熊野 穣(1)、吉原 久美子(1)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門

概要

脳梗塞・心筋梗塞などの血栓症予防には抗凝固薬が用いられるが、出血の副作用があり、各患者で出血リスクなく適切に機能しているかを確認する評価ツールが求められている。本研究では、近年、急速に普及した直接阻害型抗凝固薬(DOAC)を中心として、その抗凝固効果を凝固反応に対する阻害作用を確認することで判定する方法を確立した。本研究をもとに、超高齢患者やハイリスク患者に最適な用量調整が可能な環境を構築して出血事象を未然に防ぎ、患者予後の向上に貢献する。

診断薬、研究開発、バイオマーカー

P029
診断薬開発における課題解決支援サービス

Support in development of in vitro diagnostics products to provide the solution

発表者

○熊野 穣(1)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門

概要

健康寿命の延伸には病気の早期発見・早期診断が重要であり、そのためには新たな診断薬の開発、臨床研究、薬事申請が必要である。 診断薬開発時は、抗体試薬であれば抗原との反応性、非特異反応の程度、磁性粒子・ラテックス粒子との結合能、大量生産方法など考えるべき課題は多い。 さらに、GMPや薬機法の把握に加えて、倫理指針に準拠しての臨床研究の研究計画立案など、法的な知識も求められる。 産総研では、これらの課題に対する解決支援サービスを行うことで、日本全体としての診断薬開発の技術力を上昇させ、開発スピードを短縮して、日本発のバイオマーカー開発に貢献する。

循環がん細胞、バイオチップ、自動化

P030
血中循環がん細胞検査に資する自動細胞標本作製装置の開発

Development of a device for preparing a sample for circulating tumor cell diagnostic inspection automatically

発表者

○梶本 和昭(1)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門

概要

循環がん細胞(CTC)は、腫瘍組織から遊離して血管内に侵入したがん細胞であり、血流を介したがんの遠隔転移に関わっています。 私たちは、手のひらサイズのプラスチック平板上に1,000万個以上の細胞を単層に配列、保持させる表面処理技術を新規に開発しました。 表面処理を施したチップ上に血液細胞を展開し、免疫多重染色を行うことで既存法では検出できない膵臓がん由来のEpCAM陰性CTC検出にも成功し、進行がんに対する診断法として実用化を目指しています。本発表では、CTC検査のための煩雑な細胞標本作製プロセスを自動化できる新たな装置開発について紹介する。

超音波、音速測定、診断

P031
超音波診断の高精度化を目指した音速測定技術の開発

Development of speed-of-sound measurement technique for improving the accuracy of ultrasound diagnosis

発表者

○新田 尚隆(1)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門

概要

生体内における超音波の伝搬速度(音速)は、組織の種類や疾病状態によって異なることが知られ、有用なバイオマーカーとして期待されている。 そのため本研究では、従来の超音波診断と同様の手技のまま、音速情報を利用した疾病の早期診断を実現するべく、手持型プローブから得られる後方散乱波を用いた高精度な音速測定法の開発を進めた。 シミュレーションやファントム実験により開発手法の基本性能を確認し、動物の肝組織や軟骨組織を用いたex vivo実験を行い、開発手法が実組織に対しても適用できることを実証した。

がん、塩化物イオンチャネル、抗体

P032
がん細胞浸潤に関わる塩化物イオンチャネルCLIC1認識抗体の開発

Development of an antibody recognizing CLIC1, a chloride ion channel involved in cancer cell invasion

発表者

○山岸 彩奈(1, 2)、今井 翔月(1, 2)、飯嶋 益巳(3)、中村 史(1, 2)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門、(2)東京農工大学大学院 工学府 生命工学専攻、(3)東京農業大学 応用生物科学部

概要

CLIC1はがん細胞で過剰発現し、浸潤に寄与するため、創薬標的として近年注目を集めている。 通常CLIC1は細胞質において可溶性の高い安定な構造をとるが、悪性のがん細胞では膜結合型チャネルに構造遷移するメタモルフィックタンパク質である。可溶型の分子構造は解明されているが、膜結合型は極めて不安定であり、その構造や構造遷移メカニズムも未解明である。そこで本研究では、膜結合型CLIC1の機能解析とがん浸潤抑制を目的として、抗CLIC1モノクローナル抗体を新たに開発した。本研究で取得された膜結合型CLIC1 特異的抗体は、将来的に抗体医薬としての応用が期待される。

多重染色、病理診断

P033
多重染色による病理診断法の開発

Development of new multiplex staining methods for pathological diagnosis

発表者

○長崎 晃(1)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

日本では病理医不足が深刻な社会問題となっている。 この課題の対処として病理標本のデジタル化が進められ、さらにAIによる画像診断の導入も試みられている。 しかし、現在のAI診断は古典的な染色法に基づく病理切片を対象にしており、形態認識に依存しているため、診断精度やAIモデルの学習過程に課題が残されている。これまでのところ、AI診断を前提とした染色法の開発は行われていない。我々は、生体組織に存在する各細胞種をそれぞれ異なる色で可視化できる革新的な染色法を開発してきた。本発表ではAI診断に特化した新しい組織染色法(Color Phase法:CP法)の開発について紹介する。

ST-SandAl, genome editing method

P034
次世代ゲノム編集法:ST-SandAlゲノムデザインシステムの構築

Next-generation genome editing method: Development of the ST-SandAl genome design system

発表者

○間世田 英明(1)、回渕 修治(2)、三宅 正人(3, 4)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(2)産総研 細胞分子工学研究部門、(3)東邦ホールディングス-産総研ユニバーサルメディカルアクセス社会実装技術連携研究ラボ、(4)生命工学領域連携推進室

概要

ゲノム編集法は、DNA配列を正確に改変できる技術で、疾患治療や農業分野で期待されている。 特にCRISPR-Cas9は効率と精度が高い一方、オフターゲット効果や倫理的問題、安全性への懸念がある。 さらに、臨床応用にはロイヤリティーを含め、高額な開発・運用費用の問題や、医療の公平性への影響も指摘されている。 今回、我々は、off-targetが極少でかつ、国内の知財のみで構成される次世代のゲノム編集法:ST-SandAlゲノムデザインシステムの構築を進めたので、紹介する。

4:創薬基盤 (Drug discovery platform)  (P035~P048)

光ゾル-ゲル転移、インゲル細胞培養、3Dゲルプリンタ

P035
光で水溶液を即時ゲル化させるバイオポリマー材料

Biopolymers to gelate aqueous solution in rapid response to light

発表者

○須丸 公雄(1)、沖原 正明(1)、友田 綾花(1)、高木 俊之(1)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

1%以下の希薄な濃度で水溶液に溶解させ短時間光を照射すると即時ゲル化する新規ポリマー材料を開発、インゲル培養系をはじめ、これまでにない細胞操作や細胞培養技術を実現する強力なバイオツールとしての応用検討を行った。

DNA、水和水、sub-THz

P036
対イオン依存的なDNAへのsub-THz波照射作用

Counterion-dependent sub-THz irradiation effects on DNA

発表者

○今清水 正彦(1)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

生体機能の発現には、水和が不可欠です。しかし、水和の生体機能への関与について多くが未解明です。 私達は、水の水素結合ネットワークに直接影響を与えるサブテラヘルツ(sub-THz)波を活用することで、従来の技術では困難だった水和構造の変化を介した生体機能制御の実現を目指しています。 本研究では、DNAの水和を変える対イオンとsub-THz波照射の組み合わせにより、DNAの塩基対形成が非熱的に変化することを紫外分光法によって明らかにしました。 この成果は、生体機能制御の新たなアプローチを示すものであり、今後、核酸医薬やDNAナノテクノロジー、遺伝子発現制御技術などへの応用が期待されます。

創薬、機能性分子、自動化

P037
機能性分子の発明は自動化の時代へ

Automation for Discovery of Functionalized Molecules

発表者

○石原 司(1)、本田 真也(1)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門

概要

少子高齢化が進む日本では、労働生産性の向上や知識・技能の継承が危急の課題となっています。 そこで我々は、次世代産業の発展の礎となる研究活動そのものの自動化を目指しております。 本研究では、突出した付加価値をもたらす、しかし、従前の方法論では数年もの歳月を伴う医薬品創出を題材に掲げ、その自動化を進めました。 近年における機械学習の飛躍的進化は医薬候補分子の設計を、日本の優位点であるロボット技術の深化は医薬候補分子の合成を自動化しえます。既に、自動設計と自動合成の具現化と融合による自動発明装置を構築し、稼働を始めています。将来的には、医薬産業のみならず、ファインケミカル全般への展開を目指しています。

クリプティックサイト、トポロジカルデータ解析、分子動力学シミュレーション

P038
創薬標的枯渇問題の解決を見据えたタンパク質の隠された相互作用部位の探索

CrypToth: A Method for Discovering Cryptic Sites in Proteins

発表者

○小関 準(1)、本野 千恵(2, 1)、今井 賢一郎(2, 1)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門、(2)産総研 セルフケア実装研究センター

概要

タンパク質の中には結合分子が接近したときにのみ構造変化を起こし、結合部位(クリプティックサイト)を形成するものがある。 これらは創薬標的として非常に重要視されてきたが、その予測は困難であった。 我々は混合溶媒分子動力学シミュレーションと独自に開発したトポロジカルデータ解析法であるDAISを組み合わせて、既存のAI手法を凌駕する精度で予測可能なCrypTothを開発した。 CrypTothを用いることで従来創薬標的として認識されていなかった1万を超える疾患関連タンパク質から新規創薬標的を見出すことが可能となり、現在問題となっている創薬標的枯渇問題を解決に導く可能性がある。

アジュバント、多孔質無機材料、メソポーラスシリカ

P039
抗がん免疫を増強する多孔質無機材料

Porous inorganic materials that enhance anti-cancer immunity

発表者

○王 秀鵬(1)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門

概要

がん抗原に対して免疫反応を活性化でき、ヒトに使用可能なアジュバントの開発が望まれます。 私たちは百種類以上のアジュバント用多孔質無機材料の合成・評価を行い、メソポーラスシリカなど多孔質無機材料単独でがん免疫療法用アジュバントに使用できることを初めて動物実験で示しました。さらに、開発したメソポーラスシリカなど多孔質無機材料は手術、薬物、放射線、免疫チェックポイント阻害薬のさらなる効果増強作用を示しました。これらの多孔質無機材料は、従来のアジュバントよりも安定性、保存性、コスト面において格段に優れています。

リポソーム、セルミメティクス

P040
細胞模倣としてのリポソームの可能性

Harnessing the Potential of Liposomes as Cellular Mimetics

発表者

○森田 雅宗(1)、佐々木 章(1)、野田 尚宏(1, 2)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(2)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

リポソームは、細胞膜と同様のリン脂質二分子膜からなる人工的に調整可能な脂質膜小胞です。 私たちは、100 nm程度のナノサイズから50 μm程度のマイクロサイズの様々な大きさのリポソームを自在に作製する技術を有しています。 これら技術をベースに、様々な生体分子と組み合わせ、ボトムアップ的手法によるナノ・マイクロサイズの各階層に応じた細胞模倣システムの開発にチャレンジし、これらを分析する手法の開発等に取り組んでいます。本ポスターでは、我々が取り組んでいる研究事例を紹介し、細胞模倣材料としてのリポソームを用いた連携の可能性について議論します。

新規創薬標的、疾患関連変異、クリプティックサイト

P041
疾患関連変異のタンパク質構造上の空間分布に基づく新規創薬標的部位探索法

Prediction of novel drug target site based on spatial distribution of disease associated missense variants

発表者

本野 千恵(1, 2)、鍵和田 晴美(1)、小関 準(1)、○今井 賢一郎(1, 2)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門、(2)産総研 セルフケア実装研究センター

概要

疾患関連変異は、タンパク質構造上で機能部位近辺に集積する傾向がある。 また、既知の機能部位に紐づかない集積部位は、未発見の機能部位を指し示す可能性があり、これらの中には、化合物との相互作用により動的に生じる隠れた薬剤結合部位(クリプティックサイト)も多く含まれると考えられる。クリプティックサイトは、創薬標的としても期待でき、その新規発見は創薬プロセスが抱える標的の枯渇問題解決の一助なる。 そこで、本研究では、疾患関連変異をタンパク質の立体構造上での集積(3D変異クラスタ)という単位でとらえ、3D変異クラスタを基点としたクリプティックサイト探索法を提案し、新規創薬標的の創出を目指すものである。

神経機能、オルガノイド、毒性評価

P042
食品・医薬品・化成品が脳機能へ与える影響を組織レベルで評価-ヒト脳オルガノイドによる神経機能・毒性評価-

Tissue-Level Evaluation of the Effects of Food, Pharmaceuticals, and Chemicals on Brain Function ? Neurofunction and Neurotoxicity Assessment Using Brain Organoids

発表者

○小高 陽樹(1)、平野 和己(1)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

動物実験削減とヒトへの外挿性の向上の観点から、ヒト細胞を用いた生体模倣モデルの開発が求められています。 ヒト細胞から作製される脳オルガノイドは、ヒト脳の発達過程を再現し脳組織構造を模倣できることから、脳機能評価への適応が期待されています。 産総研では、脳オルガノイドの作製・解析に関するノウハウを蓄積しており、大脳皮質や海馬、視床下部、小脳など様々な脳領域の作製実績があります。 また、脳内免疫細胞のミクログリアを含有した脳オルガノイドにより脳内免疫系を評価することが可能です。

エクソソーム,生体共役反応,抗体-触媒複合体

P043
エクソソーム表層マーカー選択的化学修飾法

Selective chemical modification of exosome directing surface markers

発表者

○生長 幸之助(1)、舘野 浩章(2)、上田 善弘(3)

所属

(1)産総研・筑波大 食薬資源工学OIL、(2)産総研 細胞分子工学研究部門、(3)産総研 化学プロセス研究部門

概要

エクソソームは細胞外小胞(EV)の一種であり、細胞間情報伝達や物質輸送に重要な役割を果たす。 しかし、高純度エクソソームの簡便な取得技術や機能改変技術が未発達であるため、理解の深化や機能解明が進まず、科学的エビデンスを伴った産業応用の障壁となっている。 我々は、若手融合チャレンジ研究の枠組みにより、酸化触媒とエクソソーム抗体を複合化させた触媒反応系を用いることで、エクソソームマーカー選択的な化学ラベル化技術の開発を行った。

遺伝子制御ネットワーク、転写制御、一細胞NGS解析

P044
核酸標識を用いたRNA動態の時間発達の推定

Inference of temporal development for RNA kinetics using nucleotide labeling

発表者

○川田 健太郎(1, 2)

所属

(1)産総研 セルフケア実装研究センター、(2)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

遺伝子発現は転写と分解のバランスによって制御される。従来、遺伝子発現は転写因子による転写制御が中心であるとの見方が支配的であった。 しかし近年、多くの癌腫や代謝疾患でRNA分解などの転写後調節の異常が確認されている。 従って、疾患特異的な細胞状態を理解・制御するためには、転写のみならず、転写後調節の異常を検出する技術が必要となる。 本研究では細胞内RNA標識法により、細胞内RNAの転写と分解を一細胞レベルかつ網羅的に定量する手法を開発する。 これにより細胞種や状態に依存した転写や分解の異常を検出することが可能となり、新たな薬剤標的・モダリティの探索に繋がると期待される。

イメージング、組織評価、細胞評価

P045
生体分子の「見える化」で拓く新たな創薬基盤とヘルスケアイノベーション

Visualization of biomolecules toward development of novel drug discovery platform and healthcare innovations

発表者

○宮古 圭(1)、長崎 晃(1)、赤木 祐香(1)、竹田 怜央(1)、岡谷 千晶(1)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

マルチモーダル分子イメージング研究グループは、第6期部門重点課題である「未病ヘルスケアプラットフォーム」構築のもと新規創設された研究グループである。 当研究グループでは、質量分析や顕微鏡を用いて、組織・細胞内に存在する糖鎖や代謝物などの生体分子の空間情報や細胞種および細胞の活動を可視化するイメージング技術の開発を行っている。 これにより、疾患や健康状態の指標となる分子の同定およびその組織内局在の解明を通じて、新規創薬標的や疾患診断法、さらにはヘルスケア分野における疾患予防のための新たな介入法の提案を目指している。 本発表では、当グループによる最新の技術開発の進捗について紹介する。

Aptamer, DDS, 診断

P046
特異的アプタマー(SureGrip Aptamer)技術の開発と応用

Development and Applications of SureGrip Aptamer Technology for Highly Specific Molecular Targeting

発表者

○宮岸 真(1)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門

概要

核酸アプタマーは、ターゲット分子に高い親和性で結合する一本鎖核酸であるが、その特異性に課題があり、特に検出分野での実用化は限られている。 私たちは、負の選択制御、NGS解析に基づく配列最適化、さらにAIを用いた解析手法を統合した独自の選択プラットフォーム「SureGrip Aptamer 技術」を構築し、従来法より短期間で高機能アプタマーを取得することを可能にした。 本発表では、同技術を用いて得られた、複数の耐熱性ポリメラーゼを阻害するアプタマーや、創薬ターゲットとして注目されるトランスフェリン受容体、βアミロイド繊維等に対する特異的アプタマーの取得例を取り上げる。 さらに、NGSデータから濃縮した配列を抽出し、結合能の最適化を行うAI技術についても詳述する。本技術は、診断プローブ、核酸医薬品のDDSとしての応用が期待されており、その可能性についても議論を深めたい。

レポータアッセイ ルシフェラーゼ 3次元培養

P047
ルシフェラーゼレポーターを定常発現するHaCaTのみで構築される層状3次元構造体構築とリアルタイムレポーターアッセイへの適用

Construction of Layered 3D Structures Solely Consisted of HaCaT Cells Stably Expressing Luciferase Reporters and Their Application to Real-Time Reporter Gene Assays?

発表者

○冨田 辰之介(1)、中島 芳浩(2)、近江谷 克裕(3)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門、(2)産総研 健康医工学研究部門、(3)産総研

概要

ヒト表皮細胞株HaCaTに安定発現するレポータを導入し、更にそれを層状三次元構造体化して、リアルタイムアッセイ系を構築した。 実用例として、IL-8プロモータにドライブされるレポータを安定発現するHaCaTで構成される三次元構造体を用い、炎症を惹起する事が知られている親水性や疎水性の化合物を負荷して、これらの化合物に対して良好に応答することを確かめたので報告する。 本構造体を用いることで、これまで困難だった水に溶けない疎水性化合物もオリーブオイルに懸濁して負荷できるようになり、測定対象の化合物の幅が広がった。

医薬品 温度 振動

P048
医薬品の輸送時における温度・振動環境の分析

Analysis of temperature and vibration environment during pharmaceutical transportation

発表者

○橋本 康平(1)、三浦 陵平(1)、回渕 修治(1, 2)

所属

(1)東邦ホールディングス-産総研ユニバーサルメディカルアクセス社会実装技術連携研究ラボ、(2)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

日本の医薬品卸は、全国に物流網を整備し、製薬企業と医療機関をつなぐ安定供給の基盤を担っている。 輸送環境の品質を担保するため、2018年に厚生労働省から発行された医薬品適正流通ガイドライン(GDP)では、温度の感受性が高い製品には庫内温度のモニタリングが求められている。 しかし、振動や衝撃に弱い製品があるものの、具体的な基準は設定されていない。 また、これらの製品の品質を維持しながら搬送するためには、現状の輸送環境を正確に把握する必要がある。 本研究では、蓄冷式および電気式搬送装置の庫内温度の変動と、異なる車両・走行経路における荷台振動を測定した。 得られた結果をもとに、今後の搬送環境と管理基準の在り方を考察する。

5: バイオ計測・評価技術/Bio-measurement and evaluation (P049~P065)

遺伝子診断、CRISPR、マイクロ流路

P049
CRISPRの迅速DNA応答を活用した多項目遺伝子検出用マイクロ流路チップの開発

Multiplex Gene Sensing Microfluidic Chip with CRISPR-Based Rapid DNA Response System

発表者

○繁森 弘基(1)、藤田 聡史(2)、民谷 栄一(1, 3)、古谷 俊介(1)、永井 秀典(1, 4)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(2)AMED 医療機器・ヘルスケア事業部、(3)大阪大学 産業科学研究所、(4)大阪大学大学院 工学研究科

概要

感染症は多様な細菌・ウィルスに起因するため、これらの遺伝子を迅速かつ複数種類同時に検出するニーズは大きい。 一方、従来の多項目検出技術は結果が分かるまでに3時間以上を要し、患者の治療開始に遅れが生じる事が課題である。 そこで本研究では、標的DNAと素早く結合し、連鎖的に信号応答を示すCRISPR機構に注目した。 そして、迅速DNA増幅が可能なマイクロ流路PCRチップ上に、各DNAに応答するCRISPR分子を集積化する事で迅速・多項目遺伝子検出の実現を目指す。 将来的には、重篤な感染症患者の病原体を現場で即時に特定し、病院搬送後すぐに適切な薬剤を投与できる医療体制の構築を本成果の社会実装によって目指す。

マイクロポアデバイス、赤血球変形能

P050
マイクロポアデバイスによる赤血球変形能の評価

Evaluation of red blood cell deformability by using micropore devices

発表者

○横田 一道(1)、橋本 宗明(1)、平野 研(1)、梶本 和昭(1)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門

概要

赤血球(Red Bood Cell, RBC)は非常に柔軟性に富み、それ自身の直径(約7 μm)より細い毛細血管(2-5 μm)を、変形と形状の修復を繰り返しながら通過することで、全身に酸素に運ぶ。 赤血球変形能の低下は、赤血球の老化、糖尿病等の疾患や感染症とも関連し、バイオマーカーとなり得る一方で、変形能を高感度かつ迅速に評価できる手法がない。 そのため、変形能が低下した赤血球の割合が少ない場合、その正確な評価が難しい。 我々は、1細胞レベルで多数の赤血球変形能を測定可能なマイクロポアデバイスの開発を進めており、本発表ではマラリア原虫に感染した赤血球(infected RBC, iRBC)を用いた1赤血球変形能評価の検証について紹介する。

培養、微生物、細胞

P051
接着起因の細胞・微生物動態変化を評価する微小培養環境の開発

Development of a microculture environment to evaluate adhesion-induced changes in cellular and microbial dynamics

発表者

○高木 悠友子(1)、森田 雅宗(1)、佐々木 章(1)、野田 尚宏(1, 2)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(2)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

Water-in-oilドロップレットはナノリットルオーダーの水溶液滴が油相に分散したエマルジョンである。 我々は、この水溶液相に細胞・微生物が封入可能であり、固形面の存在しない微小培養環境として活用できる事に着目している。 本研究では、細胞・微生物と、足場となる固形担体を同時に封入し、接着面の有無やサイズを制御した特殊な培養環境の創出を試みた。 この培養環境において足場は浮遊状態であり、平面培養では難しい様々な角度からの細胞観察が可能となった。 今後、この手法を発展させ、細胞‐物質表面間のシグナルに起因する細胞や微生物の挙動変化を計測し理解可能とする細胞実験プラットフォームの構築を目指す。

ピジェネティクス、ライブイメージング、初期発生

P052
X染色体不活性化開始の瞬間を捉えるライブイメージングモデルの開発

Development of a live imaging model to capture the onset of X-chromosome inactivation

発表者

越口 愛美(1)、米澤 直央(2)、波多野 裕(2)、末永 光(1)、山縣 一夫(2)、○小林 慎(1)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門、(2)近大 生物理工

概要

哺乳類雌の発生には、2本あるX染色体の一方をランダムに不活性化するX染色体不活性化(XCI)というエピジェネティック機構が不可欠である。 XCIは受精卵が子宮に着床した直後に開始されるため、体内での直接観察は困難であった。 本研究ではこの課題を克服すべく、XCIの開始過程をin vitroで再現・可視化できる細胞モデルを構築した。 蛍光レポーターを導入したMomiji(ver2)細胞により、XCIの進行を1細胞レベルでライブイメージング可能とした。さらに、X染色体脱落を防ぐ選択法も確立した。 本系は、胎児発生期における薬剤の影響評価系としての応用が期待される。

蛍光イメージング、生体機能計測、神経細胞

P053
頭痛メカニズム解明に向けた神経細胞間隙の分子動態イメージング

Imaging dynamics of biological molecules in inter-cellular spaces of the brain

発表者

○三田 真理恵(1)、清末 和之(1)、谷 知己(1)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門

概要

頭痛は身近な現象ながらその発生メカニズムは不明で、現在でも痛み止めによる対症療法が主流です。 頭痛のはじまりと同時に、神経活動の抑制が神経組織を波のように伝播して広がる、「皮質拡延性抑制(Cortical Spreading Depression, CSD)」という現象が報告されていますが、この伝播を担う分子は不明です。 本研究ではこの現象に着目し、特定分子のみに応答する「蛍光タンパク質センサー」を用い、神経細胞の外側にある分子の濃度変化を解析する手法を開発しました。 神経活動の場の状態を理解するという新しいアプローチから、細胞外分子の濃度変化と神経活動との関連や、脳部位ごとの違いを時系列的に理解し、拡延性抑制の分子メカニズムを解明することを目指しています。

キラルプロテオミクス、アスパラギン酸異性体

P054
Asp異性化ペプチドの特異的ラベル化と大規模解析への応用

Large-scale analysis of isoAsp peptides by specific labeling

発表者

○坂上 弘明(1)、久野 敦(1)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

タンパク質中のアスパラギン酸(Asp)残基は生体内の温和な条件下で、通常のLα体からLβ、Dα、Dβ体の3つの異性体ヘと異性化することが知られている。 Asp異性化タンパク質は白内障やアルツハイマー病といったタンパク質の異常凝集化を伴う加齢性疾患で多く見出されている。 タンパク質中の翻訳後修飾を大規模に探索するためには質量分析を用いたプロテオミクスが有用であるが、アミノ酸の異性化は分子量の変化を生じないため、これまでデータベース検索を用いた網羅的な異性化タンパク質の同定は困難であった。 本研究ではAsp異性体の中でも最も豊富に存在するLβ-Aspを特異的にラベル化し、データベース解析によるLβ-ペプチドの網羅的解析を可能にしたので紹介する。

w/oドロップレット、微生物資材、土壌微生物

P055
微生物資材が個々の土壌微生物に及ぼす作用を超並列的に評価するWater-in-oilドロップレット法の確立

Establishment of a method for massively parallel evaluation of the effect of a microbial inoculant on each soil microbe using water-in-oil droplet technology

発表者

○小林 純怜(1, 2)、星野 美羽(1, 2)、佐々木 章(2)、森田 雅宗(2)、松倉 智子(2)、常田 聡(3)、野田 尚宏(1, 2, 3, 4)

所属

(1)東京大学大学院 新領域創成科学研究科、(2)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(3)早稲田大学 先進理工学部、(4)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

持続可能な農業に向け、植物や土壌を改善する微生物資材が活用されているが、微生物資材による個々の土壌細菌への作用は未知である。 本研究では土壌細菌叢をドロップレットにより区画化し、微生物資材による個々の土壌細菌への作用を超並列的に調べる手法の確立を目指した。 モデル系として微生物資材Bacillus subtilisを個々の土壌細菌とドロップレット内で共培養した結果、B. subtilisの殺菌作用を100種以上の土壌細菌種について同時に評価できた。 本研究手法はあらゆる微生物叢中の個々の微生物を超並列的に評価可能な手法であり、プロバイオティクスを添加後の腸内微生物叢の構造解析というように、農業界に限らず食品業界等の幅広い分野での活用が期待される。

パターン認識、細菌株、食品安全

P056
非特異的センシングを用いた飲料中における菌株の迅速識別

Rapid Discrimination of Bacterial Strains in Beverages via Non-Specific Sensing

発表者

○髙橋 花奈子(1)、草田 裕之(2)、玉木 秀幸(2)、栗田 僚二(1)、冨田 峻介(1)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門、(2)産総研 バイオものづくり研究センター

概要

微生物株の識別は、食品の品質管理において重要であるが、現在主流のDNAシーケンシングなどの分子生物学的手法は高額な設備や時間・手技を要するため、迅速かつ正確な識別が可能な代替技術の開発が求められている。 本発表では、蛍光ポリマーとパターン認識を用いた味覚模倣型の分析法を構築し、この技術を用いることで、非特異的な相互作用に基づいて菌株の特徴情報を捉え、牛乳など飲料中の大腸菌を迅速に識別できることを実証した。 この分析戦略は、将来的に幅広い動物性食品に応用可能な技術として、公衆衛生面への貢献が期待できる。

PCR template Decontamination

P057
PCR遺伝子増幅産物による汚染・情報漏洩の問題と、その対策

Problems of PCR-amplified gene contamination and leakage of genetic information, and their countermeasures

発表者

○陶山 哲志(1)、佐々木 章(1)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門

概要

DNAやRNAを配列特異的に増幅するポリメラーゼ・チェーン・リアクション(PCR)は現代のバイオ産業には欠かせない基本技術である。 しかし増幅したPCR産物(DNAの断片)の扱いには注意を払う必要がる。PCR産物は特定の遺伝情報を含んでおり拡散しやすい上分解を受けにくい。 PCR産物で汚染すると正確な定量や診断・特定の環境に紐付いた遺伝子の探索の妨げになり、増幅した遺伝子に関して情報漏洩につながる可能性もある。 本発表では汚染源となり得る操作や施設・機器類に関して注意喚起を促すとともに、産総研と民間企業で検討した汚染拡散を防止しつつPCR産物を不活化する方法を社会実装に向けて提案する。

蛍光計測、DNA、テラヘルツ波

P058
THzバイオ実験プラットフォームの開発とその応用 ~sub-THz波照射によるDNA結合制御の検証~

THz Bio-Experimental Platform: Controlling DNA Binding with sub-THz Radiation

発表者

○山本 条太郎(1)、今清水 正彦(2)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門、(2)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

近年、THz波が水素結合や水和等に影響を与える可能性について注目され始めている。 生物学分野では、THz波照射によってタンパク質の水和や分子間相互作用に影響を与える報告があるが、THz波照射の強い吸収によって発生する熱の影響から分離して、非熱的な影響を議論し、実用化するためには多角的な検証が必須である。 そこで我々は、THz波を照射しながら様々な測定(主に光計測)を実現するTHzバイオ実験プラットフォームの開発を進めており、同時にTHz波が生体分子に与える影響を解析している。 本発表では、同プラットフォームによって発見したDNAの塩基対間結合のsub-THz波照射による制御の可能性について報告する。

ストレス 脂質代謝物 バイオマーカー

P059
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の新規バイオマーカーの探索と有効性の評価

Identification and Validation of a Novel Biomarker for Post-Traumatic Stress Disorder(PTSD)

発表者

○清水 勇気(1)、林 崇(1)、七里 元督(2)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(2)産総研 健康医工学研究部門

概要

うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)は健康および社会経済的に深刻な問題であるが、非専門医でも診断可能な客観的な指標がない。 本研究では、PTSDのバイオマーカー探索を目的に、マウスにPTSDを誘導するストレスを与え、アラキドン酸酸化物の変動を解析した。PTSD様症状を呈している28日後にて、血中12-HETEの増加を確認された。 さらに、消去学習による治療モデルでは、恐怖刺激に再暴露しても血中12-HETEの増加は見られなかった。今後、12-HETEとPTSD発症メカニズムの関連や臨床検体での検証を進め、診断や健康評価への応用を目指す。

High-speed atomic force microscopy

P060
高速原子間力顕微鏡を用いたバイオ分子の構造ダイナミクスの解析

Analysis of structural dynamics of biomolecules using high-speed atomic force microscopy

発表者

○西口 茂孝(1)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門

概要

バイオ医薬品の研究開発には、バイオ分子の微細構造およびダイナミクスを理解する必要があり、バイオ分子が機能する液中環境での構造ダイナミクス解析の技術ニーズがある。 高速原子間力顕微鏡 (高速AFM) は、バイオ分子の構造ダイナミクスをナノメートル・ミリ秒の時間・空間分解能で液中で観察することが出来る。 高速AFMの性能向上のために、装置や解析技術の開発が精力的に取り組まれているが、バイオ分子の構造ダイナミクスを観察するためのサンプル調製技術の開発も重要である。 本ポスターでは、サンプル調製技術の開発を中心に、高速AFMでバイオ分子を解析するための研究アプローチについて紹介する。 また、人工脂質膜等の分子足場を利用して、バイオ分子の複合体形成を人工的に誘導して観察した最新の研究成果についても報告する。

バイオ医薬品、CHO細胞、ラマン分光法

P061
ラマン分光法を用いた抗体産生CHO細胞のラベルフリー特性評価

Label-Free Profiling of Antibody-Producing CHO Cells using Raman Spectroscopy

発表者

佐藤 優穂(1, 3)、○千賀 由佳子(1, 2)、舘野 宏志(1, 3)、本田 真也(1, 2)

所属

(1)堀場製作所-産総研粒子計測連携研究ラボ、(2)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(3)株式会社堀場製作所

概要

バイオ医薬品の製造において、タンパク質発現能の高い細胞の選択やマスターセルバンクの構築は重要であるが、多くの時間を必要としている 。本研究では、非標識・ラベルフリーで物質の構造情報を取得できるラマン分光法を用いて、CHO細胞における抗体発現の評価法の確立を目指した。 本事例では、単一細胞レベルのラマンスペクトルを指標として、抗体生産細胞と非生産細胞の違いを調べた。ラマンスペクトルの多変量解析により、両者の分類が異なることが示された。 本研究の結果は、ラマン分光法がバイオ医薬品製造における宿主細胞の性能を評価し、製造ラインを効率化することに寄与する可能性があることを示唆している。

酵素サイクリング法、ヒポキサンチングアニンホスフォリボシルトランスフェラーゼ、PCR

P062
新規酵素サイクリング法によるPPiの高感度測定

Novel enzyme cycling method for highly sensitive PPi detection

発表者

○安武 義晃(1)、植田 成(2)、平田 竜也(3)、佐原 健彦(1)、酒瀬川 信一(1)

所属

(1)産総研 バイオものづくり研究センター、(2)日本臨床検査標準協議会、(3)旭化成ファーマ株式会社

概要

私たちは、好熱菌由来のヒポキサンチングアニンホスフォリボシルトランスフェラーゼ(HtHGPRT)を用いた新しい酵素サイクリング法を開発した。 この方法は、イノシンモノリン酸とグアニンの過剰存在下でHtHGPRTが触媒する正反応と逆反応を同時に駆動することで達成する。 さらに市販のキサンチンデヒドロゲナーゼをカップリングさせることで、サイクリング反応のリアルタイム検出が可能であり、この方法を用いてPCR混合液中のピロリン酸(PPi)濃度のリアルタイム定量も可能であった。 本法は、蛍光を用いずUV吸収で検出するため、簡便かつ迅速であり、資源の限られた臨床現場での活用が期待される。

女性ホルモン、蛍光、センサー

P063
新規蛍光分子プローブを利用した女性ホルモンの高感度検出法の開発

Development of Highly Sensitive Detection Method for the Measurement of female hormones using Fluorescent Molecular Probes

発表者

○鈴木 祥夫(1)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門

概要

女性ホルモンの一つであるエストロゲンは、卵巣、妊娠中の胎盤で産生される女性ステロイドホルモンであり、子宮に作用して子宮内膜を増殖させ妊娠の準備を整える働きがあるほか、女性の更年期後の骨粗鬆症、動脈硬化、脳梗塞、高血圧などの病気の発症は、エストロゲンの分泌量の減少が起因している。 このため、エストロゲンを簡便かつ選択的に補足する分子プローブを開発することは、更年期後の女性の疾患の早期治療・早期診断に繋がる可能性を秘めるなど極めて重要な技術である。 本発表では、新しく開発した蛍光分子プローブを用いて、エストロゲンを高感度かつ迅速に検出した結果について報告する。

蛍光1分子計測、生体機能計測、現場測定

P064
ハンドヘルドの単レンズ蛍光1分子検出デバイス

Hand-held fluorescent single molecule imaging device with a single lens

発表者

○谷 知己(1)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門

概要

病原因子などさまざまな分子の有無を、実験室ではなく、現場で検出する技術が求められている。 本研究では蛍光1分子検出を含む高感度蛍光検出に必要なミニマム光学系を考え、コスト面でも効率のよいハンドヘルドの蛍光1分子観察デバイスを試作した。 このデバイスを用いてサブナノモーラの蛍光分子や、分子認識能をもつ蛍光プローブのリアルタイム検出が可能である。 感染源特定など、現場での迅速かつ超高感度検出が必要となる様々なシーンでの応用が期待される。

バイオ標準、国際標準化、蛍光顕微鏡

P065
光計測・光学顕微鏡に関する国際標準化の取組

Initiatives toward international standardization in optical signal measurement and optical microscopy

発表者

○佐々木 章(1)、丹羽 一樹(2)、中島 芳浩(3)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(2)産総研 物理計測標準研究部門、(3)産総研 健康医工学研究部門

概要

創薬や食品などのバイオ分析では、生体物質の量は蛍光や発光など極めて微弱な光シグナルに変換して測定されている。 分析装置の感度や発光試薬の品質を客観的な尺度で評価するために参照用光源などの光学リファレンスの活用が求められている。 これまでに産総研チーム主導のもとで国際規格ISO 24421:2023が審議、発行され、バイオ分析における光測定結果の信頼性向上、相互比較性の確保や測定装置の品質管理などでの活用が進展している。 また、光学顕微鏡を用いた定量測定の信頼性向上に向けた国際規格ISO 24479:2024も日本から提案され発行されている。 これらの活動を中心に、顕微鏡を分析装置として活用するための取組について紹介する。

6:生物資源利活用 (Bioresource utilization technology)  (P066~P075)

バイオものづくり、スクリーニング

P066
膜染色試薬によるドロップレット内微生物増殖検出技術の開発

Detecting microbial growth in water-in-oil droplets via membrane-staining dyes

発表者

○佐々木 章(1)、星野 美羽(1, 2)、大田 悠里(1, 3)森田 雅宗(1)、横田 亜紀子(1)、陶山 哲志(1)、野田 尚宏(1, 2, 4)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(2)東京大学大学院 新領域創成科学研究科、(3)株式会社オンチップ・バイオテクノロジーズ、(4)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

ドロップレットを用いた微生物・細胞のスクリーニングにおいて、微生物の膜成分を蛍光染色することでWater-in-oilドロップレット内での微生物の増殖の有無を判断する新規な方法を開発し、当該方法によって様々な微生物が存在または増殖しているドロップレットを選択的に検出・分取できることを示した。

water-in-oilドロップレット、乳酸菌、ハイスループット

P067
Water-in-oilドロップレットを使用した環境試料からの乳酸菌の獲得

Development of a high-throughput screening method for lactic acid bacteria using wate-in oil droplets

発表者

○森 浩二(1)、渡邉 瑞貴(1)、南里 啓子(1)、松倉 智子(2)、大田 悠里(2, 3)、本間 宣行(3)、野田 尚宏(2)

所属

(1)NITE NBRC、(2)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(3)株式会社オンチップ・バイオテクノロジーズ

概要

乳酸菌は、産業界で最も利用される微生物群のひとつであり、寒天培地中に加えたCaCO3が増殖後に溶解することを目印として分離することが一般的に行われている。 この乳酸菌の培養をwater-in-oilドロップレットで再現し、乳酸菌が培養されたドロップレットだけをCaCO3の消失を利用してハイスループットに獲得する方法を開発した。 本方法は、クリアゾーン形成を指標とした様々な微生物分離方法にも応用可能な技術である。 本研究は戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期(2018-2022年度)「スマートバイオ産業・農業基盤技術」において実施したものである。 Mori et al. (2024). Frontiers in Microbiology doi: 10.3389/fmicb.2024.1452573.

w/oドロップレット、微生物スクリーニング、環境ストレス

P068
w/oドロップレットを用いた環境中からの高浸透圧耐性微生物スクリーニング

Screening of high osmotic pressure tolerant microorganisms from environmental samples using w/o droplets

発表者

○松倉 智子(1)、佐々木 章(1)、森田 雅宗(1)、野田 尚宏(1)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門

概要

環境中から特定の機能を持つ微生物を取得するための方法としてWater-in-oil(w/o)ドロップレットを用いたハイスループットなスクリーニング手法を構築した。 環境ストレス、特に浸透圧ストレスに着目し、土壌サンプルにスクリーニング系を適用して浸透圧ストレス耐性を持つと期待される微生物を含むドロップレット群を取得した。 ドロップレット内部の微生物を培養して16S rRNA遺伝子を解析した結果、放線菌であることが示唆された。 本手法はスクリーニングの基盤技術として高浸透圧ストレスのみならず、pH、温度等のさまざまな種類の環境ストレスに対する耐性微生物の取得にも適用できると考えられる。

PET分解、蛍光プローブ、微生物スクリーニング

P069
PET分解活性を検出する蛍光プローブの開発とマイクロドロップレットを用いたPET分解性微生物スクリーニングへの応用

An optimized fluorescent molecule for droplet-based microfluidic screening of PET-degrading microorganisms

発表者

○中村 彰伸(1, 2)、星野 美羽(1)、三浦 大典(1)、野田 尚宏(1, 3)、佐々木 章(1, 2)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(2)産総研 サーキュラーテクノロジー実装研究センター、(3)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

プラスチックの再利用を実現する技術として、微生物/酵素を用いたプラスチック分解が注目されている。 微生物/酵素は、基質認識能が高く(化学プロセスでは達成が困難な)複数材料における特定のプラスチックの選択的な除去/回収プロセスへの応用が期待できる。 我々は、最近になり、プラスチックの1つであるポリエチレンテレフタレート(PET)を分解する微生物を環境中から取得するためのスクリーニング技術を開発することに成功した。 本発表では、このスクリーニング技術の鍵となる、直径数十μmの微小水滴を用いた多様な微生物の区画培養技術、および蛍光小分子プローブを用いたPET分解活性評価について詳細に報告する。

資源循環、土壌改良資材、緑色凝灰岩

P070
長岡地域における生物資源循環を目指した取組み:緑色凝灰岩施用が水稲生育および土壌環境に与える影響

Toward Regional Bio-Recycling in Nagaoka: Effects of green tuff application on paddy rice growth and soil environment

発表者

○富田 駿(1)、黒田 恭平(1)、小林 ひかり(2)、大池 達矢(3)、幡本 将史(4)、志田 洋介(5)、成廣 隆(1)

所属

(1)産総研 バイオものづくり研究センター、(2)株式会社ホーネンアグリ、(3)十和田グリーンタフ・アグロサイエンス株式会社、(4)長岡技術科学大学 環境社会基盤工学、(5)長岡技術科学大学 物質生物工学

概要

バイオものづくり研究センター・微生物生態工学研究チームでは、長岡地域における有機廃棄物を含む生物資源の資源循環をテーマに、研究開発を進めている。 本発表では、有機堆肥および土壌改良資材として緑色凝灰岩を施用した水田土壌を用いた水稲ポット栽培試験の結果について報告する。 試験の結果、緑色凝灰岩の施用により、水稲の草丈および土壌pHが有意に上昇することが明らかとなった。 さらに、緑色凝灰岩は土壌微生物群集構造にも影響を与え、水稲の成長促進に関与する可能性が示唆された。 今後は、成長促進に寄与する微生物の特定やその作用メカニズムの解明を進め、緑色凝灰岩の効果的な施用方法の確立を目指す。 本研究は、長岡・産総研 生物資源循環BILおよびJST COI-NEXT事業の一環として実施した。

シングルセル、ゲノム解析、昆虫共生細菌

P071
難単離・難培養性昆虫共生細菌のシングルセルゲノム解析

Single-cell genome analysis of difficult-to-isolate and difficult-to-culture symbiotic bacteria of insects

発表者

○安佛 尚志(1)、西川 洋平(2, 3)、新井 大(4)、相川 拓也(5)、陰山 大輔(6)、竹山 春子(3, 7)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門、(2)産総研 バイオものづくり研究センター、(3)早大 ナノライフ創新研、(4)Univ. Liverpool、(5)森林総研、(6)農研機構 生物研、(7)早大 先進理工

概要

昆虫共生細菌は基本的に単離培養ができず、宿主体内での存在量が極めて少なかったり、近縁な複数系統の共生細菌が共在かつ分離困難な場合、必要量のゲノムDNA調製やゲノム配列取得後のアセンブルが従来の技術では不可能であった。 このようなケースでは、一細胞単位で細菌を微小液滴に封入後、全ゲノム増幅とゲノム解析を行うシングルセル解析が極めて有効である。 宿主昆虫に様々な影響を及ぼし、これまで未解明であった共生細菌ゲノムが明らかになることで、益虫や害虫の個体群制御等につながる新たな生物資源利用技術への展開が期待できる。

ワックス、紫外線反射、撥水性

P072
トンボ由来の紫外線反射・超撥水ワックスの性能評価

Performance evaluation of UV-reflecting, ultra-water-repellent waxes derived from dragonflies

発表者

○二橋 亮(1)、小山 恵美子(2)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(2)産総研 エレクトロニクス基盤技術研究部門

概要

日差しに強いシオカラトンボなど複数種のトンボの成熟オスが分泌する紫外線反射ワックスの主成分を同定したところ、従来知られていた他の生物のワックスと異なり、極長鎖メチルケトンと極長鎖アルデヒドが主成分であることを発見した。 さらに、化学合成したトンボのワックス主成分でも強い紫外線反射能と撥水性が再現された。紫外線反射や撥水性を向上させる添加物として化粧品分野や塗料組成物としての利用を想定している。

VHH抗体 セルロース粉末 セルロース結合ドメイン

P073
安価な抗体カラム作製の可能性

Possibility of inexpensive antibody column production

発表者

○星野 英人(1)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門

概要

市販のセルロースパウダーをカラム担体として、大腸菌で生産し、精製した抗GFP VHH抗体を含むVHH-C-Linkタンパク質を特異的・選択的に固定したカラムを作製し、モデル系としてEGFP組換えタンパク質を用いて、当該カラムへの抗原吸着と捕捉したEGFPの酸性下での溶出を検討した。EGFPの溶出後も、抗GFP VHH-C-Linkタンパク質は、セルロースパウダー担体に保持されており、当該抗体カラムは、大腸菌で生産可能なVHH融合タンパク質(VHH-C-Link)とセルロースパウダーという安価な素材から成り、使い捨ての抗体カラムとしての潜在性を有している。

MazF, FRET, トキシン-アンチトキシンシステム

P074
RNA解析技術の精度向上を目指して:切断酵素MazFの機能改変研究

Engineering MazF to Expand Cleavage Specificity for Enhanced RNA Analysis

発表者

○岡部 拓真(1, 2)、葵 理恵(1, 2)、横田 亜紀子(2)、石塚 寛子(2)、江 雨濃(2, 3)、佐々木 章(2)、常田 聡(1)、野田 尚宏(1, 2, 4, 5)

所属

(1)早稲田大学大学院 先進理工学研究科 生命医科学専攻、(2)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(3)筑波大学大学院 人間総合科学研究科、(4)筑波大学 グローバル教育院、(5)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

細菌が持つ酵素MazFは、特定のRNA配列を切断する機能を有し、RNA解析分野で活用されている。たとえば、質量分析計を用いたRNA配列の解析に応用されており、将来的にはmRNA医薬の特性評価への貢献も期待されている。しかし、MazFが標的とするRNA配列はわずか17通りに限られており、解析可能な配列パターンの少なさが、配列解析の精度低下を招く要因となっている。この課題を解決するには、MazFの標的RNA配列の多様化が重要である。本研究では、新規の標的RNA配列を有する可能性が高いサルモネラ属菌由来MazFについて、機能解析およびタンパク質工学的な機能改変を行ったので報告する。

water-in-oil droplets, dead cell suspension, high-throughput screening

P075
Water-in-oil (w/o)ドロップレット技術を用いた微生物破砕物を栄養源とする微生物培養手法の開発

Development of a water-in-oil droplet cultivation method utilizing dead cell suspension as a nutrient source

発表者

○野田 尚宏(1, 2, 3, 4)、大野 沙予(2, 3)、星野 美羽(2, 3)、松倉 智子(2)、大田 悠里(2, 5)、常田 聡(4)、佐々木 章(2)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門、(2)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(3)東京大学大学院 新領域創成科学研究科、(4)早稲田大学大学院 先進理工学研究科、(5)株式会社オンチップ・バイオテクノロジーズ

概要

現在環境微生物のうち99%以上の種が培養できないと言われている。 これを克服すべく、新規培養手法の確立を目指した。本研究においては微生物が生育する環境であれば陸域・水域問わず広く存在すると考えられる”微生物の生体成分”を栄養源とする培地「微生物破砕培地」を開発し、新規培養手法において用いることとした。 また、区画化効果とハイスループット性という二つの利点を持つwater-in-oil (w/o)ドロップレット培養法を合わせて用いることで未培養微生物の培養可能性を検討した。 「微生物破砕培地」と環境微生物としての土壌細菌をw/oドロップレットに封入して、一定期間培養したのちw/oドロップレット内の微生物を回収し、16S rRNA遺伝子の系統解析をしたところ、開発した培養手法では非常に高い多様性を保ったまま培養ができることがわかった。 また、通常の非選択培地を用いた際は増殖が確認されなかった未培養とされる微生物種について微生物破砕培地を用いた際には、その増殖が確認された。

7: バイオものづくり/Biomanufacturing (P076~P092)

Water-in-oil droplet、微生物培養、スクリーニング、蛍光プローブ

P076
ミリオンスクリーニングプラットフォームの構築と社会実装

Establishment of million screening platform

発表者

○森田 雅宗(1)、佐々木 章(1)、松倉 智子(1)、野田 尚宏(1, 2)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(2)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

食品・医薬・健康・環境分野などにおいて微生物は存在しており、人間生活とも密接な関係にある。 これらの微生物をその機能に基づいて獲得する手法として、100万個以上のスケールでハイスループットに作製可能なマイクロサイズの油中水滴型ドロップレット(water-in-oil droplet, WODL)技術に着目した。 WODL内に微生物を1細胞レベルで閉じ込め、増殖・培養を試み、それに成功した。 さらに内部で微生物を培養することができたWODLを検出する技術の開発にも成功し、培養から特定の陽性WODLを選択的に回収するまでの一連のスクリーニングプラットフォームシステム開発を進めてきた。 本ポスターでは、我々が構築を進めているWODLを用いた微生物培養・スクリーニング技術を紹介する。

海洋生分解,ポリエステル,フラン環

P077
フラン環を有するPET類似ポリエステルの海洋生分解特性

Biodegradable properties of PET analogous furan-based polyesters in the seas

発表者

○日野 彰大(1)、渡邉 亮太(2)、田中 真司(2)、川崎 典起(1)、山野 尚子(1)、金山 直樹(3)、大石 晃広(3)、萩原 英昭(2)、中山 敦好(1)、川波 肇(4)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(2)産総研 サーキュラーテクノロジー実装研究センター、(3)産総研 機能化学研究部門、(4)産総研 触媒化学研究部門

概要

ポリエチレンテレフタレート(PET)に類似した構造と物性を持つ,ポリエチレンフラノエート(PEF)は生分解する可能性があるものの,詳細な情報は不足していた。本研究では,PEFの生分解性を包括的に理解するため,大阪湾沿岸の海水を用いた生物化学的酸素要求量(BOD)試験による生分解性試験を行ったところ,PEFに海洋生分解性を有している可能性を示すことができた。さらに,フラン含有ポリエステルのメチレン鎖の長さを調節することで,その生分解性を調節することができることも明らかにした。これらの知見から,生分解性ポリマーのビルディングブロック開発や,バイオベース生分解性ポリマー開発への展開が期待される。

Analysis, Measurement, Bioinformatics

P078
京都地域の設備・知財・人財を活用した産業の活性化

Industrial revitalization through the strategic utilization of Kyoto’s regional infrastructure, intellectual property, and human capital.

発表者

○山本 佳宏(1)、名所 高一(1)、泊 直宏(2)、島村 哲郎(2)、高阪 千尋(2)、門野 純一郎(2)

所属

(1)京都市産業技術研究所 プロジェクト推進室、(2)京都市産業技術研究所 バイオ研究センタープロジェクト

概要

京都バイオ計測センターは、バイオテクノロジー関連の高度分析機器の共同利用による共同研究の推進と中小企業の研究開発・人材育成を行うために国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の支援を受け、京都市が平成23年に開設しました。 多様なバイオ計測の手法に対応した研究機器を活用し、地域の特色を生かした産学官連携拠点を整備することにより、地域発のイノベーションの創出を推進し、科学技術による地域活性化を図っております。

細菌、培養、無血清化

P079
微生物培養のための無血清培地の開発

Serum and albumin free media for Microorganisms

発表者

Wichittra Arai(1)、水谷 雅希(1)、森山 実(1)、萩原 陽子(1)、深津 武馬(1, 2, 3)、○柿澤 茂行(1)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(2)東京大学 大学院理学研究科、(3)筑波大学大学院 生命環境科学系

概要

多くの病原性微生物は宿主からの栄養素を利用して生育するため、その培養には血清等が必要となることがある。 しかし血清はロット差があり、多量のアルブミン等のタンパク質を含み、また動物愛護の懸念があるため、血清の使用量の削減が求められている。 今回、マイコプラズマという細菌を対象として、血清もアルブミンも含まない培地を開発した。本技術はマイコプラズマの検査・研究・ワクチン製造などに利用できると考えられ、加えて、他の微生物や細胞株にも応用できる可能性がある。

バイオインフォマティクス,代謝ネットワーク,FBA

P080
バイオものづくりにおける細胞デザインのためのキー遺伝子予測法の開発

In Silico Network-Based Method for Predicting Key Genes in Biomanufacturing

発表者

○米山 純央(1)、谷口 丈晃(1)、平野 悠(1)、油谷 幸代(1)

所属

(1)産総研 バイオものづくり研究センター

概要

バイオものづくりにおいて目的物質の生産性向上には、微生物の増殖に関わる遺伝子の理解と制御が重要であるが、同定には多大な実験コストと労力がかかる。 そこで代謝ネットワークに基づいて遺伝子を予測する方法を提案する。 ネットワーク指標の変化に着目し、最適化問題として定式化することで重要反応を抽出し、KO不可な遺伝子候補を効率的に特定する。 本方法はE. coliを用いたフラックスバランス解析による検証で高い精度を確認した。今後は情報が限られた生物種や設計改変が加えられた産業用微生物にも応用可能であり、有用遺伝子の同定を支援できる技術として、代謝経路設計等を通じてバイオものづくりに貢献することが期待される。

大腸菌;実験室進化;毒素-抗毒素システム

P081
バイオものづくりに資する微生物株を創出するための新実験室進化法の開発

Development of an innovative laboratory evolution method to generate microbial strains useful for biomanufacturing

発表者

○和田 圭介(1)、佐藤 俊(1)、福岡 徳馬(1)

所属

(1)産総研 機能化学研究部門

概要

微生物を用いた物質生産の高効率化に向けて、細胞内の原料から目的化合物までの代謝反応の高速化は有効な解決策である。 このような代謝制御システム全体に関わる機能の改変において、微生物培養中に生じる自発的なDNA変異を利用した改変技術である実験室進化法の利用は好適である。 しかし、この方法の成立条件は限定的であり、適用範囲の狭さが問題であった。 そこで本研究では、従来法に毒素-抗毒素(TA)システムおよび蛍光タンパク質を組み込むことで、任意の細胞機能を進化対象に設定できる新たな実験室進化法の構築を目指す。 今回は、大腸菌内在の24組のTAシステムのうち、それらの遺伝子の発現誘導で生育の厳密な制御が可能なシステムを抽出できたことについて発表する。

量子化学計算 立体構造 アミノ酸相互作用

P082
量子化学計算によるタンパク質構造安定化機構の解析

Quantum chemical analyses on the mechanism of the structural stability of a protein

発表者

○山崎 和彦(1)、都築 誠二(2)、舘野 浩章(3)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、 (2)東京大学 工学部、(3)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

タンパク質の安定化や分子親和性強化など高機能化デザインを行う際、立体構造に基づく検討を行うことが有効である。 さらに、量子化学計算を適用すると、特定の相互作用について、より精密かつ定量的に評価することできる。私たちがNMR分光法とX線結晶解析によって決定したPholiota squarrosa lectin (PhoSL)の立体構造は、対称性の高い三量体であるが、その中心で3つのTrp残基がNH-π水素結合という特殊な相互作用を形成する。 本研究では、量子化学計算により、その寄与が20 kcal/mol以上と非常に強いこと、さらに3体による協働性も2 kcal/molあり、誘導分極に起因することを見出した。

one-pot合成、ホタルルシフェリン、生物発光

P083
ホタルルシフェリンの実用的なone-pot合成

Practical one-pot synthesis of firefly luciferin

発表者

○加藤 まりあ(1)、土橋 一耀(1)、蟹江 秀星(2)、大場 裕一(3)、西川 俊夫(1)

所属

(1)名古屋大学大学院 生命農学研究科、(2)産総研 バイオものづくり研究センター、(3)中部大学 応用生物学部

概要

発光基質D-ホタルルシフェリンと酵素ルシフェラーゼを利用したホタルの発光は、ルシフェラーゼアッセイや微生物を検出するふき取り検査などの技術として幅広く利用されている。 我々は、p-ベンゾキノンとL-システインメチルエステル塩酸塩、D-システインを原料として、one-pot、総収率46% でD-ルシフェリンを合成することに成功した。 このone-pot合成法は、すべての反応が室温で進行するほか、実験操作が非常に簡便であり、従来のものに比べ環境負荷が少ないなどの多くの利点があり、今後ルシフェリンの低コストでの供給が可能になることが期待される。

抗菌遺伝子、植物、アグロバクテリウム

P084
ファージ由来抗菌遺伝子を活用したアグロバクテリウム除菌法の開発

Elimination of Agrobacterium Using Antimicrobial Genes Derived from Bacteriophages

発表者

○諏訪園 悠(1, 2)、池谷 美香(2)、菅野 茂夫(2)

所属

(1)東京理科大学大学院 創域理工学研究科 生命生物科学専攻、(2)産総研 バイオものづくり研究センター

概要

アグロバクテリウム法は、植物の形質転換に広く利用される重要な基盤技術です。 しかし、アグロバクテリウムの過剰増殖によって、形質転換効率が低下するという問題があります。この問題に対し、従来は抗生物質を用いますが、植物種への悪影響や適用範囲の制限が存在します。 本研究では、抗生物質の代替としてバクテリオファージ由来の抗菌遺伝子の活用を試みました。候補遺伝子のスクリーニングにより抗菌活性を示すものを選抜し、トマト子葉片での感染実験で抗生物質非添加下でも過剰増殖の抑制効果が確認され、除菌効果が示唆されました。 現在はさらなる遺伝子評価と多重導入による効果向上を検討しています。

WODL, MALDI質量分析, 細胞スクリーニング

P085
微小液滴を用いた微生物スクリーニングにおける質量または光学的な評価手法の開発

Development of a MS or optical assessment Method for Microbial Function in W/O Droplets

発表者

○高井 亮吾(1)、三浦 大典(2)、森田 雅宗(2)、松倉 智子(2)、松岡 諭史(1)、緒方 是嗣(3)、鎌形 洋一(2)、野田 尚宏(2)、渡辺 真(1)

所属

(1)島津製作所-産総研 アドバンスド・ソリューション連携研究ラボ、(2)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(3)株式会社 島津製作所

概要

有用微生物の探索に有効な技術であるドロップレットスクリーニングにおいて、封入された微生物の機能評価手法の充実は重要な課題である。 ハイスループットなドロップレットスクリーニングにおいては、蛍光プローブ等で機能評価する手法が主流である。蛍光による評価は高感度で迅速な評価ができる一方で、対象とする機能に適した蛍光プローブの設計等に課題がある。 本発表では特にW/Oドロップレットを対象として、蛍光以外のプローブレスな評価系を提供することを目的として以下の取り組みを紹介する。
① :MALDI-MSによるドロップレット直接分析評価手法。
② :光学観察による形態、比色、吸光による評価手法。

木質科学、遺伝子工学

P086
植物バイオマスの高度利用化を目指したリグニンバイオエンジニアリング

Lignin bioengineering aimed to the advanced utilization of plant biomass

発表者

○渡邊 慧(1, 2)、上村 直史(3)、政井 英司(4)、梶田 真也(4)、光田 展隆(5)、坂本 真吾(1, 2)

所属

(1)産総研 バイオものづくり研究センター、(2)埼玉大学 理工学研究科、(3)長岡技術科学大学大学院 工学研究科 生物機能工学専攻、(4)東京農工大学大学院 生物システム応用科学府 生物機能システム科学専攻、(5)産総研 生命工学領域研究企画室

概要

現在、持続可能な社会の形成のために植物バイオマスに注目が集まっている。 植物バイオマスに含まれるリグニンは利活用性に大きくかかわる重要な成分である。 リグニンは3種類のモノマーからなる複雑なポリマーである。先行研究により、モノマーが変化するとリグニンの性質が変化することがわかっている。 しかし、その利活用性がどのように変化するのかはまだ分かっていない。 そこで、本研究では、リグニン前駆体を基質とする酵素を過剰発現させた形質転換体のリグニンの化学構造、糖化率などを評価した。 本研究は、植物の健全な生育を維持しつつも利活用性が高い特性をもつリグニンおよび植物バイオマスの創出を目指すものである。

ドロップレット、環境微生物、可培養化

P087
Water-in-oil dropletを用いた新規な微生物可培養化技術の開発

Development of microfluidic droplet technology for cultivation of a wide variety of environmental microorganisms

発表者

○岩下 智貴(1)、菅野 学(1)、玉木 秀幸(1)

所属

(1)産総研 バイオものづくり研究センター

概要

環境中に存在する微生物の多くは未培養であり、それらを可培養化することは新規かつ有用な生物資源を探索する上で重要な課題となっている。 本研究では、Water-in-oil droplet(WODL)を用いた培養手法による環境微生物の可培養化を検証した。 環境水由来の微生物をWODL内に封入して培養した結果、従来法と比較して約10倍の可培養化率を達成することに成功した。 また、WODL内で培養された微生物群集の多様性は、従来法と比較して高く維持されることも示された。 これらの結果は、本手法が環境中に存在する多様な微生物を効率的に培養するための有望なアプローチであることを示している。

植物、育種、ゲノム編集

P088
バイオテクノロジーによる新しい植物育種

Advanced Plant Breeding with Biotechnology

発表者

○貴嶋 紗久(1)、坂本 真吾(1)、菅野 茂夫(1)、大島 良美(1)、中村 彰良(1)、中野 仁美(1)、武井 敬仁(1)、藤原 すみれ(1)

所属

(1)産総研 バイオものづくり研究センター

概要

植物機能制御研究チームでは、植物育種を進めるうえでターゲット遺伝子の選定、遺伝子改変植物の作出、ターゲット遺伝子の機能評価の3つのステップをモデル植物や実用植物を対象に研究室独自のハイスループット解析系を用いて効率的に進めている。 本シンポジウムでは、所属グループの強みである各コア技術を紹介する。

非リボソーム型ペプチド合成酵素、遺伝子編集、Pseudomonas

P089
遺伝子編集を活用した難培養微生物由来環状ペプチドの発酵生産

Application of Cas9-based gene editing to engineering of non-ribosomal peptide synthetases

発表者

○橋本 拓哉(1)、末永 光(2)、新家 一男(3)

所属

(1)産総研 バイオものづくり研究センター、(2)産総研 細胞分子工学研究部門、(3)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門

概要

試験管内での遺伝子編集技術を活用し、非リボソーム型ペプチド合成酵素(NRPS)の改変技術を開発した。 NRPSを合理的改変を行うことで、強力なGPCRの阻害剤であるFR900359を生産した。 本化合物はもともとは難培養微生物に由来する環状ペプチドであるが、類縁体であるYM-254890のNRPSを基にして、NRPSの生合成ユニットを合理的に交換することで、FR900359を生産させることができた。 NRPSの合理的改変による環状ペプチド化合物のデザインにつながることが期待できる。

P450, ライブラリ, 放線菌

P090
世界最大のP450ライブラリ

The world's largest P450 library for Bioproduction

発表者

○北川 航(1)

所属

(1)産総研 バイオものづくり研究センター

概要

チトクロムP450ファミリーの酵素は様々な化合物に対し水酸化反応を触媒することで知られ、物質生産に有用な酵素群である。 バクテリアのゲノム情報からは数十万のP450が見いだされるが、そのほとんどが基質・反応等不明であり、遺伝子資源の有効活用は出来ていない。 そこでこれらの遺伝子を多数クローニングし、放線菌で発現ライブラリを構築した。 これにより有望なP450酵素を簡単にスクリーニングすることが可能となった。

菌体カプセル、細胞保護、農業用微生物資材

P091
植物共生微生物の製品化に向けた微生物保護カプセルの種子コート技術の開発

Development of seed-coating technology with microbial capsules for microbial inoculant formulation

発表者

○菅野 学(1)、玉木 秀幸(1)

所属

(1)産総研 バイオものづくり研究センター

概要

化学肥料や農薬の使用削減が求められる中、環境負荷低減と生産性向上を両立する農業技術として、微生物資材の需要が拡大している。 しかし、微生物資材は保存性が低く、圃場施用後の定着率が低いため、十分な効果が発揮されないことが普及の障害となっている。 本研究では、保存性と植物への定着成功率に優れた微生物マイクロカプセルを用いた種子コーティング技術を開発した。様々な植物種・微生物への応用が期待され、植物種子の形態での資材供給の新たな価値創出に貢献する。

植物工場、水耕栽培、ウイルスベクター

P092
有用物質生産のための植物改変技術と先端栽培システムの統合的活用

Integrated Use of Plant Modification Technologies and Advanced Cultivation Systems for the Production of Valuable Compounds

発表者

○鈴木 隼人(1)、厚見 剛(1)、鄭 貴美(1)、福澤 徳穂(1)、松尾 幸毅(1)、田坂 恭嗣(1)、中島 信孝(1)

所属

(1)産総研 バイオものづくり研究センター

概要

バイオものづくり研究センター・植物分子生産研究チームでは、植物を用いた有用物質生産・バイオものづくり研究に取り組んでいる。 具体的には、1) 植物有用物質の生合成遺伝子探索、2) ゲノム編集や遺伝子組換えによる生産宿主の改良、3) 独自のウイルスベクターシステムによるタンパク質大量生産、4) 遺伝子または環境制御によるバイオマス生産制御、5) 水耕栽培と最新式密閉型植物工場を活用した有用物質の高生産など、多様な技術を統合することで、総合的な植物バイオものづくりの研究プラットフォームを構築している。 本発表では、当チームが有するコア技術・独自技術について紹介する。

8: 食品関連技術/Food-related technology (P093~P102)

ニワトリ、抗体生産、陸上養殖

P093
組換え抗体生産のプロセスイノベーション:ゲノム編集ニワトリ生産系による低コスト組換え抗体の生産と水産養殖支援技術への応用

Development of a Transgenic Chicken Egg Bioreactor System for Cost-Effective Monoclonal Antibody Production and Its Application in Land-Based Aquaculture

発表者

○迎 武紘(1)、竹内 美緒(1)、吉井 京子(1)、大石 勲(2)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(2)産総研 健康医工学研究部門

概要

ゲノム編集ニワトリ生産系は、組換え抗体を低コストかつ大量に生産できる新たな手法です。 これまでに、市販品と同等の抗原認識能をもつ組換え抗体を、1グラム約330円での生産を実証しました。この低コスト化により、医療にとどまらず、幅広い分野での抗体活用に新たな道が拓けました。 現在、その応用例として環境分野への展開を進めており、特に水産分野への展開に注目しています。たとえば、養殖魚の健康状態を可視化するモニタリング技術へニワトリ生産系由来低コスト抗体を応用することで、水産養殖の生産性向上が期待されます。将来的には、持続可能な養殖の実現を通じて、世界的なタンパク質不足の解決に貢献を目指します。

Fucoxanthin, Alzheimer’s disease, Stress

P094
ワカメ由来有効成分フコキサンチンがストレスや老齢性脳障害を予防する

Fucoxanthin, an active ingredient of Wakame Seaweed, protects against stress and old age-related brain disorders

発表者

Kazumi Hirano(1)、○Myat Nyein Khine(1)、Tomoyo Ochiishi(1)、Sunil C Kaul(1)、Motomichi Doi(1)、Renu Wadhwa(1)

所属

(1)Cellular and Molecular Biotechnology Research Institute, AIST

概要

Fucoxanthin, a Seaweed-derived xanthophyll, has gained attention for its diverse biological activities including antioxidant and neuroprotective potential. In this study, we recruited a GFP-based live-cell screening system designed to visualize Aβ aggregation dynamics. Fucoxanthin was identified as a hit compound that partially restored GFP fluorescence, indicating inhibition of Aβ aggregation. Furthermore, in human neurons derived from iPS cells under ER stress (a hallmark of Alzheimer’s disease), fucoxanthin caused remarkable reduction in stress markers. These findings suggest that fucoxanthin may serve as a promising candidate for targeting both protein aggregation and ER stress-related neuronal dysfunction according to aging.

清酒、劣化、乳酸菌

P095
伝統的製法から学ぶ品質の低下が穏やかになる清酒製造技術の開発

Development of sake brewing technology that reduces the deterioration of quality by learning from traditional methods

発表者

○飛田 啓輔(1)、野口 友嗣(1)

所属

(1)茨城県産業技術イノベーションセンター 技術支援部

概要

近年、海外での日本食ブームを背景として清酒の輸出量は増加している。 しかし、清酒は劣化しやすく、輸出過程における品質の低下が問題となっている。我々は、伝統的製法の生酛(きもと)造りで得られた清酒では抗酸化能が高く、酸化による品質の低下が穏やかになることを明らかにした。 生酛造りとは、酵母の増殖を促す酒母造りにおいて、野生の乳酸菌が生成する乳酸によって酒母を酸性側に導き、雑菌汚染を防ぐことで純度の高い酵母を得るというものである。 これらの知見をヒントに生酛から醸造適性と高い抗酸化能を併せ持つLeuconostoc mesenteroidesに属する乳酸菌株を発見した。この菌株を酒母に添加して得られた清酒は、保存後のジメチルトリスルフィド濃度が低くなることが確認されている。現在、この菌株は茨城県内酒蔵において輸出向け清酒の製造のために活用されている。

鮮度、K値、JAS規格

P096
生鮮水産物の鮮度指標K値の迅速測定技術

Rapid and simple measurement technology for the freshness index K value of seafood

発表者

○小島 直(1)、渕脇 雄介(1)、伊藤 敏雄(2)

所属

(1)産総研 健康医工学研究部門、(2)産総研 マルチマテリアル研究部門

概要

生鮮水産物の鮮度を科学的に表す指標として、魚肉中の核酸関連物質の成分比を示すK値が用いられている。 2022年には、K値の試験法が日本農林規格(JAS)として制定された。しかし従来のK値測定には高額なHPLC装置と専門的な技術が必要であり、流通現場での活用には課題があった。 我々は、K値の産業利用と現場での普及を目指し、迅速・簡便な測定技術の開発を行ってきた。 本発表では、①スピンカラム、②試験紙を用いた迅速K値測定技術、③ニオイから鮮度を判別する技術について紹介する。 これらの技術により、流通・加工現場における鮮度管理の高度化が期待されるとともに、科学的根拠に基づく日本産水産物の競争力強化にも繋がると期待される。

培養細胞、核内受容体、機能性成分

P097
培養細胞を用いた食品機能性成分評価系の構築と応用

Development and Application of a Cell-Based Evaluation System for Functional Food Components

発表者

○羽田 沙緒里(1)、前田 史雄(2)、森田 直樹(1)

所属

(1)産総研 バイオものづくり研究センター、(2)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

健康長寿や未病への関心の高まりを背景に、機能性成分を含む食品の摂取による予防的アプローチが注目されている。これに伴い、機能性成分を科学的に評価する手法の整備が重要となっている。本研究では、さまざまな疾患や生理機能に関与することが明らかになっている核内受容体の活性化を指標とした網羅的な評価系に加え、神経変性疾患関連因子や炎症応答を対象とする評価系を構築し、食品素材の機能性を多角的に解析する手法の確立を目指している。

腸内細菌、成体神経新生、神経幹細胞

P098
プロバイオティクスによる海馬成体神経新生の調節

Three-Strain Probiotic Combination Restores Dysregulated Adult Hippocampal Neurogenesis in Germ-Free Mice

発表者

○波平 昌一(1)、井上 奈々(2)、渡邉 要平(2)、林 卓人(2)、室冨 和俊(1)、平山 和宏(3)、佐藤 直樹(2)

所属

(1)産総研 モレキュラーバイオシステム研究部門、(2)東亜薬品工業株式会社、(3)東京大学大学院 農学生命科学研究科 獣医公衆衛生学教室

概要

海馬で起こる「成体神経新生」は、記憶や感情に関わり、精神疾患とも関連する。 我々は、乳酸菌(Enterococcus faecium T-110)・酪酸菌(Clostridium butyricum TO-A)・糖化菌(Bacillus subtilis TO-A)からなるプロバイオティクス(ProB3)が神経幹細胞の増殖や新生ニューロンの成熟を促進することを明らかにした。さらに、ProB3が増加させる代謝物(テアニンなど)も、ヒト神経幹細胞の分化を促進した。本研究は、腸内環境が脳機能に及ぼす影響を示すもので、今後、プロバイオティクスや代謝物を活用した認知症・精神疾患の新たな予防法への応用が期待される。

抗酸化、抗糖化、ミカン

P099
摘果ウンシュウミカンの機能性評価

Functional evaluation of thinned Citrus unshiu

発表者

○瀬戸山 央(1)

所属

(1)神奈川県立産技総研

概要

摘果ミカン(青ミカン)には成熟ミカンよりも多くのフラバノン配糖体(ヘスペリジン、ナリルチン)が含まれていることが知られている。そこで本研究では摘果ミカンの機能性として抗糖化作用および抗酸化作用に着目しその機能性を明らかにすることを目的とした。その結果、果皮にフラバノン配糖体が多く含まれることが分かった。また試験管、細胞、線虫の各アッセイにより強い抗糖化、抗酸化性を有していることが明らかとなった。今後、摘果ミカンを有効利用する上でこれらの機能性を有した高付加価値のある食品、サプリメント、化粧品の開発の可能性を見出すことができた。

ろ過除菌、微生物制御、衛生評価

P100
微小細菌混入を早期に検出する技術の開発

Development of early detection technology for small bacterial contamination

発表者

○中井 亮佑(1)、寺村 裕治(2)、佐藤 佑哉(2)、山本 京祐(1)

所属

(1)産総研 バイオものづくり研究センター、(2)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

微生物、特に細菌の最小サイズは一般に約 0.2 マイクロメートルとされ、ライフサイエンス業界や医薬・食品業界などにおいて同孔径の精密ろ過膜を用いた「ろ過除菌」が行われています。しかし最近になって、精密ろ過膜を通り抜けるほどに小さな微小細菌がさまざまな場所に存在することが分かってきました。微小細菌を含む微生物のほとんどは一般的な培養技術では分離することが困難ですが、私たちは独自の微小細菌株ライブラリを構築するとともに、その効率的な回収技術の開発にも取り組んでいます。これらを微生物混入の早期検出に役立てたいと考えています。

サルコペニア、筋細胞、機能性食品

P101
老化筋細胞モデルを用いた食によるサルコペニア予防・改善法の開発

Development of dietary prevention and improvement of sarcopenia using an senescent myocyte model

発表者

○安倍 知紀(1)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

超高齢社会となったわが国では、健康寿命の延伸が喫緊の課題となっている。加齢により骨格筋は量と質が低下したサルコペニアを発症し、自立した生活を脅かす。サルコペニアの研究においては動物個体を用いた研究は進んでいるが、有用なin vitroモデルはほとんどない。本研究では、食によるサルコペニア予防・改善法の開発に資する老化筋細胞モデルと本モデルを用いた評価事例について紹介する。また、筋細胞の肥大化について簡便に評価できる方法についても発表する。

軽度認知障害(MCI)、天然化合物、脳オルガノイド

P102
軽度認知障害(MCI)の病態改善に資する天然化合物の探索

Search for natural compounds that contribute to improving the pathophysiology of mild cognitive impairment (MCI)

発表者

○平野 和己(1)、落石 知世(1)、ワダワ レヌー(1)

所属

(1)産総研 細胞分子工学研究部門

概要

アルツハイマー型認知症(AD)は、認知症全体の60-70%を占める神経疾患であり、現在有効な治療法は極めて限定的である。社会課題としての認知症問題の解決には、ADの発症前すなわち軽度認知障害(MCI)状態における高額医療を伴わない予防・治療を行うことが必要である。MCI状態は、少数のアミロイドβ(Aβ)が重合した「Aβオリゴマー」によって誘発されるシナプス機能障害を有し、ADへの移行リスクが高い一方で、健康状態へと回復し得る可逆的な状態であり、この状態での適切な介入が課題となっている。本課題では、Aβオリゴマープローブを発現した正常ヒト神経細胞である「MCIモデル細胞」を樹立し、自生地域に特色(主にインド)のある天然化合物群から独自のアプローチで有効成分を探索する。