放射線は、医療診断・医療治療・非破壊検査・原子力発電・滅菌・加工・品種改良など、古くから利用され、人類に不可欠なものとなっています。近年では、大型加速器施設から得られる放射線を用いて最先端の分析や医療治療・診断など活発に研究されてます。このように人類にとって不可欠で有用なものである一方で、放射線の取り扱い方を間違えると重篤な結果を招くおそれがあります。このため放射線に対する安心安全のためには、放射線を正しく取り扱い、放射線を正確に測定し、放射線から人体を防護することは非常に重要です。
当研究グループでは、放射線(X線、γ線、β線、粒子線)の量を正確に測定する技術を開発し、標準を開発・維持・供給しています。現在、特に以下の標準について研究開発を進めています。
-
医療用Ir-192密封小線源の線量標準の開発(プレスリリース2016.02.09)
がん治療の一つである遠隔操作密封小線源治療(RALS)を行う際の照射量を正確に評価するために必要なガンマ線基準空気カーマ率の標準を開発しています。
-
低線量率γ線線量標準の開発
環境レベルの放射線に対する計測器の校正を実現します。線量率の範囲は、Cs-137線源を用いて、0.065 mGy・h-1~2.0 mGy・h-1です。
-
マンモグラフィX線の線量標準(プレスリリース)
乳がん検査に普及しているマンモグラフィ診断装置に使われるX線の線量を正確に計測するための標準です。
-
国家基幹技術であるX線自由電子レーザ計測技術(プレスリリース)
単色X線計測技術を応用して、SPring-8の自由電子レーザの強度計測、利用計測研究を行っています。新しい常温で動作するカロリメータを開発しています。
-
医療用リニアックからの高エネルギー光子線標準の開発 (プレスリリース)
がん治療に用いられている医療用リニアックから発生する高エネルギー光子線の標準供給を2013年度から開始しました。電子線の線量を評価する研究も行っています。
-
β線線量標準の開発
外挿電離箱を用いて90Sr/90Y、85Kr、147Pm線源についてβ線標準場を設定しています。さらに、医療用密封小線源(Ru-106/Rh-106)の水吸収線量標準を開発し、2014年から供給を開始しました。
-
放射線治療の強度基準であるCo-60γ線水吸収線量標準
がん治療などの放射線治療に使われている放射線の強度は、人体への効果が重要なため水吸収線量の単位で測定されています。γ線の水吸収線量を高精度で測定するための標準を供給しています。