医療用リニアックからの高エネルギー光子線標準の開発

研究のポイント

  • 医療用リニアックからの高エネルギー光子線を高精度で評価する標準を開発
  • 感度の補正をせずに水吸収線量を直接評価することができる
  • より正確な線量評価により放射線治療の高度化への貢献に期待

研究内容

研究の背景の詳細や、過去の資料に関してはこちら

がんの放射線治療に用いられている医療用リニアックからの高エネルギー光子線に対する水吸収線量標準を開発し、2013年から標準供給を開始しました。この水吸収線量標準は、実際にがん治療に用いられている医療用リニアックから放出される高エネルギー光子線をグラファイトカロリーメーターによって計測し、モンテカルロシミュレーションによって水吸収線量へ変換する手法によって開発しました。開発した標準によって、がんに照射する高エネルギー光子線の水吸収線量をより正確に評価することが可能となり、高エネルギー光子線を用いた放射線治療の信頼性・安全性への貢献が期待されます。

 図1に、医療用リニアックからの高エネルギー光子線の水吸収線量をグラファイトカロリーメーターで評価する際のセットアップを示しました。左側手前に見えるのがグラファイトカロリーメーター、写真右奥から左奥に見えるのが医療用リニアック、高エネルギー放射線は、左奥の照射口から出されます。

図1.医療用リニアックとグラファイトカロリーメーター

医療用リニアックからの高エネルギー光子線を、グラファイトカロリーメーターに100秒間照射したとき、グラファイトの温度は約0.01度上昇します(図2)。この時の温度上昇からグラファイトに吸収された高エネルギー光子線のエネルギーを得ることができます。測定したエネルギーを補正することによって、水吸収線量を評価します。また、表1に開発した高エネルギー光子線標準の詳細をまとめました。

図2.グラファイトカロリーメータ内部の温度上昇の一例
高エネルギー光子の公称エネルギー 6 MV, 10 MV, 15 MV
水吸収線量の範囲 1 Gy 〜 200 Gy
水吸収線量率の範囲 0.02 Gy/s ~ 0.08 Gy/s
校正の不確かさ 0.8 % (k=2)
表1.高エネルギー光子線標準の詳細