研究のポイント
- 室温で動作するカロリメータの開発
- 極端パルス・大強度のX線レーザ強度の絶対測定
- X線による非線形過程の計測
研究のねらい
産業技術総合研究所では 極低温放射計を開発し、放射光やSPring-8のSCSS試験加速器[1]の極紫外自由電子レーザー(EUV-FEL)の強度 の絶対測定が可能であることを実証してきました[2-5]。この極低温放射計では、真空紫外から軟X線領域の光子の強度測定を主眼にしていました。X線自由電子レーザー(XFEL)の強度測定ができるよう、検出部を改造し、XFELの絶対測定にも成功しました[6]。
極低温放射計は、配線に使用している超伝導ワイヤーの特性から、XFELのようなパワーが数mWを超えるような高強度の光の測定が困難であり、また液体ヘリウムを用いた計測器のため取扱いが容易でないためなどから、室温で動作する常温カロリメータを開発し、XFELの絶対測定を試みています。
研究内容
常温カロリメータの特徴を表1に示します。X線の大強度のレーザなどを高精度で測定が可能です。
光子のエネルギー | 0.5 keV~40 keV |
光子のパワー | 数uW~100mW |
強度測定の精度 | 5 % |
優れた操作性 | 室温で動作 電力置換型のため、複雑な解析が不要 |
図1に常温カロリメータ、図2に計測器の写真を示します。常温カロリメータは比較的小さい真空容器で、その内部に、受光部を備えています。計測器はラック1台に収まり、容易に運搬できます。受光部は、図3のような、3重の構造になって、外部の温度変化がカロリメータに影響を与えないような構造になっています。
参考文献
[1] T. Shintake et al., Nature Photon, 2, 555 (2008).
[2] M. Kato et al., AIP Conference Proceedings 879, 1129 (2007).
[3] M. Kato et al., Nucl. Instrum. Methods A 612, 209 (2009).
[4] N. Saito et al., Metrologia 47, 21 (2010).
[5] M. Kato et al., Metrologia 47, 518 (2010).
[6] M. Kato, et al., Applied Physics Letters 101 (2) 023503 (2012).
[7] 0.1 nmより短波長のX線自由電子レーザー光強度を初めて測定(プレスリリース 2013.9.12)
[8] X線自由電子レーザー強度の絶対測定 AIST Today 2013年1月
[9] T. Tanaka et al.,Review of Scientific Instruments, 86 (9), 093104 (7 pages) (2015)