中硬X線と軟X線の標準に用いるX線は、それぞれ管電圧30~300 kV、10~50 kVのX線管から発生するX線にフィルターを介して得られるX線を用いています。管電圧とフィルターによりX線のスペクトルが変化します。X線の線質を特定するために、管電圧・半価層厚・QI値(Quality index、線質指標)で表現します。半価層厚とは、用いているX線の空気カーマの値が半分になるAlまたはCuの厚さのことをいいます。そして、AlまたはCuの吸収係数からその厚さで空気カーマの値が半分になる単色のX線エネルギーを実効エネルギーといい、この実効エネルギーを最大エネルギーで割ったものを、QI値といいます。当所では、QI値が0.4~0.9について、標準を設定しています。
中硬X線と軟X線の空気カーマおよび照射線量標準は、平行平板式自由空気電離箱によって実現しています。図1にその概略図を、図2にその概観写真を示します。X線発生装置からのX線は、入射窓を通り電離箱内の空気に照射されます。X線によって生成された空気構成分子のイオンは、集電極に電界によって集められ、電流として測定されます。一方、入射X線と相互作用する空気の体積は、入射窓の面積と集電極の長さの積から求められます。この体積から相互作用する空気の質量を求めることができます。以上のように求められた電流と質量の比から、照射線量率を求めます。実際には、空気によるX線の減衰、電界分布の歪み、イオンと電子の再結合、散乱線の寄与、電子の損失、湿度の影響などの補正を測定またはモンテカルロ計算によって行っています。照射線量が得られれば、空気カーマを求めることができます。図2に、中硬X線用の自由空気電離箱(左)とトランスファー用の電離箱(右)の写真を示します。このように校正する器物を左右に置き、交互にX線を照射することによって校正器物の校正を行います(置換校正)。