β線線量標準の開発

β線は、2006年より放射線防護用の70μm組織吸収線量を供給しており、2009年よりJCSS制度による供給を開始しました。さらに、2014年より治療用β線源の水吸収線量標準の供給を開始しました。

  • 組織吸収線量標準(防護分野)(ISO6980シリーズに対応)
    β線源は治療用線源やトレーサとして、医療・研究分野で活用されています。β線源を扱う場合や原子力発電所などのように作業環境中にβ線の存在が疑われる場合は、放射線安全管理上、70 μm個人線量当量及び70 μm方向性線量当量を測定します。β線線量当量測定器を校正するときに標準として必要とされるのがβ線組織吸収線量標準です。
図1.β線組織吸収線量測定に用いる外挿電離箱と 標準場生成に用いるβ線照射装置
使用する線源はSr-90+Y-90, Kr-85及びPm-147
  • 水吸収線量標準(医療分野)(ISO21439に対応)
    眼の治療に使われている医療用密封小線源(Ru-106/Rh-106)の水吸収線量標準を開発するため、新たに小電極外挿電離箱と測定用のファントムを製作し、フィルム線量計による測定方法を開発しました。

図2は、ファントムに載せた医療用密封小線源(Ru-106/Rh-106)の写真です。目の治療に使われる線源は直径が最大で25mm程度と小さいため、集電極の小さい外挿電離箱(直径4mm)を開発しました(図3)。この電離箱の下に対象線源を置いて線量を測定します。また、図2の線源は湾曲しているため、線源周辺の線量分布が重要です。線量分布は、フィルム線量計や小さい電離箱を用いて測定します。これらの測定を行うことによって、医療用密封小線源(Ru-106/Rh-106)の水吸収線量標準を評価することに成功しました。

図2.ファントムに載せたRu-106小線源

図3.小さい外挿電離箱の外観

β線源による治療の例
 ・がん治療 
 ・角膜疾患の手術後の再発予防
 ・血管内照射(再狭窄予防)
   (狭窄:内腔がせまくなり通りが悪くなること)
放射線治療で用いるβ線源
 形状:平面線源、凹面状線源、シード線源、ワイヤ線源など
 核種:Sr-90/Y-90, Xe-133, P-32, W-188, Re-188, Ru-106, Rh-106など