環境生物機能開発研究グループ
研究内容

腸内微生物叢の群集構造と機能解析

生物の腸内には多様な微生物が生息しており、複雑な宿主–微生物間相互作用がみられます。近年の研究から、このような腸内微生物叢が宿主の栄養代謝においてきわめて重要な役割を果たしていることが明らかになってきました。一方、宿主–微生物間の相互認識機構についてはいまだ不明な点がいくつもあります。本研究では特に農業害虫を対象として、その腸内微生物叢の群衆構造解析を行うとともに培養可能な腸内微生物を対象に遺伝子組換え体を作成し、宿主–微生物間相互作用を遺伝子レベルで明らかにするべく研究を行っています。共生微生物の機能と腸内定着のメカニズムが明らかになれば、有用菌の腸内定着を促進したり逆に病原菌の腸内定着を防ぐなど、腸内微生物叢を自在に操ることが可能になるかもしれません。また農業害虫における腸内微生物の研究は、これら微生物をターゲットにした新規害虫防除技術の開発に繋がると期待されます。

  • 腸内微生物叢の群集構造と機能解析

    図:(A)ダイズの害虫であるホソヘリカメムシ.(B)ホソヘリカメムシの消化管.消化管には多数の袋状組織が発達し(黄色矢印頭),その内腔にBurkholderia属の腸内細菌(C)が多数共生している.(D)腸内細菌の透過電子顕微鏡像.

  • 微生物の多様な嫌気エネルギー代謝の研究

    動植物と比較して微生物は驚くほど多様なエネルギー代謝の多様性を有しており、近年になっても新規代謝系が発見され続けている。当グループでは特に酸素が存在しない嫌気性環境における微生物のエネルギー代謝を対象とした基礎・応用研究を行っている。特に (1)固体導電性物質との電子授受によるエネルギー代謝、(2)金属鉄の腐食に関与するメタン生成、酢酸生成代謝、(3)特に深部地下圏における原油・石炭分解メタン生成代謝、(4)嫌気性廃水処理、(5)金属化合物による原始的微生物代謝の再現、を主要な研究対象としている。

    微生物の多様な嫌気エネルギー代謝の研究

    図:導電性固体との電子授受を介して共生的代謝をおこなう有機物分解菌(桿菌)とメタン生成アーキア(球菌)

    発光生物の発光分子機構の解析

    発光生物に由来する発光タンパク質やその基質等の発光関連因子は、種々のアッセイ系や生体内遺伝子発現のモニタリング等において、有用なツールとして活用されており、新たな発光関連因子の発見による用途拡大が期待されています。一方で、発光機構が未解明の発光生物も多数残されており、その機能解明と利活用が求められています。当グループでは、新規発光生物に着目して新たな発光因子の探索を行うとともに、その利用法の研究開発を行っています。

    発光生物の発光分子機構の解析

    図:試験管内で再現したウミホタルの発光(左)とウミホタルの拡大図及び実際の発光(右)

    インジゴ還元槽の細菌群集構造と機能解

    藍染めの染色液の作成の際に藍の植物体の中に含まれるインジゴを微生物の機能で還元する工程があります。この染色液はアルカリ条件下で生育可能な細菌によって色素還元が起こります。染色の工程はオープンな系で行われるため雑菌汚染が高頻度で起こる条件下で機能が維持されていることになります。本研究では微生物叢の群集構造解析を行い微生物生態学的立場からその変遷過程を明らかにするとともに、極限環境下における微生物間相互作用や適正な微生物叢形成・変遷原理を解明することを目的としています。

    インジゴ還元槽の細菌群集構造と機能解

    図:藍染めの発酵液(pH10以上)から分離
    されたインジゴ還元細菌Amphibacillus indicideducens
    N214株(右下のバーは0.5μm)

    好アルカリ性微生物のエネルギー代謝機構に関する研究

    好アルカリ性微生物はアルカリ性(プロトンの量が中性の千分の1)という驚異的な環境に適応している微生物です。一般的に生体エネルギーの通貨はATPであることが知られていますが、ATPは生体膜内外のプロトン濃度勾配(細胞外に高いプロトン濃度が必要)により形成されることから、高アルカリ環境はエネルギー獲得上極めて不利な環境であると言えます。
    B.clarkii K24-1Uを供試し、呼吸鎖によって排出されるプロトンの挙動をバルクのpH変化によってモニタリングしたところ、プロトンが排出されてからバルクで検出されるまでにある一定のタイムラグが存在することを見出しました。このタイムラグは、高pHでより顕著に観察され、生体膜を隔てた膜電位を消失させる試薬であるバリノマイシン存在下で消失しました。以上の結果によりB. clarkii K24-1Uは膜電位を介した呼吸鎖によってくみ出されたプロトンを生体膜外側表面に保持する機能を持っていることが明らかになりました。
    一方呼吸鎖によって膜の内側から外側に排出されるプロトンが汲み出される割合とATP合成量および膜電位(膜内外の電位差生体膜の内側がマイナス、外側がプラス)との関係を調べた結果、好アルカリ細菌における細胞外に汲み出されるプロトン当たりの合成量が中性細菌よりかなり高いことおよびその原因の一つが好アルカリ細菌が示す高い膜電位に因るものであることが示唆されました。

    好アルカリ性微生物のエネルギー代謝機構に関する研究

    図:好アルカリ性細菌のH+-コンデンサーモデル
    好アルカリ性細菌は高い膜電位存在下で、重いプロトンを膜の内側から外側に汲み出し、その重いプロトンでATP合成酵素を駆動させる(青の矢印)。中性細菌は一般的に見られる膜電位存在下で、好アルカリ性細菌より軽いプロトンを汲み出し、軽いプロトンでATP合成酵素を駆動させる(白の矢印)。重いプロトンを汲み出せる要因として、チトクロムcとチトクロムc酸化酵素との大きな酸化還元電位差が考えられます(チトクロムcは次の電子伝達タンパク質に対して大きな落差をもったダムの働きをしていると考えています。)。またチトクロムcの膜アンカー近傍にあるアスパラギンリッチな特有の構造は、H3O+を介したH+輸送のネットワークにも関与している可能性が考えられます。膜電位とチトクロムcの荷電と構造による細胞膜外表面上の物理化学的環境によって形成されるH+-コンデンサーモデルを提唱しています。


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