微生物生態工学研究グループ

ミッション

 私たちの研究グループでは、微生物生態学を基幹とする多層的視点から生命現象の深淵を明らかにするとともに、その工学的利用技術を創出することでバイオエコノミー社会の形成を目指しています。

 微生物生態学は、海洋、河川、森林土壌、湿地等の自然環境、ヒト、植物、昆虫等の宿主との共生環境、水田、畑土壌、廃水処理プロセス等の人工環境といった個々の生態系における微生物の役割を、微生物学、生化学、合成生物学、分子生物学、植物生物学、生命情報科学等の多層的視点から、かつ、遺伝子や酵素等の生体分子、細胞、個体、群集等の大小様々なスケールにおいて解析し、地球上における物質循環の根幹、生命現象、代謝機能の進化を解明して生物圏エコシステムを包括的に理解しようとする学問です。

 微生物生態学により生物圏エコシステムを理解することは、持続可能な循環型社会(サーキュラーエコノミー)に適合する農水産物の生産技術、廃水や廃棄物の有効利用技術、微生物の代謝機能や遺伝子資源をフル活用したバイオものづくり技術等の創出に繋がるため応用研究の面からも注目を集めており、産業エコシステムのバイオ化を推進するバイオエコノミー社会の形成に向けた重点研究課題のひとつに位置付けられます。

 我々の研究グループでは、我が国のバイオ戦略に示される「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現する」という目標に向け、以下のような研究課題を推進することでその達成を目指します。

  1. 種間相互作用に基づく微生物新規機能の探索および適応進化動態の解析
  2. 未知・未利用の稀少微生物群の探索とその利活用
  3. 持続可能な社会形成に向けた新規バイオテクノロジーの開発
  4. 土壌微生物の生態機能の発掘と深化
  5. 微生物情報科学による生物圏エコシステムの理解による産業エコシステムの高度化
  6. 植物・微生物の新規な相互作用や新機能に関する研究



トピックス

2022年10月6日 中井亮佑 主任研究員の研究が新聞に掲載

 2022年10月6日の日刊工業新聞に、中井亮佑 主任研究員 が推進する「精密ろ過膜を通過する極小細菌の検出と機能分析」についての研究が紹介されました。詳細は、日刊工業新聞電子版「技術で未来拓く 産総研の挑戦(231)培養技術向上で資源化」をご覧ください。


2022年09月28日 美世一守さんが日本土壌肥料学会の若手口頭発表優秀賞を受賞

 2022年9月13日から15日にかけて東京農業大学にて開催された日本土壌肥料学会2022年度大会において、当グループの美世一守 博士研究員が若手口頭発表優秀賞を受賞しました。受賞演題は「土壌窒素固定マイクロバイオームの全球的解明:方法論から大規模解析へ」です。詳細は、日本土壌肥料学会のWEBサイトをご覧ください。


2022年07月11日 PET関連物質を酸素の無い環境で分解する微生物を発見

 当グループの黒田 恭平 研究員、成廣 隆 研究グループ長らは、ペットボトルなどに用いられるポリエチレンテレフタレート(PET)のモノマーであるテレフタル酸ビス(2-ヒドロキシエチル)(BHET)やPET原料である難分解性物質テレフタル酸ジメチル(DMT)の分解が酸素の無い環境(嫌気性環境)で生じることを解明し、その浄化機構を微生物の培養とゲノム情報に基づき新規提案をしました。詳細は産総研公式ページの研究成果をご覧ください。
 この成果は国際学術誌Chemical Engineering Journal」にオンライン掲載されました。


2022年05月13日 ペットボトル原料製造過程における難分解性廃水の効率的な処理に成功

 当グループの黒田 恭平 研究員、成廣 隆 研究グループ長らは、ペットボトルなどに用いられるポリエチレンテレフタレートの原料となる高純度テレフタル酸とテレフタル酸ジメチルの製造過程で排出される高濃度有機性廃水の一括処理に成功し、その新しい処理機構を微生物のゲノム情報に基づき提案しました。詳細は産総研公式ページの研究成果をご覧ください。
 この成果は国際学術誌「Water Research」にオンライン掲載されました。


2021年11月13日 阿寒湖産マリモのマイクロバイオーム解析に関する研究成果が新聞で紹介。

 本年6月に 中井亮佑 研究員が国立遺伝学研究所、釧路国際ウェットランドセンターと発表した、阿寒湖産マリモのマイクロバイオーム解析に関する研究成果が共同通信、毎日新聞、北海道新聞等で「マリモ、細菌で球状維持」と取り上げられました。
 この成果は国際学術誌iScience」に掲載されました。
Nakai R, Wakana I, Niki H.: Internal microbial zonation during the massive growth of marimo, a lake ball of Aegagropila linnaei in Lake Akan. iScience 24:102720 (2021).


2021年11月10日 蔵下はづきさんが日本線虫学会大会のポスター発表にて若手研究者賞を受賞

 2021年11月5日(金)〜11月6日(土)にオンラインで開催されました2021年度日本線虫学会大会 (第28回大会)におけるポスター発表にて、当グループの蔵下はづきさん(技術研修生、長岡技大一貫制博士過程2年)が若手研究者賞を受賞しました。受賞演題は「レンコン黒皮線虫病の黒斑点発生機構解明に向けた化学・微生物学的解析」です。詳細は日本線虫学会のWEBサイトをご覧ください。


2021年11月10日 共生細菌のちからで害虫が農薬に強くなる助け合いの仕組みを解明。

 当グループの 菊池義智 主任研究員は、環境創生研究部門 環境機能活用研究グループ 佐藤由也 主任研究員や、元メンバーのJang Seonghanさんらとともに、北海道大学、秋田県立大学、農業・食品産業技術総合研究機構との研究において、害虫が腸内の共生細菌との作用で農薬抵抗性を獲得する仕組みを初めて解明しました。本研究では、共生細菌の一つの遺伝子が、昆虫の農薬抵抗性に重要な因子であることが特定され、共生細菌の農薬分解遺伝子を標的にした新たな害虫防除法の可能性を示すものです。詳細は産総研のプレスリリースをご覧ください。この成果は、国際誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。


2021年11月2日 石神広太さんらが日本微生物生態学会優秀ポスター発表賞を受賞。

 2021年10月30日(土)~11月2日(火)にオンライン開催されました日本微生物生態学会第34回大会における一般ポスター発表にて、当グループの石神広太さん(技術研修生、北大博士課程2年)が優秀ポスター発表賞を受賞しました。受賞演題は「カビが繋ぐ昆虫とバクテリアの共生系サイクル」です。また、黒田恭平 研究員らが参画した長岡技術科学大学の演題「なぜ低温硝化リアクター内で亜硝酸酸化細菌Nitrospira は優占できたのか ~Nitrospira とNitrosomonas の炭素固定経路の違い~」も同賞を受賞しました。詳細は、日本微生物生態学会のWEBサイトをご覧ください。


2021年10月28日 働きアリと共生する新しい腸内細菌の発見。

 当グループの 伊藤英臣 主任研究員 と 菊池義智 主任研究員 は、関西学院大学および琉球大学との共同研究において、沖縄に生息するトゲオオハリアリの野外コロニー(女王、オス、働きアリ)のマイクロバイオーム解析を行い、働きアリに特異的かつ優占的に共生する新種の細菌を発見しました。さらに、この細菌は腸内に高密度に定着しており働きアリが成虫になってから獲得される事を明らかにしました。詳細は、関西学院大学のウェブサイト琉球大学のウェブサイトをご覧ください。この成果は、国際誌「ISME Communications」にオンライン掲載されました。


2021年10月22日 伊藤英臣 主任研究員が第40回日本土壌肥料学会奨励賞を受賞。

 当グループの 伊藤英臣 主任研究員が「農耕地の窒素循環と農業害虫に関わる土壌微生物の研究」にて第40回日本土壌肥料学会奨励賞を受賞しました。詳細は、日本土壌肥料学会のWEBサイトをご覧ください。


2021年10月21日 南極から新種のレジオネラ属菌の培養に成功。

 当グループの中井亮佑 研究員は、国立極地研究所、東京医科歯科大学、東邦大学などと協力して、南極の湖からレジオネラ属菌の単離培養に成功し、新種Legionella antarctica(レジオネラ・アンタークティカ)を提案しました。レジオネラ属細菌は、空調設備の冷却塔、浴槽などの衛生管理で重要視される微生物です。当該属として世界初となる低温耐性種の分離に成功したことから、低温条件におけるレジオネラ属菌の検出や抑制など、水処理プロセスの高度化に繋がる知見が得られることが期待されます。詳細は、産総研公式ページの研究成果国立極地研究所のウェブサイトをご覧ください。この成果は、国際学術誌「Microbiology Spectrum」にオンライン掲載されました。


2021年9月15日 成廣隆 研究グループ長が第7回日本微生物生態学会奨励賞を受賞。

 「廃水処理微生物生態系の包括的理解に向けた生命情報科学研究」にて成廣隆 研究グループ長が第7回日本微生物生態学会奨励賞を受賞しました。詳細は、日本微生物生態学会のWEBサイトをご覧ください。


2021年8月21日 Jang Seonghanさんらが日本進化学会優秀発表賞を受賞。

 2021年8月18日から21日にかけてオンライン開催された日本進化学会2021年度大会において、当グループのJang Seonghan(JSPS 特別研究員)、菊池義智 主任研究員が優秀ポスター賞を受賞しました。受賞演題は「Homeobox遺伝子によって調節される共生器官の驚くべき形態変化!」です。詳細は、日本進化学会のWEBサイトをご覧ください。


2021年6月29日 阿寒湖産マリモのマイクロバイオームに関する研究成果が新聞・ネットニュースで紹介。

 2021年6月29日の北海道新聞および釧路新聞に、中井亮佑 研究員が国立遺伝学研究所、釧路国際ウェットランドセンターと共同で行った「阿寒湖産マリモのマイクロバイオーム」に関する研究成果が掲載・紹介されました。その後、各種ネットニュース(yahoo!ニュース等)で報道されました。
 Nakai R, Wakana I, Niki H.: Internal microbial zonation during the massive growth of marimo, a lake ball of Aegagropila linnaei in Lake Akan. iScience 24:102720 (2021). DOI:10.1016/j.isci.2021.102720.

2021年6月19日 河野圭丞さんらが優秀ポスター賞を受賞。

 2021年6月18日から19日にかけてオンライン開催された日本土壌微生物学会2021年度大会において、当グループの河野圭丞さん(元技術研修生、現京大博士課程1年)、菊池義智 主任研究員、伊藤英臣 主任研究員が優秀ポスター賞を受賞しました。受賞演題は「土壌から獲得した微生物がメダカ腸内の日和見菌の定着を抑制する」です。

2021年3月29日 石神広太さん、Jang Seonghanさんがそれぞれポスター賞を受賞。

 2021年3月23日から26日にweb開催された第65回日本応用動物昆虫学会大会において、当グループの石神広太さん(技術研修生、北大博士課程1年)、Jang Seonghanさん(技術研修生、北大博士課程3年)がそれぞれポスター賞を受賞しました。受賞演題は石神さん:「カビによって決まる昆虫とバクテリアの相利共生関係」、 Seonghanさん:「共生細菌による腸の劇的な形態変化:Homeobox遺伝子が鍵!」です。詳細は、日本応用動物昆虫学会のWEBサイトをご覧ください。


2021年3月12日 STEAMライブラリー「活性汚泥の微生物」が公開。

 2021年3月12日、 経済産業省「未来の教室」プロジェクト「STEAMライブラリー」において、成廣隆研究グループ長、ならびに生物資源情報基盤RGのMasaru K. Nobu研究員が協力した「活性汚泥の微生物」に関するデジタルコンテンツ(日本語版:https://www.steam-library.go.jp/content/66英語版:https://www.steam-library.go.jp/content/79)が公開されました。


2021年3月3日 石神 広太さんとJang Seonghanさんの共同筆頭論文が掲載誌の表紙を飾りました。

 2021年3月3日に石神 広太さんとJang Seonghanさんが共同筆頭著者を務めた論文が、 Biology Letters誌 17巻 3号の表紙を飾りました!


2020年12月22日 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)における研究成果が新聞に掲載。

 2020年12月22日の新潟日報新聞に、成廣隆研究グループ長がチームリーダーを務める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)スマートバイオ産業・農業基盤技術プロジェクト「スマートバイオ社会を実現するバイオプロセス最適化技術の開発」に関する成果が掲載されました。詳細は、 新潟日報のWEBサイトをご覧ください。


2021年3月2日 昆虫の呼吸器官形成に関わる新しいメカニズムを解明。

 当グループの 菊池義智 研究グループ付 (兼)国立大学法人 北海道大学 大学院農学院 客員准教授、伊藤英臣 主任研究員らは、国立大学法人 北海道大学 大学院農学院 博士課程学生 Jang Seonghan、石神広太と共同で、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 基礎生物学研究所、フランス国立科学研究センター(CNRS)と協力し、昆虫の呼吸器官である「気管」の形成時に、活性酸素種が気管を構成するタンパク質の架橋に関与し、その硬化と形態維持に重要な役割を果たすことを明らかにしました。 詳細は、産総研公式ページの研究成果をご覧ください。
 この成果は、国際学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences USA」(米国科学アカデミー紀要)に オンライン掲載されました。


2020年9月24日 伊藤英臣 主任研究員らの研究成果が新聞に掲載。

 2020年9月24日の日刊工業新聞に、伊藤英臣 主任研究員が東海大学らと共同で行った「腸内細菌に着目したアワビの成長促進技術」に関する研究成果が掲載されました。 日刊工業新聞のWEBサイト。


2020年9月9日 伊藤英臣 主任研究員らの論文が掲載誌の年間最優秀論文を受賞

 2020年9月9日に、伊藤英臣 主任研究員と東京大学・新潟県農業総合研究所との共著論文が、掲載誌Soil Science and Plant Nutritionの年間最優秀論文賞を受賞しました。
Yoko Masuda, Hideomi Itoh, Yutaka Shiratori, Keishi Senoo. Metatranscriptomic insights into microbial consortia driving methane metabolism in paddy soils. Soil Science and Plant Nutrition, 64(4), 455-464, (2018).  http://jssspn.jp/info/secretariat/2020-8.html>


2020年9月9日 石神広太さんらが最優秀ポスター発表賞を受賞

 2020年9月6日から9日にweb開催された日本進化学会第22回大会において、当グループの石神広太さん(技術研修生、北大博士課程1年)、Jang Seonghanさん(技術研修生、北大博士課程3年)、伊藤英臣 主任研究員、菊池義智 主任研究員が最優秀ポスター発表賞を受賞しました。受賞演題は「新たな三者共生系の発見:カビが決める昆虫とバクテリアの相利共生」です。 http://sesj.kenkyuukai.jp//special/index.asp?id=33354


2020年8月22日 成廣隆研究グループ長らの研究成果が新聞に掲載

 2020年8月22日の新潟日報新聞に、成廣隆研究グループ長がチームリーダーを務める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)スマートバイオ産業・農業基盤技術プロジェクト「スマートバイオ社会を実現するバイオプロセス最適化技術の開発」に関する成果が掲載されました。


2020年7月15日 菊池義智 主任研究員が、第4回バイオインダストリー奨励賞を受賞!

 菊池義智 主任研究員が、研究テーマ「昆虫の農薬抵抗性に関わる腸内微生物の発見とその生態・機能の解明」にて第4回バイオインダストリー奨励賞を受賞されました。贈呈式および受賞記念講演会は10月14日(水)に開催されるBioJapan2020の会場(パシフィコ横浜)にて行われる予定です。 詳細は、バイオインダストリー協会のWEBサイト ならびに BioJapan2020のWEBサイトをご覧ください。



2020年4月1日より、生物プロセス研究部門の中に新たに「微生物生態工学研究グループ」が発足致しました。

 2020年4月1日より、生物プロセス研究部門の中に新たに「微生物生態工学研究グループ」が発足致しました。今後とも変わらぬご指導、ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

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