γ線標準

当所では、Co-60とCs-137からのγ線について、空気カーマ(率)および照射線量(率)の標準を設定しています。空気カーマ率の大小によって、大線量照射室と小線量照射室の2つの部屋を使い分けています。校正を行っているγ線のエネルギーは0.66 MeV(Cs-137)、1.17、1.33 MeV(Co-60)であり、X線のエネルギーよりはるかに大きい。そのため生じる二次電子のエネルギー分布は、より高エネルギー側に分布の最大値を持つようになります。したがって二次電子の最大飛程が長くなり(1 MeVの電子に対して最大飛程は約3.3 m)、X線の照射線量測定と同様の装置で測定しようとすると、荷電粒子平衡を成り立たせるためには自由空気電離箱の大きさが非常に大きくなってしまいます。これは空間的に現実的ではないので、X線と同様の装置による絶対測定法を用いることができません。そこで、図3、4に示したグラファイト壁空洞電離箱を用いて、γ線の照射線量測定を行っています。荷電粒子平衡を実現するための空気の厚さを、グラファイトの壁厚に置き換えて装置を小型化しています。照射線量および空気カーマは、自由空気平行平板電離箱と同様に、検出した電荷量と空気の質量の比に基づいて求めています。模擬空気であるグラファイトと真の空気の違いは、補正係数として考慮しています。当所では一次標準として2種類の大きさのグラファイト壁空洞電離箱を使っており、その大きさは深さ50mm、内径40mm、および深さ19.3mm、内径20mmです。(図3参照)。

図3.グラファイト壁空洞電離箱の断面図
図4.グラファイト壁空洞電離箱の写真