プレスリリースなど
2025年度
[ プレス発表 ]
発表日:2025年05月15日音響データのみで異種金属の超音波接合良否を判定できる技術を開発
-超音波接合強度のその場迅速予測に向けて-
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)マルチマテリアル研究部門 丸山 豊 主任研究員らは、異種金属同士の超音波接合の接合良否を音響データから高い精度で判定する技術を開発しました。
金属の超音波接合は、接合部の電気抵抗が低く抑えられ短時間で高強度な接合が可能なため、各種バッテリーの電極接合など、高強度・低電気抵抗が必要とされる箇所に多く使われています。しかし、異種金属同士の超音波接合においては接合強度にばらつきが出ることがあります。そこで本研究では、接合部付近で発生する音に着目し、従来のような高コストな検査を行わなくても、接合強度を正確に予測できる技術の開発を目指しました。このような技術は超音波接合の品質管理に寄与すると期待されます。
今回の開発では、Al合金とMg合金の接合時に発生する超音波の音響データを対象とし、スペクトログラム(声紋)化や、非負値行列因子分解(NMF)を用いたデータ処理手法を採用しました。さらにこのデータに適した接合の良否判定に適した指標を複数考案し性能を比較した結果、マハラノビス距離を用いた指標が良否を高い精度で判定できることを突き止めました。今後はこの高い識別性能をもとに音響データと接合強度との関係を調べ、定量的な強度予測が可能な評価技術の開発を目指します。
この技術の詳細は2025年5月22日に開催される「産総研中部センター講演会」において発表されます。

(部材接合研究グループ 丸山 豊 主任研究員 )
[ プレス発表 ]
発表日:2025年04月23日-材料の画像から特性を予測するAI、取得データから次の実験条件を提案するAIを社内で簡単に利用できます-
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)マルチマテリアル研究部門 古嶋亮一 研究グループ長らは、プログラミングの知識不要で、ユーザーが取得したデータを他者と共有することなくAI技術を活用できるアプリ群を開発しました。
モノづくりの現場において、ビッグデータやAIなどデジタル技術を活用した材料開発DXの取り組みが進んでいます。しかし、現場への導入には、ツールを使いこなすためのスキルなどいくつかのハードルがあります。中でも、AIを活用するための学習データの収集と利用には十分な検討が必要です。モノづくりの現場においては、自社で取得した材料の物性データなどを他者と共有することはもちろん、外部クラウド上にデータをおくことへの抵抗が根強くあります。
産総研は、このようなハードルを下げ、材料開発DXをより手軽に導入できるアプリ群を開発しました。これらのアプリ群はいずれもプログラミングの知識が不要で、必要となる学習データも自社内の閉じた環境で利用できるため、他者へのデータ提供やクラウドへのデータ格納の必要がありません。今回開発されたアプリ群は、大きく分けて二つあります。一つ目は材料の画像と特性を関連付けるアプリで、自社のデータから深層学習モデルを構築でき、そのモデルを使うことで任意の新規に開発した材料の画像から特性を予測できるものです。二つ目は、多目的ベイズ最適化による推奨実験条件を提示するアプリで、推奨実験条件での目的変数とその標準偏差も推定できます。これらのアプリを有効に活用することで、材料開発が加速でき、モノづくりの効率が上がると期待できます。
なお、このアプリについては、2025年5月22日に開催される「産総研中部センター講演会」において紹介されます。産総研グループの株式会社AIST Solutionsでは、本アプリ群を企業で利用するためのサービス提供を開始します。産総研グループで一体となって、企業での材料開発などモノづくりの効率を上げるために取り組んでいきます。

(部材接合研究グループ 古嶋亮一 研究グループ長、下島康嗣 主任研究員、丸山豊 主任研究員 )
(構造セラミック研究グループ 中島佑樹 研究グループ付、周游 上級主任研究員、平尾喜代司 招聘研究員、大司達樹 研究参与、 福島学 研究グループ長)
[ プレス発表 ]
発表日:2025年04月15日-3元素の反応可能性をまとめた「元素反応性マップ」80枚から、有望な元素の組3,000種類を提案-
NIMSは、東京大学、産業技術総合研究所、東北大学、京都工芸繊維大学との共同研究により、新物質を見つけるための「元素反応性マップ」を開発・公開しました。実験室で利用可能な80元素について3種類以内の組み合わせ計85,320組の中から、機械学習を用いて、新物質の可能性がある3,000組以上の元素の組み合わせをしめす地図を提案しました。この研究成果は、2月21日にChemistry of Materials誌に掲載されました。
無機物質は複数元素を反応させることで合成します。過去に合成されていない新物質の合成に成功し、その物質が特殊な物性や役立つ機能を持っていれば、新材料として実用化が期待できる「宝」となる可能性もあります。しかし結晶構造データベースにない組み合わせの中には、過去に試してただ反応しなかっただけのものも多く含まれており、合成の可能性をあらかじめ予想することが効率的な新物質探索のために求められていました。
今回、3種類以内の元素の組における物質の生成可能性を、既知物質の有無とともに表示した80×80のグリッド状の「元素反応性マップ」80枚を開発しました。このマップは、3万以上の無機化合物の結晶構造データの機械学習によって作成しています。インタラクティブなWebシステムとして公開しており、誰でもアクセスが可能です。
複雑な結晶や固溶体を含む、実験系の結晶構造データベースを使ってマップの予測結果を検証したところ、高い反応性スコア(0.95以上)の組み合わせは、低い反応性(0.05未満)の組に比べて17倍の確率で既存の化合物が見つかり、反応性スコアの妥当性が示されました。そして高い反応性スコアを示しながら、実験系データベースに未収録の元素の組も3,000組以上見つかり、これらは新物質の眠る「宝のありか」であると期待できます。実際にこのマップをつかって、磁気スキルミオンや熱電材料として注目されているB20構造合金であるCo(Al,Ge)など、ここから、数十種類の新物質の発見にも成功しました。
この元素反応性マップを参考に、さまざまな新物質が発見され、その中から役に立つ新材料が見つかると期待できます。また、この元素反応性マップからは、反応しにくい元素の組み合わせも読み取ることができるため、不活性であることが求められる容器や電極などの候補を探すのにも役立つと期待できます。
本研究は、NIMS マテリアル基盤研究センター 材料設計分野 材料モデリンググループの桂ゆかり主任研究員(筑波大学准教授および理化学研究所客員研究員を兼務)、東京大学大学院新領域創成科学研究科の稲田祐樹(2024年3月に博士課程修了)、産業技術総合研究所の藤岡正弥主任研究員、東北大学金属材料研究所の森戸春彦准教授、京都工芸繊維大学材料化学系の菅原徹教授からなる研究チームによって、科学技術振興機構(JST)のCREST「新規結晶の大規模探索に基づく革新的機能材料の開発」(JPMJCR19J1)の一環として行われました。
本研究成果は、2025年2月21日に、Chemistry of Materials(オンライン版)に掲載され、3月25日に同誌37巻6号2097–2105ページに、本号の表紙となる形で掲載されました。

(カーボンニュートラル材料研究グループ 藤岡 正弥 主任研究員 )
2024年度
AIにより画像からアルミニウム合金の強さを予測
-深層学習を用いてアルミニウム合金の組織画像から機械的特性を予測する技術を開発-
概 要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)マルチマテリアル研究部門 村上 雄一朗 主任研究員、古嶋 亮⼀ 研究グループ長、尾村 直紀 研究グループ長、志賀 敬次 主任研究員、宮島 達也 キャリアエキスパートは、
深層学習AIによりアルミニウム合金の微視組織の画像からアルミニウム合金の強さを予測する技術を開発しました。
リサイクルアルミニウム合金の製造は、原料からのアルミニウム合金の製錬と比べて温室効果ガスの排出量を20分の1以下に削減できますが、さまざまな元素が混入するため用途が限られることが課題でした。
本技術ではリサイクルの容易な、合金元素を多く含む鋳造用アルミニウム合金を対象とし、その特性を予測することが可能です。
従来の合金開発では膨大な実験と評価が必要でしたが、本技術を用いることにより特性評価に要する工程を減らすことが可能となり、開発期間の短縮が期待されます。
また、本技術を利用して新たなリサイクルアルミニウム合金を開発することにより、資源循環型社会の構築と温室効果ガス削減に貢献します。
なお、この技術の詳細は、2024年12月25日に「Acta Materialia」にオンライン掲載されました。
概要図
【掲載媒体等】
鉄鋼新聞(2025/02/07)
日刊産業新聞(2025/02/07)
サードニュース(WEB)(2025/02/05)
村上 雄一朗 主任研究員 (軽量金属プロセスグループ)
古嶋 亮一 研究グループ長 (軽量金属設計グループ)
尾村 直紀 研究グループ長 (軽量金属プロセスグループ)
志賀 敬次 主任研究員 (軽量金属プロセスグループ)
宮島 達也 キャリアエキスパート (マルチマテリアル研究部門)
炭素繊維強化プラスチック(CFRP; Carbon Fiber Reinforced Plastics)製品の資源循環を ISO 国際規格で後押し
-リサイクル炭素繊維の品質の適正な評価方法を開発-
概 要
リサイクル炭素繊維の普及促進のため、リサイクル炭素繊維の繊維引張強度分布と繊維/樹脂界面せん断強度の評価方法を規定した国際規格 ISO19350:2025(以下「本規格」という)が発行されました。
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)は、評価法開発および規格作成のための国際審議の場である作業グループ(WG)の設立に関与し、その中で産総研開発の評価法が採用され、本規格の発行に貢献しました。
これにより、日本のみならず諸外国でのリサイクル炭素繊維を活用した製品の普及を後押し、リサイクル炭素繊維を利用した製品の市場拡大につながることが期待されます。
概要図
【掲載媒体等】
サードニュース(WEB)神戸新聞(2025/01/16)
杉本 慶喜 主任研究員 (ポリマー複合材料グループ)
今井 祐介 研究グループ長 (ポリマー複合材料グループ)
[ プレス発表 ]
発表日:2024年09月10日サマリウム-鉄-窒素(Sm2Fe17N3)永久磁石の高密度化技術を開発
-高耐熱を実現するポストネオジム磁石として、EV用などの高効率モーターへの展開に期待-
Niterraグループ 日本特殊陶業株式会社(以下「日本特殊陶業」という)と国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)は「日本特殊陶業-産総研カーボンニュートラル先進無機材料連携研究ラボ」において、新規焼結助剤を用いることでサマリウム-鉄-窒素(Sm2Fe17N3) 系焼結磁石(※1)を高密度化および高性能化できる技術を開発しました。
Sm2Fe17N3磁石は高い磁石特性を示し、かつネオジム-鉄-ホウ素(Nd-Fe-B)磁石(※2)を上回る耐熱性を示すことから、ポストNd-Fe-B磁石として期待されています。一方、磁石性能を向上させるためには高温焼結で高密度の微構造組織を形成する必要がありますが、Sm2Fe17N3は比較的低温で分解するために、高密度化が困難でした。これまで、融点の低い(420 ℃)亜鉛(Zn)を焼結助剤に用いて低温で焼結する手法などが検討されてきたものの、高密度化しても重要な性能指標である磁化(※3)が下がってしまうという問題がありました。本研究では、Sm2Fe17N3磁石で磁化を下げずに緻密化効果を得るために、焼結助剤として周期表第二族(※4)に属する元素(マグネシウム、カルシウムなど)を含有する合金を開発しました。これにより、磁化低下を最小限に抑えながらSm2Fe17N3磁石を高密度化できるようになり、将来的に耐熱性が要求される電気自動車などのモーター用磁石への展開が期待されます。 なお、この成果は2024年9月19日に大阪大学豊中キャンパスで開催される日本金属学会秋期講演大会で発表されます。また、2024年10月11日に名古屋市で開催される産総研中部センターおよび株式会社AIST Solutions主催の「未来モビリティ材料」共創フェアにて発表を行います。

(日本特殊陶業-産総研 カーボンニュートラル先進無機材料連携研究ラボ 細川明秀、山口渡、平山悠介、他 )
[ プレス発表 ]
発表日:2024年09月09日-抗菌製剤の設計とバイオセンサーの開発-
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)極限機能材料研究部門 高橋 知里 主任研究員は、沖縄科学技術大学院大学(以下「OIST」という)エイミー・シェン教授らと共に、バイオフィルム形成菌に対する高抗菌効果をもつ製剤の創製とその短時間評価技術を開発しました。 バイオフィルム感染症は人間の歯や歯肉、体内に埋め込まれた心臓ペースメーカー、人工心臓弁などの表面にバイオフィルムとよばれる糖類が形成されることによって引き起こされます。通常の薬剤投与ではバイオフィルム内の菌に抗菌物質を作用させることが困難なため、感染症の慢性化が問題でした。 本研究において、マクロライド系抗菌物質のアジスロマイシンをカプセルに封入した銀ナノ粒子含有ソルプラス®高分子製剤を創製しました。この製剤は銀ナノ粒子と抗菌薬という作用機序の異なる二つの抗菌物質を一体化してバイオフィルム形成菌に対して作用させるため、高い抗菌効果が期待できます。創製した製剤を投与した2時間後には銀ナノ粒子含有高分子製剤と比較しておよそ1.5倍の表皮ブドウ球菌バイオフィルム抗菌効果が確認されました。 また、抗菌効果をもつ製剤の開発においては抗菌活性評価にかかる時間が問題となっていました。そこで、レーザー誘起グラフェンを用いたバイオセンサーを開発し、今回開発した製剤を用いて検証することで、非常に短時間で抗菌活性評価ができることを実証しました。 この研究成果の詳細は、2024年9月9日(英国夏時間)に「Nanoscale」に掲載されました。

(蓄電材料グループ 高橋 知里 主任研究員、他 )
流動する溶融金属の凝固過程を広範囲で可視化する装置を開発
-アルミニウムのアップグレードリサイクルの実現に向けて-
概 要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)マルチマテリアル研究部門 軽量金属プロセスグループ 志賀敬次 研究員、村上雄一朗 主任研究員、尾村直紀 研究グループ長、
分析計測標準研究部門 放射線イメージング計測研究グループ 藤原健 研究グループ付は、溶融した金属が流動しながら凝固する様子についてX線を使って可視化する装置を開発しました。
アルミニウムのアップグレードリサイクルでは、溶融した金属を流動しながら凝固する過程で高純度化させるため、流動下での凝固過程を可視化することがより高品質なアルミニウムへのリサイクルプロセスの開発に重要です。
本成果ではマイクロフォーカスX線源と、産総研で開発したフラットパネル型X線検出器を用いることにより、従来技術よりも100倍以上広い面積で、金属が流動しながら凝固する様子を2次元観察するX線イメージング装置を開発しました。
中空構造の電磁撹拌装置を用いることにより、溶融金属を流動させながらX線を溶融アルミニウムに直接照射できるようになり、流動下でのX線イメージングが可能になりました。
この技術の詳細は、2024年8月5日に「Journal of Alloys and Compounds」に掲載されました。
概要図
【掲載媒体等】
化学工業日報(2025/02/12)
MONOist(WEB)(2024/09/13)
鉄鋼新聞(2024/09/05)
日刊産業新聞(2024/09/05)
環境ビジネス(WEB)(2024/09/05)
日刊工業新聞(2024/09/04)
日刊工業新聞 電子版(WEB)(2024/09/04)
fabcross for エンジニア(WEB)(2024/09/04)
no+e(WEB)(2024/09/03)
志賀 敬次 研究員 (軽量金属プロセスグループ)
村上 雄一朗 主任研究員 (軽量金属プロセスグループ)
尾村 直紀 研究グループ長(軽量金属プロセスグループ)
[ プレス発表 ]
発表日:2024年07月26日-高効率な水素発生触媒の開発に期待-
東京都立大学大学院理学研究科の中西勇介助教、遠藤尚彦(大学院生)、宮田耕充准教授、名古屋大学大学院理学研究科の神田直之(当時、大学院生)、相崎元希(当時、大学院生)、同大学院工学研究科の平田海斗特任助教、同大学院工学研究科/金沢大学ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)の高橋康史教授、産業技術総合研究所極限機能材料研究部門の劉崢上級主任研究員、同ナノ材料研究部門の林永昌主任研究員、千賀亮典主任研究員、大阪大学産業科学研究所の末永和知教授、名古屋市立大学大学院理学研究科の青栁忍教授、筑波大学数理物質系の丸山実那助教、高燕林助教、岡田晋教授らの研究チームは、立方体型の硫化モリブデンのクラスターがシート状に結合した二次元物質「超原子層」を発見し、その構造的な特徴や電子構造、触媒活性を解明しました。ナノ空間に閉じ込めた単層を透過電子顕微鏡で直接観察することによって原子配列を可視化し、構造決定に成功しました。また、基板上に合成した層状物質の薄片試料における触媒活性の評価では、水素発生反応の高い触媒活性を示すことを実証しました。本研究成果は高効率な水素発生触媒の開発に向けた材料設計の指針になることが期待されます。この研究成果は、2024年7月26日付でドイツの科学雑誌『Advanced Materials』オンライン速報版に掲載されます。

(蓄電材料グループ 劉崢 上級主任研究員、他 )
押出し加工を利用したマグネシウム合金スクラップ材のリサイクル技術を開発
-マグネシウム合金スクラップ材の水平リサイクルの実現に向けて-
概 要
株式会社マクルウ(本社:静岡県富士宮市、代表取締役:安倍雅史)は、国立研究開発法人産業技術総合研究所(本部:東京都千代田区、理事長:石村和彦、以下、産総研) マルチマテリアル研究部門 千野靖正 研究部門付、斎藤尚文 招へい研究員、中津川勲 招へい研究員との共同研究により、
押出し加工を利用したマグネシウム合金スクラップ材のリサイクル技術を開発しました。
本技術は、産総研が有する「固相リサイクル法」に関する技術的ノウハウと表面分析技術および組織解析技術をもとに、令和3~5年静岡県先端企業育成プロジェクト推進事業費補助金を活用し、
開発したものです。
概要図
【掲載媒体等】
化学工業日報(2024/09/11)
鉄鋼新聞(2024/08/20)
Yahoo!ニュース(WEB)(2024/08/20)
鉄鋼新聞(2024/07/19)
日刊産業新聞(2024/07/19)
環境ビジネス(WEB)(2024/07/18)
日刊工業新聞(2024/07/18)
日刊工業新聞 電子版(WEB)(2024/07/17)
日刊産業新聞(2024/07/17)
MONOist(WEB)(2024/07/17)
TechEyesOnline(WEB)(2024/07/17)
Yahoo!ニュース(WEB)(2024/07/17)
千野 靖正 研究部門付 (マルチマテリアル研究部門)
斎藤 尚文 招聘研究員 (軽量金属設計グループ)
中津川 勲 招聘研究員 (軽量金属設計グループ)
2023年度
微生物が作り出すプラスチックでポリ乳酸の生分解性と伸びを改善
-海洋プラスチックごみ問題の解決に貢献-
概 要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)マルチマテリアル研究部門 今井 祐介 研究グループ長、冨永 雄一 主任研究員、触媒化学融合研究センター 吉田 勝 研究センター長、田中 真司 主任研究員、国立大学法人 神戸大学(以下「神戸大学」という)科学技術イノベーション研究科 田口 精一 特命教授、高 相昊 特命助教は、
株式会社カネカと共同で、ポリ乳酸が抱えるもろさと生分解性の課題を、微生物により生合成される乳酸と3-ヒドロキシブタン酸の共重合体(略称:LAHB)をブレンドすることで克服しました。
ポリ乳酸は、代表的なバイオ資源由来プラスチックですが、力学的にもろい、生分解性が限定的、などの課題があります。
今回、LAHBをポリ乳酸にブレンドすることで、ポリ乳酸の伸びの大幅な改善に成功しました。
また、LAHBのブレンドによりポリ乳酸の海水中での生分解が促進されることを見いだしました。
概要図
【掲載媒体等】
神戸新聞(2024/05/21)
日刊ケミカルニュース(WEB)(2024/04/17)
マイナビニュース(WEB)(2024/04/17)
Science Portal(WEB)(2024/04/16)
Yahoo!ニュース(WEB)(2024/04/16)
繊研新聞社(2024/04/11)
繊研新聞社(WEB)(2024/04/11)
MONOist(WEB)(2024/04/10)
日本経済新聞(2024/04/09)
日本経済新聞(WEB)(2024/04/09)
日本経済新聞(WEB)(2024/04/05)
化学工業日報(2024/03/28)
日刊工業新聞(2024/03/27)
日刊工業新聞 電子版(WEB)(2024/03/27)
ゴムタイムス(WEB)(2024/03/27)
今井 祐介 研究グループ長 (ポリマー複合材料グループ)
冨永 雄一 主任研究員 (ポリマー複合材料グループ)
NEDOと産総研、ファインセラミックス内部のキラー欠陥の可視化技術を開発
-ファインセラミックスのプロセス・インフォマティクス構築を目指す-
概 要
NEDOと国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、ファインセラミックスのプロセス・インフォマティクス(PI)の構築を目指して、
「次世代ファインセラミックス製造プロセスの基盤構築・応用開発」(以下、本事業)に取り組んでおり、
今般、ファインセラミックス焼結体内部に存在する亀裂、気孔などのキラー欠陥を常温・大気圧下でレーザーを用いた蛍光顕微鏡により表面から深さ方向に蛍光像で観察する可視化技術(以下、本技術)を開発しました。
本技術は、アルミナや窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの明るい色(白、灰色系)のセラミックスに適用できることを確認しました。
セラミックス焼結体内部に存在して材料特性や品質に影響を与える10~100 µm程度のキラー欠陥を非破壊、かつ短時間で検出することが可能となります。
キラー欠陥に起因する機械特性の劣化などの予測や、ファインセラミックス製品の品質検査、さらには特性向上に向けた製造プロセスの改良が可能になります。
今後は、表面や内部に点在する欠陥可視化技術の高精度化に向けた開発を行います。
さらに、さまざまな組成や特性を持つファインセラミックス材を用いてキラー欠陥の分布を統計的に解析し、破壊強度の予測技術の実証実験も進めます。
本技術により、ファインセラミックス製品の品質管理をはじめ、機械特性の予測、さらには製造プロセスの改良が可能となり、これまでに予想もできなかった革新的な材料の開発が期待できます。
概要図
【掲載媒体等】
化学工業日報(2024/05/16)
MONOist(WEB)(2024/04/02)
マイナビニュース(WEB)(2024/03/11)
BIGLOBEニュース(WEB)(2024/03/11)
Mapion(WEB)(2024/03/11)
ニコニコニュース(WEB)(2024/03/11)
宮崎 広行 主任研究員 (セラミック組織制御グループ)
中島 佑樹 主任研究員 (セラミック組織制御グループ)
平尾 喜代司 招聘研究員 (セラミック組織制御グループ)
福島 学 研究グループ長 (セラミック組織制御グループ)
[ プレス発表 ]
発表日:2023年12月11日粉末冶金技術を用いた金属支持による固体酸化物形燃料電池(SOFC)を開発
-強靭な多孔質ステンレス鋼基板上にSOFCを積層することで、モビリティへの適用が可能に-

ポーライト株式会社(以下「ポーライト」という)と国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)極限機能材料研究部門 固体イオニクス材料グループ 山口 祐貴 主任研究員、鷲見 裕史 研究グループ長は、粉末冶金技術を用いた多孔質ステンレス鋼基板上に、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を積層した金属支持SOFCを開発しました。 従来のSOFCは、電解質または燃料極を支持体としていましたが、いずれもセラミックスであるため、もろくて割れやすく、振動や熱衝撃に弱い問題がありました。この支持体を多孔質ステンレス鋼基板に変えることで強靭化が実現し、自動車やドローンなどのモビリティに適用できるようになります。ポーライトは、小型モーター用軸受、機械構造部品などの焼結部品製造で培った粉末冶金技術を応用して、燃料拡散性と機械強度を両立した多孔質ステンレス鋼基板を開発しました。一方、産総研は、電解質ナノ粒子を開発し、電解質のガスバリア性を向上することに成功しました。ポーライトが開発した多孔質ステンレス鋼基板と産総研が開発した電解質ナノ粒子を組み合わせて、実用サイズの5 cm角金属支持SOFCを試作・実証しました。 この技術の詳細は、2023年12月14〜15日に開催される「第32回SOFC研究発表会」にて発表予定です。
(固体イオニクス材料グループ 山口 祐貴 主任研究員、鷲見 裕史 研究グループ長、他 )
窒化ケイ素セラミックスの熱伝導率を製造プロセス情報から高精度で予測するAI技術を開発
-産総研が有する長年の研究知見をAIに組み込むことで材料開発を加速-
ポイント
・窒化ケイ素セラミックスの製造プロセスの違いが与える影響を専門家の知見により数値化
・百程度の少ないサンプルで熱伝導率を高精度に予測するAIを開発
・パワーモジュールに用いる絶縁放熱基板の開発を推進
概 要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)マルチマテリアル研究部門 古嶋亮一 主任研究員、中島佑樹 主任研究員、福島学 研究グループ長、周游 主任研究員、大司達樹 招聘研究員、平尾喜代司 招聘研究員は、使用原料の種類・成形方法・焼結条件などの製造プロセス情報を用いて窒化ケイ素セラミックス焼結体の熱伝導率を高精度に予測する人工知能(AI)技術の確立に成功しました。
同材料は電力の変換と制御を高効率で行う次世代パワーモジュールに搭載される絶縁放熱基板への使用が期待されています。
絶縁放熱基板に用いられる窒化ケイ素セラミックスには高い熱伝導率が求められ、その製造には、原料に含まれるわずかな不純物量(0.01%以下)にも配慮した非常に複雑で高度なプロセスが必要となります。
この製造条件の複雑さから、製造した窒化ケイ素セラミックスの熱伝導率の予測は極めて困難でした。
今回、窒化ケイ素セラミックスを製造する際に使用する原料粉や添加粉の種類や割合、焼結助剤の種類や添加量、窒化条件、焼結条件などの情報を、産総研中部センターが長年をかけて蓄積した同材料の熱伝導率に関する研究知見を組み込んだ形でAIに学習させることで、これら製造プロセスの情報から熱伝導率を高精度に予測するAI技術を開発しました。
この技術の一部は、2023年12月19日に「Ceramics International」誌に掲載されました。
概要図
【掲載媒体等】
化学工業日報(2024/01/17)
日刊産業新聞(2024/01/17)
MONOist(WEB)(2024/01/09)
文教速報デジタル版(WEB)(2024/01/04)
ニュースイッチ(WEB)(2023/12/29)
日刊工業新聞(2023/12/28)
日刊工業新聞 電子版(WEB)(2023/12/28)
古嶋 亮一 主任研究員 ( 軽量金属プロセスグループ)
中島 佑樹 主任研究員 (セラミック組織制御グループ)
福島 学 研究グループ長 (セラミック組織制御グループ)
周 游 主任研究員 (セラミック組織制御グループ)
大司 達樹 招聘研究員 (セラミック組織制御グループ)
平尾 喜代司 招聘研究員 (セラミック組織制御グループ)
[ プレス発表 ]
発表日:2023年10月18日ロボット実験とAIによりセラミックス化学焼結プロセスの条件探索を高速化
-「焼かずに」100 ℃以下の低温で作れる機能性セラミックスの種類が飛躍的に増加-
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という) 極限機能材料研究部門 固体イオニクス材料グループ 山口 祐貴 主任研究員、中山 麗 産総研特別研究員は、 ロボットによるハイスループット自動実験と機械学習などの人工知能(AI)を用いて、100 ℃以下で複合酸化物ナノ結晶粉末原料を合成し、さらに機能性セラミックス固体を化学焼結プロセスで製造できる条件を短時間で 探索する技術を開発しました。セラミックス固体を製造するには、一般的に1000 ℃を超える高温での焼結が必要です。産総研は、原料間の化学反応を利用して、100 ℃以下の低温で複合酸化物からなるセラミックス固体を 「焼かずに」製造する研究開発を行っています。しかし、手作業での低温製造には時間がかかるため、「焼かずに」製造できる複合酸化物は数種類しか発見できていませんでした。粉体秤量(ひょうりょう)の自動化装置と 人協働ロボットを活用することにより、短時間で多くの低温製造実験が行えるようになりました。また、得られた大量のデータを用いて、材料組成や合成温度などの最適条件をAIに予測させた結果、 数十種類の複合酸化物セラミックス固体が化学焼結プロセスで製造できることを見いだしました。化学焼結プロセスは、外部から圧力をかけなくても、高い結晶性を有する複合酸化物が得られることが特徴です。 製造温度の飛躍的な低減によって、機能性セラミックス固体の製造時におけるCO2排出量の削減に貢献します。 なお、この技術の詳細は、2023年10月20日に産総研中部センター「未来モビリティ材料 共創フェア」にて発表予定です。

(固体イオニクス材料グループ 山口 祐貴 主任研究員、中山 麗 産総研特別研究員 )
[ プレス発表 ]
発表日:2023年10月10日次世代プロトン伝導セラミック燃料電池の発電性能を飛躍的に向上
-発電効率70%が実現可能で、カーボンニュートラルに貢献-

国立大学法人 横浜国立大学 荒木拓人教授、李坤朋IAS助教、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 極限機能材料研究部門 島田寛之上級主任研究員、水谷安伸招聘研究員、国立大学法人 宮崎大学 奥山勇治教授は、プロトン伝導セラミック燃料電池(PCFC)の発電性能を飛躍的に向上し、実験データを再現できる計算モデルを構築し、発電効率70%以上が実現できることを明らかにしました。 PCFCは他の燃料電池よりも高い発電効率が理論的に可能です。ところが、実際のPCFCでは電解質が正孔を伝導して内部短絡し、発電効率が低下する欠点があります。今回、電解質の内部短絡抑制と電解質薄膜化により、高性能なPCFCを実現しました。そして、PCFCの効率を高精度かつ簡易に予測できる計算モデルを構築し、実験結果を再現することで、発電効率70%が実現可能なPCFCの最適構成や作動条件などを見出しました。 なお、この技術の一部は、2023年9月27日に「Energy Conversion and Management」に掲載されました。
(固体イオニクス材料グループ 島田 寛之 上級主任研究員、水谷 安伸 招聘研究員、他 )
[ プレス発表 ]
発表日:2023年9月1日チタン酸バリウムナノキューブ単層膜とグラフェンの交互積層プロセス技術を開発
-積層セラミックコンデンサーの飛躍的な薄層化に道筋-

産総研は、MLCCの誘電体層の主要な原料であるBTOの微小粉末の合成技術と、合成した粉末を薄膜化する成膜技術の開発に関する研究に取り組んできました。これまでに、 水熱法によりBTOのナノサイズの立方体単結晶(ナノキューブ)の合成に成功しているとともに(参考文献1)、分散液の溶媒の蒸発に伴う自己組織化を利用することで BTOナノキューブを二次元的に規則配列させた厚み約20 nmの単層膜を作製する成膜技術を開発しました(参考文献2)。BTOナノキューブは一般的なBTOナノ粒子に比べて結晶性が高く、 1000 ℃未満の比較的低い処理温度でも優れた誘電性を示すことが期待できる材料です。また、従来のBTO粉末を用いて緻密な膜を作製するためには高温での熱処理を必要としていましたが、 サイズと形状の均一なBTOナノキューブを規則的に配列させることで、熱処理をすることなく緻密な膜が得られることもわかっています。今回は、これらの技術により得られるBTOナノキューブ単層膜を MLCC内部の誘電層として応用することを目指し、電極層との交互積層化技術を開発しました。 なお、本研究開発は、日本学術振興会(JSPS)科研費 JP20H02446(2020~2022年度)および国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の 受託事業JPNP20005(2021~2023年度)による支援を受けています。
(蓄電材料グループ 板坂 浩樹 研究員、劉 崢 上級主任研究員、三村 憲一 主任研究員、濱本 孝一 研究グループ長 )
[ プレス発表 ]
発表日:2023年8月21日-鮮度を手軽に非破壊で判定-
すしや刺身といった魚の生食が世界的に浸透しつつあり、新鮮な水産物が日本から海外にチルド状態で空輸されています。海外では、魚の生食に精通する職人が少なく、生食用と加熱用の区別が難しいため、 取り扱いの多くは日系の店舗であるのが現状です。日本の水産物の輸出量の拡大には、品質を客観的に保証する指標とその測定方法が必要であり、生鮮水産物の鮮度指標としてK値が提案されています。 しかし、魚肉の採取が必要で、K値の導出のための化学測定には、特別な技能と一定の時間が必要です。そのため、手軽に鮮度を判定する新たなセンシング技術の開発が求められていました。 産総研は、新たなセンシング技術として、ニオイ判定の手法を開発しました。魚のニオイを対象とするため、魚肉の採取が不要の非破壊試験です。産総研は北海道立工業技術センターと共同で、 魚肉の鮮度ごとのニオイを分析し、この結果に基づき、模擬の鮮度指標ガスを作製しました。当該指標ガスの計測結果を学習データとし、機械学習で実際の魚肉のニオイから鮮度を判定しました。

(電子セラミックスグループ 伊藤 敏雄 主任研究員、崔 弼圭 研究員、増田 佳丈 研究グループ長 )
2022年度
[ 産総研 研究成果 掲載]
発表日:2023年1月31日-窒素資源の循環に向けた新規アンモニア合成法の提案-
極限機能材料研究部門 ナノポーラス材料グループ 冨田 衷子 主任研究員、若林 隆太郎 主任研究員、木村 辰雄 研究グループ長は、
材料・化学領域が主導する資源循環技術融合研究ラボの活動の一環として、高温燃焼で発生する有害な窒素酸化物を化学原料として利用するための触媒材料を提案し、
還元剤として水素を利用することで窒素酸化物からアンモニアを選択的に合成できることを実証しました。
独自に開発した多孔質アルミナの合成法を用いて触媒成分と吸蔵成分をナノ空間内で複合化させたナノ複合触媒材料を開発し、
常圧下、導入ガスの切り替え方式で反応試験を行った結果、200~300 ℃の温度域において、吸蔵した窒素酸化物の80%程度をアンモニアに変換できることを明らかにしました。
本技術は、窒素酸化物の無害化プロセスを一変させる可能性を秘めています。私たちは窒素化合物の循環利用を後押しする新しい技術として、この触媒材料のさらなる高性能化を進めています。
この技術の詳細は、2023年2月1日から3日に東京ビックサイトで開催される「第22回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2023)」で紹介します。

(ナノポーラス材料グループ 冨田衷子 主任研究員、若林隆太郎 主任研究員、木村辰雄 研究グループ長 )
[ プレス発表 ]
発表日:2022年10月26日-わずか0.5 μLの水滴すらも滑落させる親水性皮膜の開発に成功-

極限機能材料研究部門 材料表界面グループ 中村 聡 産総研特別研究員、穂積 篤 研究グループ長、は、水になじみやすい性質(親水性)と水滴が流れ落ちやすい性質(滑落性)という相反する機能を兼ね備えた、 透明な皮膜を作製する手法を開発しました。これは、産総研が従来開発してきた液体の滑落性に優れた皮膜について、さらに原料と作製プロセスを改良した手法です。市販の原料を最適組成で混合し成膜した後、 酸やアルカリで処理すると、得られた皮膜は親水性であるにも関わらず、わずか0.5 μL(0.0005 mL)の微量の水滴でも表面に付着せずにスムーズに滑落しました。この相反する性質を兼ね備えた皮膜を基材にコーティングすることにより、 水切れがよくなり、水滴が表面に残りにくくなるため、水垢やカビ、臭気の発生の抑止効果が期待できます。この皮膜はガラス以外の基材にも応用可能で、例えば熱交換器へコーティングすることにより、 汚れの付着防止に加え、冷房時の凝縮水の付着による熱交換効率の低下などを防ぎ、省エネ効果も期待できます。この技術の詳細は、2022年10月28日(金)に名古屋で開催された「産総研中部センター社会実装フェア」にて発表されました。
(材料表界面グループ 中村聡 産総研特別研究員、穂積篤 研究グループ長)
成形しやすく放熱や耐食性に優れた新しいマグネシウム合金を開発
-ごく微量の銅とカルシウムの添加でマグネシウム材料の特性を大きく改善-
ポイント
・ごく微量(0.1wt%未満)の銅とカルシウムを添加することでマグネシウム合金の結晶の配向を制御
・汎用マグネシウム合金よりも優れた室温成形性と耐食性、アルミニウム合金に迫る放熱性を発現
・開発したマグネシウム材料の適用先として輸送機器や電子機器のケーシングなどを想定
概要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)マルチマテリアル研究部門軽量金属設計グループ Bian Mingzhe 研究員、黄 新胜 主任研究員、中津川 勲 招聘研究員、千野 靖正 研究グループ長は、0.1wt%未満の微量の銅とカルシウムの添加により、室温成形性・放熱性・耐食性に優れた新しいマグネシウム合金の開発に成功しました。
この技術で作製したマグネシウム材料は、汎用マグネシウム合金とは結晶の配向が大きく異なり、汎用マグネシウム合金よりも著しく優れた、アルミニウム合金に迫る室温成形性と熱伝導率を示しました(図1)。
また、汎用マグネシウム合金よりも優れた耐食性を示しました。さらに、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学(以下「名大」という)大学院工学研究科 材料デザイン工学専攻 小山 敏幸 教授、塚田 祐貴 准教授、松岡 佑亮 博士課程2年と共同で、ごく微量の添加で優れた室温成形性が発現するメカニズムを明らかにしました。開発したマグネシウム材料は、輸送機器や電子機器のケーシングなど、高い成形性、耐食性、放熱性のいずれもが必要な部材として有望です。
なお、この技術の詳細は、2022年9月27日(現地時間)に国際学術誌「Acta Materialia」に掲載されました。
図1 新開発の合金(Mg-Cu-Ca)と既知のマグネシウムおよびアルミニウム合金の室温成形性(エリクセン値)と熱伝導率
【掲載媒体等】
日刊ケミカルニュース(WEB)(2022/11/07)
日経XTECH(WEB)(2022/10/21)
化学工業日報(2022/10/19)
鉄鋼新聞(2022/10/07)
日刊産業新聞(2022/10/07)
fabcross for エンジニア(WEB)(2022/10/04)
ニュースイッチ(WEB)(2022/10/04)
日刊工業新聞(2022/10/03)
日刊産業新聞(2022/10/03)
産業新聞(web)(2022/10/03)
日刊工業新聞 電子版(WEB)(2022/10/03)
Bian Mingzhe 研究員 (軽量金属設計グループ)
黄 新ショウ 主任研究員 (軽量金属設計グループ)
中津川 勲 招聘研究員 (軽量金属設計グループ)
千野 靖正 研究グループ長 (軽量金属設計グループ)
壊れにくい窒化ケイ素セラミックスをAIが予測
-セラミックス材料開発の加速に貢献-
ポイント
・壊れにくい窒化ケイ素セラミックス組織のモデル画像をAIで生成
・測定が困難な窒化ケイ素セラミックスの破壊靭性(はかいじんせい)をAIで正確に予測
・仮想実験で最適な製造条件を提案し材料開発を迅速化
概 要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)マルチマテリアル研究部門 中島佑樹 研究員、福島学 研究グループ長、古嶋亮一 主任研究員、丸山豊 主任研究員、NGO MINH CHU特別研究員、大司達樹 招聘研究員らは、窒化ケイ素セラミックスの壊れにくさを高精度で予測するAI技術を使って、求める特性をもつ窒化ケイ素セラミックス組織のモデル画像を敵対的生成ネットワーク(GAN)による仮想実験によって生成することに成功しました。
窒化ケイ素セラミックスは電力の変換と制御の高効率化を可能とすることから次世代電気自動車などのパワーモジュール基板への普及が期待されています。しかし、窒化ケイ素セラミックスはセラミックス材料の中でも特に複雑な微細組織から構成されており、従来の測定手法では目的とする物性値を迅速に得ることは難しいため、材料開発には多くの時間を要します。
今回開発した技術は、窒化ケイ素セラミックスの微細な組織画像と破壊靭性に関する実験データを学習させた人工知能(AI)を使ってコンピューター上で壊れにくさの指標である破壊靭性を高い精度で予測すると共に、窒化ケイ素セラミックス組織のモデル画像を生成する技術を開発しました。
この技術の一部は、2022年9月26日(現地時間)に「Journal of the American Ceramic Society」誌に掲載されました。
破壊靭性の予測とモデル画像の生成の概略図
【掲載媒体等】
日経XTECH(WEB)(2022/10/25)
化学工業日報(2022/10/12)
日刊工業新聞 電子版(WEB)(2022/10/07)
日刊工業新聞(2022/10/04)
中島 佑樹 研究員 (セラミック組織制御グループ)
福島 学 研究グループ長 (セラミック組織制御グループ)
古嶋 亮一 主任研究員 ( 軽量金属プロセスグループ)
丸山 豊 主任研究員 (軽量金属設計グループ)
NGO MINH CHU 特別研究員 (セラミック組織制御グループ)
大司 達樹 招聘研究員 (セラミック組織制御グループ)
[ プレス発表 ]
発表日:2022年8月25日-緊張により発生するストレスガスを機械学習により識別-
産総研が過去に開発したナノシート状酸化スズ粒子(酸化スズナノシート)を元に、
ストレスガスに対して優れた応答性と高いガス選択性を示すセンサー感応膜を開発しました。
さらに、ストレスガスを他のガスから識別するために、
ガス選択性の異なる4種類のセンサー感応膜を組み合わせたセンサーアレイを開発しました。
センサーアレイからの応答値を機械学習の一種である主成分分析(principal component analysis; PCA)により
解析する技術と組み合わせることで、開発したセンサーアレイはストレスガスを他のガスから識別可能であり、
かつリアルタイムでのモニタリングにも活用できる長時間の安定性も示しました。
緊張によるストレスで皮膚から発生するガスを検知できる技術として、ストレスケア分野での貢献が期待されます。
なお、この技術の詳細は、2022年8月25日(イギリス時間)に「Scientific Reports」に掲載されます。

(電子セラミックスグループ 崔弼圭 研究員、増田佳丈 研究グループ長 )
[ プレス発表 ]
発表日:2022年08月08日混ぜるだけで簡単に作製でき、傷が素早く自己修復する透明防曇 皮膜
-従来と比べ1/8以下の時間で傷がふさがり、長期間曇りを防ぐ透明コーティングの開発に成功-

防曇性が長期間持続し、傷が素早く自己修復する透明皮膜を簡便に作製する手法を開発しました。 これは、産総研が独自に開発してきたナノコンポジット材料に対し、組成と作製プロセスを改良した手法です。 市販の原料を最適組成で混合するだけの極めて簡便な手法で作製が可能な上、これまで24~48時間かかっていた物理的な傷の自己修復を3時間まで短縮することができます。 この技術により、レンズやガラスといった透明基材の曇りを長期間、抑制することが可能になり、使用者の視認性/安全性の向上や医療/分析機器、センサー、太陽光パネルなどの効率低下を防ぐ効果が期待されます。 なお、この技術の詳細は、2022年8月3日 (米国東部標準時間) にアメリカ化学会から発行されている学術誌「Langmuir」に掲載されました。
(材料表界面グループ 佐藤知哉 主任研究員、穂積篤 研究グループ長)
[ プレス発表 ]
発表日:2022年07月13日-再現性良く実用レベルの高性能を示す酸化物熱電材料-

空気中・600℃で安定した性能を示す、実用的な熱電変換材料を発見しました。実用化されたPbTeなどと比較して、酸化物は基本的には高温においても酸化しないことから、 高温で使用可能な熱電材料として期待されています。本研究では、層状コバルト酸化物Ba1/3CoO2の再現性ある高温熱電特性を明らかにするため、 Ba1/3CoO2エピタキシャル薄膜の高温・空気中における熱電特性と安定性を計測しました。その結果、Ba1/3CoO2が、空気中・600℃においてZT~0.55を示すことを発見しました。高温・空気中で再現性良く高性能 を示す実用的な熱電変換材料がついに実現したと言えます。なお、本研究成果は、2022年7月13日(水)にACS Applied Materials & Interfaces誌(オープンアクセス)にオンライン掲載されました。
(電子セラミックスグループ 鶴田彰宏 主任研究員)
2021年度
[ 産総研 研究成果 掲載 ]
掲載日:2022年2月21日誘電体ナノキューブでリチウムイオン電池の充放電時間を大幅に短縮
-リチウムイオン電池の高速充放電に道筋-

リチウムイオン電池にチタン酸バリウム(BTO)から成るナノサイズの立方体結晶(以下「ナノキューブ」)の誘電体を使用することで、充放電時間を従来と比較して4分の1に短縮した。 本技術により、正極活物質のコバルト酸リチウム(LCO)にBTOナノキューブを凝集なく固定化すると、LCOへのリチウムイオンの挿入と脱離が加速し、リチウムイオン電池の充放電時間が飛躍的に短縮した。
(蓄電材料グループ 三村憲一 主任研究員)
[ 産総研ニュース掲載 ]
発表日:2021年12月21日-計測技術・評価技術の開発とスタジアム等での社会実装を加速-

産総研の5領域(地質調査総合センター、情報・人間工学領域、エネルギー・環境領域、材料・化学領域 エレクトロニクス・製造領域)に蓄積された各種計測・可視化技術やAI、リスク評価技術を融合し
新型コロナウイルス感染リスクを計測・評価する新型コロナウイルス感染リスク計測評価研究ラボを設立しました。
ワクチン接種が進み、社会活動が活発化する中、人が多く集まるマスギャザリングイベントから日常生活まで、
コロナウイルス感染リスクに関する科学的知見を蓄積・公開することで、社会に貢献してまいります。
当部門からは以下3名が構成メンバーとして参画しています。
副ラボ長: 申ウソク 副研究部門長
メンバー: 電子セラミックスグループ 増田佳丈 研究グループ長、伊藤敏雄 主任研究員
[ 産総研広報誌掲載 ]
掲載日:2021年12月20日 LINK for Business燃料電池の高出力化・軽量化で飛行時間の延長に成功

産総研は「どこでも使える燃料電池」をコンセプトに、株式会社アツミテックと市販の液化石油ガス(LPG)カセットボンベで発電できるハンディータイプの燃料電池の開発を進めてきた。静岡県浜松市にあるアツミテックと産総研が開発を進めていた燃料電池の技術に着目したのが産業用ドローンの開発・販売を行う株式会社プロドローン(愛知県名古屋市)だった。これまで二次電池を使ったドローンでは10~30分程度しか連続飛行ができず、電源を確保できない被災地や山間部での使用が課題となっていた。産総研とアツミテックが開発した固体酸化物形燃料電池(SOFC)ドローンは1時間以上飛行することができ、LPGカセットボンベを交換すれば何度でも発電できる。LPGカセットボンベなら、被災地や山間部にも運んでいける。三者はこの燃料電池を使ったドローンの実証実験に成功した。今後は、長時間飛行と簡便な燃料交換という利点を生かし、産業用ドローンの新たな用途拡大を模索している。
(固体イオニクス材料グループ 鷲見裕史 主任研究員)
[ 産総研 研究ハイライト掲載 ]
掲載日:2021年10月25日-地域物流、インフラ点検、災害対応などでの利用に期待-

電力負荷変動が大きいドローンに対して、液化石油ガス(LPG)で稼働する高出力で軽量な内部改質固体酸化物形燃料電池(SOFC)を開発し、これを電源として長時間飛行・作業できるドローンを世界で初めて実証した。
このシステムには、産総研が開発した内部改質SOFC技術が用いられており、市販のLPGカセットボンベを燃料ガスとして用いることができる。
(固体イオニクス材料グループ 鷲見裕史 主任研究員)
[ プレス発表 ]
発表日:2021年8月24日-構造変化の耐久性を高め調光ガラスなどの実用化に進展-
液晶と異方構造を有する高分子(以下、異方性高分子)の複合材料は、生活温度付近で、低温で透明、高温で白濁に切り換わる機能をもち、調光ガラスなどへの応用が期待されている。しかし、透明/白濁の繰り返し耐久性に課題があった。今回、異方性高分子を架橋剤で網目構造化したことで、材料の熱安定性が高まり、繰り返し耐久性が大幅に向上した。この耐久性の向上で当該技術の実用化に近づいた。なお、この技術の詳細は、2021年8月24日(米国東部標準時)にACS Applied Materials & Interfaces誌に掲載される。

(光熱制御材料グループ 垣内田洋 主任研究員、山田保誠 研究グループ長 他 )
[ プレス発表 ]
発表日:2021年6月25日ナノ構造制御した固体酸化物形燃料電池(SOFC)用高性能電極を開発
-世界最高レベルの発電性能を実現-

複数企業と戦略的共同研究を行う固体酸化物エネルギー変換先端技術コンソーシアム(ASEC)での取り組みにおいて、ナノ構造制御した高性能空気極を開発した。さらにそれを搭載した固体酸化物形燃料電池(SOFC)単セルは、世界最高レベルの発電性能を示したSOFC単セルには、パルスレーザー堆積法(PLD法)を用いて作製した自己組織化ナノ複合空気極に加え、空気極の性能を十分に発揮するために開発した、ナノ柱状多孔質集電層、ナノ複合化燃料極機能層を搭載し、700 ℃で4.5 W/cm2以上という世界最高レベルの出力密度を達成した。この成果は、SOFCセルスタックの小型化、製造コスト削減に貢献する。
(固体イオニクス材料グループ 島田寛之 主任研究員 他)
2020年度
[ プレス発表 ]
発表日:2020年12月14日-次世代の電子・エネルギーデバイス応用に期待-

3原子程度の究極的に細い構造を持つ遷移金属モノカルコゲナイド(注1)(TMC、図1)の新たな合成技術を開発し、その大面積薄膜の合成と原子細線の束状構造などの形成、そしてそれらの光学応答・電気伝導特性の解明に初めて成功しました。
(蓄電材料グループ 劉崢 上級主任研究員 )
[ 産総研広報誌掲載 ]
掲載日:2020年9月 産総研LINK No.31 [PDF: 2.8 MB] p.13-p.15においをかぎ分けるガスセンサ
疾病スクリーニングから生活空間のにおい検知まで、広がる応用可能性
人間の呼気や室内の空気には、さまざまなにおいの原因となる多様なガス成分が含まれている。産総研のセラミックガスセンサは、そのにおいの元となる化学物質を迅速にかつ正確に検出することができ、口臭の検知、消化不良や肺がんなどの疾病発見への応用が進められている。またこのセンサの能力を活かし、生活空間に漂うにおいを分析し、快適性を維持することや、腐敗臭を検知することで食品の鮮度管理に応用するなど、今後の幅広い展開が期待されている。

(申ウソク副研究部門長、 電子セラミックスグループ 伊藤敏雄 主任研究員 )
[ プレス発表 ]
発表日:2020年6月15日世界初の固体酸化物形燃料電池ドローンを開発し、長時間飛行を実証
-LPG燃料により、さまざまな地域での物流、インフラ点検、災害対応などに期待-

長時間飛行・作業が可能な固体酸化物形燃料電池(SOFC)ドローンを、世界で初めて実証した。今回、液化石油ガス(LPG)が利用できるSOFCスタックの高出力化と軽量化(出力あたりの重量を従来より60%低減)によって、上空でも発電できるSOFCシステムを開発した。ドローンや二次電池へSOFCで発電した電力を供給することによって飛行・作業時間を長くできる。また、ドローンの電力負荷変動が大きい場合でも、電極内部でLPGを水素や一酸化炭素に安定的に改質できる内部改質SOFC技術を開発した。汎用的で持ち運びが容易なLPGで駆動することから、水素インフラ整備前の地域でも、物流、インフラ点検、災害対応などの分野で貢献することが期待される。
(固体イオニクス材料グループ 鷲見裕史 主任研究員 )