センシング材料研究グループ
目に見えない情報を可視化し、その情報の利用により生産性や生活の質を向上させるセンシング技術やその情報を活用するDX技術を開発しています。また、サーキュラーエコノミー社会に貢献する新たなセンシング材料の開発にも挑戦します。
グループの研究課題・研究成果
開発した測定器に搭載したセンサアレイとその材料
当グループでは、ニオイを高感度に検出するための多様なセンサ感応材料を開発しています。半導体式センサに用いる材料は、ニオイ分子と作用するために比表面積の大きいものが望ましいため、多孔質でかつ微細粒子で構成された厚膜を多様なセンサ材料で可能にする製造方法を開発。この技術を、従来の半導体式センサ材料だけでなく、当グループで開発した「バルク応答型センサ」の材料にも適用しました。酸化セリウムを代表とする「バルク応答型センサ」は、従来の半導体式センサよりも大気中に存在する湿度の影響を受け難い特性を持つため、ニオイの分析精度を飛躍的に向上させることに成功しました(参考1)。 また、当グループは、酸化スズナノシートからなる新しい半導体式センサも開発。このセンサは優れたガス応答特性を示すと共に、この特性がガス反応性の高い酸化スズナノシートの表面構造等に起因することを明らかにしました(参考2)。 これらの開発した複数種のセンサ(センサアレイ)を搭載してニオイを計測できるポータブル測定器を試作。人間が複数の受容体を持つ鼻でにおいを嗅ぎ脳で何のニオイか判定するように、センサアレイのシグナルのパターンを機械学習で分析してニオイを判定することができます。

開発したセンサ感応材料とこれらを搭載するポータブル測定器
センシング技術の社会実装を目指した取り組み
ニオイの発生には必ず理由があり、ニオイはその発生原因の情報媒体とみなすことができます。ニオイを可視化し、その情報の利用により生産性や生活の質を向上させる技術の社会実装にむけた研究を展開しています。 人間は、緊張によるストレスで皮膚からストレスガスであるアリルメルカプタンを発生。このストレスガスに対し、酸化スズナノシート型センサでは当該ガスに対する検出限界約200 pptを持つ応答特性を示すと共に、製法を調整した4種類のナノシート型センサを持つセンサアレイにて、他のバイオマーカーガスからストレスガスを識別できることを示しました(参考2)。 また、魚肉の鮮度をニオイから早期に判定する研究にも取り組み、養殖ブリの「入荷直後」「生食の目安」「加熱調理の目安」「腐敗」の4種類の鮮度状態を、8個の半導体式センサから成るセンサアレイで分類が出来ることを示しました(参考3)。

(a)各種バイオマーカーガスに対するセンサアレイからの応答値を主成分分析で解析した結果、(b)測定対象ガスを空気からストレスガスに変化させた際の、センサアレイ応答値の時間変化(赤い●印、5秒間隔で測定)。
グループの構成メンバー
役職 | 氏名 | 論文等 |
---|---|---|
研究グループ長 |
伊藤 敏雄(ITOH Toshio) | ![]() |
上級主任研究員 |
増田 佳丈(Yoshitake Masuda) | ![]() |
主任研究員 |
安井 久一(YASUI Kyuichi) | ![]() |
主任研究員 |
冨田 衷子(TOMITA Atsuko) | ![]() |
主任研究員 |
髙田 瑶子(TAKADA Yoko) | ![]() |
主任研究員 |
崔 弼圭(CHOI Pil Gyu) | ![]() |
連絡先
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 マルチマテリアル研究部門 センシング材料研究グループ
〒463-8560 愛知県名古屋市守山区桜坂四丁目205番地
Eメール:M-mmri-webmaster-ml*aist.go.jp(*を@に変更して送信下さい。)