軽量金属材料研究グループ
アルミニウム、マグネシウム、チタンなどの軽量金属材料のライフサイクルにおける環境負荷低減を実現するために、それらのリサイクル性や加工性を飛躍的に改善し、サーキュラーエコノミー社会に貢献する技術開発を実施しています。
グループの研究課題・研究成果
アルミニウム凝固のその場観察技術
アップグレードリサイクルプロセスの開発においては、金属溶湯が流動下で凝固する過程を可視化し、組織形成のメカニズムを解明することが、高品質なリサイクル材の製造プロセスの設計指針を構築するために重要です。しかしながら、金属は光を透過しないため、光学的観察技術の適用が困難であり、これまでは主に放射光X線イメージング技術が凝固過程の可視化に用いられてきました。従来の放射光X線イメージング技術では、観察可能な領域が数十mm²程度と非常に限られており、金属が流動している状態での観察には適していませんでした。そこで本研究グループは、マイクロフォーカスX線源、電磁撹拌装置、X線検出器を鉛直方向に配置することで、電磁撹拌によって流動させた溶融金属の凝固過程を、大面積かつ高解像度でX線イメージングできる新たな観察手法を開発しました(左図)。この手法により、従来技術と比較して100倍以上広い観察領域において、流動下での合金の凝固過程を2次元でリアルタイムに可視化することが可能となりました(右図)。ミクロからマクロにわたる欠陥の形成・成長・移動といったダイナミクスを解明するためのツールとして、その場観察技術のさらなる高度化と応用展開を進めています。

開発したX線イメージング装置(左)と開発装置を用いて撮影した透過X線画像(右)
アルミニウム資源循環技術の開発
アルミニウムは軽量材料として気候変動問題に有効な材料である一方、製錬における温室効果ガス発生量が大きいことが課題となっています。これに対し、リサイクル材料を使用することにより温室効果ガス発生量を1/20以下にすることが可能です。しかし、廃棄スクラップには不純物となる元素が混入することが問題となっており、リサイクルアルミニウムの適用先が制限されることが課題となっています。 溶融したアルミニウムスクラップを固液共存状態まで冷却すると、固体の方が純度が高く、不純物元素は液体側に濃縮します。この状態で、フィルターを用い固体と液体を分離すると、高純度のアルミニウムを回収することができます。従来の技術では、不純物元素の濃度が高いほど回収率が悪化することが課題となっておりましたが、電磁撹拌を付与することによって回収率を上げることを可能としました。現在、社会実装に向けベンチプラントを導入し、大型化における課題の抽出・解決を進めています。

分別結晶法による不純物元素除去技術と社会実装に向けたベンチプラント構築
グループの構成メンバー
役職 | 氏名 | 論文等 |
---|---|---|
研究グループ長 |
村上 雄一朗 (MURAKAMI Yuichiro) | ![]() |
上級主任研究員 |
尾村 直紀 (OMURA Naoki) | ![]() |
主任研究員 |
志賀 敬次 (SHIGA Keiji) | ![]() |
主任研究員 |
黄 新ショウ (HUANG Xinsheng) | ![]() |
主任研究員 |
渡津 章 (WATAZU Akira) | ![]() |
主任研究員 |
李 明軍(LI Mingjun ) | ![]() |
連絡先
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 マルチマテリアル研究部門 軽量金属材料研究グループ
〒463-8560 愛知県名古屋市守山区桜坂四丁目205番地
Eメール:M-mmri-webmaster-ml*aist.go.jp(*を@に変更して送信下さい。)