RNA修飾は約170種類存在し、RNAの生合成や安定性、機能制御などRNAの質的調節に関わることが報告されています。 私はこれまで膵臓がんにおけるRNA の「質」の変化がもたらす、がんの悪性化メカニズムの解明を進めました。さらにRNA の「質」の変化を利用した早期膵臓がんマーカーの開発を進めました。 このマーカーはStage I膵臓がんに対する感度及び特異度が95%以上と非常に高性能なマーカーとして注目を集めています。 \n講演ではこれらの悪性化機構や新規診断治療法ついて詳説します。
マクロファージは免疫細胞の一種であり、炎症性M1型と抗炎症性・組織修復性M2型の相反する表現型を制御することで、恒常性維持に貢献しています。この制御の破綻し、M1型が過剰となると体内の炎症が慢性化し、様々な難治性疾患や組織修復の遅延することが報告されています。したがって、異常亢進した M1型を M2型にスイッチングする技術は、慢性炎症の鎮静化と組織修復の促進を導き、これらの治療に有用であろうと考えられます。本講演では、M1-M2スイッチング機能を有するリポソームを利用した再生治療、疾患治療(褥瘡、線維症など)の成果について概説します。
ウイルスの感染機構を利用するウイルスベクターは遺伝子導入効率が非常に優れた導入方法です。特に近年は遺伝子治療のモダリティとしてウイルスベクターが臨床現場で顕著な成果を挙げ、世界中で注目されています。様々なウイルスベクターが存在していますが、産総研では最大150kbpもの遺伝子積載容量を持つHerpes Simplex Virus Amplicon Vector (HSV-AV)に着目し、遺伝子治療モダリティとしての利用に向けて開発を進めています。本セミナーでは現在開発が盛んなウイルスベクターについて紹介した後、HSV-AVについてその特徴と最近我々が開発した簡易な新規産生法について紹介します。