ポイント

  1. これまで新しい医薬品開発技術として、植物の遺伝子組換え技術による医薬品原材料生産技術の開発を実施
  2. 医薬品原材料を作る遺伝子組換え植物の栽培・生産方式として、「医薬品原材料生産のための完全密閉型遺伝子組換え植物工場」を世界に先駆けて開発
  3. 当該技術において企業と共同で開発してきた遺伝子組換えイチゴがイヌ用歯肉炎軽減剤として製造販売承認申請が認可
  4. 遺伝子組換え植物体そのものが動物用医薬品として承認されるのは世界初


概要

植物工場

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)生物プロセス研究部門【研究部門長 鎌形洋一】植物分子工学研究グループは、2006年より遺伝子組換え植物による医薬品生産を目的に、「医薬品原材料生産のための完全密閉型遺伝子組換え植物工場」(以下 産総研植物工場)の開発を開始、2007年に工場を竣工した。本工場において、ホクサン株式会社【代表取締役社長 氏家 薫】(以下「ホクサン」という)、社団法人 北里研究所【理事長 大村 智】(当時)と共同でイヌインターフェロンαを産生する遺伝子組換えイチゴの果実を原料としたイヌの歯肉炎軽減剤を開発し、ホクサンが動物用医薬品製造販売承認申請を行い、このたび認可が下りました。
 このことにより、産総研植物工場を用いることで、世界に先駆けて遺伝子組換え植物体を原薬とした動物用医薬品開発の実現に成功しました。


研究の経緯

 植物工場とは、一般には高度に環境を制御した空間内で植物を養液で栽培するシステムを包括的に指します。野菜や花卉を生産する、いわゆる野菜工場は、すでに国内で約100以上の工場が稼働しています。野菜工場は、施設費、ランニングコストが圃場栽培より嵩むため、事業採算性から葉菜類などの生産に限定されています。
 産総研では、植物の遺伝子組換え技術を利用して、植物に付加価値の高い物質、特に医薬品原材料などを生産させる研究開発を行ってきました。その過程において、完全人工光型の植物工場は、容易に閉鎖環境を構築、すなわち遺伝子拡散防止措置を執りやすく、また、気象条件に捕らわれず計画的・安定的栽培・生産が可能なことに注目し、医薬品原材料等を生産する遺伝子組換え植物生産を目的とした高性能型植物工場を開発してきました。


研究の内容

植物工場3

イチゴ

 産総研植物工場は、遺伝子組換え植物を含めた医薬品原材料となる植物を栽培・生産する目的で開発されたものです。したがって、栽培室内の温度、湿度、二酸化炭素濃度、風速、風量を自在に、かつ、精密に制御可能にしています。
 特に、これまでの植物工場とは異なり、ほとんどの植物種の栽培を可能にする人工環境構築能を有しています。すなわち、真夏の日中の気候条件をも構築可能としています。加えて、医薬品原材料生産を目的とするため、栽培関連エリアにおいて高度な清浄度管理も可能としています。
 また、遺伝子組換え植物の栽培を前提とすることから、カルタヘナ法に準拠した拡散防止装置も施されています。
 この栽培エリアと一体化したGMPに基づいた製薬エリアを有し、栽培から原薬製造まで一貫した工程を産総研植物工場内で実施可能としています。
 産総研では、これまで植物の遺伝子組換え技術を用いて、有用・高付加価値物質を生産する技術開発および実用化に向けた研究開発に取り組んできました。
 特に、遺伝子組換え植物で人や動物のワクチン、抗ガン剤やインターフェロンなどの研究開発を実施。高病原性トリインフルエンザ、季節性インフルエンザ、鶏原虫病、ノロウイルスやロタウイルスなどの下痢原性ウイルスの植物ワクチン研究、人のインターフェロンやガン治療用抗体などをジャガイモ、イチゴ、イネ、タバコなどでの植物生産に関する研究実績があります。
 今般、製品化第一号として、これらの研究課題の中から、イヌインターフェロン発現イチゴに焦点を当てて取り組んできました。

今後の予定

 この研究は、遺伝子組換え植物による医薬品原材料等の生産、および植物工場を活用した物質生産という新たな産業形成へと展開が期待されます。また、我々は、これまで植物工場での水耕栽培実績がほとんど報告されていない、イネ、ダイズ、ジャガイモ、タバコ、生薬植物類などの栽培研究も進めています。これらの研究成果により、一般の植物工場での生産作物種の拡大も期待されています。


関連ページ

ホクサン株式会社によるお知らせ



用語の説明

◆インターフェロン:動物体内でウイルスなどの病原体の侵入に反応してリンパ球などの細胞から分泌される抗ウイルス作用、腫瘍細胞増殖抑制機能を有する蛋白質のこと。
◆GMP: 医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準

平成25年10月17日

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