LS-BT合同研究発表会

プログラム セッション3

LS-BT2025 Symposium Session3 (6月19日)


 「バイオを測る、価値を揃える
― 公設試が取り組むバイオ標準化と評価技術の展開 ―」


日本は発酵・微生物利用やバイオ材料開発などに強みを有しており、これらの技術や製品の社会実装を進めるには、評価技術による可視化と再現性のある形での共有・展開が重要です。本セッションでは、公設試が取り組む評価技術および標準化の事例を紹介し、公的研究機関が評価基盤の整備と価値の見える化を通じて、バイオ製品の社会実装・市場獲得にどのように貢献できるかについて議論する機会にしたいと考えています。

Session3 バイオを測る、価値を揃える-公設試が取り組むバイオ標準化と評価技術の展開-
座長:ライフサイエンス部会 部会長/バイオテクノロジー分科会 分科会長
(産総研 生命工学領域 連携主幹)  大塚 幸雄
10:00-10:05
バイオテクノロジー分科会 分科会長  大塚 幸雄
10:05-10:30
「海洋生分解性プラスチックのISO標準化に向けた都産技研の取り組み」
Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute’s Initiatives Toward ISO Standardization of Marine Biodegradable Plastics
地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター  田中 真美
ISO 16636:2025 Plastics ―Disintegration field test of plastics under water environmental conditions(水環境条件下でのプラスチックの崩壊試験)は、海洋や湖沼などの水環境における生分解性プラスチックの崩壊量を評価する試験規格です。 NEDO委託事業(*1)および経済産業省委託事業(*2)の成果を基に、(国研)産業技術総合研究所が中心となって試験法が開発・提案され、2025年4月にISO規格として発行されました。提案当時に存在していた既存ISO規格と比較して、試験作業が簡便であり、日本国内の海域においても実施しやすいことを特徴としています。 そのため、国内における海洋生分解性プラスチックの研究開発や社会実装を後押しすることが期待されています。 NEDO委託事業における試験方法の開発では、産業技術総合研究所を中心に、日本バイオプラスチック協会、神戸大学、鹿児島大学、ならびに東京都、大阪府、滋賀県、広島県、愛媛県の複数の公設試験研究機関が連携して取り組んできました。 また、NEDO委託事業の開始当初からISO規格を基にした試験サービスを産業界へ展開することが試験機関に期待されおり、(地独)東京都立産業技術研究センターではISO 16636に基づく受託試験サービスを2025年9月より開始しています。 本講演では、ISO 16636の開発および発行に至る過程における公設試の関わりとともに、本規格を活用した試験サービス、産業界への展開について紹介します。
10:30-10:55
「光触媒材料の抗微生物効果についての標準化への取り組み」
Standardization of the Antimicrobial Activity by Photocatalytic Materials
地方独立行政法人 神奈川県立産業技術総合研究所  石黒 斉
二酸化チタンを始めとする光触媒は光が当たることで、超親水性によるセルフクリーニング機能、酸化還元反応による空気浄化や微生物の分解といった機能を発揮します。 この機能により、生活環境の改善に有用な材料として、その製品化が進められています。特に、微生物の分解機能は、生活空間における感染症対策に非常に有効と考えられ、多くの製品開発が進められています。 我々は、これまで光触媒の材料開発やその応用方法について多くの研究を進めてきました。その活動の中で、材料開発や応用方法に加えて、適切な各種性能評価方法を開発していくことが大変重要であると考え、大学等アカデミアや光触媒工業会と共に性能評価方法の標準化の開発を進めてきました。 その結果、これまでに数多くのJIS規格及びISO規格が制定され、性能評価方法の標準化がなされています。 ここでは、微生物に対する標準化方法について、その概要を説明するとともに、現在提案されているISO規格について及び我々が取り組んできた研究成果の一部を紹介します。
10:55-11:20
「醤油の品質特性と官能評価のポジショニングマップ構築」
Construction of a Positioning Map for Soy Sauce Quality Attributes and Sensory Evaluation
熊本県産業技術センター  藤野 加奈子
熊本県は、味噌・醤油をはじめとする伝統的発酵食品の生産が盛んな地域であり、これらの産業は地域の食文化と経済を支える重要な役割を担っています。 発酵食品の製造は長年にわたり、経験や勘どころに基づき暗黙知として蓄積されてきた職人技、いわゆる“匠の技”に支えられてきました。
高度な製造技術や、それによって形成される品質の特徴を総合的かつ俯瞰的に定量評価することは容易ではありません。 一方で、製品の特徴や傾向を、数値データおよび分析値として可視化・定量化することは、製造条件と製品品質との関係性を客観的に明らかにすることを助け、商品設計や技術継承において有効な手法として期待されます。
本発表では、熊本県産醤油を対象として、官能評価と各種分析項目との関連性を多変量解析により整理し、ポジショニングマップとして可視化することで、品質特性を視覚的に評価した事例について報告しますとともに、熊本県産業技術センターが県内の味噌・醤油業界に対して取り組んでいる品質向上、人材育成、災害復興支援、新製品開発などの多角的な支援内容を紹介します。
11:20-11:45
「細胞毒性試験環境の構築と食品由来成分の評価手法の検討」
Establishment of a Cytotoxicity Testing Environment and Evaluation Methods for Food-Derived Components
群馬県立産業技術センター  栁澤 昌臣
群馬産業技術センターでは、これまでプラスチック製品や繊維製品に対する抗菌試験(JIS Z 2801、L 1902)を実施し、依頼試験や共同研究を行ってきました。また、新型コロナウイルス感染症の流行以降は抗ウイルス性試験にも対応しています。本講演では、新たな評価技術の拡充を目的として、動物培養細胞を用いた細胞毒性試験の実施に向けた培養環境の整備および評価系の構築について紹介します。
本試験は、日本薬局方に記載された試験法を参考として実施し、培養細胞に試料抽出液を添加した際のコロニー形成能を指標とした細胞毒性試験を行いました。樹脂材料については既知の毒性を有する対照材料を用いて評価を行い、相対コロニー形成率およびIC50値により毒性の強弱を確認した結果、既報と同様の傾向が得られ、本評価系の妥当性が示されました。
また、食品試料への応用可能性を検討するため、保管条件の異なるジャガイモ抽出液の細胞毒性を評価したところ、明所で保管した試料において細胞毒性が認められました。以上より、本試験系は工業材料のみならず食品の安全性評価にも応用可能であることが示唆されました。
11:45-11:50
産総研 生命工学領域 連携推進室長  金 賢徹