関連する内陸地震の研究
巨大な地震の後,日本列島の応力場が変化し,巨大地震の震源とは離れた場所で比較的大きな地震が発生することが知られています.それらのうち,内陸・日本海沿岸で発生するものに注目しています.
2011/3/11本震後のM 6以上の地震
今回の地震の後,比較的大きな地震が内陸部で発生しています. 地震後から2011年3月19日までに,内陸および日本海沿岸域で発生したマグニチュード6以上の地震は,下記1~7の7回となります. 図1は,これらの地震の震央位置に発震機構解をプロットしたものです.震源位置・マグニチュードは気象庁の暫定値です. これらの地震は,今回の東北地方太平洋沖の巨大地震によって,内陸部の応力場が大きく変化したことによって発生した可能性があります.
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① 2011年3月12日03:59長野県北部(M6.2)深さ8km
② 2011年3月12日04:46秋田県沖(M6.4)深さ10km
③ 2011年3月15日22:31静岡県東部(M6.2)深さ14km
④ 2011年3月19日18:56茨城県北部(M6.1)深さ20 km
⑤ 2011年3月23日07:12福島県浜通り(M6.0)深さ10km
⑥ 2011年4月11日17:16福島県浜通り(M7.0)深さ6km
⑦ 2011年4月12日14:07福島県浜通り(M6.3)深さ10km
これらの地震の震源位置・発震機構の特徴は下記のようになります.
3/12 03:59頃の長野県北部の地震の関連情報
2004年中越地震(M6.8)と1847年善光寺地震(M7.4)のそれぞれの震源域の間の領域で発生しました(図2).
2004年中越地震後の産総研の臨時観測によって,今回の地震の極近傍で発生する微小地震の発震機構を決定した結果を図3に示します.今回の地震は北東-南西の圧縮軸をもつ逆断層型で,十日町断層帯の近傍で発生する地震に近いものです.
図2 2011年長野県北部の地震の発生位置の特徴.Imanishi et al. (2006) に加筆.
図3 2011年長野県北部の地震の発震機構とその周辺の微小地震のメカニズム解.Imanishi et al. (2006) に加筆. |
3/12 04:46頃の秋田県沖の地震の関連情報
1983年日本海中部地震(M7.7)の本震の震源位置付近で発生しました.
発震機構は東北東-西南西の圧縮軸をもつ横ずれ断層型です.
3/15 22:31頃の静岡県東部の地震の関連情報
富士山頂から南南東約8kmの位置で発生しました.発震機構は北北西-南南東の圧縮軸をもつ横ずれ断層型です.図4は震央周辺の地質構造,図5は重力異常,図6は富士火山地質との関係を示します.
(関連情報を第222回地震調査委員会資料として提出しました.)
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3/19 18:56頃の茨城県北部の地震の関連情報
茨城県北部の震源周辺には井戸沢断層,棚倉構造線,高萩断層が存在します.
発震機構は北東-南西の張力軸をもつ正断層型で,この地域ではめずらしいタイプの地震です.
図7 2011年3月19日茨城県北部の地震と周辺の地質構造. (産総研編(2003)100万分の1日本地質図CD-ROM第2版) |
3/23,4/11,4/12の福島県浜通りの地震の関連情報
3/23の地震は,3/19茨城県北部の地震の北東約25kmの位置で発生しました.近傍に井戸沢断層が存在します.発震機構は,ほぼ東西方向の張力軸をもつ正断層型です.
4/11,4/12の地震は3/19と3/23の地震の間を埋めるように発生しました.4/11の地震の発震機構は,北東-南西方向の張力軸をもつ正断層型です.4/12の地震は4/11の地震の北側極近傍で発生し,発震機構は北北東-南南西方向に張力軸をもつ型です.
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茨城県・福島県境付近の地震活動の解析
3月11日の超巨大地震の発生以後,④~⑦の地震が発生した地域では,地震活動が活発になっています. 図9は,3月11日から3月23日までの,小さな地震を含めた一連の地震の震央分布です. 比較的大きな地震については,防災科研のF-netによる発震機構解も併せて示してあります. 3月11日以前の活動と今回の活動とを比較するため,図10では1990年~2010年の地震の震央をプロットしてあります. 3月19日の地震(M6.1)の震央付近の活動は,以前は小さな地震もほとんど発生していない地域でした. 図11は,今回の地震の発震機構を以前のものと比較するため, 2011年2月までのF-netの発震機構解から,この地域周辺の深さ20km以浅のものをプロットしました. 緑色系が逆断層,赤色系が横ずれ断層,青色系が正断層型の発震機構です.近年この領域では大きな地震はなく,また周辺では正断層型の地震は起こったことがないようです.
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