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第7回 インタビュー

後藤勝城氏

TDK株式会社

[FORUM会員/電機製造業]

エナジーデバイスビジネスグループ
日本オペレーション長

後藤勝城氏

磁性技術で世界をリードする総合電子部品メーカーであるTDK株式会社は、スマートフォン向け小型リチウム電池(LIB)で世界トップシェアを誇ります。第19回技術セミナーでは、電池メーカーの視点からLIBを安全に扱うためのポイントを講演していただきました。今回は、エナジーデバイスビジネスグループ日本オペレーション長である後藤勝城氏に、LIB開発や廃LIBリサイクルへの取り組みなどについてのお話を伺いました。


LIBリサイクル産業の国際競争力強化を図る(1)

---令和3年度からSUREコンソーシアムに加入されましたが、加入の理由を教えていただけますか?

弊社は2005年に、中国でLIBを製造するATL(アンプレックス・テクノロジー)を傘下に収める形で電池事業に参入しました。設立間もないスタートアップに過ぎなかったATLはその後大きな成長を遂げ、弊社を支える主力事業のひとつとなっています。従来スマートフォンをはじめとする小型機器向けのラミネート型電池を主力としてきたため、製造と販売のいずれにおいても日本市場との結びつきが強いとはいえませんでした。しかし、近年の再生エネルギー導入の加速を受け、国内の家庭用蓄電システム(ESS)メーカー向けのLIB販売を2020年から本格化しています。弊社のESS向けLIBは、優れた安全性と長寿命を特長としており、お客様から高いご評価を頂いています。直近では、国内の家庭用ESS向け電池で大きなシェアを占めるまでになっています。
  日本は家庭用ESSでは世界最大の市場で、その傾向は今後も続くと予想されています。このことは、弊社製のLIBを用いたESSが将来国内で大量に寿命を迎えることを意味しています。寿命を終えた家庭用ESSの回収は各ESSメーカー様の責任のもと行われることになると思いますが、弊社も電池メーカーとして社会的責任があります。私達はその課題に対して答えを用意しておく必要があります。それがコンソーシアムに加入させて頂いた大きな理由になります。

---加入する前、SUREコンソーシアムにどのようなイメージがありましたか?

SUREコンソーシアムは産総研内の産学連携コンソーシアムですが、まず産総研というアカデミックな研究機関の中に、このような実用化を見据えた、ある種泥臭いとも言える組織があることは意外でした。一方で、戦略的都市鉱山の社会導入を目指してアカデミアの基礎技術と産業界との橋渡しをしたいという理念に強い共感を抱いています。

---需要やサプライチェーンなどに、コロナの影響はございましたか?その影響は、今後も継続しますでしょうか?

大きな影響がありました。需要面では、昨年のスマートフォン市場は当初予想から大きく下振れしました。在宅勤務やオンライン授業の世界的普及によるPC・タブレット需要の拡大等のプラス要素もありましたが、半導体の供給不足がスマホやPCメーカー側で足かせとなっています。一方で、コバルトやリチウムといった主要材料は、コロナの影響よりも、EV化の加速に伴う材料需要急増のインパクトの方が大きいですね。遅れている材料生産能力の拡大が追いつけば、市場価格は来年にかけて徐々に落ち着くとみています。ただ、今後もEV生産は世界的に拡大しますから、その動向次第では材料価格のさらなる高騰はリスクとして懸念されます。その点でも、再び電池材料に戻すクローズドループリサイクルをより真剣に考える契機だと受け止めています。