sureコンソーシアム

一般の皆様向け

都市鉱山とは

携帯電話やパソコンなどの小型家電には、金や白金、コバルト、タンタルなど、さまざまな金属が使われています。金属は元素そのものに価値があるため、製品に使用しても量が減ったり、違う元素に変化したりすることはなく、その元素の価値が失われることはありません。廃棄された中に存在する有用な金属を、新たな製品の原料として再利用できるようにすれば、廃製品は有望な金属資源となります。このような廃製品中の有用金属資源を鉱山に見立て「都市鉱山」と呼んでいます。※1

都市鉱山を取り巻く近況

天然金属資源の乏しい日本は、金属資源のほとんどを輸入しています。数年前に起きた、レアアースを中心とした金属の価格高騰や、産出国の輸出制限などをきっかけに、天然金属資源(特にレアメタル)の供給に対する不安が高まり、自国資源である「都市鉱山」の開発に力が注がれるようになりました。

金属は古くからリサイクルされてきたため、都市鉱山開発は簡単であると思うかもしれません。たしかに、廃製品に含まれる金属のうち、貴金属(金、銀、白金、パラジウムなど)や一部のベースメタル(鉄、アルミ、銅など)については組織的に回収され、元の金属としてリサイクルされています。しかし、多くのレアメタルについては、ほとんど回収されていません。レアメタルの再利用を実現させるためには、大きく2つの課題があります。

【課題1】消費者の手に渡った使用済みの製品を、経済的かつ安定的に収集すること
【課題2】収集された廃製品から、各金属を高純度に取り出して製錬原料とする技術を確立すること

日本国政府は、2013年に小型家電リサイクル法を施行しました。自治体での廃小型家電の回収が開始されたことによって、【課題1】の解決に向けて1つの突破口が開かれることになりました。直近では、2020年に内閣府が発表した革新的環境イノベーション戦略(p39)に、「•AI ・ロボット技術を活用した自動選別システム、高効率な金属製錬技術等のリサイクル技術を開発するとともに、動脈産業・静脈産業の情報連携システムの開発を行う」と明記されているように、【課題1】【課題2】課題に対して、国を挙げて取り組んでいます。

金属資源には限りがあり、将来的な供給不足は、日本だけでなく、世界全体の経済成長にとっても重要な問題です。ヨーロッパではRE(Resource Efficiency・資源効率性)/CE(Circular Economy・循環経済)政策に取り組むなど、金属資源循環をめぐる国際的な動きも活発になってきています。

 

戦略的都市鉱山研究拠点:SURE

上記【課題2】の技術の確立において、経済性は重要な条件です。都市鉱山からの金属資源が、天然金属資源と同じくらいの品質・価格にならなければ、社会に流通しません。合理的で経済的な金属循環を実現させるためには、製品を製造する動脈産業とリサイクルを行う静脈産業が連携して(=動静脈連携)、技術を開発することが求められます。

産業技術総合研究所(産総研)は、静脈産業が担ってきた従来の「都市鉱山」と区別して、動静脈連携によって計画的に開発する都市鉱山を「戦略的都市鉱山」と名付け、2013年、産総研内の金属資源循環に関わる研究者による横断的組織「戦略的都市鉱山開発拠点(Strategic Urban Mining REsearch Base:SURE)」を設置しました。(代表 大木達也 産総研 環境創生研究部門 首席研究員 大木研究室)

SUREでは、多岐にわたる分野の研究者が、製品ライフサイクルの評価・分析や、製品製造時にリサイクルを配慮するエコデザイン設計、情報利用によるリサイクル装置の自動化、多種多様な金属を再資源化する製錬技術などの研究開発に取り組んでいます。

また、2014年には、SUREと産業界の連携組織「SURE コンソーシアム」を設立しました。同コンソーシアムでは、SUREが、動脈産業と静脈産業の企業、業界団体、政府機関等と連携して、戦略的都市鉱山の早期社会導入を目指しています。

※1下記WEBマガジンでは、「都市鉱山」についてや、SUREコンソーシアムの取り組みについてより詳しく解説しておりますのでご参照ください。
産総研マガジン #話題の〇〇を解説 "都市鉱山"とは?-資源循環を実現するための重要技術-