第3回 インタビュー
槇野産業は、100年近く主力製品であり続ける「マキノ式粉砕機」をはじめとする、粉砕機および粉体製造関連機器のメーカーです。インタビュー第3回では、"粉体業界のコンビニエンスストア"を標榜する槇野産業の槇野利光氏にお話を伺いました。
提供するのは「機械」でなく「機能」(1)
---まずは、槇野産業についてご紹介ください。
創業は1926年。もう少しで100年企業の仲間入りをする会社です。機械メーカーに勤めていた先々代が、粉砕機に特化した会社を創業しました。
粉砕機は、大きく「衝撃(叩き砕く)」「せん断(切る)」「摩砕(すり潰す・押し潰す)」という3つのタイプに分けられます。創業者が独自開発し、今でも私共の主力製品となっている「マキノ式粉砕機」は、衝撃式粉砕機です。対象物を破壊する回転盤と、粒度を制御するスクリーンを用途に応じて交換できるのが「マキノ式粉砕機」最大の特長です。
第二次大戦後の食料危機の時には、どんぐりやトウモロコシの茎などを粉砕して食料にするために、国策として「マキノ式粉砕機」が1万台以上製造されました。1社では製造が間に合いませんから、機械の設計図面を公開して、三菱重工業など8社13工場で製造し、食糧難解決に貢献したということです。そして、その後の経済発展に合わせて、飼料や化学薬品、建材などと用途を広げ、「ちょっと便利なユニークな会社」をモットーに、粉砕機と粉体関連機器を扱う会社として進んでまいりました。
---自社製品に加えて、海外提携先の製品も扱っていらっしゃいますね。
世の中に必要なものを、自分たちで作って、提案して、認めていただこうとしましたが、どうしても認めてもらえませんでした。消費財であればそこで完結しますけれど、私共が提供しているのは生産財なので、お客様はその生産財を使って、自分たちの生計を立てていくわけですよね。そうすると、実績のない機械を使うというリスクを負って買ってくださる方は非常に少ないのです。
それなら海外で実績のある機械を導入しようと考えて、世界中を走り回って機械を探し、海外メーカーの製品を日本の代理店として取り扱うようになりました。今から30年以上前のことです。現在は、総代理店とそうではないところを合わせて提携先は8社…ドイツ3社、アメリカ3社、中国1社、台湾1社となっています。
---槇野社長自ら海外の提携先を開拓されたのですね。「ちょっと便利なユニークな会社」というモットーも槇野社長のご発案ですか?このユニークなモットーにはどのような想いが込められているのでしょうか。
これは苦し紛れなのです。「お前の会社、変わっているな」と言われたことがありまして。「変わっている」ということをユニークと表現して、私が考えたモットーです。「特色がある」というより「他にない」という意味を込めています。
あらゆる機械をご自分のところでラインナップしているところがデパート、ある特殊なものを専門的に作っているところが専門店とすると、私共が目指しているのは、近くて便利なコンビニエンスストアです。ただし、我々にとっての「近く」は、距離ではなく、心理的に近いということ。お客様が「こんなことができたらいいな」と考えた時に、「槇野産業ならどうにかしてくれる」と便利に使ってもらえる会社であることに、私共の存続価値があります。
また、お客様にとって重要なのは「希望通りに粉砕できること」であって、「どの機械を使うか」ではありません。ですから、私共は機械屋ですが、「機械」という金属の塊を売るのではなく、粉にしたり、砕いたりする「機能」を提供していると考えています。