第1回 インタビュー
資源循環社会への先進的取り組みで知られるハリタ金属。代表取締役の張田真氏は、SUREコンソーシアム設立時から企画委員としてご活躍いただいています。インタビュー第1回は、張田社長に、同社の特色や具体的な取り組み、リサイクル業界の今後の課題などについて語っていただきました。
世界初のリサイクルループをつくる(1)
---まず初めに、ハリタ金属の事業内容について、簡単に説明していただけますか?
本社は富山県高岡市で、支店は富山県と石川県にあります。歴史的には、1960年に、鉄スクラップ回収業から始まりまして、現在は、廃棄物の処理やリサイクル全般を行う総合リサイクル業です。近年の特色は、ただ廃棄物を処理するのではなく、これまでに培ってきた技術や経験を生かして、顧客の要望事項に応じたリサイクルのスキームを開発していることです。最近の例では、大手流通グループと組んで、東北エリア全店でLED電球を一斉に回収、リサイクルするスキームを作りました。ケースバイケースなので「こういうことをしています」という説明はしにくいのですが、「何でもできる」というのが弊社の強みです。
---新しいリサイクルのスキーム開発に積極的に取り組んでいるのですね。SUREコンソーシアムにも設立時からご参加いただいていますし、経済産業省実証事業やNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の実証事業にも参加されています。
今までは、「リサイクルはコストだよね」と片づけられてしまうことが多かったのですけれど、これからは、企業責任の観点から、作って、売って、回収して、また作るという取り組みを示さなければ、消費者からバッシングを浴びるようになるでしょう。ESG投資という側面からも、「環境配慮のない企業は投資の世界から評価されない」という社会になってきています。私たちは、早くから、こうした社会になるという仮説を立てて、そういう企業にソリューション提供できる会社になるためには何が必要かを追求してきました。すごく長い時間をかけて…たくさんの人とチームを組んだり、委員会に参加したりして準備してきまして、これから、幾つかの世界初というようなリサイクルループを社会実装させようという段階にきています。
---世界初を幾つも実装予定とはすごいですね。具体例を一つ紹介してください。
2020年7月から導入された東海道新幹線 新形式車両 N700Sには、世界で初めて、新幹線廃棄車両のアルミがリサイクル利用されています。弊社は、鉄道事業者や再生アルミ製造会社などと共同で、新幹線廃棄車両を新しく製造される新幹線車両部材への原料として供給する水平リサイクルシステムを作りました。
このシステムが実現したのは、経済産業省実証事業及びNEDOの実証事業において開発した「LIBSソータ」というソータ機によるものです。細かく破砕した金属混合物をコンベアーに乗せて連続的にレーザーを照射することで、合金の種類を素早く識別・選別することができる、商業ベースとしては世界初の機械です。
アルミ車両に使用されるアルミは、用途別に3種類あります。普通は、この3種類のアルミ合金が混在したままリサイクルされるため、エンジンブロックやトランスミッションケースといった鋳物・ダイカスト部品へカスケードリサイクルされています。そこで弊社は、LIBSソータによって、アルミ合金系列別に分けることで、再びアルミ車両にするというスキームを開発しました。水平リサイクルを実現した上、従来のカスケードリサイクルに比べて、一次溶解が1回少なくなり、エネルギーとCO2も削減できます。