CIPM相互承認取決め

CIPM相互承認取決め(CIPM MRA, Mutual Recognition Arrangement)は、経済のグローバル化に対応するため、メートル条約附属書規則に基づいて、 国際度量衡委員会(CIPM, International Committee of Weights and Measures)によって起草されました。 CIPM MRAは1999年、第21回国際度量衡総会(CGPM, General Conference on Weights and Measures)において、メートル条約加盟国38ヵ国の国家計量標準機関 (NMI, National Metrology Institute)及び国際機関2機関が署名し、2005年1月に発効しました。 2021年1月現在、63の加盟国、39の準加盟国・経済圏及び国際機関4機関が署名しています。

CIPM MRAの目的は、各国のNMIが維持する国家計量標準の同等性を評価し、NMIが発行する校正及び測定の証明書を相互に認めることにより、国際貿易、 商業、法制に関するより広範な合意のための確実な技術的根拠を各国政府及び他の機関に提供することです。締結前後の経緯は表1の通りです。


表1 CIPM MRAの経緯

1995年10月 第20回国際度量衡総会において、計量標準の世界規模のトレーサビリティを確立することを決議
1997年 2月 第1回国家計量標準機関長会議において事務局より原案を提示
1997年 8月 各国との意見を踏まえて事務局ドラフトの提示
国際度量衡局は、加盟各国、地域組織であるAPMP(アジア太平洋計量計画)、EUROMET(欧州計量会議)、NORAMET(北米計量会議)及びEAL(欧州試験所認定会議)の各委員長との意見調整を実施
1998年 2月 第2回国家計量標準機関長会議において仮署名
1999年 9月 日本国内4標準機関(計量研究所、電子技術総合研究所、物質工学工業技術研究所、通信総合研究所)において署名の申合せ
1999年10月 第21回国際度量衡総会において38ヵ国のNMI及び国際機関2機関が署名
2005年 1月 国家計量標準機関の校正測定能力のAppendix Cの正式登録開始

校正測定能力(CMC)について

上記の目的を達成するために、国家計量標準を開発・維持するNMI又は指名計量標準機関(DI, Designated Institute)は、測定量ごとに、品質システムの構築、 参加NMI又はDIによる審査(ピアレビュー)、及び関連する国際比較への参加というプロセスを経て、 その校正測定能力(CMC, Calibration and Measurement Capability)を宣言します。 最終的に承認されたCMCは国際度量衡局(BIPM, International Bureau of Weights and Measures)が管理するデータベース(KCDB Appendix-C)に登録され、 ウェブ上で公表されます。

KCDB検索システム:https://www.bipm.org/kcdb/

表2 CIPM MRAに署名している国及び経済圏のリスト(2021年現在)

地域計量組織 加盟国等
APMP オーストラリア、バングラデシュ、カンボジア、中国*、台湾、香港*、インド、インドネシア、日本、韓国*、マレーシア、モンゴル、ニュージーランド、パキスタン、フィリピン、ロシア*、シンガポール、スリランカ、タイ、ベトナム (エジプト*、イラン、イラク、カザフスタン*、ケニア*、サウジアラビア*、南アフリカ*、シリア、アラブ首長国連邦*、イギリス*、アメリカ*、ウズベキスタン*)
COOMET アゼルバイジャン、ベラルーシ、ボスニア・ヘルツェゴビナ*、ブルガリア*、中国*、キューバ、ジョージア、ドイツ*、カザフスタン*、リトアニア*、モルドバ*、ルーマニア*、ロシア*、スロバキア*、トルコ*、ウクライナ、ウズベキスタン*
EURAMET アルバニア、オーストリア、ベルギー、ボスニア・ヘルツェゴビナ*、ブルガリア*、クロアチア、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス*、ドイツ*、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア*、ルクセンブルグ、マルタ、モルドバ*、モンテネグロ、オランダ、北マケドニア、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア*、セルビア、スロバキア*、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ*、イギリス*
AFRIMETS ボツワナ、モーリシャス、ナミビア、セーシェル、南アフリカ*、タンザニア、ザンビア、ケニア*、モロッコ、チュニジア、エジプト*、エチオピア、ガーナ、スーダン (ドイツ*、フランス*)
SIM カナダ、メキシコ、アメリカ*、カリブ共同体、ジャマイカ、コスタリカ、パナマ、ボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルー、アルゼンチン、ブラジル、チリ、パラグアイ、ウルグアイ
GULFMET オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア*、アラブ首長国連邦* (ボスニア・ヘルツェゴビナ*、エジプト*、香港*、韓国*、トルコ*)
その他 イスラエル

国際機関 欧州委員会共同研究センター (JRC-Geel)
欧州宇宙機関 (ESA)
国際原子力機関 (IAEA)
世界気象機関 (WMO)
*印は重複加盟国、括弧内はAssociate Member

国際比較について

国際比較の結果はNMIやDIがCMCsを宣言する際に重要な根拠となります。CIPM下に設置されている各計量分野の諮問委員会(CC, Consultative Committee)では、 その分野で中核となる国際比較を実施しており、これをCIPM基幹比較(CIPM Key Comparison)といいます。 原則としてCIPM基幹比較はその分野で高い技術と経験を有する機関(通常はCCのメンバーであるNMIやDI)のみで行われますが、その後、それぞれの地域計量組織 (RMO, Regional Metrology Organization)において、多くはCIPM基幹比較に参加した機関を幹事研究所(pilot institutes)としてRMO基幹比較(RMO Key Comparison)が行われます。 RMO Key Comparison への参加機関は、RMOメンバー及びその他の機関になります(図1)。


CMC_RMO


RMO基幹比較の結果はCIPM基幹比較に参加したNMIの結果を通して、CIPM基幹比較の結果にリンクされ、CIPM基幹比較の結果と同様にCMCを宣言する際の重要な根拠となります。 また、これら基幹比較によってカバーされない量に対しては、各RMOによって独自に補完比較(Supplementary Comparison)が実施されます。

これらの国際比較の結果は、BIPMが管理するデータベース(KCDB Appendix-B)に登録され、ウェブ上で公表されています(表4)。


表3 主要10カ国の国際比較参加件数の推移( 2022年4月現在 )

順位 国名 2011年
5月
2012年
4月
2013年
5月
2014年
5月
2015年
11月
2016年
12月
2017年
8月
2018年
2月
2019年
3月
2020年
10月
2021年
10月
2022年
4月
1 ドイツ 547 575 600 627 683 698 719 730 753 612 791 798
2 日本
(NMIJ)*
361
(353)
390
(381)
407
(396)
427
(420)
462 476
(450)
491 496
(485)
508
(501)
538
(526)
555
(533)
563
(545)
3 アメリカ 400 417 432 450 481 485 501 505 515 527 543 543
4 イギリス 403 422 432 448 478 479 488 492 502 523 538 542
5 フランス 369 389 406 430 451 465 475 483 496 521 534 539
6 ロシア 301 322 340 360 392 408 422 431 450 471 507 515
7 韓国 303 332 354 378 395 410 423 428 450 479 498 501
8 中国 253 277 302 323 352 366 381 387 410 456 477 486
9 イタリア 244 257 272 282 293 299 302 308 316 329 338 341
10 オーストラリア 233 249 257 269 281 286 299 301 307 319 332 334

国際比較総数 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
1003 1081 1188 1278 1343 1453 1499 1529 1588 1673 1745 1767
*印括弧内はNMIJの国際比較参加件数です。
※ここで集計している国際比較数は、KCDBに掲載された基幹比較及び補完比較の合計を表します。