国際技術協力

近年、市場のグローバル化により各国間での取引が盛んになり、取引される物品の品質管理・品質保証が強く求められています。 品質管理・品質保証には各種の計量・計測が用いられていることから、海外計量標準機関などからこれらに関する技術研修が要望されています。 産業技術総合研究所計量標準総合センター(NMIJ)では、これらに対応するために、集団研修、技術支援、専門家派遣等の協力を行っています。 それらの活動では、独立行政法人国際協力機構 (JICA) の各種制度などを活用しています。

以下では、これまで行われてきている主な国際協力の活動について簡単に紹介いたします。


タイNIMTに対する技術支援

(1)JBIC及びJICAのNIMTプロジェクト(2002年~2008年)

タイ王国の国家計量標準機関 NIMT、National Institute of Metrology (Thailand) は、1998年6月に発足しました。 タイ王国政府は、これを国際的に認知されうる国家計量標準機関として育てるために、日本政府に支援を依頼し、これにより国際協力銀行(JBIC)と国際協力機構(JICA)の プロジェクト(JICA/NIMT Project)が実施されました。

このプロジェクトのなかでのNMIJの役割は NIMT の人材を育成するものでした。 この人材育成は、2002年から2008年のプロジェクトとして日本品質保証機構(JQA)、日本電気計器検定所(JEMIC)、化学物質評価研究機構(CERI)、 製品評価技術基盤機構(NITE)の協力の下に遂行されました。
この期間に、30名を超えるNIMT職員が日本国内に滞在し、最先端の技術を習得するための研修が行われ、さらに、60名近い日本側専門家がNIMTに滞在して技術指導が行われました。
その結果、NMIJを始めとした日本の機関からNIMTに対し42量目にわたる標準設定、標準供給、校正手順書作成の技術が移転されています。

計量標準の分野 技術移転した標準の数
長さ関連量 8
質量関連量 7
時間・周波数 1
電磁気 12
測温 3
化学 6
測光 2
音響・振動 3
総計 42

2008年10月までに、総計35量目にわたる標準供給技術のASNITE 注1) 認定審査を受け、第三者が容易にその技術レベルを認知しうるようにすることとなりました。

注1) ASNITE:ISO 17025準拠で校正を行う技能の有無を審査するためのプログラムで、製品評価技術基盤機構NITEが実施する。 これに合格すれば、ILAC-MRAにより、標準設備による校正結果の国際的同等性が証明される。 この証明書があれば、たとえば輸出入を行う際に国ごとに校正・試験を行うような無駄を省くことができ、One Stop Testing Systemが実現できる。

NIMTに整備された機器群の一部  NIMTに整備された機器群の一部
NIMTに整備された機器群の一部


(2)その後の技術支援(2008年~)

前記のプロジェクト終了後も、NIMTの認定審査における技術アドバイザー派遣(平成21年度は4名派遣)や、NIMT技術者の短期技術研修の受入(平成21年度は4名受入) などの技術支援を継続して実施しています。 また、JICA「アジア太平洋地域15カ国に対する計量標準強化」の一環として、タイで開催するアジア太平洋地域の国家計量標準機関を対象とした技術講習会における 講師派遣も行っています。

※NIMTプロジェクトの詳細については下記リンクより産総研Today “シリーズ:NIMTプロジェクト”の記事もご覧ください。 
シリーズ第1回 シリーズ第2回 シリーズ第3回 シリーズ第4回 シリーズ第5回



JICA 集団研修「法定計量分野の社会・産業基盤整備」事業(2008年~2010年)

NMIJ 国際計量室では JICA の枠組みの中で、計量標準分野或いは法定計量分野での 技術支援事業を実施しています。 この内「法定計量分野」では、JICA 集団研修「法定計量分野の社会・産業基盤整備」事業の研修員受け入れを2008年から行い、毎年4名から8名がこの研修に参加しています。 本研修は、発展途上国の技術公務員等に対し、計量分野における技術指導、或いは行政体系・施行体制などを紹介し、各研修員がそれぞれの国における国づくりの中核を担うことを目指して実施されています。 また、終了した集団研修等のフォローアップ、個別研修受入も要請に応じて随時対処しています。

研修状況写真  研修状況写真
NMIJでの研修の様子


技術協力一般(個別案件)

産総研NMIJへは個別に国際技術協力の要請があり、インドネシア、タイ、マレーシアなどの国々から年間10名程度の研修生を受入れています。 そして、NMIJは研修生に対して、1週間から4週間程度の期間で、計量標準のそれぞれの量目に関する技術研修や品質システムの研修を実施しています。