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土浦市およびつくば市における地震被害緊急調査

岡田真介*1・坂田健太郎*2・中村洋介*1・船引彩子*3・澤田結基*4・小松原純子*1・納谷友規*1・田辺 晋*1・長森英明*2・中澤 努*2・小松原 琢*1・水野清秀*1

 

*1(独)産業技術総合研究所 地質情報研究部門

*2(独)産業技術総合研究所 地質標本館

*3 (独)産業技術総合研究所 地質情報研究部門, 現:日本大学文理学部

*4 (独)産業技術総合研究所 地質標本館, 現:福山市立大学

 

調査日:2011年3月22, 24, 28日実施

目的:土浦市およびつくば市における家屋被害および地盤変状と地質・地盤との関係について明らかにすること.

 

調査方法

本緊急調査では,家屋の被害状況を,建物の種類・建築年代・建物階数の記載を行った後,①屋根瓦の損壊・落下,②塀・灯籠・墓石などの倒壊,③噴砂・地盤の液状化,④地割れ,⑤地盤の沈下・建物基礎の損壊の5つの項目に分けて被害状況の記載を徒歩によって行い,住宅地図上にその位置を記録した.これらの被害状況と地質・地盤との関係について明らかにするために,地質図 (宇野沢, 1988) と重ね合わせることによって検討を行った.

 

調査結果

踏査の結果,沖積低地および自然堤防に位置する土浦市中心市街では,古くからの家屋および土蔵の大破が数軒認められ,屋根瓦・外壁の損傷(例えば写真1)や塀・灯籠の倒壊(写真2)も高い割合で確認された(図1).また,新川左岸側,真鍋町・新真鍋町・東真鍋町付近で多数の噴砂(写真3)が確認された.さらに,霞ヶ浦沿岸の埋立地および湖岸周辺でも噴砂・液状化跡が多数認められた.同じ沖積低地でも東真鍋町および殿里付近では,土浦市中心市街地と比較して,被害家屋の割合が幾分少ない.しかし,西真鍋町から東真鍋町の中位段丘下に沿った旧街道では,瓦屋根の損壊・土蔵の大破などが多く確認された.一方,土浦市街地より北西方の飯田から中根の低位段丘面上では,沖積低地と比較し被害家屋の割合が顕著に低い.

つくば市谷田部付近では,国道354号線が盛り土部分の陥没・亀裂により通行止めとなっていることを確認した(写真3).また市民ホールでは,地盤沈下によって建物入口に10 cm程度の段差を生じていた(写真4).

つくば市南部の森の里の住宅地は,牛久沼の埋立地であることから,地盤変状および家屋被害が大きいと予想されたが,現地調査の結果,一部家屋における塀の倒壊・屋根瓦の損壊および堤防の一部に亀裂が見られる程度であった.

つくば市西部の今鹿島・高野・百家では,中位段丘上であるにもかかわらず,屋根瓦の損壊・塀の倒壊の割合が高いことが確認された(図2).一般的には,段丘面上は沖積低地よりも地震動に対して地盤が強いと考えられるが,土浦市街地と比較し大差のない揺れが生じたことが示唆される.また,今鹿島・高野・百家の南部に位置する鬼ヶ窪付近では幾分,被害の割合が減少する.つくば市小田についても,同様に被害の割合は少ないことが確認された.

今後は,より広範囲の調査を行うとと共に,地下地質との対応関係や,埋立に使われた母材なども検討することによって,地震による揺れと地質・地盤との関係について精査していく方針である.

 

文献

宇野沢昭・磯部一洋・遠藤秀典・田口雄作・永井 茂・石井武政・相原輝雄・岡 重文(1988), 2万5千分の1筑波学園都市及び周辺地域の環境地質図説明書, 特殊地質図(23-2), 地質調査所, 139p.

 

写真1 土浦城西櫓.外壁の損傷が確認できる.

写真1 土浦城西櫓.外壁の損傷が確認できる.

 

写真2 神社の灯籠の倒壊(土浦市東崎町).

写真2 神社の灯籠の倒壊(土浦市東崎町).

 

写真3 土浦市東真鍋町において確認された噴砂跡.

写真3 土浦市東真鍋町において確認された噴砂跡.

 

写真4 つくば市谷田部における国道354号線,盛土部分の地盤変状.

写真4 つくば市谷田部における国道354号線,盛土部分の地盤変状.

 

写真5 地盤沈下によって生じた「市民ホールやたべ」入口の段差.

写真5 地盤沈下によって生じた「市民ホールやたべ」入口の段差.

 

図1 土浦市中心部からつくば市栄付近にかけての建物被害と地盤変状.図1拡大表示

図1 土浦市中心部からつくば市栄付近にかけての建物被害と地盤変状.

背景には,宇野沢ほか(1988)を用いた.

 

図2拡大表示

図2 つくば市今鹿島から鬼ヶ窪における建物被害.背景は宇野沢ほか(1988).