2019年度地震・津波・火山に関する自治体職員研修プログラム開催報告

2019年8月
活断層・火山研究部門

地震・津波・火山に関する研究成果を実際の防災活動に活かすためには,自治体の防災担当者と各分野の研究者との連携が欠かせません.このため,活断層・火山研究部門は,地質調査総合センターのプログラムの一環として,地質情報研究部門や地質情報基盤センター(地質標本館)の協力も得て,自治体(都道府県および政令指定都市)の防災担当の職員を対象とした技術研修を行っています.この技術研修は平成21年度(2009年度)から毎年開催されており,地震・津波・火山といった現象そのものについて最新かつ正しい知識を知ってもらうことに特色があります.今年度は,7月2日(火)から5日(金)にかけて実施し,静岡,愛知,三重,和歌山の4県ならびに相模原市,広島市の2政令指定都市から合計7名の方に参加して頂きました.政令指定都市には2年前から開催案内を送っていたのですが,実際に参加して頂いたのは今回が初めてでした.

今年度の研修プログラムは,表1に示した通りです.昨年度に引き続き,「火山分野だけ」(研修前半),「地震分野だけ」(研修後半)および「すべて」(全日程)の3つの参加形態の中から事前に選択できるようにしています.火山と地震の共通分野となる地質一般の講義(「地質標本館見学」および「地質図の利活用」)を中間に配置することにより,どちらか一方を選択してもこの2つの講義を受講できるようにプログラムを編成しました.初日には,日本列島の地質に関する概要と火山に関係する講義が行われました.火山に関する講義の「その1」では概説的な内容を,「その2」では個別の火山を取り上げた内容を,それぞれ紹介しました.2日目には午前中に地質情報に関する講義と地質標本館の見学(写真1)が行われ,午後に歴史地震と地震災害に関する講義と自治体による地震・津波・火山防災の取り組みの紹介が行われました(写真2).3日目には,午前中に活断層に関する講義が行われ,午後に地震動,海岸地形および地下水観測に関する講義が行われました.最終日に実施した房総半島巡検には,研修者6名が参加し,南房総の海岸地域で観察される大地震の痕跡を探る巡検を実施しました.

このような研修を継続的に開催することにより,自治体の防災担当者に地質災害に関する知識を深めてもらうとともに,懇談の場も通じて,近隣自治体の担当者同士や研究者との連携を強めていくことが重要だと考えています.来年度もこの研修を行いたいと考えています.


表1 2019年度地震・津波・火山に関する自治体職員研修のプログラム内容