平成30年度地震・津波・火山に関する自治体職員研修プログラム開催報告
2018年8月
活断層・火山研究部門
地震・津波・火山に関する研究成果を実際の防災に活かすためには,自治体の防災担当者と研究者との連携が不可欠です.このため,活断層・火山研究部門は,地質調査総合センターのプログラムの一環として,地質情報研究部門や地質情報基盤センター(地質標本館)の協力も得て,自治体の防災担当の職員を受け入れた研修を行っています.この研修は平成21年度(2009年度)から毎年開催されており,地震・津波・火山といった現象そのものに興味をもってもらうことに特色があります.今年度は,7月9日(月)から12日(木)にかけて実施し,青森,千葉,静岡,愛知,三重,和歌山,宮崎の7県から9名の参加がありました.青森県からは今回が初参加でした.また,上記のほかに,和歌山県(南紀熊野)と群馬県(浅間山)からそれぞれ1名ずつのジオパーク関係者にご参加頂きました.
今年度の研修プログラムは表1に示した通りです.昨年度のアンケートで「自分の担当分野(火山)だけの研修内容でないと参加できない」といった意見があったため,今年度は「火山分野だけ」(研修前半),「地震分野だけ」(研修後半)および「すべて」(全日程)の3つの参加形態の中から事前に選択できるようにし,共通分野となる地質一般の講義(「地質標本館見学」および「地質図の利活用」)を中間において,どれを選択しても受講できるようにプログラムを編成しました.初日には,日本列島の地質に関する概要と火山に関係する講義が行われました.火山に関する講義の「その1」では概説的な内容を,「その2」では個別の火山を取り上げた内容を,それぞれ取り上げました.2日目には午前中に地質情報に関する講義と地質標本館の見学(写真1),午後に地震・地震動と活断層に関する講義が行われました.今年度は地質標本館の見学の評判が良く,アンケートでも「もっと時間をかけて見学したかった」というコメントを多数頂きました.3日目は午前中に自治体による地震・津波・火山防災の取り組みについて研修生から紹介して頂き(写真2),午後には海溝型地震と地震地下水に関する講義が行われました.自治体による防災への取り組み状況の紹介については,「研修期間中の早い時期に行なって欲しい」との意見があり,来年度のプログラム編成の際に参考にしたいと思います.最終日の巡検には,自治体研修参加者4名のほかに産総研からの2名の参加者があり,活断層・火山研究部門の研究者2名の案内で,南房総における大地震の痕跡を探る巡検を実施しました(写真3).天候が若干危ぶまれましたが,気温がそれほど高くならなかったため熱中症の心配などはなく,かえって巡検に適した日だったように思います.
このような研修を継続的に開催することにより,自治体の防災担当者に地質災害に関する知識を深めてもらうとともに,懇談の場も通じて,担当者同士や研究者との連携を強めていくことが重要だと考えています.来年度もこの研修を行いたいと考えています.
表1 平成30年度地震・津波・火山に関する自治体職員研修のプログラム内容.