量子デバイス計測チーム
概要
- - 超伝導量子ビットの長寿命化と大規模集積化チップの動作実証
- - アナログ集積回路を製造・実証
チームの研究課題
超強結合を利用した新しい量子現象・デバイスの研究
右の図では超伝導回路を用いたLC共振器と2つの磁束量子ビット(人工原子)がそれぞれ結合しています。これはちょうど右下図のように、共振器に原子が2つ入っているような状態です。超伝導回路では人工原子と共振器内の光子を非常に強く結合(超強結合)することが可能で、この性質を利用することにより、1つの光子で2つの人工原子を同時励起することや、2つの人工原子のエネルギー和に等しいエネルギーの光子を作りだすことが可能となります。この他、真空場から光子を取り出す実験や新しい量子ビットを作る研究を行っています。
低雑音増幅器:進行波型ジョセフソンパラメトリック増幅器の開発
量子ビットの0/1状態の読み出しは、量子コンピュータを実現する上で重要な要素の1つです。量子ビットからの読み出し信号電力は、単一光子レベルと非常に微弱のため、正しく読み出しをするためには非常に低雑音な増幅器が必要です。進行波型ジョセフソンパラメトリック増幅器(Josephson Traveling-Wave Parametric Amplifier: JTWPA)は、超伝導体を使用した増幅器であり、量子限界レベルの低雑音性能に加えて、広帯域・高1-dB利得圧縮点の特性をもつため、周波数多重化読み出しに適しており、量子ビット読み出し用低雑音増幅器の有力候補の1つとして考えられています。我々は、読み出し性能を最大限に引き出すことを目指して、JTWPAの設計、作製、評価のあらゆる方面から研究を行っています。
ノイズ耐性を有する超伝導量子ビットに関する研究開発
量子ビットのエラーを訂正するためには莫大な数の量子ビットが必用であるため、昨今では量子ビットの大規模集積化に向けた研究開発が世界各国で活発に進められております。一方、量子ビットのエラーを減らすことができれば、エラー訂正に必要な量子ビット数を減らすことができるため、エラー耐性を有する量子ビットの研究開発は、量子コンピューター開発においてとても重要です。当研究チームで取り組んでいるKerr非線形性を有するパラメトリック発振器 (Kerr Parametric Oscillator、KPO)は、ポンプマイクロ波を図に示すような超伝導回路に印加することで二重井戸型ポテンシャルを生成し、量子ビットの0と1状態間のビットフリップエラーを原理的に抑制します。まだまだ未知の要素が多い新しい量子ビットですが、私たちはこうした魅力的なノイズ耐性を持つKPOに着目し、量子ビットの操作と読み出しの研究、そして大規模化に向けた研究を進めております。
オンチップ電子スピン共鳴技術の研究開発
超伝導量子ビットを含むデバイスチップ上の常磁性スピン密度制御による超伝導量子ビットのコヒーレンス時間向上を目指した研究を進めており、常磁性スピン評価のための超伝導マイクロ波共振器を用いたオンチップ電子スピン共鳴技術の開発に取り組んでいる。
グループの構成メンバー
顔写真 | 所属・役職および名前 | 専門分野 | その他、etc |
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チーム長
猪股 邦宏(Kunihiro INOMATA) |
低温物理実験・超伝導量子デバイス・マイクロ波量子光学 | ||
主任研究員
山田 隆宏(Takahiro TAMADA) |
量子デバイスの研究開発 | ||
主任研究員
増田 俊平(Shumpei MASUDA) |
量子ダイナミクスの制御(理論) ; 超伝導量子パラメトロン | ||
研究員
中島 裕貴(Yuki NAKASHIMA) |
超伝導デバイス | ||
研究員
朝永 顕成(Akiyoshi TOMONAGA) |
超伝導量子回路を用いた量子コンピュータ、量子デバイス | ||
研究員
水野 皓介(Kosuke MIZUNO) |
量子センシング、量子制御 | ||
チーム付
石川 豊史(Toyofumi ISHIKAWA) |
固体材料を用いた量子情報処理、超伝導量子デバイス、量子センシング、光・マイクロ波分光 |