計量標準総合センター長挨拶

計量標準総合センター長 産業技術総合研究所 上級執行役員
計量標準総合センター長
臼田 孝

日頃弊所の活動にお力添え頂き、お礼申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の5類感染症移行に伴い、社会・経済活動も正常化してまいりました。これまで計量標準の維持、供給、計量教習業務を大きな支障なく行えたことに深く感謝申し上げます。もとより引き続き感染症への対策も欠かせません。計量教習の受講における体調管理など、皆様には引き続きご理解とご協力をお願いする次第です。

 一方でコロナ禍を契機とした人々の行動変容、また少子高齢化による就業人口の減少を踏まえ、デジタルテクノロジーによる高効率化、高付加価値化が喫緊の課題となっています。このような背景を踏まえ、一昨年開始したデジタル校正証明書(DCC)の発行件数は順調に増えております。ユーザー様の要望をお聞きしつつ、引き続き適用範囲を広げてまいります。また昨年は量子・AI技術の創出を目的とした「量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)」が産総研に設立されました。NMIJからは量子計測にかかわる多くの研究者が参画し、量子技術のビジネス化、社会実装に取り組んでいます。

 海外に目を転じますと、ロシア侵攻問題の長期化に加えパレスチナ問題が深刻化するなど、国際情勢は混迷を深めており、人道問題はもとより経済活動への影響の長期化、深刻化を深く憂慮しております。我々NMIJとしても、国際比較に支障をきたすなど、国際情勢変化に無縁ではいられません。計量標準の国際同等性評価は、90年代後半からのWTO/TBT(規格や適合性評価の国際的整合性)進行が大きなドライビングフォースとなってより精緻に、広範に行われてきました。国際情勢の変化に加え、経済安全保障の観点からのサプライチェーンの見直しなど、これまでとは異なる力学の元で国際同等性評価を進めていく必要があります。もとより計量標準の同等性はあらゆる経済、産業、科学における基盤です。NMIJとしては引き続き計量標準の同等性確立に向けて、所管官庁の指導や産業界のニーズを踏まえつつ国際協力、国際比較を続けてまいります。

 産総研全体の取り組みとしましては、研究成果の社会実装を加速するため、産総研100%出資により、株式会社AIST Solutions(アイストソリューションズ)を昨年設立しました。NMIJとしましても、計量標準の開発、供給で培った計測技術、また標準化や認証への知見をAIST Solutionsを通じてオープンイノベーションの強化、エコシステムの構築や新規事業創出に結び付けていきます。同時に基準器検査、校正・依頼試験、標準物質の頒布、ならびに計量研修はエッセンシャル業務としてたゆまずに続けてまいります。

 皆様のご支援とご協力をよろしくお願いいたします。

(2024年4月)