計量標準総合センター長挨拶
産業技術総合研究所 上級執行役員
計量標準総合センター長
臼田 孝
日頃弊所の活動にお力添え頂き、お礼申し上げます。
産業技術総合研究所は4月より、7年間の第6期中長期目標期間をスタートさせました。傘下の株式会社AIST Solutions(AISol=アイソル)を含めた「産総研グループ」として、我が国の経済や社会の発展に資する科学技術の研究開発および成果の社会実装に取り組んでまいります。計量標準総合センター(NMIJ)としましても、計量標準の開発、供給で培った計測技術、また標準化や認証への知見をオープンイノベーションの強化、エコシステムの構築や新規事業創出に結び付けていきます。
値を提供するNMIJから計測によって課題を解決するNMIJに。
ぜひ、皆様が抱える課題に一緒に取り組ませてください。
同時に基準器検査、校正・依頼試験、標準物質の頒布、ならびに計量研修はエッセンシャル業務としてたゆまずに続けてまいります。
海外に目を転じますと、各国の政策が大きく変動する中、経済政策も自国第一・保護主義に進んでいる様相があります。計量標準の国際同等性評価は、90年代後半からの貿易の自由化が大きなドライビングフォースとなってより精緻に、広範に行われてきました。国際情勢の変化に加え、経済安全保障の観点からのサプライチェーンの見直しなど、これまでとは異なる力学の元で国際同等性評価を進めていく必要があります。もとより計量標準の同等性はあらゆる経済、産業、科学における基盤です。NMIJとしては引き続き計量標準の同等性確立に向けて、所管官庁の指導や産業界のニーズを踏まえつつ国際協力、国際比較を続けてまいります。
さて、2025年は、1875年5月20日にフランスのパリで、国際的な計量標準を統一することを目的としたメートル条約が締結されてから150年の節目の年となります。また同年、日本では、現在の計量法の元となる度量衡取締条例が公布されており、日本においても単位の統一が重要性を増した時期であったことが分かります。当初17か国で締結されたメートル条約に、日本は1885年に加入し、1890年にメートル原器、キログラム原器を受領しました。早い時期にメートル条約に加入し原器を入手したことは、日本の国の発展に大きく寄与しました。150年にわたり、世界的に統一された単位、国際単位系(SI)が受け入れられることにより、現在の高度な科学技術、安全安心な商取引、効率的な貿易などが実現されています。改めて、当時、度量衡の国際的な統一を成し遂げた先人の業績に思いを致す次第です。計量標準が科学技術、産業、日常生活に果たしてきた役割、計量標準の維持・発展のための国際的な協力の重要性を踏まえつつ、量子計測技術やデジタル化といった未来の計量科学に向けて、皆様と共に新たな一歩を踏み出してまいりたいと思います。
ご支援とご協力をよろしくお願いいたします。
(2025年4月)