地中熱ポテンシャルマップSuitability Map for Ground Source Heat Pump System

 地中熱利用システムは省エネルギー性の高い技術ですが、その地域の地質・地下水環境により最適なシステムや必要な熱交換器の長さや本数が異なります。導入を検討する際には「この地域ではどんなシステムが最適なのか?」「クローズドループだと熱交換器が何本程度必要なのか?」と言った指標が求められています。
 再生可能エネルギー研究センター地中熱チームと地圏資源環境部門地下水研究グループは、対象地域の地質や地下水環境を総合的に評価し、地中熱の潜在的な利用可能性 (ポテンシャル)を「見える化」した「地中熱ポテンシャルマップ」を作成しています。
 地域の水文地質環境を推定するため、平野や盆地などを対象として、地下水の流れや地下温度環境を、3次元地下水流動熱輸送シミュレーションにより解析し、それらの結果を元に、クローズドループの地中熱ポテンシャルやオープンループ・ATES適地の選定を実施しています。

各地域の地中熱ポテンシャルマップについては下記のリンクをクリックしてください。
  • 大阪平野
  • 会津盆地
  • 福井平野
  • 熊本平野

  • 以下の5地域はNEDO委託事業において作成
  • 青森県 津軽平野
  • 秋田県 秋田平野
  • 宮城県 仙台平野
  • 山形県 山形盆地
  • 福島県 郡山盆地


  • 用語解説

    NEDO委託事業

     再生可能エネルギー研究センター地中熱チームと地圏資源環境部門地下水研究グループは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)委託事業「再生可能エネルギー熱利用技術開発」において、東北地域を対象とした「地中熱ポテンシャルマップ」を作成しました。
     このマップでは、地中熱利用システムの普及拡大を目的に、地域によって異なる地質・地下水環境を、地中熱に特化した視点から「見える化」することで、システムの導入検討や最適化、費用対効果の具体的な試算に資する情報を提供しています。
     この度のNEDO事業においては、下記に示す東北地域の5つの平野や盆地に対し、クローズドループの地中熱ポテンシャルマップ、およびオープンループ(帯水層蓄熱)の地中熱利用適地マップを作成しました。

    なお、地中熱ポテンシャルマップに関しては取扱説明書【PDF: 860 kB】を参照下さい。

    本研究成果に関する問い合わせは info-shallowgeotherm-ml[at]aist.go.jp ([at]を@に変更)までお願いします。

    【注意事項】
    なお、本成果の引用・転載等される場合はNEDOへの申請が必要です。 「4.講演依頼、執筆依頼、資料転載、パンフレット請求等」の項目の(2) をご確認ください。

    再生可能エネルギー熱利用技術開発

     地中熱利用に関しては、採熱する配管の設置工事や掘削に係るコストが全体の40%以上と高く、掘削速度や機器の小型化等の掘削技術の開発によるコストダウンが急務となっています。
     そこで、NEDOではH25-H30の5年間で「再生可能エネルギー熱利用技術開発/地中熱利用トータルシステムの高効率化技術開発及び規格化、および再生可能エネルギー熱利用のポテンシャル評価技術の開発」を実施し、コストダウンを目的とした地中熱利用技術およびシステムの開発を行いました。
     この事業の中では5つの研究開発テーマが掲げられており、その中の一つが「再生可能エネルギー熱のポテンシャル評価技術の開発」です。
     本テーマの目的は、再生可能エネルギー熱のポテンシャル簡易予測・評価技術の開発およびそれを利用した再生可能エネルギー熱利用可能性を示すマップを構築する、とされていました。
     産総研・地中熱チームでは、我が国で普及が広まっているクローズドループシステムのポテンシャルマップに加えて、今後、普及が期待されているオープンループシステムおよび帯水層蓄熱システムの適地マップの開発に取り組みました。

    地中熱利用システム

     地中熱利用システムは、地下の熱を有効利用して少ない電力で冷暖房や融雪、給湯を行う省エネシステムです。
     地下数10m程度の温度は年間を通してほぼ一定(その地域の平均気温程度)であるため、夏季は冷たく、冬季は暖かいという特徴があります。
     地中熱利用システムでは、地中に深度数10m~100m程度の熱交換器を埋設することで採排熱を行う「クローズドループシステム」と地下水を直接汲み上げて採排熱を行う「オープンループシステム」の2種類があります。
     クローズドループシステムは、地下水の汲み上げを伴わないため、地下水揚水規制がある地域でも導入が可能ですが、熱交換器を埋設するための初期費用がかかります。
     オープンループシステムは、地下水の熱を直接利用できるため非常に効率のよいシステムですが、揚水可能な地下水が十分にない地域や揚水規制がある地域では導入が困難です。



    クローズドループの地中熱ポテンシャルマップ

     クローズドループシステムは、基本的には地質・地下水環境に依らず、どこででも導入することが可能ですが、その地中熱ポテンシャルは地域によって異なります。
     そこで、本研究では、クローズドループにおいて「標準的な戸建住宅1軒の冷暖房熱負荷をまかなうことができる熱交換器の長さ」及び「熱交換機1mあたりの熱交換量(W/m)」の分布を作成し、「クローズドループの地中熱ポテンシャルマップ」としました。

    オープンループ(帯水層蓄熱)の適地マップ

     オープンループシステムは直接地下水を揚水するため、帯水層の有無や地下水流動により導入が難しい地域も存在します。
     本研究では、オープンループシステムおよび帯水層蓄熱冷暖房(Aquifer thermalenergy storage、以下ATES)システムの最適地を評価しその分布を示すことで「オープンループ(帯水層蓄熱)の適地マップ」としました。
     ATESシステムとは、季節間で揚水井と還元井を入れ替えることで、夏季の冷房排熱を帯水層に蓄熱し冬季の暖房時に利用するという、効率のよいオープンループシステムの一種です。
    産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地圏資源環境研究部門
    住所
    〒305-8567
    茨城県つくば市東1-1-1
    中央第7