産技連 ライフサイエンス部会 バイオテクノロジー分科会/
関東甲信越静地域部会 食品・バイオ分科会
  研究成果・実用化事例発表会(2021.05.26)

(オンライン開催)

  10:00- 10:05 
 開会挨拶                                     産技連 ライフサイエンス部会長/バイオテクノロジー分科会長
(産総研 イノベーションコーディネータ)  新間  陽一 
  10:05- 10:25 
《 講演1 》
「ロコモ改善加工食品の開発」
  Development of processed foods to improve locomotive syndrome

静岡県工業技術研究所 上席研究員  渡瀬  隆也    
《講演概要》ロコモ(ロコモーティブシンドローム(運動器症候群)の略)とは、運動器の障害のために自立度が低下し、介護が必要となる危険性の高い状態(日本整形外科学会)を示します。 運動器の障害は、骨粗鬆症、骨折、変形性関節炎、リウマチ、腫瘍、外傷などが原因とされています。ロコモの入口となるサルコペニア(筋肉減少)・メタボ(体重増加)を解消し、栄養面、運動面を見直すことで「健康寿命」をのばすことが重要とされています。将来的にロコモが原因で支援が必要になる可能性があるロコモ人口は4700万人(東京大学医学部付属病院吉村典子特任准教授)との推計もあります。
静岡県では、静岡県立大学の協力のもと健康寿命を延ばすことをめざした食改善レシピの開発や、静岡県の素材を活用したロコモ予防食品の開発に取り組みました。 食改善レシピの開発では、52レシピ、8セットのメニューを開発し、現在静岡県庁のホームページ内で公開中です。
("静岡県/食改善レシピ" http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-310/recipe.html)
ロコモ予防食品の開発では、10社から県産食品素材の提供を受けて、機能性成分の分析や加工食品の試作を行いました。 発芽玄米ういろう、発芽玄米発酵調味料、まぐろ角煮グラタン、まぐろ削り粉配合玄米黒はんぺん、イミダゾールジペプチド含有黒はんぺん、チキンエキス配合静岡ドリア、かつおグラタン、地鶏グラタン、 まぐろシートを試作し、良質なたんぱく質を手軽に摂取できる、まぐろバーなどが商品化されています。
  10:25-10:45 
《 講演2 》
「沖縄豆腐製造の実態調査と器具類の洗浄方法の検証」
  The survey of actual condition in Okinawa tofu production, and assessment of
  washing methods for metal equipment and cloths
沖縄県工業技術センター 食品・醸造班 主任研究員  望月  智代    
《講演概要》「アチコーコー豆腐」「島豆腐」と呼ばれ親しまれている沖縄豆腐は、沖縄独特の加工食品であり、木綿豆腐や絹ごし豆腐のような日本本土の豆腐(日本豆腐)とは、風味、物性、製造方法、流通方法および喫食方法が異なっています。 そのため、日本豆腐製造の衛生管理方法が適用できないことが考えられます。 そこで当センターでは、沖縄県豆腐油揚商工組合とともに沖縄豆腐製造の衛生管理に関する実態調査を行いました。その結果、沖縄豆腐の微生物数は製造者ごとでばらつきがあり、成型工程以降で二次汚染の恐れがあること、 本工程で用いる器具や布類の洗浄方法が特に重要であることがわかりました。 洗浄方法は工場ごとで異なるため、効果のある具体的な洗浄方法を提示する必要がありました。 そこで、成型工程でよく利用される金属製器具類および布類の洗浄について検証しました。金属製器具類は10cm四方のステンレス製の汚染板を、布類は10cm四方のさらし布製の汚染布を作り、各種洗浄試験を行いました。 布類については、洗浄試験後に残留する汚れを加熱抽出しました。洗浄後の汚染板、および汚染布からの抽出液について、ATP測定器によりRLU値(ATP発光量を残留汚れとして計測)を測定し、各種洗浄剤や洗浄方法(浸漬の有無、時間、擦り洗いの有無など)の評価を行いました。 その結果、金属製器具類では、1%水酸化ナトリウム溶液やアルカリ性・弱アルカリ性の市販洗浄剤を用いて、擦り洗いなどの物理洗浄を行うことで十分な洗浄効果が得られました。 布類では、水酸化ナトリウムやアルカリ洗浄剤を用いて、60℃以上で浸漬・撹拌洗浄した場合で、ある程度の洗浄効果が得られましたが、合格判定のRLU値は得られず、汚れが残留していると考えられたため、さらなる条件検討が必要です。 本研究で得られたデータや知見は、「温かい状態で販売する島豆腐小規模製造事業者におけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(2020年6月公表、厚労省ホームページ)」作成の基礎資料となり、一部引用されました。 現在は実態調査の結果も含めて、沖縄豆腐製造業者への情報提供や技術支援の実施を進めています。
 10:45-11:05 
《 講演3 》
「皮膚細菌叢を制御する脂質およびそれを活用した企業への製品化支援」
  Control of skin microbiota with fatty acid, and technical support for a company

(地独) 大阪産業技術研究所 森之宮センター  総括研究員兼脂質工学研究室長   永尾  寿浩    
《講演概要》ヒトの腸、皮膚、口腔などの中または表層上には多数の微生物が存在し、それらは健康に寄与する微生物(善玉菌)や疾病に関与する微生物(悪玉菌)などに分類されます。従って、全ての微生物の生育を抑制するのではなく、疾病に関与する微生物だけの生育を選択的に抑制すれば、ヒトと健康に寄与する微生物の良好な共生関係が成立します。
 アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis, AD)は様々な要因が複合して発症・増悪化しますが、それらの要因の1つは炎症悪化と皮膚バリア破壊に関与する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の皮膚上での顕著な増加です。これに対して、健常者の皮膚上ではS. aureusの存在量が低く、かつS. aureusの生育抑制作用等を保持する表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)が多く存在します。 一方、ヒトの皮脂中に存在するサピエン酸(SA)は、弱酸性条件下において、S. aureusに対して強く、S. epidermidisに対して弱い選択的抗菌活性を示します。健常者における皮脂中のSAはS. aureusの生育抑制に十分な量が存在しますが、AD患者の炎症部ではSA含量が減少してS. aureusの生育が抑制されなくなり、炎症が増悪化すると推定されます。 また、皮脂が減少する肌荒れ時にもS. aureusが高頻度で出現することが知られています。
 SAを皮膚に供給すれば良いと思われますが、この物質は天然油脂からの有効な供給源がありません。そこで我々は、SAの二重結合の位置異性体で、限定的な植物油中に存在するパルミトレイン酸(POA)が、SAと同じ選択的抗菌活性を示すことを見出しました。 この技術を用いた化粧品企業との共同研究により、POAを含む油脂を配合した化粧品(2019年夏)、およびその油脂を繊維に練りこんだマスク(2021年冬)がそれぞれ販売されました。この商品化をきっかけとして、今後、ADの炎症抑制などを目的とした研究に発展させていきたいと思っています。
 11:05-11:25 
《 講演4 》
「産総研関西センターにおける公設試験研究機関との広域連携について」
  Introduction of wide-area collaboration with public research institutes at
  AIST Kansai Center
産総研 関西センター イノベーションコーディネータ  斎藤  俊幸    
《講演概要》公設試と産総研との広域連携について、産総研が関与し現在活発に活動しているものとしては、関西センターでは京都市を中心とした近畿日本酒研究会と大阪を中心としたEMC研究会の技術系の連携が2件、展示・講演会の共同開催など広報・人材交流の連携が1件あり、 これ以外の地域や全国ネットにおいても同様な連携活動が活発に行われています。これらは産業技術連携推進会議(産技連)や産総研ICのネットワークを活用したものが多く、ここ数年の全国の主な広域連携活動は、産技連総会における感謝状授与対象をご覧いただければ概要を知ることができます。 ここでは、関西センターにおける広域連携活動を紹介しつつ、産総研発足当初から産技連に対する産総研及び地域経済産業局などからの予算的・人的サポートが徐々に減少する中で、どのように連携を進めるかなどを考えたいと思います。
 11:25-11:55 
《総合討論》

~ライフサイエンス分野における産総研・公設試等の連携の方向性について~

 11:55-12:00 
閉会挨拶
ライフサイエンス部会副部会長(産総研 連携主幹) 八代  聖基

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