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「産総研の萌芽的ヘルスケア研究」

         日時:10月14日(木)10:30~11:30
         形式:オンライン

概要  健康医療に関する社会ニーズが多様化する昨今、産総研では疾患の診断・治療や健康寿命の延伸に貢献する新技術を、分子から細胞、個体に至るあらゆるスケールで開発し、医療システムの支援やQoLの向上に資する様々な研究を展開しています。 本オンラインセミナーでは、生命工学領域の新進気鋭の若手研究者6名による独創性の高い研究をご紹介いたします。

講演1  10:30-10:40 
デザイナー細胞を実現できるバイオマテリアル

産総研 細胞分子工学研究部門 主任研究員  寺村  裕治 
治療に利用される細胞に対して、生体適合性の高いバイオマテリアルを利用することで細胞表層を改変することができます。このことは、移植する細胞の保護や機能強化、あるいは新しい機能を付与することが可能になります。 細胞膜に疎水性相互作用により導入される両親媒性高分子と機能性分子との高分子結合体は、細胞へ毒性を与えることなく細胞膜のみを修飾できるため、細胞表層のデザインに優れたバイオマテリアルです。 また、このアプローチは、細胞だけでなく臓器表面の改変にも利用できます。 本講演では、これまで取り組んできた細胞表層を改変できる高分子バイオマテリアルについて、具体例をあげて紹介します。
講演2  10:40-10:50 
個々の細胞の糖鎖とRNAを同時解析

産総研 細胞分子工学研究部門 研究員  小髙  陽樹 、研究グループ長  舘野  浩章 
糖鎖は複数の単糖がつながって構成される化合物で、細胞の表面を覆っています。 細胞表層の糖鎖は細胞の種類や状態によって変化することから細胞の目印として、創薬や幹細胞品質管理への応用が進んでいます。 しかし従来は細胞集団単位の糖鎖情報しか得られず、1個の細胞の糖鎖情報を取得することはできませんでした。 本技術を用いると、1個の細胞の糖鎖とRNA を同時に解析することができます。そのため細胞集団の不均一性の解明や、がん幹細胞、循環がん細胞、胎児有核赤血球などの希少細胞の糖鎖マーカーの探索が可能です。 将来的には希少細胞を標的とした医薬品や診断技術の開発への展開が期待されます。
講演3  10:50-11:00 
老化を促す細胞内の一重項酸素を簡単に測定する技術

産総研 バイオメディカル研究部門 主任研究員  室冨  和俊 
一重項酸素は皮膚の老化などに関わるため、食品や化粧品素材の機能性成分の標的として重要な分子です。 しかし、一重項酸素は半減期が短いため、細胞内の一重項酸素量を簡便に測定することはできませんでした。 我々は蛍光プローブSi-DMAとタイムラプスイメージングを組み合わせることで、細胞内の一重項酸素の増減を定量的に測定することに成功しました。 実際に、カロテノイドの1種であるアスタキサンチンが細胞内で一重項酸素の発生を抑制することを見出しました。 本技術はスループット性の向上や解析方法の工夫等によりに、一重項酸素の発生を抑制する物質の同定に寄与し、老化の予防法開発への貢献が期待されます。
講演4  11:00-11:10 
1細胞解析のためのラマン分光顕微システム

産総研 細胞分子工学研究部門産総研・阪大 先端フォトニクス・バイオセンシングOIL
研究員  赤木  祐香 、研究グループ長  木田  泰之 
私たちは細胞の種類をラベルフリーで判別する解析システムを開発しました。 本技術では細胞全体にレーザー光を走査させることにより、1細胞あたり数秒間でそのラマンスペクトルを取得することが可能です。 また、得られたスペクトル情報を機械学習で計算させることで、細胞の状態(種類や活性化など)を個々に判別できるようになりました。 このような技術は希少な細胞を標的とした創薬スクリーニングなどの医薬品開発や再生医療技術へ、またバイオ燃料開発やスマートセル産業における物質生産への貢献も期待できます。 現在、機能性を有する細胞の同定や有用な菌体等の選別など、このシステムを用いた実証試験での協働を目指しています。
講演5  11:10-11:20 
耐熱性プロバイオティクス乳酸菌の胆汁酸耐性機構の解明

産総研 生物プロセス研究部門 研究員  草田  裕之 、研究グループ長  玉木  秀幸 
Lactobacillus属乳酸菌はヒトの健康に有益な効果をもたらすプロバイオティクスとして大きな関心を集めています。我々は近年、胆汁酸耐性能を有するヒト由来乳酸菌が高い耐熱性を有することを発見しました。 さらに、本菌のゲノム解析から胆汁酸耐性関連遺伝子を見出し、組換え酵素の詳細な機能解析を実施したところ、本酵素は既知酵素の中で最も基質特異性が広く、且つ最も高い耐熱性を有することを明らかにしました。 耐熱菌や耐熱酵素は一般的に高温処理下で生産効率が大幅に向上することが知られているため、本研究で発見した高い耐熱性を有する乳酸菌および胆汁酸耐性酵素は今後のプロバイオティクス研究の有望な候補になることが期待されます。
講演6  11:20-11:30 
アルツハイマー病の予防法開発を目指して

産総研 バイオメディカル研究部門 主任研究員  羽田  沙緒里 
アルツハイマー病患者の急増が社会的な問題となっていますが、効果的な治療薬の開発はなかなか進んでいません。 その原因の一つとして、脳内で神経変性が起こってから認知症を発症するまでに20年以上かかるため、認知症を発症してからでは十分な治療効果を得られにくいことが挙げられます。 アルツハイマー病には予防的対処が重要であると考えられるため、食品中にも含まれる共役脂肪酸のアルツハイマー病に対する予防効果を検証し、共役リノール酸の一種にはそのような効果があることを明らかとしました。 本研究は、科学的根拠に基づく予防法開発につながる成果であると考えています。

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