于 躍/Yu Yue
モレキュラーバイオシステム研究部門
Molecular Biosystems Research Institute
バイオシステムデザイン研究グループ 主任研究員
- ナノ治療薬の開発
- 天然由来の抗がん剤の探索
- がん光温熱療法
がん生物学、ナノテクノロジー、有機化学を結び付けて、がんの理解、発見、治療のためのソリューションを提供するための研究開発を行っています。 現在の研究内容は(1)がん介入用機能性ナノ材料の開発。(2)天然物からの抗がん剤化合物の探索。(3)がんの分子メカニズムの解明
共有結合性有機構造体COFを基盤とする標的型DDS技術
共有結合性有機構造体(Covalent Organic Frameworks:COFs)は、軽元素のみから構成される新規多孔性材料であり、低い内在毒性と高い構造設計自由度を併せ持つことから、近年、生物医療分野への応用に大きな関心が寄せられている。本研究では、COFsの精密な構造制御性を活かし、多くのがんで高発現が認められる葉酸受容体(folate receptor:FR)を標的とした薬物送達プラットフォームを開発した。葉酸修飾した両親媒性COFは、水系環境中で安定に分散するナノサイズ粒子を形成し、最大50 wt%に達する超高薬物担持能を示すことで、疎水性抗がん剤の高効率なナノ製剤化を可能とする。モデル薬剤としてWithaferin Aを用いた検討により、FR陽性がん細胞に対する選択的集積および強力な抗腫瘍効果を、in vitro(細胞)およびin vivo(マウス)モデルの両方で実証した。本技術は、既存抗がん剤の治療効果を高めつつ全身性副作用を低減できる点に大きな特長を有しており、がん標的型ナノ医薬品への応用や、製薬企業との共同開発への展開が期待される。
- 特願2021-131345(2021/08/11):ドラッグデリバリープラットフォーム化合物及びその製造方法並びに医薬組成物
- Y. Yu et al., Nano Research, 2023, [doi/10. 10.1007/s12274-022-5265-7]
天然化合物Withaferin AによるALT陽性がん細胞の選択的殺傷
正常な体細胞では、染色体末端であるテロメアの短縮によって細胞寿命が制御されていますが、がん細胞はテロメア長を維持することで無限増殖能を獲得しています。このテロメア維持機構には、テロメラーゼ活性化型と、組換え依存的な ALT型の2種類が存在します。テロメラーゼ阻害剤は現在臨床試験段階にある一方で、ALTを標的とした治療薬は未だ開発されておらず、ALT陽性腫瘍は悪性度が高く治療選択肢が乏しいという深刻な課題があります。本研究では、アーユルヴェーダで用いられる薬用植物アシュワガンダ由来の天然化合物 Withaferin A(Wi-A)に着目しました。等遺伝背景をもつテロメラーゼ陽性細胞とALT細胞を用いた解析により、Wi-Aは低用量でALT細胞に選択的な細胞死を誘導し、ALT機構の抑制、テロメア機能破綻、DNA損傷応答の顕著な活性化を引き起こすことを見出しました。本技術は、未充足医療ニーズの高いALTがんに対する新規作用機序を有する低毒性・天然由来治療戦略として、製薬企業との共同研究や創薬展開への可能性を有しています。
- Y. Yu et al., Cell Death & Disease, 2017, [doi/10.doi.org/10.1038/cddis.2017.33]