横田 一道/YOKOTA Kazumichi
健康医工学研究部門
Health and Medical Research Institute
細胞ハンドリング・診断技術研究グループ 主任研究員
- 微細加工技術を用いた一粒子分解能計測デバイスの開発
- ポアデバイスによる非標識細胞検出と識別、評価
- ポアデバイスによるリアルタイム微生物検査
微細加工技術によって形成した細孔(ポア)を有するポアデバイスやマイクロ流路デバイスを用い、細胞や微生物を検出・識別する技術を開発しています。ポアデバイスは非標識での一粒子分解能で計測でき、迅速かつ簡便な識別が可能です。この技術をもとに、診断デバイスや産業用センシングデバイスの開発を目指しています。
白血球に含まれる がん細胞の高精度識別
抗原抗体反応を利用したがん細胞の標識は、血中循環がん細胞の定量検出法として、がんの予後評価や化学療法効果判定に用いられています。しかし、標的抗原の発現量が低いがん細胞では見逃しのリスクがあり、標識に依存しない新たな検出技術が求められています。そこで、非標識で1細胞検出・識別が可能なポアデバイスを用い、血液単核画分に含まれる白血球のリンパ球とがん細胞の識別が可能かを検証しました。リンパ球およびがん細胞の株化細胞を電解質溶液に懸濁し、1細胞ずつ通過するようにポアサイズを設計したポアデバイスで計測したところ、細胞がポアを通過する際のイオン流阻害が特徴的なパルス状電流変化として観測されました。パルスの幅と高さを特徴量として識別したところ、識別精度は81.3%でしたが、電解質組成を最適化することで95.5%に向上しました。これは、細胞サイズや表面電荷など物理的特徴の寄与が高められたためで、細胞のみならず粒子や微生物の非標識検出・識別、さらにはセンシング技術として利用可能です。
- 特願2022-192361(2022/11/30):センシングデバイス及び抵抗パルスセンシング方法
- K. Yokota et al., Biosensors-Basel, 2021, [doi/10.3390/bios11030078]
赤血球変形能をはじめとする細胞物性評価
赤血球は柔軟性に富み、自身の直径より細い毛細血管を変形と形状の修復を繰り返しながら通過し、酸素を全身に運びます。赤血球変形能の低下は老化、糖尿病や感染症などとも関連し、バイオマーカーとなり得ますが、一細胞レベルでの高スループットな評価手法がなく、疾患と関連する変形能が低下した赤血球の割合が少ない場合は、その評価が困難といった課題があります。ポアデバイスでは1細胞のポア通過がパルス状の電流変化として計測されるため、得られるパルス波形から通過に伴う粒子の変形と形状の修復が1細胞レベルで評価できるのではないかと考え、検証を行いました。有限要素法によるシミュレーションでは、弾性膜の硬さに応じてパルス波形の非対称性が変化することが明らかになりました。さらに、赤血球変形能が低下することが知られているマラリア感染赤血球を用いた実験を行ったところ、赤血球に比べて有意な非対称性の増加が確認できました。現在、この原理を応用し、糖尿病等の疾患のリスク評価デバイスへの応用を検討しています。
- PCT/JP2024/021668(2024/06/14):浮遊細胞の変形能評価方法
- K.Yokota et al., Sensors, 2025, [doi/10.3390/s25154722]