研究者紹介

渡邊 秀樹/WATANABE Hideki

モレキュラーバイオシステム研究部門

Molecular Biosystems Research Institute

バイオシステムデザイン研究グループ 研究グループ長

研究テーマ
  • 進化分子工学による人工タンパク質の創出
  • バイオ医薬品の創出・製造・分析技術開発
  • タンパク質間相互作用解析
研究内容
研究紹介図

進化分子工学と構造基盤合理設計による独自のタンパク質創出技術を基に、数十残基で固有の立体構造と非天然機能をもつ小型人工タンパク質を開発しています。開発した人工タンパク質の産業利用として、診断・治療用小型バイオ医薬品、バイオセンサー、抗体医薬の品質管理技術への適用を進めています。

キーワード

進化工学タンパク質工学抗体医薬中分子医薬バイオセンサー

進化分子工学による小型人工タンパク質創出

技術内容
進化分子工学による小型人工タンパク質創出の図

機能性ペプチドの活性を数千~数万倍に増強した小型人工タンパク質の創出技術を構築しています。独自に開発した進化分子工学手法により、機能性ペプチドを出発点としてその立体構造を進化的に最適化し、天然タンパク質の既存骨格にとらわれないテイラーメイドの立体構造をもつ高機能化小型人工タンパク質を創出します。本技術は様々な機能性ペプチドに適用可能な汎用性の高い技術であり、天然・人工物を問わずこれまで発見・開発されてきた機能性ペプチドを医薬品や産業用分子の資源として網羅的に再活用することが可能です。作出される小型人工タンパク質は化学合成による製造が可能な数十アミノ酸残基のサイズであり、医療用抗体等の高分子量タンパク質と比較して、凝集や不可逆的な失活の懸念もなく、酸・アルカリ・有機溶媒・煮沸の曝露にあっても立体構造を可逆的に保持できるなど、高い保管安定性を有します。従来の高分子量タンパク質が高コスト製造や構造不安定性・凝集などの点に課題を抱えるのに対し、低コスト製造で常温・乾燥での保管も容易な小型人工タンパク質は、高分子量タンパク質を代替あるいは補完する新たな分子モダリティとして期待されます。

関連知財
  • 特許第5904565号(2013/12/09):微小タンパク質の骨格構造に基づく分子ライブラリ
  • 特許第6363022号(2013/12/25):抗体結合性ペプチド
関連文献
応用可能な産業分野キーワード

医薬品(内服・点滴・注射)医薬品(外用・貼付)検査機関・サービス

抗体医薬品の高次構造品質管理技術

技術内容
抗体医薬品の高次構造品質管理技術の図

抗体医薬品は高い治療効果から難治性疾患への適用領域が拡大し、市場規模も継続的に成長しています。その一方、高分子量タンパク質の特性である高次構造の変性や凝集等の物理化学的変化も医薬品としての安全性・有効性に直結する課題とされており、製造から保管・製剤化に至る各工程において抗体の高次構造を高精度に評価・制御するための厳密な品質管理が求められています。当グループでは抗体医薬品の高次構造変化を特異的に識別して結合する小型人工タンパク質を創出し、これらを分析プローブおよび除去リガンドとして活用する新たなコンセプトの抗体品質管理技術を提案しています。一例として、独自の進化分子工学により作出した25アミノ酸残基の小型人工タンパク質AF.2A1は、天然型立体構造の抗体には結合を示さず、これが酸、熱、還元剤等によって変性を生じた抗体に対し、強い結合を示します。AF.2A1の高特異性を基盤としたバイオセンシング技術により、従来技術と比較して高速・高感度・高効率の抗体品質分析を実現し、これを除去リガンドとして用いたフロースルー型精製により、変性抗体を選択的に除去することが可能です。

関連知財
  • 特許第6818305号(2017/08/31):非天然型立体構造を形成した抗体に親和性を示すポリペプチド
  • 特許第6363022号(2013/12/25):抗体結合性ペプチド
関連文献
応用可能な産業分野キーワード

医薬品(内服・点滴・注射)医薬品(外用・貼付)医療機関検査機関・サービス

タンパク質間相互作用の環境応答制御技術とアフィニティ精製カラム応用

技術内容
タンパク質間相互作用の環境応答制御技術とアフィニティ精製カラム応用の図

タンパク質の特異的相互作用は、検出分子や精製リガンドとして広く利用されています。一方で、結合・解離挙動が固定的である場合、検出条件や溶出条件の最適化や精製分子へのストレス低減に課題を抱える場合も少なくありません。当グループではタンパク質間相互作用に環境応答性を賦与する合理設計指針を構築し、これをアフィニティ精製カラムへ応用する技術を開発しています。本技術は、特定の環境条件 (例: pH) において結合エネルギーに摂動を与える変異を、構造情報や物理化学的考察に基づいて合理的に設計・導入し、外部環境の変化に応答して結合・解離が鋭敏に制御される相互作用系を構築します。実施例の一つとして、プロテインAやプロテインGに代表される抗体親和性リガンドにpH感受性を賦与し、pH変化に鋭敏に解離挙動を示す改変体を設計しました。設計指針の妥当性はpH依存的結合の実証に加え、X線結晶構造解析や相互作用の熱力学的解析によって厳密に検証されています。本技術により、従来の酸性緩衝液による抗体の溶出条件を大幅に穏和し、抗体の変性や凝集の発生を抑制できる高品質の抗体精製に資するアフィニティ精製カラムを提供します。

関連知財
  • 特許第5812303号(2012/05/31):酸性域での親和性が低下したプロテインA変異型タンパク質及び抗体捕捉剤
関連文献
応用可能な産業分野キーワード

医薬品(内服・点滴・注射)